「プラモを作りのための義体化」はピンセットで始めよう!!

 プラモは指でパーツをつまんでくっつけていくもの……だったらいいんだけどすげえ小さいパーツとかがあり、これを指でくっつけると指なのかパーツなのか接着剤なのかわからなくなり、最終的に万物がグダグダになっていやになることもあります。そこで「小さいパーツはピンセットを使おう」と思うワケですよ。これは指の先端を極限まで細くし、プラモに対応した肉体を獲得するというアイディアなのです。言ってみりゃ義体化の最初の一歩。サイボーグのなりはじめ。これがピンセットの持つ意義であります。どうですか、重要だと思いませんか、ピンセット。どうせ義体化するなら、高性能でカッコいいのがいいです。

 ということで、ここでは私からぱたが常用しているピンセット四天王を紹介し、それらがどのように使い分けられているかを解説することにより、ピンセットがあればいきなりプラモが10倍カンタンに、高速に作れるようになるということを皆さんにご理解いただこうと思うわけです。

 こちらがからぱたの常用するピンセット4本(使い込んでいるのでちょっと汚れもありますが、そこは「おお、マジで使ってるんだな」と好意的に解釈していただきたいです)。左から、Fontax/No.5C(小さくて先端が鋭い)、IDEAL-TEK/36A-SA フラット(先端が平べったく、持つところがギザギザしている)、ブランド不明/ステンレス製ピンセット(いちばんながく、先端が鶴首になっている)、タミヤ/74080 クラフトピンセット(先端がゆるやかに曲がり、全体的に平べったい)であります。こんなにピンセットあってどうすんだよ、つまめればいいだろ……と思うかもしれません。

▲Fontax/No.5C

 まずはFontax/No.5C。”勝負ピンセット”です。現在は廃番らしいのですが、ググると同等品が出てきます。目玉が飛び出そうな値段するだけあって、先端の精度は(プラモを作るという用途においては)最高〜という感じです。
(ちなみにピンセットの世界は本当に青天井で、超高級品は本当にすごい値段ですごい精度になっており、蒐集してその使い心地に快感を覚えるマニアもいらっしゃいます)

 なぜ高いピンセットを使うか。それは「安いピンセットはピンセットのカタチをしているだけで、物を掴む性能がないから」です。しかし、5000円以上のピンセットを持つとビビります。力の入れ方にさして気を使わず米粒を掴んだとしても、落ちない、飛んでいかない。

 みなさんも、ピンセットで摘んだパーツが飛んでいって探し、江戸時代にタイムスリップし、ペニシリンを発明するなどしているうちにプラモが完成しなくなって号泣したことはないでしょうか。掴む性能がないピンセットは、プラモが早く完成するどころか、ピンセットのカタチをしたカタパルトとなってパーツを射出し、プラモの完成を妨げてしまう。そういうことを繰り返していると人生が辛くなってしまいますので、とにかく小さなパーツを扱う人は先端が鋭く、精度の高いピンセットにきっちりお金を出しましょう。スケールモデル数個買うのを我慢すると、二度とパーツが飛んでいかない模型ライフを送ることができます。

 先が尖っていて精密なピンセットは、シールやマスキングテープの端を狙ったとおりにつまみ、めくることができます。デザインナイフの先でピロッと起こしてから何かしらの道具でつまむという手もありますが、鋭いカドをビシッとつまんでガッと剥がせるピンセットは、プラモ作りにおいても一二を争う瞬間である「マスキングを剥がす」という快感をより増幅してくれるのであります。

▲IDEAL-TEK/36A-SA フラット

 続いてはIDEAL-TEK/36A-SA フラット。これは先端が角度のついたヘラのようになっていて、合わせ面が平行を保ったまま作動するのが特徴です。つまむ力はほとんどなく、薄いものを優しく掴むのに特化した形状だと言えるでしょう。これは主にデカールを扱うときに重宝しています。

 このように先端が片方に折れ曲がって平べったく伸びているため、デカールの台紙をパーツの上に差し出すと、面にスッと沿わせてデカールを滑らせることができます。シールは静電気を帯びてパーツにくっつこうとすることが多く、狙ったところに貼れない場合があるので気をつけて下さいね。

▲ブランド不明/ステンレス製ピンセット

 次はブランド不明のステンレス製ピンセット。先端は尖っていますが、小さなパーツを掴むには先が丸く、合わせの精度もありません。こうしたピンセットは「指では入らないパーツ」や「狭い空間で何かをガッチリ組み合わせる」といった小さな力仕事に使います。先端が細すぎるとどうしてもピンセット自体の剛性が低くてたわんでしまったり、ピンセットが変形してしまうことがあります(また、鋭い先端がパーツの表面に小さなキズをつけてしまうこともあります)。

 太いボディに適度に反発力のある握り感、ツル首になっていることで作業の自由度が高く、その角度や長さも気に入っています。こうした力仕事につかうピンセットは作業のしやすさ、少々手荒に扱ってもいい頑丈さが必要ですし、個人の好みで味付けを選ぶのが吉でしょう。そんなに高いものを選ばなくてもいいと思うので、いい感じの反発力、いい感じの握り心地、そしていい感じの曲がり具合と先端の形状が得られるまで、いろいろとお付き合いしてみるのがいいのではないでしょうか。

▲タミヤ/74080 クラフトピンセット

 最後はタミヤ/74080 クラフトピンセット。ブルドーザーのような信頼感と剛性に満ち溢れた一本です。

 まず先端が平べったく、全体にかなり厚みがあります。こちらは小さなパーツをつまむのではなく、先端の幅を利用してそこそこ力を入れた作業ができるので気に入っています。上の写真のように、指で掴むにはやや小さく、のりしろに安定感がないパーツを接着するときに、「面」で押さえつけるシーンで活躍します。

 点ではなく面で掴むメリットはもうひとつあり、指で貼るには難しい、ちょっと奥まったところや角度のついたところにマスキングテープやシールを持っていくときにも幅広ピンセットは役に立ちます。点で掴むとシールやマスキングテープがクルクル回ってしまうことがありますが、面で掴んでいれば方向をビシッと保ったまま、狙った位置に貼ることができますね。

 さらに先端の背は30mmほどストレートに加工されており、この部分は全体がピッタリと合わさるように設計されています。

 「30mm、ストレート、ピッタリ合う設計」はこうした曲げ加工に威力を発揮します。スケールモデルでたまに出現するエッチングパーツの加工はもちろん、ペーパークラフトを作るときにも活躍してくれるのがいいですね。

 ……ということで、からぱたが使っているピンセット4本の紹介でした。この世にはさまざまなメーカーから無数のピンセットが発売されています。値段も本当に安いものから恐ろしく高いものまでありますが、「つまむ」という基本的な性能はもちろん、あえて力が入らないようにしたもの、握ると開いて離すと閉じる逆作動タイプなどなど、それぞれに目的が設定されています。

 「それなりにつまめればOK」でピンセットをなんとなく買い、パーツを飛ばしたりデカールを破ったりしてイライラするとプラモを作る気もしぼんでしまいます。「素早く、気持ちよくプラモを作るために自分を手軽にサイボーグ化する」というのはけっこうなエンターテイメントのひとつですので、ピンセットにお金をかけてみてはいかがでしょうか。

 みなさんも、ぜひ。

<em><a href="/author/kalapattar/">からぱた<br></a></em><a rel="noreferrer noopener" href="https://twitter.com/kalapattar" target="_blank">@kalapattar</a>
からぱた
@kalapattar

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。