タミヤ ヨンパチ”発艦トムキャット”の美味しい脂身を味わう!

 ちまちま作っているタミヤの「1/48 グラマン F-14A トムキャット (後期型)発艦セット」なんですが、トムキャットといえば主翼が前後にスイングします。しかしこのキットは発艦寸前の姿を再現するために主翼が固定なんです。左右をつなぐゴッツい桁でバッコリ角度が決まる。ところで頑丈な模型はいいですね。壊れにくいので。

 発艦直前はノーズギア(前の着陸脚)がぎゅっと縮んだ「ニーリング」と呼ばれる状態になります。これも縮んだ状態のパーツが入っています。ロボットモデルだと「よく動くのでいろんなポーズがとれる!」というのがバリューになるけど、こっちは「決まったポーズの固定モデル」なんだな。これはスケールモデルかキャラクターモデルか、みたいな差ではなくて「どう作ってもらいたいか」が決まってるかどうかなんじゃないかな〜と思ったりします。

 これは本物のトムキャットの写真。主翼が前後にスイングするので、主翼付け根の胴体の中に出し入れされる部分に同心円状の汚れがついているのがわかります。最近はこれを塗装で再現するのがトレンド。動かないのに「動くんだぜ〜」という説得力を出せるし、変わった模様なので見た目にも盛り上がります。つい最近までこれを再現する人がいなかったのも不思議〜。さて、どうやって再現するのか……。

 うわー、「汚れデカール」が入ってるじゃないですか!同心円状の汚れを描くというナウいけどちょっと難しい技法を貼るだけで味わえるようにする……。デカールにトレンドが盛り込まれるっていうの、なかなかシブくないですか。楽しいなぁ!

 もちろんキットは相変わらずとんでもなく素晴らしい完成度なので、あえて「ここがすごい!」という必要なし。だって全部すごいんだもん。でもですね、トムキャットのプラモで誰もが苦戦してきた胴体と機首の合わせだけはこの世の全員に味わってもらいたい快感なんだよなぁ……スポッ!

 パシッ!ほら、どこが合わせ目立ったのかほとんどわからないでしょ。なにも考えずにここがバチピターっと合うプラモはタミヤのF-14以外無いと断言しちゃいます。この複雑な飛行機の獰猛な発艦シーンを味わいたければ、タミヤのキットを買ってきてストレートに組むが吉!貼るだけでも猛烈に楽しいし、ぬれば100倍楽しい。そんなウルトラプラモです。買わなきゃ損ですよ〜。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

シーズナル・モデリング/年末まじ仏!

 Hi, sakeの季節ですね。
 先日母と埼玉は川越にお出かけしてきました。

 川越氷川神社だよ!こういった技術はすごいものです。1/100のプラスチックになったらどのようになるのでしょうか。ただ直向きに己のやるべきことをした当時の技師に頭の下がる思いです。

▲酒屋で良いものを買いました。酒は良い。

 神社のお話の後で恐縮ですが、仏教で小我という言葉があります。文字通り小さな意味での自己、自己中心的な自己のことで西洋的な自己や個性はこれに当たるといって良いでしょう。その反対の言葉は真我といってもっと大きなもの、大地に根を張る茎のようなものです。
 ものや、モチーフと対峙した時の心がけとして、「相手を生かすこと」ということを考えます。ここで欲を出して己の色を出そうと考えるのは良くない、それが小我というものです。

 さてさて新橋のタミヤプラモデルファクトリーでうっかり買ったこちらを作ろうと思います。水陸両用車、ICMの兵士付きです。大変嬉しいですね。
 どのように料理すればあなたは喜んでくれますか、水陸両用車たん……。

▲うるせえ。スピーカーを繋げ。酒を飲ませろ。俺の音楽を聴け。
▲たくさんのフィギュアを添えて、こんな感じになったよ。わーい酒池肉林!
▲ワクワクする季節です、好きなものを作って楽しみましょう。

 バーイ!

エジンバラ

おえかきと事務がちょっとできる

エアブラシのチム・チム・チェリー! ハイキューパーツの「KMブラシ 洗浄用」!!!

▲使ってみて実感。カップの奥まで綺麗になります!!

エアブラシのカップ内の洗浄なんて使い古した筆でいいでしょ。そう思っていました。しかしこの筆を見つけて試しに使ってみたんです。結論、めちゃくちゃ良いです。筆のコシもさることながら、絶妙な毛量なのでしっかりとカップのフチに溜まった塗料も絡めとります。洗浄時のツールクリーナーを使う量の節約にも繋がりますね!

▲メイドインジャパンの熊の筆。穂首は耐薬品性に優れたPBT素材というものが使われています。軸は無塗装の木材なので、シンナーなどで軸の塗装が剥がれるなんてことはありません!
▲この毛量と絶妙なコシにより、カップの奥に溜まった塗料やニードルの先に固まった塗料などをさっと除去してくれます
▲うがい洗浄の前に、この洗浄筆でしっかりとカップ内をゴシゴシすれば、少ない回数のうがいで洗浄が済みます
▲筆が完全に乾燥している状態なら、パーツの埃取りにも便利。エアブラシを洗浄した直後は絶対にやめようね!

専用のツールの強さというのを改めてこの筆で体感しました。色を塗る筆はやはり繊細な面があるので、どうしても力技になる洗浄の時にはそれがディスアドバンテージになってしまいます。洗浄筆はまじで頼もしいです。梅皿に残った塗料も、一度洗浄筆でぐるぐる〜〜〜ってパレット上の塗料をかき混ぜてから拭き取ると、あっという間に綺麗になります。これからも長い付き合いになりそうな洗浄筆。お値段もお手頃なのでおすすめですよ。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

箱の中に広がるサルーン/ハセガワ 1/24 いすゞ117クーペ

 出来て数年の真新しい東名高速をトップギアの4速を維持して夜通し走った。
 子どもらがどうしても東海道新幹線に乗って「月の石」を見に行きたいと言うものだから,妻は付き添いで先に向かうことになり,いつもは4人乗りで賑やかな車内も今夜は自分一人だ。カーステレオを切っているから聴こえるのはエンジン音と道路の継ぎ目を越えるたびに鳴る振動のみ。高速道路を照らすナトリウムランプがクリーム色のボディーを照らし,去り,照らすを繰り返す。
 メイプルオレンジより明るい橙色のシビックに乗る友人は東武鉄道の通勤電車みたいじゃないかとこの車体色を見て笑うが,私はこの色が好きだ。


 確かにこのクリーム色以外に,情熱的で若さがほとばしる雰囲気の赤なんかも選べたけれど,寡黙な僕にはどこか借り物みたいで日常の足に乗るには気恥ずかしい。何よりひと目で私の車だと分かる色がよかった。それに黒基調との車内との相性もいい。
 ドライバーズシートに座ってウッドステアリングを握って,そこから垣間見えるずらりと並ぶ計器類。メーターのレッドゾーンの手前の黄色が良い差し色になっているし,メーター類が嵌め込まれている台湾楠の艶やかなウッドパネルには惚れ惚れする。
 少し目線を上げれば,砲弾型のフェンダーミラーが輝いている。一見地味な色だからこそ,細部が際立つ。神が宿るのは偶然ではなく,緻密な計算の上のみだ。だからこそ私はこの色を選んだ。

 ……なんて持ち主の思いが、部屋の片隅にプラモデルの箱絵を立てかけて眺めていると沸き立ってくる。
 もし新車時にハンドメイドの117Coupeのオーナーになる機会に恵まれていたら,僕はどんな色を選んでいただろうか。篠山紀信氏の視点で切り取られたカタログを眺めながら悩むという贅沢なひと時を過ごしただろう。今は叶わないけれど,箱の中の無垢なボディーを眺めていると,そんなオーナーの気持ちを疑似体験できる。


 ランナーを見ていると,クーラーのスイッチを見つけた。もしかするとオーナーは妻にエアコンディショナーだけは付けて,とヂーゼル機器のクーラーをオプションで加えたのかもしれない。そんなストーリーも浮かんでくる。プラモデルは僕の憧憬を形に出来る触媒のようでもあり,なおかつ想像を膨らませる酵母のような存在だ。

空韻

フィルムとデジタルを往還する日々を通して,写真表現を模索しています。生活の中でプラモデルを床の間に飾る生け花のような彩りや四季を感じる存在として据えるのが目標。

息抜きの芝生づくりは青空を部屋に作り出してくれた/タミヤ 情景テクスチャーペイント

 スポーツをやったことがあると「ウォーミングアップ」だとか「クールダウン」という工程の重要性がわかったりする。絵を描くときもいきなりキャンバスや画用紙に向かうのではなく、丸を描いたり直線を描いたりすることで手を慣らしていくことを大事だという人がいる。いきなり始めたりいきなり休んだりするのではなく、何かワンクッション挟むといいというわけだ。

 最近、そういう意味で非常に有効だなと感じているのが、木の板だとか浅いトレイをひっくり返したものにタミヤの情景テクスチャーペイントを塗るという作業で、これはなんというか、カーモデルを作ったりフィギュアを塗ったりと、とにかく精密な作業をした後にやると気分がいい。それに、そういうことをして失敗してムキになっているときにも適している。あとは「何か作りたいけど、そこまでパワーがない」というときにも最適。

 ウォーミングアップにやってもいいし、クールダウンにやってもいい。目を凝らして指先に神経を集中させていたさっきまでの自分が腕利きの時計技師のようなものだとしたら、情景テクスチャーペイントを塗っている時間はまるで素手で泥遊びをするような反対の行為を行うので頭の中がスッキリする。しかもこの作業、失敗することはほとんどないのでそれも良い。お気に入りの作業は土を塗って、草を塗るのツーステップで、たくさんの芝生が生い茂る情景が出来上がると心が晴れやかになる。

 作った芝生の上にタミヤ 1/24 スポーツカーシリーズ アルピーヌ ルノー A110 モンテカルロ 1971 を置いて気づいたことがある。これだけ青々とした芝生の上に実際に存在するラリーカーは青空の下できっとピカピカに綺麗。何かの催しで展示されているときはきっとこんな風。すっかりしまわれたカーモデルをもう一度部屋のどこかに置くとしたら、それは芝生の上がいい。

 筆でじっくり塗ってもいいけど、テンポよくいくのであればバターナイフやティースプーンでガシガシ塗っていくとナイスです。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。あなたが落としたのはアメリカンアニキ? それともソ連アニキ?

▲小さな戦車に濃密ディテール盛り盛り! パーツもぴちぴち合うキングオブ花金戦車プラモの登場です!!

週末が楽しくなる模型をフミテシの独断と偏見でご紹介する「花金プラモ」。今週は買ってきたその日に組み上がって、超濃密なディテールを楽しめる軽戦車「タミヤ 1/35 アメリカ軽戦車 M3スチュアート 後期型」をご紹介します。こちら今ではあまり考えることができない米ソの友好も感じることができるプラモなんですよ!

▲アメリカとソ連が同居しているデカール! U.S.A.の上にキリル文字! 決して嫌がらせじゃないぞ!!!

完成すると12.9cmというコンパクトサイズの中に、リベット構造車体特有の情報量を味わえるのが楽しいM3スチュアート。砲塔や車体のあちこちにある溶接痕は美しく、これをみると「これこれ!こういうディテールを味わえるのが戦車模型の楽しさよ!」と僕は1人納得してしまいます。この戦車、ご覧の通り小さいのでパワーはありませんが、軽快なので第二次世界大戦の中盤以降は偵察車両などとして活躍しました。またもう一つこのキットの売りとして、「レンドリース車両」を存分に楽しめるというのがあります。これはその名の通り、主にアメリカ軍が各連合国軍に兵器を貸し出すというもの。ヨーロッパにおけるドイツ軍の進行によりとにかく兵器の数を揃えたかったイギリスやソビエトはこれによって兵器を補充します。このM3スチュアートもソ連に多数送られたため、このキットのようにアメリカとソ連が共存している面白い仕様が生まれたのです。M4シャーマンなんかもそんなプラモが出ているのでチェックしてみてね。

▲商品名はアメリカ戦車なのに塗装パターンはアメリカ1種のソ連が2種なのです
▲リベット構造の車体の魂である「リベット」をより美しく表現するために、車体は各パネルで細かく分割。パーツ数が多く見えますが、バチピタなのであっという間に組み上がります。履帯もベルト式なのでぐるんと巻くだけでOKです
▲ビシビシと目に飛び込んでくるこのリベットの美しさ! パーツを細分化しているだけあります

体は1つ!頭脳は2つ!! このキット、アメリカ人とソ連人を頭部の選択で決定することができます。体は一緒なので、頭部を接着せずにシンチュウ線などで接続できるようにしておけば、いつでも国籍チェンジできます。

▲アメリカ人とソ連人が仲良く隣同士で共存している……まるでエルベの誓いのようであります
▲3Dスキャン技術がすでに導入されているアニキたちなので、造形はとっても緻密です。どっちもかっこいいから悩んじゃいますね〜。2個買いましょう

M3スチュアートはとてもコンパクトな車両で、派手さはないのですが、こういった軽戦車のプラモこそ実はMMの真髄である「人と戦車の一体感」をより強く感じることができます。特にこのキットは車両の濃密なディテールと、ハイディテールなフィギュアが合体するので砲塔周りはまさにエスプレッソのような濃度です。アメリカンな戦車だけど決して薄くない、濃厚な味わいに加えソビエトの景色も見ることができるこの「M3スチュアート」。全プラモファンにおすすめしたい戦車模型であります!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

プラモのディテールアップパーツは「全部使うゲーム」じゃないんだぜ/身の丈モデリングのススメ。

 カーモデルだとほとんど必須科目であるブレーキディスクの塗り分け。エッチングパーツをポンと貼ればこのとおり、銀色にキラリと光ってくれます。平らなところにちょっと瞬間接着剤を塗るだけですから、正直塗り分けをするより手早く、簡単に、スパッと金属色になる。これをディテールアップと言うかどうかは微妙ですけど、メーカー純正のディテールアップパーツセットっていうのは気持ちよくさせてくれますね。

 ダッシュボードに並ぶメーターたち。ホントは一個ずつメーターのデカールを貼り込んでいかなきゃいけないんですが、デカールの大きさと丸モールドの大きさがドンピシャでなかったりすると、「まあこのままでいいや」なんてスキップしちゃうこともあります。相当覗き込まないと見えないですから、ここは「自分がやりたい日にやる、やりたくない日はやらない」みたいな判断をしてもオッケー。だけど、メーター周りのリングのギラリは見せたい。そのためにキラキラのジャストサイズのシールもディテールアップパーツセットには入っていました。貼っちゃおう〜。(それにしても木目デカールがいいね)

 マフラーは、どっちかな〜。金属削り出しのシャープなパーツも用意されていました。これは重たくてひんやりしているから、使いたくなっちゃうね。ただプラパーツに穴あけをして位置をしっかり決めて貼れるかどうか、まだちょっと不安。幸い最後の工程なので、テンション高ければ貼る、そうじゃなければキット付属のメッキパーツをONしておしまいでもいいか〜。

 プラモ作るのはわりとゲームに似ています。ゲームでよく言う「トロコン」っていうのがありますが、トロフィーを全部集めるまでやり込むのもいいし、操作の爽快感を味わうのも楽しい。強くてニューゲームも嬉しいし、最速クリアだけを狙うのも面白い。そういうわけで、ディテールアップパーツはちょっとお値段が張るからどうしても全部使いたくなってしまうかもしれないんだけど、じつは気に入ったところだけ、楽しそうなところだけ、ラクするために使うのもいいもんですね。と思ったんです。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

タミヤウェザリングスティックの優等生「ライトアース」!! 塗って擦れば、汚しヨシ!!

▲塗って~~~
▲ちょっと水で湿らせた綿棒で擦れば……
▲汚しヨシ!!! 最高!!!

 塗って擦るだけでプラモが歴戦の雰囲気になる「タミヤ ウェザリングスティック」。以前スノーをご紹介しましたが、今回はライトアースをご紹介します。ライトアースはこのシリーズの中でも一番汎用性が高い色だと思います。泥汚れまでいかない土の汚れや、埃汚れを表現するのにぴったりです。

▲どの戦車模型ともフォーリンラブです
▲キャップを外して捻れば中から固形塗料が出てきます。これを模型にぬりぬりするだけです

 ウェザリングスティックの塗料は、水で薄めることもできるので、ペン先を削って水に溶かせば「汚れ液」にもなるので、様々な表現が可能です。まずは記事のトップの写真のように、塗料を塗って湿った綿棒で擦ってください。それだけでこの塗料がいかに凄くて楽しいか実感してもらえると思います。乾いたままの状態の綿棒で擦っても面白いですよ

▲乾いた綿棒で塗料をこすり落とすと、こんな感じでハード目に汚れが残ります。汚しの加減が水だけで調整できます

 ウェザリングの楽しさを気軽に味わえるウェザリングスティックの中でも一番のユーティリティープレイヤーであるライトアース。本当に色味が絶妙にかっこいいので、超おススメですよ!

フミテシ/nippper.com 副編集長

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己の氷を砕く!!『宇宙よりも遠い場所』のイメージを作ることで味わった地面を作る楽しさ。

 『宇宙よりも遠い場所』(以下「よりもい」)というアニメは大変良いアニメだったので、感銘を受けたおれは劇中に登場した南極観測船ペンギン饅頭号(のモデルになった砕氷艦・二代目しらせ)のプラモデルを作ったのだった。

「プラスチックはケースに入れて飾ると数段格好よく見える」というし、おれはできあがったプラスチックをアクリルのケースに収容して机に飾っていた。黒いプラスチックの台座の上にちんまりと置かれたそれを眺めていると、心の中のおれがささやいてくるようになった、「お前のプラモデルって、寂しくないか?」。たしかに……。

▲そうなりゃ船にとっての地面。海だ! 海を作る
▲そして定着氷だ! 本作にはこれが欠かせない!! この定着氷をイメージしたアタリを作る

 そこでまず海を形作り、定着氷を割り雪を盛り付けると、このようになった。 イメージはよりもい9話のラミング(砕氷船が自重や体当たりで氷を壊すこと)シーン。正直なところ、缶スプレーを吹いたら謎のシミができてしまったし粉雪ペーストは全然滑らかに盛り付けられないし、最高のできあがりになったとはいいがたい。ただ、失敗するのが怖くて、ほったらかしにしておくよりもずっとよくなった。

▲試行錯誤の連続。自分の脳内のイメージを形にしていく難しさと楽しさ!
▲爆誕!!

 こうして机の隅によりよい「よりもい空間」が発生したのです。これからは「プラスチックは地面があると数段よく見える」という気持ちでやっていきたいと思います!!!!

びびびんご

1993年生まれ。求職中。アニメとマンガとゲームがすき。

アメリカナンバーワンモータースポーツを彩る「僕たちの身近なアメリカンアイコン」と味わう車模型の景色

▲バドワイザーとKFC!! アメリカンアイコンを車体に貼るだけで気分は爆上がり!!

 僕が“自動車レース”に出会ったのは、小学生の頃のNASCARレースのTV中継。赤や青に彩られた車がサーキットを疾走する姿に魅入られたのが最初でした。

 数年前からサルビノスJRモデルという模型メーカーが、1970-80年代の有名ドライバーやチームの歴代車をチョイスしたNASCARのプラモデルが次々と発売され、当時TVで見たレース車がプラモになっているという驚きと懐かしさで、つい買ってしまうわけです。

▲「0630」の右側についたパーツが車載カメラ。車載カメラから撮影された車内映像も凄かった

 プラモは80年代に作られた製品に部品を追加したり、デカールを発色の良いシルクスクリーン印刷のデカールにすることで、鮮やかで派手なレース車の魅力を底上げ。さらにキットにはTV中継用のカメラも入っています。このパーツを見ることで、「このカメラで撮られた車内映像」や迫力あるレースにワクワクしながら、TVに噛り付いて見ていた当時の思い出でが蘇ります。

▲80年代に発売された製品がベース。組み立て時における「パーツとの対話」も多いプラモです

 とはいえ元は80年代のプラモなので、最近のプラモとは違い「ここをすり合わせ」「あそこを瞬間接着剤で押さえ」とそれなりの手ごたえはあります。でも、落ち着いて接着剤や道具の選択をすればしっかりと形になってくれます。

▲デカールの発色ヨシ!! 「水性プレミアムトップコート光沢」なら、このデカールにダメージを与えることなく美しい光沢を追加できます!!

 NASCARといえば屋根のゼッケンNo.とボンネットいっぱいに貼られたスポンサーロゴが特徴です。キットのデカールは発色が鮮やかで、糊の塩梅が良くバシッと貼れて気持ちいいし、小さなロゴも適度にまとまっているのでサクサクッと全部貼れちゃうのがヨシ。さらに、GSIクレオスの缶スプレー「プレミアムトップコート」の光沢を使っているのですが、これがとても具合が良いです。缶スプレーをブワッと吹いてると白いモヤのようなものが表れて「ヤベッ吹きすぎた」って慌てるんですが、それが「最適量の合図」で、それをそのまま乾燥させるとツヤツヤの仕上がりになるという、ラッカー系の缶スプレーではありえないことが起こるので、ぜひ試して欲しいです。驚きますよ。

▲プラモの完成を車にも貼られたアメリカンアイコンと共に味わう幸せな瞬間!!

 NASCARは車体にバーンと商品ロゴが貼ってあるのが売りだし、そうやって商品のロゴを横目に見ながら作っていたので、完成したらやっぱりプラモと商品を並べて撮りたくなります! 実際に並べてみると……それはもう、テンション爆上がりでビールの味が50倍増しに旨くなる!! 楽しかった模型製作を噛みしめて乾杯!!

角材

軍艦や軍車両・装備の俺得な細部写真を撮ったり、ユルユルと模型を作ったりする人。 地方在住なので流行や情報に取り残されてますが、辺境から眺める景色も悪くないかなと。

ブランチの後は、デザート!! ドイツ機プラモに極上スイーツを添えてみよう!!

▲この赤丸って外部電源口だったのか!!! プラモを作って知ることって多いですね

 1/48スケールのドイツ機が完成したら、最高のデザートがあなたを待っています! それが今回ご紹介する「ドイツ陸軍 航空機用電源車 ケッテンクラート牽引セット」です。タミヤの戦車模型「1/48 ミリタリーミニチュアシリーズ」(以下MM)にラインナップされている戦車模型と飛行機模型をつなぐナイスなプラモです。

▲まさにアンビリカルケーブルなプラモだぜ!!

 ケッテンクラートはnippperでは何度も登場する超人気車輛。こちらは以下のリンクで読んでみてね。このキットの主役は「電源車」です。ドイツ軍は航空機のエンジン始動時や搭載機器&武装の動作テスト時には専用の外部電源車を用意して、機内バッテリーの消耗を防ぎました。それに活躍したのがこの電源車なんです。なんとも地味ですが超大事な役割を担っています。また数多くのドイツ機と並べられるので、このプラモを一つ組んでおけば様々なドイツ機でお手軽に情景が楽しめてしまいます! まさにメインの後のデザートです。デザートが甘くておいしいと食後も幸せですよね。

▲ケッテンクラートと、電源車のランナーぱっきり分かれています
▲1/48MMのケッテンクラートはマジで神キット! 足回りはほとんど完成していて、30分もあれば全部組み立てられます! ぜひとも楽しんでほしいプラモです
▲電源車の発電機は5パーツで構成され、ディテールも細かいです
▲1時間もすれば電源車とケッテンクラートが完成! 
▲情景爆誕!! 戦車模型だけでなく、飛行機模型も人と合わせると最高に楽しいぜ!

 シンプルなパーツ構成でサクッと飛行機模型で情景の世界を楽しむことができる「ドイツ陸軍航空機用電源車 ケッテンクラート牽引セット」。車輛のほかに、ドラム缶などのアクセサリーがあるのも見逃せません。これだけお手軽なら、飛行機模型を完成させた後でも気持ちよく作ってベースにチョンとおけると思います。ぜひあなたが作ったドイツ機にも電源供給してあげてね! それでは~~!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

見えなくなっても作るんです/ICMが魂込めたトラックのプラモデル。

▲ICMはパッケージがドラマチックだよね。

 戦争ってのはあらゆる物資が必要になります。届けるのは銃弾や砲弾だけではなく、兵隊たちの衣食住をフォローする為の物資も重要。いわゆる「兵站」というやつです。各国はそういった物資を様々な手段で運んでいたわけですな。もちろん長距離では列車を使っていましたが、レールがあるところじゃないと運べない。……では飛行機とかを使えばいいじゃないかとなるけど、前線飛行場を作るなりしたところで運べる絶対量は限られます。
 しかしトラックならば(燃料が続く限り&壊れない限り)どこまでも運べる利点があるわけですよ!タイヤで走れるところがあればどこまでも行きます。それこそ列車や飛行機から荷物を積み替えて最前線へ運ぶのはトラックの仕事。戦争を支えていたのはこれらのトラックであるといっても過言ではないのです。
 さて、今回はそんな軍用トラックのプラモデル。ウクライナの模型メーカーICMはソフトスキン(トラックや乗用車などの非装甲軍用車輛の総称)がとても得意なメーカーでして、今回紹介する「Model W.O.T.8」もそんなイギリス軍が使っていた中型トラックです。

 キットの名前的にはボカしているけど、イギリスの自動車メーカーであるフォードソン社が製造した「フォードソン W.O.T.8」をモデライズ。同じデザインでホイールベースが長いW.O.T.6もキット化されており、ロシアへレンドリース(武器貸与)されてロシア製ロケットランチャーを背負ったカチューシャとしてもキット化されてます(っていうか、コレを一番出したかったんじゃなかろうかと邪推……)。

▲ホイールベースがぎゅっと短くてスタイルがヒジョーに好みです。このトラック。

 キットの発売順としては、最初にホイールベースの長いW.O.T.6が発売されて「なんかキャビンが近未来的でかっちょいいよね!」と思ってたんですよねー。このトラックの事は全然知らなかったので調べてみたらホイールベースの短いタイプもあると知り、「ICMだもん、ひょっとしたらやってくれるんじゃないの?」と待ってたら出ましたW.O.T.8。デザインは今の商用トラックに近いけど、車高の高さとかタイヤのサイズ的な迫力が非常に格好よろしい。ロシアでオフロード仕様に改造した軽トラみたいな迫力だな(例えが謎)。
 組み上がるととても満足出来る格好よさなんですが……実はICMというメーカーはなかなかどうしてコダワリの強い会社でして。シャシーなんかはホンモノと同じような構造でパーツ分割してるもんだから組み立てにはフレームが歪んだりしないように注意が必要なのです。さらにエンジンなんかもちゃんと再現されてるんですけどね…

▲説明書を見てるだけでもわかる。完成したらエンジン見えなくなる。

 エンジンはキャビンの中にすっぽり納まる構造になっており、運転席と助手席に挟まれる形になっておる。他のソフトスキンなんかだとボンネットが空いたりキャビンを外したりしてエンジンを眺められる構造になってたりするキットもあるんですが、このキットは完全に見えなくなっちゃうんだよ……。選択式でエンジンカバーが外せたりとかそういう事もできないんだよ……。

▲否、もちろん見える。ひっくり返せばな!

 見えなくなるからエンジン作らなくてもいいか、というとそうもいかず。裏から見ると見えるんだよコレが……。もちろんエンジンから伸びるドライブシャフトとかのことを考えたらエンジンがないと困るんだけど、まあそうはいっても全く見えなくなるんだったらもう少し省略してもいいんじゃない?という気持ちに苛まれつつパーツでフタをしちゃうわけです。修行だなこれは……!

 まあ、そうはいっても実車の構造を知りながら組み立てたりする事が出来ると考えれば面白いキットですし、なにより外見が格好よろしい(繰り返し)。そのまま地球連邦軍のマークとか貼っても違和感ないデザインが最高ですわよ!

内藤あんも

1977年生まれ。戦車道とスピットファイア道を行き来する模型戦士。生まれ育ちは美濃の国、今はナニワ帝国の片隅でプラモデルを作る日々でございます。

プラモデルになるのを拒み続ける飛行機、最愛のバッカニアを丸裸で眺め倒す!

 バッカニアという飛行機があって、これが私のいちばん好きな飛行機である。まるまる太ったパツンパツンのボディ、超低空を飛んでソビエトの水上戦力に核を叩き込むために作られたというその出自、そしてなにより、この飛行機のフォルムはプラモデルにされることを徹底的に拒んでいるという点……。なにもかもが、かっこよすぎる。

 上下に割っても左右に割ってもそのアウトラインをきれいに再現するのがひたすら難しく、工作にしても塗装にしても、これで絶対うまくいく!というイメージが持てない。もちろん、メーカーもこの飛行機に何度か挑み、決して勝利したことはない、と断言してしまおう。

▲どれくらい好きかと言うと、新キットが発売されたときにイギリスからカートンで取り寄せたくらい好き。

 そんなバッカニア、日本でじっくりと読めるまとまった資料は『世界の傑作機』くらいのもんだったのですが、このたびモデルアートから発売された写真集はまさに青天の霹靂。いろんな塗装、いろんなマーキングはもちろん、中身も含めてじっくり眺められてしまうというのだから、モデラーにとっては「これで作れる!」と思っちゃう大事件なんですよ。そう簡単に作れないんですけどね。

 掲載された写真はフィルムとデジタルが入り乱れていて、かなり古いものも多いため色あせていたり、そもそも天候が写真向きじゃないものも多くてここから塗色を読み取るのはかなり難しい。でもいいいんですよ。だってこんなにカッコいい飛行機の写真が延々眺められるのですから。めくってもめくっても、バッカニア。分け入っても分け入っても、バッカニア。ああ素敵。

 そんなところ覗いてどうするのよっ!と思うようなディテール写真もバリバリ。エアフィックスのプラモデルで初めて知った「えー、そこってそうなってるんだ!」というのを実機の写真で「そっくりじゃん!」と再確認する倒錯した喜びもありますが、まあとにかくなんというか、この写真集があればバッカニアのプラモを作るモチベーションがもりもり湧いてくるわけですよ。そう簡単に作れないんですけどね。

 どの飛行機にも似ていない、ブラックバーン・バッカニア。この飛行機が好きで好きで仕方ないあなたはこの写真集を買うしかないし、おそらくまた長い間「このバッカニアならカンペキに組めるぜ!」なんて新製品は発売されないことでしょう。ちょっと手間のかかる、でも力強くて美しい人。そんな人に惚れてしまった僕らのための、極上プレゼント。しかと目に焼き付けて、こんどこそビシッと作ってやるからな!という気持ちになりましたよ。みなさんも、ぜひ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

トマトの山からプラモデル撮影用の布を選ぶ

 プラモデル撮影用の背景に使う布は背景紙や撮影ブースと同じで大きければ大きいほど良い。布はいろいろな大きさのものがあるけど、バンダナやハンカチ、手ぬぐいだと少し足りない。じゃあどうすれば良いのかというと、ロールで売っている生地を買うのが良いと思う。
 日暮里には「繊維街」と呼ばれる通りがあり、その中にトマトというひときわ有名な生地問屋がある。いくつかの店舗に分かれているが、とりあえずいくならば本館。その手前にある店舗にはアフリカンファブリックの明らかに元気すぎる柄の生地もあるのでなかなか見逃せないけども。
 5フロアで構成される店内はロール状になった生地がたくさんあって、フロアごとにざっくりとカテゴリー分けされている。おすすめは5Fのアメリカンファブリックのコーナー。雰囲気のいい柄物の生地がたくさん売っていて、どれが撮影の背景に使えるのかを考えるのが楽しい。そして何より、種類の多さ。この日は「レモンだとかいちごだとかの果物をペン画で書いて水彩絵の具で塗ったような柄の生地が欲しい」と思っていたけど、あるから怖い。しかも頭の中でイメージしていたものよりも良いものだから笑ってしまう。

 たいていの生地は生地幅が1mくらいのもので、トマトでは50cmから10cm単位での販売をしている。なので1m買うと1m四方のテーブルクロスのような大きさの生地が手に入ることになる。買い方は生地が丸まった筒ごと持って「カットはこちら」と表示されている大きなテーブルの前に並んで、順番が来たらスタッフが「長さは?」と聞いてくれるので希望の長さをいうだけ。複数買うときは専用のカートに生地のロールを立てて持っていくと良い。私は大抵1.5mもらうようにしている。部屋のテーブルクロスにも使える長さがそれだから。

 特殊なパターンではパネル生地と呼ばれるものがあって、大きな図柄がいくつか並んでいるもの。これは10cm単位ではなくパネル単位で買うことになるので、パネル数をいうことになる。フルーツ柄の布はそれに該当したので2パネルでカットしてもらうことにした。生地選びのコツは、あんまり色づかいが激しいものを買わないことと、麻などの風合い重視のものはちょっと高くてもペラペラすぎるものは買わずに厚みのあるものを買うと写真に撮ったときにとても良い雰囲気になるのでおすすめ。思いっきりドレープを効かせて雰囲気のいい写真を撮るのもいいですね。

■日暮里トマト本館
所在地: 〒116-0014 東京都荒川区東日暮里6丁目44-6
営業時間: 月~土 11時00分~17時30分
定休日:日曜日

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

神が提示する「正解の色と手順」でプラモの汚し塗装が最高に楽しくなる/GSIクレオス 八雲カラー登場!

▲ウェザリングの迷える子羊を救う「神からの塗料セット」が登場だ!!!

世はウェザリング塗料戦国時代。右を向けばウェザリングカラー、左を向けばエナメル系ウェザリング塗料。一体はどれを使えばいいの!? ってなるほど豊かになりました。豊かになることは良いことなのですが、それによって「触らんとこ」ってなること、あると思います。そんなあなたに「パッケージ内の4色を使えばいい感じになるぞ〜」っと、世界を代表するウェザリングの神モデラー「ミゲル・ヒメネス」がプロデュースしたウェザリングカラーセットが登場しました!!!

▲左から、ダークウォッシュはスミ入れやウォッシング用。ダークストリークグレイムは雨垂れ表現、ドライマッドは泥表現用、ヨーロッパダストは埃表現用になります

それが、GSIクレオスから新しく発売されたウェザリング用塗料セットが八雲カラーセットです。金のラベルに八雲の文字。やたらと重厚なパッケージとビジュアルからもビンビンに攻めてきます。

これはスペインのスターモデラー、ミゲル・ヒメネスと日本の塗料メーカー、GSIクレオスがタッグを組んで開発をしたものです。ミゲル・ヒメネスは世界を代表するウェザリングの達人。アモというメーカーをプロデュースし、彼の技を翻訳したような塗料やツールをいくつも発売しています。私も大好きな「筆ぶしゅ」は楽しいテクニックですね……。

▲液状の塗料だけでなく、粉末とペースト塗料もセット。このような固形塗料って何を選んで良いか迷いますよね〜

今回彼が研究したウェザリングの色や技を基に、人気のWWIIドイツ軍車輛の活動地域をベースとした4つのセットが発売されました。セットに入ったカラーとパステル&ペーストを組み合わせるだけで説得力あるウェザリングができるというシステム化された塗料セットです。

▲八雲カラーセットの希釈は、Mr.ウェザリングカラー専用うすめ液を使用します


また彼のプロデュースするアモの塗料はエナメル系塗料ですが、こちらの八雲セットは基本的にウェザリングカラーの油彩系に合わせて作られています。ですので、ウェザリングカラーを愛用している人はマッハで使用可能です。ウェザリングカラーと併用もできるわけですね。

▲いきなり最高のブラウンが味わえる!!! 濃度は瓶生の状態でシャバシャバ

ということでミグにウェザリングを(勝手に)習った(つもりの)私にとってはたまらないアイテム。早速セットAの「WWII ドイツ軍 西部戦線用」をトライしてみましょう。まずは基本のウォッシュ。これはスミ入れからぼかしてちょっとした色つけまで、広く使える色ですね。いい感じのグレー寄りのブラウンです。

▲西部戦線のドイツ車両の雨垂れってこんな茶色なんだ。スペイン人のミグを信用しよう!

そしてこちらがダークストリークグレイムです。これはストリークと言われる、強い雨だれのような表現をするための塗料です。ダークウォッシュはシャバシャバですが、こちらはトロみがありますね。

▲まずは雨垂れをイメージして、上から下に細い線を塗っていきます

使い方はまず雨だれを表現したい面にさっとタテに塗料を乗せていきます。濃い目と薄めの2パターンを用意しました。このときすでに雨だれの方向は決めて描きましょう。

▲平筆で先程の線を伸ばします!

数分乾燥させたのち、専用うすめ液をほんのり湿る程度に含ませた平筆で表面を撫でます。すると引いた塗料の端がボケて、強い雨だれ表現になります。塗料の伸びも良いですよ〜

▲雨垂れをイメージして、上から下に筆を動かすだけ! 雨垂れはウェザリングでもめちゃくちゃ面白い塗装なのでバンバン楽しんで欲しいです


こんな感じでいっぱい雨だれを描いて、筆で引いていきましょう。筆もメーカーによっては、クシ状に隙間のあるストリークに適した筆も販売しているんので、よりやりやすくなっています。

▲泥はペーストを塗りつけるだけで表現できる! 色味もだいぶ落ち着いたもの。これがヨーロッパの土……僕らが想像する土よりなんだか明るいですね

3つ目のビンはドライマッドです。乾燥した泥をイメージしたペーストで、粘り気も強いです。筆先でつついたり、筆でなすりつけたりするといろいろ表情がつきます。

▲足回り。車体の奥にペーストを塗り込むと泥が溜まったようになって良い雰囲気になります


こんな感じで車体の下で土が固まったようなイメージで塗りつけました。塗りつけた直後はツヤのある表面ですが、乾燥するとツヤが消えます。筆に残ったペーストはうすめ液で溶かして落とすことができます。

▲ピグメントはお手軽に埃汚れを施せるナイスな粉末です。

最後にヨーロッパダストです。これはピグメントで、粉をすりつけることで表面に溜まった土ホコリなどを表現できます。軽くはたくだけでディテールに粉が溜まり、強くこすれば表面に粉の色がつきます。

▲ドライマッドの上にヨーロッパダストを振りかけるのじゃ!!!!

これがドライマッドと相性が最高で、左側はドライマッドの上からヨーロッパダストをはたいた状態で、右のドライマッドのみよりぐっと汚れた感じがうまく演出されます。


またドライマッドの粉末はうすめ液で溶かすことができます。濡れた筆で粉を溶いて、表面に塗布してみましょう。

▲マフラーにはちょっと塗りすぎたので、この後拭き取りました


乾燥すると表面を覆うように粉がつきます。そしていかにも付着した泥が乾燥して白っぽくなった感じが、塗料が乾燥することでじわじわと出てくるのですごく楽しいです。つきすぎたかな、と思ったら濡れたティッシュや綿棒などでこすればすぐとれます。

▲八雲カラー使用前のクリーンな状態
▲八雲カラーの4色を塗って、チッピングを施したもの


八雲セットはミグの研究したカラーで、お互いの効果が良く発揮できるように調整された統合的なウェザリング用塗料です。ウェザリングは楽しすぎていつもやりすぎてしまうのですが、これは本当に配合がよく手がとまらなくなります。今回は西部戦線の汚しをしてみましたが、ロボットや航空機、果てはラリーカーなど、どんなジャンルの模型でも汚せると思いますので、みなさんもぜひ八雲カラーでウェザリングを楽しんでください。


けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

巨大なプラモ、「機首コレ」を縦に飾りたい!汎用性抜群、アルミ棒orパイプ切断のススメ。

▲小さい模型も最高なのだが、デカい模型も最高なのだ。

 その巨大さによって脳にドーパミン雪崩れてくプラモ、「PLAMAX MF-51 minimum factory 機首コレクション VF-25F」(近日発売)です。パーツが大きいお陰でストレス無くあっという間に組み立てが終わります。その勢いで合わせ目も消さず、シールをペタペターっと貼って完成させただけなんですが、あらまぁかっこいいこと!

▲すごく薄くて丈夫な、謎ビニールシールの効果で段差もあまり気にならない(当社比)。

 そして驚いたのが、コーションマーク(注意書き)の文字が大きくてしっかり読めることです。そのシールを貼った各部位の凹凸にちゃんと意味がもたらされ、ディティールがただの見栄では無く、リアリティを獲得しているのです。エライ。
 さてそんな機首コレですが、ある事をふと思いつきました。「縦」に飾ってみたら、せっかく機首の左右に貼ったシールをどちらもいっぺんに見れて楽しいのではないかと。しかも省スペース化になるのではないかと。最高なのではないかと。やりましょう。

▲スチール棒の台座支柱が、ランディングギアの油圧シリンダーも兼ねているナイスアイデア賞。

 台座から機首を取り外します。すると、キャノピーの後ろがフラットなので超安定して自立します。しかし、ランディングギアの油圧シリンダー部分が隙間になってしまいますね。気になる。どうしましょう。作りましょう。

▲ローラーブレード式のパイプカッターを用意します。

 こちらは細めの鉄管や銅管を切断する時に使用する、設備屋さん電気屋さんにはお馴染みの工具です。パイプは、ペンチやサンダーなどで切断するとつぶれて歪んだり、バリが多く出てしまいますが、これなら切断面を歪めることなく比較的綺麗に切断できます。3mm~32mm径にまで対応しています。

 そして今回はシリンダーの代替品として、6mmのアルミ棒を切断します。ホームセンターでも数百円で売ってます。厳密にいえば、本来のパイプカッターの用途外なのですが、アルミのような柔らかい素材で6mm程度の細さであれば全然イケますのでやってみましょう。

▲10cmで切断する部分に墨出しします。
▲まず、パイプカッターにアルミ棒を挟み込んだら、ネジを回してローラーブレードの部分をアルミ棒に軽く押し当てます。

 そして、パイプカッター本体をアルミ棒の周りを1~2回転させる→ローラーブレードを締め付ける→パイプカッターを回転させる→締め付け……を繰り返します。ペンチかプライヤーでアルミ棒を保持するとよいです。

▲工程を5~10回繰り返しているうちに、ポロっと切断できます。切断面はこんな感じ。
▲スッっと挿入、適当な瞬間接着剤で接着すれば完成!イケてますよ!
▲機首コレ自立形態完成です!縦に置くことで左右のシールがどちらも見える!絶景!
▲台座のディスプレイで見えにくかったランディングギア周りが御開帳!仏壇!

 金属棒や金属パイプは模型の支持に使うことも出来るし、ディティールに使用することも出来る強い味方なんです。パイプカッターさえあれば簡単に切断できるので、ディスプレイのアイデアをカタチにする幅がグッと広がるのではないでしょうか。

▲ゴーっと吹かして急上昇。デスクの置物として最適。

 大きなプラモ「機首コレ」は、私のようなモデラーのワガママを受け止めてくれる器の大きい模型でした。組んだモデラーの数だけ面白いアイデアが浮かんでくるのではないでしょうか。電飾も出来そうだし、フィギュアと組み合わせたジオラマも面白そうね……。デスクに置いて、眺めては色々と妄想するだけで、私の気分も急上昇 oh ohなのです!

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

「ボークスに潜む魔法のスティック」で瞬間接着剤を自在に操れば、プラモ作りは超高速で進みます!

 「瞬着ぬりぬり君だと?嘘だろ!なんだその安直な名前は!」と叫びながら買いました。300円(税別)。サイゼリヤのミラノ風ドリアとほぼ同価格のこのアイテムが、ミラノ風ドリアと殴り合っても勝てるくらいのコストパフォーマンスを持っていることなど知らずに……。

瞬着ぬりぬり君(ボークス公式 ホビー天国オンラインストア)

 素材は「プラ」と書いてあるが、調べてみるとポリエチレン製。先がマイナスドライバーみたいな形状のものと、爪楊枝のように尖った形状のものが2本入りです。これで瞬着を塗るとなんかいいことがあるんだろうか。っていうか瞬着を塗るのに特殊工具いる?爪楊枝とか伸ばしランナーとかででよくない?そう思っているでしょ!オレも思ってたよ!

▲塗りやすううううううう!

 先端のコシがマジで絶妙なことになっており、例えばペーパーパレットとかプラモのパーツが入ってたビニール袋とかに瞬間接着剤をダラッと出し、それを掬ってからパーツにヌリヌリしていくアクションが超スムーズ。そしてポリエチレンなので瞬間接着剤が全然硬化せず、爪楊枝や伸ばしランナーのように「瞬着塗ってると思ったら爪楊枝(もしくは伸ばしランナー)がパーツにくっついてしまった!」みたいなことも起きません。なにこれすごい。

▲流し込みにも無敵なのかよ!

 エッチングパーツをちょんと置いてからパーツ同士の間に瞬間接着剤を流し込みたいときは先端が尖ったタイプを使用。これまた絶妙なコシと材質から来るナゾのジェントルな手触りによって瞬間接着剤が先端にしっかりと絡み、なおかつパーツに触れると手離れ良く流れ込んでいきます。偉すぎるぞ……。

 もちろん硬化前でも硬化後でもティッシュでしごけば先端に付着した瞬間接着剤が即オフできます。耐久性もバッチリですな……。ということで、瞬間接着剤をきれいに塗りたい/流し込みたいな〜と思ったときは、「瞬着ぬりぬり君」を超絶オススメします。名前の通り、ぬりぬりでプラモ作りが一気に快適&高速になりまっせ!そんじゃまた。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

真珠湾攻撃80周年に手に取る48年前のプラモの煌めき。「ハセガワ 1/700 航空母艦加賀」

▲48年前のプラモとは思えない美しさ

飛行甲板には白線がモールドで表現され、パーツの状態で既に臨戦体制となっている……。この表現方法を「古いキットの象徴」として見ていた自分を、この48歳の加賀がぶん殴ってくれました。はちゃめちゃにかっこいいのです。素組みで思う存分空母の雰囲気を吸い込みました。

▲3分でこの状態を楽しめます!

実艦の白線は塗装されているものです。ですので、昨今の艦船模型は白線はデカールか塗装で表現するようになっています。しかし各船のシルエットを楽しみ、ズラ〜っと並べることができる「1/700スケール ウォーターラインシリーズ」を1/700スケールの距離で見れば、このモールドは明らかに線です。マクロな世界の艦船模型だけを楽しみすぎていた過去の自分のままだったら、まず手にすることはなかったであろうプラモです。そしてこのハセガワの加賀は白線だけでなく、パーツ構成からも多くの人にこの巨大な空母を楽しんで欲しいというこだわりが詰まっています。

▲本体パーツは主に4パーツ。だから3分で空母の全容を把握できる!

飛行甲板、船体、船底がたった4パーツ。左右貼り合わせなどもないので、積み木のように重ねるだけ。しかもその精度がバチピタです。昨今のキットより船体側面のディテールがシンプルなのですが、空母の主役はなんといっても飛行甲板です。ここで昨今のキットにはない飛行甲板上の白線モールドが効いてきます。これがあることで情報量が多く見えて素組みが超かっこいいのです。

▲飛行甲板の情報量で、素組みでも物足りなさを感じさせない

ハセガワの加賀は既に48歳。ウォーターラインシリーズが1971年に始まって2年後に、大日本帝国海軍を代表するこの空母がシリーズにラインナップされました。そのため現在の考証とは違う部分がいろいろあるようです。しかし、全体の艦影を見れば紛れもなく加賀。しかもパーツ数も少なく、買ったその日に一航戦のシンボルを机の上に爆誕させることができます。

▲艦載機のパーツをみると〜〜。あれれ? 加賀には積まれたことがない航空機が。マッハで艦これ遊びができます!

艦影を愛でるという製作スタイル、高解像度を極める製作スタイル、艦船模型にもさまざまなスタイルがあり、そのどれもが楽しさに溢れています。ウォーターラインシリーズは多くの人が艦影を楽しめるように今に至ってもパーツの細分化などを控えながら、組み立てやすさも考慮した艦船模型を送り出しています。この48年前の加賀を組むと既にその礎はあり、細部が異なっていようとも全体のシルエットから加賀のかっこよさを十分楽しめることを僕に教えてくれました。ウォーターライン50周年であり、真珠湾攻撃80周年でもある2021年。この機会にウォーターラインシリーズでラインナップされている大日本帝国海軍の代表的な空母に気軽に触ってみるのも良いと思います!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

意地のアオシマ!新しい2000GTのプラモがキミをジェームス・ボンドに近づける。

 ダニエル・クレイグ版『007』シリーズを一気観したため(『ノータイム・トゥ・ダイ』を来週見に行こうと思っています)、気分はジェームス・ボンドである。当初の世論同様に「ダニエル・クレイグにジェームス・ボンドが務まるかい!」と思っていたオレだが、『カジノ・ロワイヤル』の初手からメロメロ。オメガのシーマスター欲しさに銀座に繰り出したり、バーに行けばウォッカ・マティーニ(ステアせず、シェイクして)を頼んでしまう有様だ。無論オメガを買う金はない。こういう気持ちを慰め、同時にブチ上げてくれるのがプラモであるよ……。

▲パーツはそんなに多いほうじゃない。エンジンもナシのプロポーションモデルだ。でもシガーライターはパーツ化されていて、こういうところにニコニコしてしまう。

 このプラモ、バキバキの新金型でデビューしたアオシマの最新作。損をしているとすればプラスチックがパキパキの白で、さらに完成見本の写真もツルテーンとした白で塗装されている点だろう。なんかぼんやりとシャープネスに欠け、ちょっと膨張したシルエットに見えるのだ。
 そりゃ2000GTと言えば白なんだが、たとえばオレたちが思う実車というのはもうちょっと古いペンキの白。それにフィルムの色被りやら走っているところの景色やらが写り込んで、もうちょっとこう、「手触り感のある色」であったような気がする。プラスチックでそれを再現するのが難しいなら赤とかシルバーのプラスチックであればボディのアウトラインもハイライトの入り方もカチッとしたものになって、「お、流麗でシャープなプラモだね」という雰囲気が出たんじゃないのかな、と思う。

▲アオシマ2000GTのメッキパーツ

 などとエラソーなことを言いながら箱を開けてビビり散らかした。メッキパーツがめちゃくちゃにシャープなのである。どれくらいシャープかと言うと、ズバリ言ってしまおう。メッキパーツのシャープネスでカーモデルそのもののあり方を変えてみせたタミヤのフェアレディ240ZGと同じくらい繊細な空気を醸し出しているのだ。

▲タミヤ240ZGのメッキパーツ

 アオシマというメーカーはわりと他社の動向とかキットのあり方とかに無頓着で、「オレはオレの道を行くぜ〜」という雰囲気だと思っていたんだけど、パーツの割り方とかメッキパーツの使い方を突如として最先端までガバっと押し上げている。カーモデルを世に送り出しまくってきたアオシマの意地がここに表れている、と感じた。
 こんな素敵なメッキパーツを見ていたら、やっぱりどうしてもボディのシャープネスを確かめたくなった。白い車なんだから白いプラスチックのままでもいいような気はしていたが、2000GTの美しいシルエットをもっと際立たせる色はないだろうか……。ということで、やっぱりビタミンカラーになるのである。「世界に3台あるとされるゴールドの2000GT」の写真を見ながら、黄色と金色と赤を少しだけ混ぜる。

▲一見黄橙色に見えるが、超近づいて見るとゴールドのフレークが入っていている。この感じはオレにしかわからない。でもそれでいい、っていう色。

 まあね、メッキパーツが細いだけで、ボディにパシッと吸い付くようにハマらなければ絵に書いた餅。さて、お手並み拝見ですよ……なんて言いながらニッパーを入れて、ボディに仮組みしてみる……。

▲参りました!

 いやはや、すごいじゃないですか。カーモデルの難所である窓枠の塗り分けを、メッキパーツでビタビタに決めるゴン攻めの姿勢!アオシマの意地がここに炸裂。ボディカラーも相まって、なかなか男前じゃないですか。ちなみにこのプラモ、ボディカラーさえ塗ってしまえばあとはほとんど黒いパーツとメッキパーツでほぼほぼ実車どおりになります。お好きな色を一本携えて、オレのボンドカー(オレがボンドである場合にのみ成立しますが……)を作るのもいいんじゃないでしょうか。っていうかすごいから組んだほうがいいよ。めっちゃびっくりしました。そんじゃまた。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

一度離れたから気付いた魅力/タミヤ M3A2パーソナル・キャリヤー

 僕は長らく戦車模型を作れなくなっていました。ウェザリングを突き詰めるべく地質を調べたり、歴史的背景を見たりするほど、これらがかつて人の命を奪ってきた兵器であるという事実をひたすら突きつけられる。歴史を知ると何気ない路地を通る際に「ここはかつて暗渠だったな」と気付くように、なんでもない日常が楽しくなるので、歴史を学ぶことの意義を感じてきました。しかし戦争に関する歴史や資料は知れば知るほど、見れば見るほどに残酷さ、人間の愚かさに直面し打ちのめされ、灰色の気分になってしまうのでした。

 そのためにこれまで楽しかったはずの組み立ての手が止まり,未完のまま火が入ることなく途絶えた野晒しの車体が箱の中の暗闇に閉ざされていったのです。そうして僕は模型店の戦車コーナーに足を運ぶことも、新たなキットに手を伸ばすこともなくなっていきました。魅力的な新商品の情報を横目に「また手が止まったらどうしようか」と一歩進めない日々が過ぎていく。そんな中、ニッパーを握る機会も失われていっていたのですが、先日転機が訪れました。

 実際の第二次世界大戦時の軍事車両を直接目にする機会があったのです。もともとは自動車を目当てに舞洲で行われていた「レトロカー万博」に向かったのですが,意図せず僕は会場でこの「道具」と遭遇しました。

 遠目でオリーブドラブの車体を視認した時に、少しばかり恐れを抱きました。ですが人々が集まっているのを見て、つい好奇心が勝り、恐る恐る近くに寄っていきました。すると、ファインダーを覗いて二重像が合致しピントが合った時のように、「この道具はタミヤ1/35MMシリーズNo.70 M3A2パーソナル・キャリヤーと似ているな」と、現物と記憶が結びつきました。違うのはその場に兵士はおらず,緊張感で張り詰めていない点。代わりにいたのは初めて見るその「機械」を大人も子どものように興味津々で見つめる姿。とても平穏な昼下がりの休日。
 その中央で晴天の下,堂々と佇むMMシリーズNo.70。

 僕は純粋に「格好良い」と感じずにいられませんでした。
 カメラのファインダーを覗き、レンズを介して見ると肉眼以上に車体の質感がより鮮明に見え、同時に「これを再現したい!」という奥底に眠っていたミリタリープラモの製作意欲が蘇ってきました。
 僕はその意欲の灯が消えないうちに、すぐさまプラモデルを買い求めに足速に、そして心躍りながら売り場へ向かいました。ずっと目を背けていたミリタリーコーナー。今は何もかもが新鮮に見えてどれも魅力的です。

 ずらっとベテランから若造まで並ぶキットに目を一通り通したのちに、以前「いつか作ってみたいな」と憧れを抱いていたキットを手に取って、会計を済まし家路に向かいました。帰って箱を開けるのを心待ちにしながら。

空韻

フィルムとデジタルを往還する日々を通して,写真表現を模索しています。生活の中でプラモデルを床の間に飾る生け花のような彩りや四季を感じる存在として据えるのが目標。

プラモも僕らの気分に即応!!! ピットロードのプラモで、16式のかっこよさをマッハで味わう!!!

ミニスケール系のキットにガンガン力を入れているピットロード。特に1/144スケールの自衛隊車両のラインナップがどんどん増えてきています。10式戦車、99式自走155mmりゅう弾砲、そして今回ご紹介する16式機動戦闘車です。このシリーズは一箱に3輌入っていて、1輌10分から15分で組み立てることができるほど気楽に作れるのが魅力です。

▲10式のレビューこちらからどうぞ
▲99式自走155mmりゅう弾砲の紹介はこちらから
▲手のひらサイズにピットロードのこだわりが満載!!

2016年度に調達が開始された16式機動戦闘車。高い機動力で有事の際に目的地にいち早く駆けつける即応機動連隊の要として開発された新型車両です。8輪の大径タイヤに105mm砲を装備したシルエットは、まさに現代車両と言ったいでたちです。このかっこよさをマッハで味わうことができますよ!!

▲ランナー1枚に1輌まるっと収められています

この16式、ディテールをあえてオーバースケール気味にすることで、メリハリある模型としてのかっこよさを押し出したプラモになっています。小さいキットゆえの演出がピリッと効いてますよ〜。

▲上がアオシマの「1/144スケール 航空自衛隊 C-2輸送機 SP(機動戦闘車付)」に付属する16式。下がピットロードの16式

「同じモチーフを同じスケール」で、メーカーごとに見比べることができるのもスケールモデルの楽しみ。上の写真を見てみると、ディテールの捉え方や表現方法が異なっているのがわかると思います。ピットロードのキットのメリハリの強さが際立ちます。

▲16式の複雑な足回りを1パーツで表現したこのパーツは、本キットの大トロです
▲105mm砲と砲身はワンパーツ成型。パーツをカットするだけでほとんど砲塔が完成します
▲おまけ的についているアオシマの16式はシルエットとしての楽しみを提供。ピットロードのキットは、シルエットや特徴的なディテールも楽しんで欲しいキットということが、この足回りのパーツから感じることができます

小さいプラモでもその車輌の特徴を十分に楽しめるピットロードの1/144スケール自衛隊車輌キット。10〜15分で完成しまし、3輌も入っているから実車通りに塗装したり、あなたの好きなカラーで塗ったりと一箱でさまざまな遊び方が楽しめますよ!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

箱を開ければ強くてニューゲーム状態になれる、「タミヤ 新1/48零戦」の秘密。

▲零戦の一番大変なあの窓枠の公式攻略アイテムが付いてくる!!!! 大勝利確定!!!

タミヤの1/48零戦のプラモデルは1973年に誕生した二一型をベースとするレジェンドプラモと、2008年以降に誕生したプラモの2種が存在します。今回のテーマは2008年以降のゼロ達です。2008年に発売した零式艦上戦闘機五ニ型/五ニ型甲は完全新規キットとして登場し、零戦の決定版プラモとしての地位を確立。その後の二ニ型/ニニ型甲は先の五ニ型をベースにしながらも主翼や排気管、計器盤に至る細部パーツまで専用パーツを用意したほとんど新規とも言えるすごい内容です。さらにこのプラモは飛行機本体以外にもすんごい大トロを抱えているんです!!!

▲こちらは二二型/二二型甲のパッケージ。零戦の中で最も優美とも言われているタイプです
▲零戦はとにかく窓枠が多い!!! ここをバシッと綺麗に決めたいと言う多くのモデラーの願いを叶えてくれるのが、黄色いマスキングシート。ありがとうタミヤさん!!!

飛行機模型に限らず、クリアーパーツの塗り分け部分がキモとなるプラモにセットされていると本当に嬉しいのが専用のマスキングシート。2008年以降の五二型と二二型の零戦にはこのマスキングシートが付属するんです!!! カット済みではないですが、線に沿ってデザインナイフでカットすれば多くの人が綺麗に窓枠を塗り分けることができます。

▲五二&二二のキットにはイケメンパイロットに〜
▲大空のアニキ(サムライと心の中で読もう)たちが4人も入ります

タミヤの1/48飛行機模型がやっぱり最高だと思わせてくれるのがアニキ達が付属すること。そしてこの2種の零戦には5人ものアニキが付属します。「零戦のプラモ」でもあり、「日本兵のフィギュアセットプラモ」の一面も持っているので、このキットを買っておけば他の日本海軍機にもかっこいいアニキを添えることができるんです。

▲そして二二型には応急迷彩(パッケージイラストのもの)や緑のカラーリングの他に、缶スプレーの一発吹きで塗ることができる灰緑色のカラーリングも用意されています

二ニ型の方にはおすすめのカラーリングが潜んでいます。それが灰緑色一色のカラー。まだ塗り分けとかちょっと怖いな〜って人にぴったりで、タミヤのAS-29 灰緑色のスプレーとカウルの黒、プロペラ用にシルバーを買ってくれば缶スプレーだけでも良い感じに塗ることができます。初めての飛行機模型全塗装仕上げにもってこいです! マスキングシートも付いているから鬼門の窓枠も安心ですしね。

▲主翼を折り畳んだ状態も作ることができ、折り畳み部を精巧にしてくれるエッチングパーツも付属します

かっこいい零戦に、かっこいいアニキが付属して、さらにマスキングシートにエッチングパーツまで付いてくる。タミヤが長い間手に取ってもらえて多くの人が楽しめる零戦を目指したキットであることが箱を開けると思いっきり体感することができます。1/48スケール飛行機プラモの最高峰キットをぜひ手に取ってください。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ホコリを拭い去れ!/キムワイプでプラモがワンランク上の仕上がりに。

▲おわかりだろうか、なんか糸くずみたいなモノが写っているのを…

 最近、プラモが完成した後は棚にしまったまま見返す事は少なくなり、その代わりSNS等にアップした写真を見返す事が増えました。で、肉眼は気づかなかったのだが、たまたまスマホで拡大したり、大画面のPCで見るとうげっとなる。
 なんか機体表面にゴミみたいのがいっぱいついてる…。どうやら、スミ入れした時に塗料を拭った綿棒の繊維がちょこちょこ残ってしまったらしい。うーむ、肉眼では判らないとはいえ、完成作品をSNSで称え合う昨今の環境でコレはツラたん。というわけでコレを購入。

▲『あつまれどうぶつの森』の博物館内の研究室にもそれらしきものが置かれているとか。

 ケバ立ちがなく、パルプくずが出ないちょっと硬めの紙製ウエスで、ゴミなどの不純物が大敵の試験管等の実験器具や電子部品の清掃等に使用する理系の方にはお馴染みキムワイプ。文系のワイは今の今まで知らん……。そんなアイテムだが、塗料の拭き取りに使用しても繊維くずが出にくくてグーらしい。早速、以前レビューした「チョイプラ アモデウス」で試してみる。

▲本体はラッカー系塗料で塗装。細かい箇所は筆で塗り分け。

 薄く溶いたエナメル塗料をパーツ全体に塗布し、キムワイプで拭き取る。ふむふむ、ちょっとゴワゴワした感じだが、綿棒やティッシュと比較しても遜色なく塗料が拭える。
 ちなみにこの「チョイプラ アモデウス」、モールドがカッチリ彫られているので、拭った後は塗料がキレイにモールドだけに残りいい感じに。良い……良いぞ。

▲左が拭いた後のキムワイプ。右上は新品綿棒。右下は使用後の綿棒…ケバ立ちが…。

 アモデウスのパーツはエッジが鋭いので、結構引っかかる。試しに綿棒で拭ってみたが数パーツでボロボロに。キムワイプの方は目立った破れもなく作業完了。よく頑張りました。

▲さらに細部を塗装したりデカールを貼ったりして完成!

 さて、完成したので写真で撮ってみたが……繊維クズは……見当たらない!ふふふ、良い感じ。これで4億いいね!くらいもらえないものかしら。

コピルアク

1981年生まれのプラモエンジョイ勢。本業はゲームとかつくる人。

手元に置きたいカタチと色を探す/タミヤのナースホルンで楽しむ「プラモ遊具化計画」

 タミヤの1/48ナースホルン、絶大に褒めたいのは履帯(ようはキャタピラだ)のバチバチ具合。よく見ると後ろからふたつめの上部転輪に小さなちいさな突起がある。ここに履帯のパーツに開けられた穴をカチリと合わせると、あとは魔法のようにピタピタピターっと貼る位置が決まっていき、自分でグニグニ調整しながらカタチを整えなくても凛々しい姿が現れる。菩薩〜。

 黒い軟質素材でできた、いわゆるベルト履帯をグルンと巻いて終わり!というのもかなり好きだが、こんなに迷いなく貼れるのなら、重みで少し垂れ下がった表情まで誰もが楽しめる硬質なプラスチック製の履帯も悪くない。ハァ難しいことを言ってしまった。ところでこの自走砲、こんなに組んじゃってどうやって塗装するんだい?

 とくにプランもないまま、ひとまず手近にあった白で塗りたくってみた。タミヤの完成見本は迷彩塗装されたナースホルンに白い冬季迷彩を微妙なニュアンスでもって重ねたものが用意されていたが、ただこうやって白をドバーッと吹いた状態でもまったくの冬季迷彩に見えることに気づき、「えっ、これでいいのでは……」などとうろたえる。冬季迷彩みたいな文脈を知らない人でも、白いオブジェと化したナースホルンは紙細工や石膏像みたいなものと同じカテゴリで捉えてくれそうな魅力がありゃしないだろうか。いや、あるね。

 白で終わらせても良かったのに、側面の装甲板がかなり広くて平らなのにワクワクしてしまい、手持ちのグラフィティデカールを貼ってみたい欲求に抗えなかった。グレートーンにも見えるシルバーと合わせるなら、正解は黄色でしょう。PANTONEが提唱する今年のトレンドカラーは陽気なイエローと落ち着きのあるグレーの組み合わせだし。それにしても、GSIクレオスの「Mr.カラーGX キアライエロー」の発色はすごい。ドカンと吹けばドカンと黄色くなるというのは楽しくてしょうがない。みなさんも黄色を吹きましょう。元気になるぞ。

 デカールを貼って、ちょっとダラけた姿勢の兵士を散りばめたらカンペキな画になってしまった。1/48の歩兵たちがグレーの成型色で本当に良かった!と思えた瞬間。公園の遊具みたいに色とカタチが部屋の空気とマッチするようにデザインしてあれば、こんなふうにお気に入りのテーブルフォトを撮ることだってできる。プラモというのはある種の彫刻であり、どんな色にもできてしまう、すごくワガママな遊びとしても優秀なんです。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

え!? ジープじゃないの??タミヤのプラモだからスパッと楽しくわかる「M151」のお話。

▲ジープっぽい車だけど、ジープじゃないんだなこれが

 ジープのようでジープじゃない、ちょっとジープみたいな万能軽車両。それがフォードM151、通称MUTT(Military Utility Tactical Truckの略。「マット」と読みます)です。第二次大戦で大活躍した、いわゆるジープの後継となる1/4トン積載の車両です。

▲車体前面のエンジングリルが横スリットなのに注目

 見た目はほぼジープなので、採用された時の大統領の名前をとって「ケネディジープ」とも渾名されているM151。縦スリットのフロントグリルはジープを製造したウィリス・オーバーランド社によって商標登録されているので、やむなく横スリットになっているのが特徴です。各形式合わせて合計16万台が生産されたという、大ヒット車両です。

▲キットの基本構成は発売当時からほぼ変わっていないんですが、A1用の新規パーツがチラホラ

▲車体底面のパーツは、およそ40年前のキットとは思えないキレ
▲手足が妙に細く頭がでかい、典型的な80年代タミヤフィギュア体型のアニキが付属!

 アメリカ陸軍ではベトナム戦争から90年代初頭までの長期間使われた車両なので、それなりに色々なバリエーションがあるM151ですが、タミヤは1982年4月にM151A2のキットを発売。翌年にはTOWミサイルを搭載したバージョンもリリースしています。さらにその翌年には車両本体に加えてM416トレーラー(ついでに荷物も)をつけたキットを発売。以降もグレナダ侵攻仕様や、今回紹介するベトナム戦争で運用されたM151A1といったキットを発売しております。SASジープくらいしか目立ったバリエーションのないジープより、細かく展開されているんですねえ。

▲車体の主な部分は一体。なのにA2とフェンダー形状が違うんで、この車体パーツは丸々作り直しになってます
▲この幌なんかも、今時っぽい彫刻にリメイク!

 で、このM151A1、先に発売されていたA2に比べると前後のウインカーが小さく、またリアサスペンションの構造が異なるという特徴があります。並べてみるとわかるんですが、確かにA1のウインカーは小さく、おまけに A2とはフロントフェンダーの形が違います。まあ、最大の違いはその程度ではあるんですが、差のある部分をかっちり追ってるな……と嬉しくなりますね。

▲この、車体に直接サスペンションやらなんやらを取り付けていく工程が、M151最大の特徴です

 そしてタミヤのM151で嬉しくなるポイントが、ジープと異なる車体構造を作りながら理解できる点。ジープは梯子型のフレームに車体が乗っかる構造でしたが、M151はボディがモノコック構造となっており、車体底面の一部を分厚くした箇所にエンジンやサスペンションが乗っかる作りになっています。

▲こちらがジープの構造。中央の梯子型のフレームが特徴的ですね

これによって構造が簡略化でき、車重も軽くなり、低床化することもできたわけですね。この構造がM151最大の特徴なんですが、タミヤのキットでは限られたパーツ数でこれを再現。裏から見ると「なるほどこれがモノコックの車……」と納得できる作りになっています。同社製のジープと作り比べてみると一目瞭然なんですが、見た目は似てるのにジープとM151の車体構造って全然別物で、そういうことがスパッと理解できるのもプラモデルのワンダーなところだなあと思う所存です。

▲できた~! 初代ジープに比べると、M151って直線的なデザインだったんだなということに今更気付く
▲「走ればOK!」という味気なさがイケてますね

 というわけで組み上がるとこんな感じ。ジープに比べて直線的になった車体形状が、いかにも生産性一本槍な軍用車両っぽくてグッときますね。上にニュ~ッと伸びているのは、海兵隊のM151によく見られる防水型の吸気管と排気管です。今となっては米軍のこの手の車両はほぼ全部ハンヴィーになってしまったため、M151はすでにレトロなトラックなんですが、各部の直線的なデザインはなかなかモダンな雰囲気です。こんなにまっすぐな線が多い車だったんですねえ。

▲う~~ん、ベトナムだ

 なんせザ・ベトナムな東南アジア剥き出しの一台なので、同時期にベトナムに展開していたM48パットンあたりと組み合わせて並べるとよりゴキゲンに。インドシナ半島特有の赤茶色な汚れを、ガンガン擦り込みたくなる雰囲気です。ジープ、そしてハンヴィーと並べて米軍ソフトスキンの進化を味わうもよし、がっちり汚して濃厚なナム味を味わうもよし、遊びごたえのあるキットです。

しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

あの日のように、俺はサンバーに荷物を積みたい/プラモに添える積荷の話。

 このご時世でずっと家にるからか、外に出たい。
 が、なかなか外に出るのも億劫だ。新橋、日本橋、丸の内、秋葉原あたりは習慣的に行っているけど、違うところ。どこがいいかな……と思うとすっかり出かけ下手になっていることに気づく。お酒も飲まないし、部屋での楽しみ方を覚えきってしまった。なんとなく思い出すのは前の職場で販促をやっていたときのこと。
 会社初の販促兼デザイナーということで私を含む会社全体が、どのように扱えばいいのかがわかっていない中、ひたすら仕事をした。新しいブランドのロゴやストーリー、パッケージデザイン。POPも作ったし新店舗オープンも手伝った。ずっと本社にこもってデスクワーク。
 ただ、たまに営業部や商品部の人が「気分転換に外に連れて行ってやろう」という感じで、ホワイトボードに「クリスチ 同行」なんて書いてくれたり。印象的だったのは、海外から届いた商品を保管する倉庫へ行ったこと。ハイエースと軽自動車のバン。それぞれに会社で取り扱うブランドネーム+「号」の名前がついていた。「タミヤ号」とか「ハセガワ号」みたいな。

 倉庫に行くときにたくさんの折りたたみコンテナ、いわゆる”オリコン”を積んだ。
 なので、いま作っているサンバーにも私は何か荷物を積みたい。というわけでいろいろ悩んでいたのだけど、ミニチュアのカプセルトイで有名なケンエレファントからTRUSCO (トラスコ ) ミニチュアコンテナが出ているではないか。

 翌日、早速ケンエレスタンド上野店に行き入手。帰宅してカプセルを開けたら見事にオリコンゲット。というわけで私のサンバーの荷室にはオリコンが畳んだ状態で積んである。いま、部屋に飾ってあるサンバーは私の不注意もあってフロントガラスやリアガラスが少し汚れている。「これさえなければ完璧なのになー」と思わなくもない。ただ、倉庫だPOPアップショップだ新店舗だと何回か乗せてもらった車はそんなにピカピカではなかったし、毎日「〇〇号は今日はどこに行く?」とけたたましく聞こえる声を思い出すには、これで十分じゃないか。と思う。
 前の会社のロゴのデカールがあればな。なんて。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。全力で真っ最中なプラモ「タミヤ 追撃作戦セット」が俺の週末を盛り上げる!!!

▲はい!? 周りが全力で真っ最中なんで聞こえません!!!

週末が楽しくなっちゃう模型をフミテシの独断と偏見でお届けする花金プラモ。今週は箱の中が真っ最中アニキのパラダイス「タミヤ 1/35スケールミリタリーミニチュアシリーズ No.313 アメリカ陸軍 軽戦車 M5A1 ヘッジホッグ 追撃作戦セット」をお届けします。こちらはタミヤの戦車模型である1/35ミリタリーミニチュアシリーズ(以下MM)のわりと初期の傑作キットを2つセットにしたお得なプラモです。小さな戦車に迫撃砲とアニキたちがセットされたこの一箱で濃密な情景が爆誕します。

▲箱絵にもなっているヘッジホッグは、MMの97番目のアイテム。初期のアイテムながらこだわった足回りや、別パーツ化された各フックパーツなどにより、今の目で見てもとてもかっこいいプラモです

M3スチュアート戦車の後継戦車として開発されたM5A1。このキットは、ノルマンディー上陸作戦後に使われたM5A1の中に見られる、生垣突撃用の「ヘッジロー」を装着した姿を楽しめます。車体の前面にあるトゲトゲしたもので、これで進みながら生垣をカットしていきます。

▲完成したら約13.5cmというコンパクトな戦車だけど、パーツは結構細かい。作りごたえもあるぞ!

そしてこのプラモはなんと言ってもフィギュアが魅力的。4人のアメリカアニキが僕たちに真っ最中な戦場の情景を見せてくれます!

▲M5A1の上で機銃を構えるアニキ。お尻と脚が密着したこの造形が……
▲踏ん張った力強い背中を生み出します!!! めっちゃ良い演技。かっこいいぜ!

このキットのもう一つの要素は、MMのNo.86の「アメリカ歩兵「機関銃チーム」セット」の中にいる、迫撃砲アニキたち。彼らのランナーが一枚丸ごと入ります。アメリカ兵の装備品やバズーカ砲なんかもランナー内には入っているので、戦車の上に置いたりしてアクセサリーとしても使用できます。

▲さまざまなアメリカ車両と組み合わせて遊ぶことができる素敵なパーツで溢れているランナーです
▲組み立てると、まさに発射直前! といった雰囲気になります。耳を塞ぐアニキ、どっかと通信しているアニキの演技が素晴らしく、現場はうるさいんだなと一発でわかります

ひと箱の中に迫力ある戦場が詰め込まれているこの追撃作戦セット。手のひらサイズのコンパクトな戦車と真っ最中なアニキたちが生み出す情景は本当にかっこいいの一言。MM初期の傑作プラモが一度に味わえる素敵なセットであり、「戦車と人が合わさるとこんなに面白いんだ」というタミヤMMの精神も体感できます。ぜひ、今週末はアニキたちと真っ最中になってください!

▲砲塔脇に装備されているのは、履帯にはめることで悪路の走行性を高めるグローサー。砲塔に装着すれば簡易的な増加装甲になります
▲週末はアニキたちとぶっ放そうぜ!!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

アメリカンカープラモと不思議な青竹色/1969 シェビー カマロ イェンコ

 今回作ったキットはドイツレベル社製1/25 Fast & Furious 1969シェビー カマロ イェンコ。『ワイルド・スピードX2』(原題: 『2 Fast 2 Furious』)主役のブライアン(ポール・ウォーカー)が搭乗してアクセル全開でぶっ飛ばしてました。そのアメリカンカープラモです。

 ボディの色指定はメタリックブルー。持ってなかったので模型店へ。店内でメタリックブルーを確認。ジッと見てたら何かモヤモヤしてくるんです。

 『んー?カマロ、劇中でこんなに青が濃かったかな?』

 劇中を思い出してみます。ここはフロリダ、眩しい太陽、ドギャーンと疾走カマロ……。印象はメタリックブルーよりメタリック水色っぽい気がしてきました。ちなみにフロリダへ行ったことはないです。

 メタリックブルーは保留、ちょっと他のカラーを時間をかけて物色する事にします。……と思って視線を一段ズラしたら居ました、イメージに近いメタリック水色。手に取って色の名前を確認。

 GSI クレオスのMr.カラー57番 青竹色。零戦とかの機体内部色ですね、私も主脚内側とかで塗った事ありました。このクレオスの青竹色なら調色しなくて済む。手間が省けると嬉しいですね。

 この青竹色を車のボディに塗ったらどうなるか気になります。ワクワクもんですよ。私が塗らなきゃ誰が塗るって話ですよ。おりゃー。

 良いじゃない、気に入った!淡いだけではない爽やかな青味が、イメージ以上にビタッときましたね。フロリダの太陽を感じますよ、強い日射しを受けてるんだろうな。フロリダに行ってみたいね。

 凄いです青竹色。カッコいいでしょ!ブンドドもはかどります。今回はここまで、おわりっ!

シラス

東ツク会(東日本なんでもつくる会)所属 おバカ模型組 おもちゃドクター

「ポリメタルグレーメタリック」って何色?/タミヤのロードスターRFに合う塗料を探して。

 「ポリメタルグレーメタリック」という色がある。マツダ車にラインナップされているカラーで、これがなんとも言えない不思議な色なのだ。Googleとかで画像検索してもらえると分かると思うが、写真によって色味がまちまちだ。近くで寄るとメタリックカラーらしさが感じられるけど、写真ではソリッドカラーにしか見えない。光の具合によって、グレーというよりは薄いブルーのようにも見える。この不思議な色合いを部屋に置きたいと思い、タミヤのマツダロードスターを作ることにした。

 プラモデルというのは、買うと説明書がついていて、組み立て方と塗装指示が書いてある。指示通りに組み立てて、塗料を買ってきて、塗る。するといい感じのプラモが完成するというわけだ。

 さて、ポリメタルグレーメタリックはどういう風にして塗装するのかなと説明書を見てみると何も書いていない。どうやらこのプラモデルが発売されたときには、このボディカラーは実車のラインナップになかったみたいだ。自分でこの色を作るのは大変である。「そのものズバリ」みたいな塗料がないかなあ……と探していて、発見したのがガイアノーツの「フォグブルー」だ。

 この塗料、「ボトムズカラーシリーズ」と銘打って発売されているもの。微妙な色合いなのに、つや消しではなく光沢なのがうれしい。そのまま塗ってもツヤツヤだし、上からクリアーをスプレーで吹けばモーターショーに展示された車みたいに、ライトが反射する綺麗なボディになる。

 「フォグブルー?メタリックでもないしグレーでもないじゃないか」という人もいるかもしれない。その気持ちはよくわかるが、そもそも実車を1/24に縮小したとして、塗膜の中に封じ込められたメタリックの粉が人間の眼に見えるのだろうか?それに、このポリメタルグレーメタリックという色は写真でみてもそんなにメタリックに見えない。

 ポリメタルグレーメタリックというのはあくまで色の名前だ。名前にとらわれず自分の眼を信じてよく見てみてほしい。グレーがブルーに見えたらそれでいいと思うし、メタリックに見えなかったらソリッドカラーでも全然かまわないと思う。自分で選んで、塗って、「いいじゃん!」って思えたらそれが「自分の見えているボディカラー」ってことなのだ。

もとぴ

東京在住。世界を理解するための糸口としてプラモデルを制作中。趣味の記録や思索のためにnoteも書いています。

元祖マッスルカーのプラモで出会う、『マッチョスパイのボンドカー』。

 アメリカンマッスルカーのプラモが作りたい。さて何のクルマにしようか?

 アメ車の知識のソースなんてワイスピぐらいしかない僕にとっては、マッスルカーといえばヴィン・ディーゼルだ。そしてヴィン・ディーゼルとくればそう、ポンティアックGTOである。ワイスピにそんなクルマ出てきたっけ?と思った人は間違っていなくて、この車はワイスピシリーズには登場していない(多分)。じゃあ何に出てくるんだというと、初代ワイスピの翌年2002年に公開されたヴィン・ディーゼル主演のマッチョスパイ映画、トリプルXである。

 この映画、スタントやアクションシーンは秀逸だし、めちゃクールなスパイガジェットもたくさん出てくるし、なによりスパイのくせにやたらノリの軽いヴィン・ディーゼルがワイスピとはまた違う方向性でかっこいいので、未視聴の人はぜひ見てほしい。そしてこの映画に出てくるスパイのマシン、すなわち007におけるボンドカー的な存在、それがこの67年式ポンティアックGTOというわけだ。

 このキットはMPCから発売されているもので、スケールは1/25となっている。探してみたけど67年式でプラモ化されているのはこれしか見つからなかった。発売年の情報は見当たらなかったが、おそらく初版はかなり古いキットだと思われる。

 エンジンやバスタブ含め、パーツには位置合わせのガイドのようなものがほとんどない。他のパーツとの位置関係を見てベストフィットポジションを探し、決まったらすかさず接着剤を流し込んでから微妙な位置を調整していく。

 メッキパーツは仮組で、とりあえずクルマの形にする。特徴的な縦二連型のヘッドランプはポンティアックのスポーツモデルの象徴だ。ボディとの間に結構なスキマができるが、後でゴリゴリ削って何とかしよう。ここ以外のパーツの合いはそこまで悪くない。

 組んだ後で知ったが、初期のポンティアックGTOはマッスルカーの元祖のような存在だったらしい。マッスルカーを作りたいという気持ちに対して、とりあえず映画に出てきたかっこいいやつ程度の理由で選んだが、実は超王道をチョイスしていたことがなんだか嬉しい。

 こいつを塗るならもちろん映画に登場するブルーベリー色と決めているが、調色であの色を出すのはなかなか難しそうだ。次は塗料を探しに行こう。ぴったりの塗料はあるだろうか?

ただす

1989年生まれ。東京の西の方に住む会社員。現用戦闘機とガンプラをよく作っています。

ひと箱で3度美味しい飛行機プラモ!「タミヤ 1/48 メッサーシュミット Bf109 E-4/7 TROP」が最高な訳。

▲タミヤのThe定番とも言えるこの「1/48 メッサーシュミット Bf109 E-4/7 TROP」。一箱にバトル・オブ・ブリテン、欧州戦線、北アフリカ戦線と第二次世界大戦の主要な戦いが詰まっています!!

「メッサー」とプラモ界隈で言うとだいたい第二次世界大戦におけるドイツ軍の傑作戦闘機「Bf109」のことを指します。メッサーシュミットはメーカー名なのでホンダとかトヨタって言葉を発しているようなもんですが、メッサーというかっこいい響きも相まってついついBf109と言うより「メッサーの〇〇型」とか僕は言ってしまいます。ガンダムにおける「ザク」のように各戦線で活躍したドイツ軍の主力戦闘機ということもあり、様々なタイプがあってどれを買えばいいんや!ってなる筆頭でもあります。そんな中で僕は「タミヤ 1/48 メッサーシュミット Bf109 E-4/7 TROP」をオススメしたいです。1998年に発売したプラモですが、今見てもパーツの量、分割、パーツ表面の美しさは素晴らしく、まさに万人にオススメしたい飛行機模型です。塗装までいくとドイツ軍はややこしいですが、組むだけなら最高に気持ち良いので、ぜひこのプラモでまず飛行機模型を刺身で組んでみて欲しいです。

▲1/48スケールだけど、クリアーランナーを除けば、本体パーツはランナー2枚!!! しかもこの2枚で3バリエーション作れる!!!

1/48スケールの飛行機といえば、ガンプラで言えば1/100スケール系のキットのような立ち位置で、一部中身がしっかり作られていたり、表面のディテールがより細かく彫刻されたりしています。この「Bf109 E-4/7 TROP」は、先行して発売されたE-3型のバリエーションで、第二次世界大戦の序盤のハイライトである英国軍との戦い「バトル・オブ・ブリテン」で活躍したE-4と、増槽の装着を可能として航続性能を高めたE-7を選択して作れる他、北アフリカの空でも活躍したサンド・フィルター装着エアインテークを搭載したトロピカルタイプ(沸る言葉だぜ!!)と3つのパターンを選択して製作することができます。なのに、ランナーは2枚! 中身の表現は最小限にしているので細かいパーツもなく、パーツ分割も巧み。説明書内の11行程で組み上がってしまいます。

▲美しい丸みとシャープなモールド。良い体してまっせ
▲このキット、主翼のフラップの上げ下げと、前縁スラットの開閉も選択できるギミックが盛り込まれています。3種のバリエが作れて、主翼のパターンも選べる……一つのキットでこんなに遊ばせてくれるなんて!

大量のランナーをゴソゴソといじることなく、サクサクと手際よく組める感覚と、スナップフィットキットとはまた違ったパーツのバチピタ感、シャープなモールドをこのタミヤのメッサーは思う存分楽しませてくれると思います。私自身、1/48飛行機模型で零戦の次に完成したのがこのメッサーでした。日本機にはない味を、タミヤの極上プラモで味わった感覚は今でも忘れることはないです。

▲飛行機模型を作り出してまだ間もない頃。タミヤのスピットファイアMk.Iと一緒に作ってたみたい。楽しんでますな〜〜俺。またメッサーに会いにいくぞ〜! 違う仕様を作るぜ

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

地下駐車場にダイブ・インすれば 、クルマのプラモがいきなり「生きる」!

 とある地下駐車場でフェアレディZに遭遇!しかしこれはアオシマのプラモ!……でもなんかリアルですね最高ですね。リアルというのはほんの一瞬でも「ん、これは何が起きているんだ!?」と見ている人に思わせることができたら嬉しい、くらいの意味だと思ってください。

 そう、じつはアオシマの1/32カーモデルの新製品にはオマケとして地下駐車場のペーパークラフトが入ってんのよ。ペーパークラフトってなんだかプラモと質感違うし作る作法も違うし微妙じゃね?って思う人もいるかもしれませんが、ひさびさに定規とカッターと両面テープでシコシコ工作する気持ちはなかなかに新鮮。
 ちなみにアオシマ「ザ☆スナップキット」シリーズの「ニッサン S30フェアレディZ(3種)」(2021年11月発売)、「ランボルギーニ アヴェンタドールS(3種)」(2021年12月発売予定)の初回生産特典となっているので、店頭でハコに「特典付き」の表記があるかどうか確認してから買おうね。

 ただ地下駐車場をハコ組みするだけにあらず。「地下駐車場らしさ」を演出するための壁デコレートパーツもたくさん印刷されているから、君のイマジネーション次第で最高の「オレ駐車場」を経営できてしまう。こういう小ネタを散りばめることで、ジオラマ的なモノにいい感じのリアリティが出るんだな〜。

 ただ説明書通りに組み立てるのもなんなので、ここで閃いたチョイテクを投入。天井パーツには蛍光灯(と周りのぼんやりとした光)が印刷されているので、蛍光管の部分だけをカッターで切り抜いておきます。その上から照明を入れると「ただのミゾ」が最初の写真と最後の写真みたいに「光ってる蛍光灯」に見えるぞ……。

 床、壁×2、天井の4面(プラス柱が1本)を組んで地下駐車場が完成!とりあえず出来栄えを確かめるためにスマホを突っ込んで撮影してみたら、想像の100倍くらい「それらしい〜」という光景が撮れて笑っちゃうくらいに良い!何より天井があるので自分の部屋が映らないのが最高だし、薄暗いことが地下駐車場のリアリティを高めまくっていることに気づきます。なにこれ、楽しい……(しかも複数個をつなげて巨大な地下駐車場を作ることができてしまう)。

 柱を前ボケで入れてカーモデルを部分的に隠すととんでもなく実感溢れる写真が爆誕。いや優勝。こんな楽しいペーパークラフト、みんな作ったほうがいいし、さらにこのアイディアをベースに「自分だっったらどんなところで模型を撮影してみたいかな?」ってのを考えるのがむっちゃおもろいと思った次第。飛行機なら格納庫、戦車なら橋の下……ああ、天井があるところってこんなにリアルなんだ!と。
 アオシマでは現在プラモデルフォトコンテストも開催中。ぜひとも参加してスペシャルなキットを手に入れちゃいましょう。そんじゃまた!

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

豪華メッキ仕様の限定版をゲットして、君の手でさらに輝かせよう!!!「ボークス 1/100 オージェ・アルスキュル」

▲バインダーやスカートにメッキ加工が施された豪華仕様のオージェ・アルスキュルをゲットしよう!!製作/小澤京介

 ボークスが2021年のクライマックスにお届けする注目のプラモ「IMS 1/100 オージェ・アルスキュル」。nippperでも過去2回に渡って記事をお届けしてまいりましたが、今回はバインダーやスカートなどがメッキ加工された限定版のサンプルが到着しました!!! こちらの限定版は、ボークスのGL/VS/VIP会員資格(各会員の詳細はこちらまで)をお持ちの方のみ購入可能なスペシャルアイテムです。

 今回のサンプルはまだ初期のもので、お客様にお渡しされるものはさらにメッキが美しくなるとのことです。今回nippperではこのメッキを活かしながらポイントになる部分塗装を施して仕上げてみようと思います!

▲オージェ・アルスキュルのキット仕様が丸わかりのからぱたによるレビューはこちらをどうぞ!

▲通常版をよりよく見せるポイント塗装を解説しています

▲巨大なオージェ・バインダーのパーツに美しいメッキ加工……。気分は爆上がりです!

 上記リンクの記事でからぱたが施していた部分塗装は、メッキ版ではさらに有効な仕上げ方法になります。この方法を参考に攻めていきますよ。

▲通常版のキットを、シルバーや赤を部分塗装してからぱたが仕上げたオージェ・アルスキュル。バインダーや各部の赤が塗装されるだけで一気に見映えが良くなります
▲上の作例を参考にメッキの限定版を製作したのがこちら。銀の部分がメッキなので、主に「赤」の塗装がメインの作業となります

 まずはなんといってもメッキパーツのゲート跡の隠蔽です。本キットの中にはボークスによるアドバイスとして薄手のシルバーテープを貼ることが推奨されています。テープを貼る以外に有効な手としては、昨今発売されているペンタイプや筆塗り専用のメッキ調カラーを使用することです。

▲プラモである以上、ゲートをカットした部分にはメッキ加工は施されていません
▲薄刃の片刃ニッパーで慎重にカットしてもゲート跡が残ります
▲ゲート跡部分にこのようなメッキ調カラーをチョンと塗ってあげるだけで、目立たなくなります。こちらはグリーンスタッフワールドの筆塗り用クロームメタル。ガンダムマーカーEXのメッキシルバーも良いと思います
▲ゲート跡部分もシルバーになりました。ここまでパーツをアップに見ることはほとんどないので、肉眼では気にならないレベルになると思います
▲成型色にお手軽にモーターヘッドならではの光沢感をプラスします

 装甲の成型色もアイボリーなホワイトで良い雰囲気です。このパーツに水性プレミアムトップコートをランナー状態で吹いてあげるだけで、簡単に光沢になり、よりモーターヘッドらしさが出ます。

▲水性だから匂いもマイルド。お手軽にピカっと輝く光沢感をプラスできます

 そして各部の赤は、nippperも激推しの「Mr.クリアーカラー GXクリアルージュ」を使用します。このレッドをシルバーの上から吹くとバキッとしたメタリックレッドになり、メッキパーツとの相性も抜群になります。

▲肩の丸い球体はとても目をひくパーツです。ここだけでも赤にしておくと見映えがよくなります。このパーツをGXクリアルージュで塗っていきます
▲スプーンの真ん中の色がクリアルージュ。スプーンの先端がクリアーレッド、根本がディープクリアレッド。見ての通り、中央のクリアルージュは彩度が高く美しいメタリックな雰囲気が出てます
▲GSIクレオスのスーパーファインシルバー2を下地として塗装します
▲シルバーが乾いた上から、クリアルージュを塗装すればご覧の通り! バキバキに輝くメタリックレッドが爆誕です

 さらにこの赤の塗り分けですが、メッキのスカート部分にもあるんですね……。メッキパーツにそのまま塗装できるの!? このキットを手にする人もそこが一番心配だと思います。今回は直球で「メッキパーツにそのままクリアルージュ」を塗装してみますよ。やればできる!!!

▲まずはマスキング。薄いマスキングテープを使用して、塗り分けのキワの部分もしっかりとマスキングします
▲マスキングが完了。この状態でクリアルージュを吹きます。濃い塗料で一気に吹くのではなく、少し薄めにして、3回ほど塗り重ねてください。すると問題なく発色&定着します
▲マスキングを剥がせばご覧の通り、しっかりと塗り分けができました。とはいえ他の部分よりも塗膜定着は弱いので、爪などで引っ掻いたりしないようにしてください

 水性プレミアムトップコートによって追加された装甲の光沢感と、各部のメタリックレッドがメッキパーツの存在感をさらに高めており、部分塗装仕上げでもここまでかっこいいオージェ・アルスキュルを堪能することができます。一次受注は完売(一次受注購入者には、12月25日より順次お渡し)で、現在二次受注を受付中。二次受注で購入した方には2月19日よりお届け予定とのことです。

▲メッキ加工を施したスペシャルアイテムを、この機会にぜひゲットしてください!

>ボークス IMS 1/100 オージェ・アルスキュル 限定版商品サイト
ボークスホビー天国オンラインストア

 ボークス主催により12月5日(日)に、東京都立産業貿易センター 台東館7Fで開催される「ホビーラウンド25」にて、IMS 1/100 オージェ・アルスキュル(限定版、通常版共)の少数先行販売が決定しました!!! 最速で本キットをゲットできるチャンスとなります。

※イベントでの購入条件はボークスのオージェ・アルスキュル限定版紹介ページ内の一番下にある販売情報をご確認ください。

>ボークス IMS 1/100 オージェ・アルスキュル 限定版商品サイト
ボークスホビー天国オンラインストア

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

銀座ほろ酔いフェアレディ/アオシマのプラモで楽しむ焼きおにぎり的モデリングの話。

 銀座に用事があって、ウインドーショッピングがてらに和光の斜向かいにある日産のショールーム、「NISSAN CROSSING」へ。レースカーをはじめ、最新の市販車やコンセプトカー、旧車も展示してあって、展示替えのたびにわくわくしながらうひょ~と写真を撮っているわけです。どっこい、今回はいちばん目につくMOTUL AUTECH GT-Rに気を取られていて、2Fにフェアレディ240ZGが展示されていることに気づかなかった。一生の不覚っ!近々、銀座に行ったら絶対見ような……。

 新橋やら有楽町やらをウロウロして、ルーフトップバーでジェームズ・ボンドごっこをして帰ってくると完全にほろ酔い気分。しかし寝るまでにプラモをなんかひとつ完成させたことにしたい。なんという贅沢でズボラな要望だろかっ!と自分で思うけど、そんな折にアオシマの1/32カーモデルがあると最高にありがたいですね。ニッパーとピンセットさえあれば、食卓でロスタイムの缶ビールを飲みながら(まだ飲むのか!?)カーモデルがもりもり出来上がっていくんです。

 ここ、自分で塗り分けたら大変ですよね〜と思いながらシールを貼ってクリアーパーツを重ねれば見事なリアコンビネーションランプに。いや、タミヤの見せてくれる恐ろしい精度、究極的なおもてなしに従ってじっくり塗り上げるのもプラモの最高なありかたのひとつだし、こうやって酔っ払いながらニコニコ作れるイージーな寝る前のプラモ……呑みのシメの焼きおにぎりとでも言いましょうか。いいもんです。

 ベロベロでも説明書は読めるし、パーツの美味しいところに気づくくらいの余裕がこっちにはあります。例えばタイヤハウスの中を覗くと車軸を通す四角い穴が上下2段になっているところなんか、このキットの大トロかもしれません。下側に車軸を通せばちょっと背伸びした印象に。上側に車軸を通せばシャコタンになって、ちょっとした走り屋っぽい佇まいになります。楽ちんな仕様でもこういう選択ポイントを用意してくれるのがアオシマらしくてすごく嬉しい!

 塗料も接着剤も使ってないけど、黄色くてかわいいフェアレディZがちゃんと完成。奥のZGはタミヤの1/24モデルですが、並べてみるとやっぱりどっちもいい。ボディカラーもたくさんの選択肢が用意されていますから、お好きな色のフェアレディZをそっと棚に忍ばせておきましょう。静かな時間のちょっとした夜食で小腹を満たすあの幸福感が、あなたをいつでも待っていてくれます。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

初めて作る1/12バイク模型は、今年一番作った「隼」で決まり!! 「タミヤ スズキ Hayabusa 1300(GSX1300R)」

▲2021年一番多く作った模型が「隼」でした!!! 年末まで駆け抜けるぜ!!!

今年、俺のプラモライフを1文字で表現するなら「隼」でした。1/72スケール、1/48スケールと多数の隼を味わいました。そして2021年クライマックス、俺は1/12スケールの「隼」を遂に手にしたのです!! そう、SUZUKIのフラッグシップモデルである激アツバイクの方です。そんな言葉の連想ゲームのような楽しみからもプラモは広がっていきますよね〜。

▲日本陸軍を代表する一式戦闘機「隼」。2021年はこの戦闘機をたくさん作りました。そうなったら手に取るバイクはまさに1択。「隼」しかありませんでした。

Ultimate Sport(究極のスポーツバイク)を開発コンセプトに生み出されるバイクは、まだまだバイクのことを知らない俺も震えさせてくれます。茨城県の大洗町で3台の隼が僕の脇を駆け抜けて行った時は、もう瞳の中に「隼」の漢字が貼り付けられたようでした。そんな衝撃を受けたバイクなので、俺の1/12スケールバイク模型のお初を捧げようと思います。横目でずっとみていたバイク模型はどんな体験を俺にもたらしてくれるのでしょうか!?

▲箱を開けたらいきなりの「隼」の嵐!!!! 震えるぜ!!!

このキットはデカールはまだ優しそうです。レーサーレプリカになるともうデカールパラダイスオーケストラ状態なものもあります。むしろ仕上げのクライマックスにびし〜〜っと「隼」のインパクトある文字を貼れると思うとワクワクしてきますね。

▲お! メッキシールとマスキングシートが付属。マスキングシートはマジでありがたい

バイク塗装のイメージがまだ全く湧いてないですが、専用のマスキングシートがセットされていてすごく気が楽になりました。カット済みではないので、線に沿ってデザインナイフでカットする必要がありますが、この黄色いシートをみるだけでなんだかやれる気がしてきましたよ!

▲お! クリアーパーツはすでに成型色で塗り分けられている!!! 嬉しい〜〜〜

クリアーパーツは透明以外に、クリアーオレンジ、クリアーレッドの成型色になっており、塗り分ける必要が無し! めちゃくちゃ透明度の高いパーツになっていて俺が塗装するよりも最初から抜群にご機嫌な状態となっています。スタンドには「隼」と刻印されていて気分も上がりますね。

▲シルバーと黒、メッキパーツにより奏でられる「隼」のリズム

本体のシルバーの成型色は美しい光沢仕上げ。この光沢感あるプラが光を反射し、隼の独特の生物的ラインが誇張され、「このバイク、なんだかやべぇぞ……生きてるみてぇだ……」とパーツを眺めている俺に思わせてきます。

▲このパーツが合体してバイクになるんでしょ!? どんなメカだよ!って声が出ちゃいます
▲タミヤの素晴らしい成型精度を堪能できるワンパーツで抜かれたタンクとカウル。カウルは隼の顔。縦型2灯ヘッドライトの左右にエアダクトが配置された特徴的なデザインを見事にプラモで表現しています

パーツを眺めていると圧倒されっぱなし。美しい光沢に流麗なライン。シャープな各部メカディテールとそれぞれが主張してきます。シャープなエンジンやフレームのパーツを、まるで生き物のようなラインのパーツで覆っていくのかと思うとドキドキしてきます。本体の成型色が銀だから、マスキングシートを使って青を塗装すれば、パッケージのツートンカラーに近いものにもなりそうです。パーツも堪能しましたし、俺の初めての1/12バイク「隼」にニッパーを入れてみようと思います!!! またね〜〜。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ヘビーデューティーなカーモデルを/アオシマ 1/24 スバル サンバー ハイルーフ

 G-SHOCKで良い、REDWWINGで良い。これは男のファッション遍歴をのぞいてみると結構な確率で通る「ヘビーデューティーの園」の話。実用性を重視した本物志向のアイテムを身にまとい、服装術を「おしゃれをすること」ではなく「道具で身を包むこと」へ変貌させる世界の話。……とはいっても、それ自体がファッションの見せ方のひとつなんだけど。

 2020年代にもういちど「ヘビーデューティー」が大幅にクローズアップされるとしたら、その代名詞であるアイテムたちは現代的な実用性よりもちょっとレトロ。60/40クロスはゴアテックスよりも性能面では劣るだろうし、クラシックなマウンテンブーツも実際はハイテク素材で構成されたものよりは苦手なシチュエーションがあると思う。ただ、それで良いのだと思う。その方がらしさがよく出るから。

 そんな「らしさ」を持っているカーモデルの一つがアオシマのスバル サンバー ハイルーフだろうか。モーターライズの名残を感じさせるキットでパーツ点数は少なめ。そしてボディーパーツに座席含む内装をバコンとはめるのが少し難しい。説明書には「前から後ろ」と書いてあったが、逆の方がうまくできた……。それにしてもあからさまにタフで、荷物も積めそう。巨大なバックパックを背負って、ワークブーツを履いた男のような感じがする。郵便車バージョンなので、成型色は赤。だからそのまま作ってもかなり満足。だって、郵便ポストのレジン製キットもついているし。というか、テレビとラジカセもある……。

 好きな色に塗って部屋にコロンと置いておくと石のような存在感も出てきますし、動物を飼ったことがある人であれば日中丸まって寝ている姿を思い出させるような可愛らしさがあるので、赤のままでも好きな色でも、バッチリですね。
 個人的にはタミヤの沈んだ色のスプレーを吹いて素朴に仕上げると楽しいですよ。と言いたいです。今回は「佐世保工廠グレイ」でフィニッシュでした。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

10年後も名作として楽しまれるであろうプラッツの傑作プラモ!!「1/72 航空自衛隊 T-1B」

▲戦後初の国産ジェット練習機「T-1」をプラッツのプラモで楽しもう!

静岡の模型メーカープラッツは、海外のプラモを僕らに多数届けてくれる他に、自社開発による飛行機模型も多数発売しています。特に力を入れているのが航空自衛隊の飛行機です。今回ご紹介するT-1もそんなキットの中のひとつで、ドイツのスケールモデル専門誌「Modell Fan」が選ぶ「モデル・デス・ヤーレス2020」も受賞した傑作キットです。メリハリのあるバキッとしたモールドと美しいシルエットのT-1を1時間ほどで組み上げることができる楽しいプラモとなっていますよ!!

▲プラッツからは英国製エンジンを積んだT-1A、国産エンジンを積んだT-1Bがラインナップ。さらにスペシャルマーキングの機体も多数ラインナップされています

T-1は戦後日本の空の歴史、航空自衛隊の歴史においてはとても重要な飛行機です。日本初の国産ジェット練習機として登場し、戦後日本の空の歴史のリスタートと日本の空を守る自衛隊隊員たちの成長を支えた象徴でもあります。そのような飛行機を最新フォーマットのプラモで楽しめるのが、このプラッツのT-1なのです。

▲こちらのデカールはイタリアのカルトグラフ製。細部のカラーリングは塗装の他に、このデカールを貼ることでも再現できます。肝である赤やブルーの発色が素晴らしいです
▲クリアーパーツを除けばランナーは3枚
▲T-1AとT-1Bは本体のパネルラインの細部が異なります。プラッツは各タイプ専用のボディを用意してこれを再現しています
▲塗装指示とマーキング指示はカラーイラスト。特にこのような派手なカラーの時はとてもありがたいです
▲このキットのもう一つの配慮が、プラ製の錘が入っています。この凹のようなブロックがそれで、このプラの塊を入れるだけで、完成後尻餅をつくことはありません
▲内部には機首からのエアインテーク、コクピット、国産のJ3エンジンのノズルがセットされます
▲主翼下面は胴体下部と一体成型。増加タンクの取り付け部のスリットも大きめに取られているので、接着もがたつくことなく行えます。タンク無しのクリーン状態も再現できるパーツも付属します
▲水平尾翼の取り付け角度も、胴体に差し込むだけでピシッと決まるように設計されています。大きな軸でがっちり固定されますよ
▲キャノピー内のフレームが別パーツで付属します

パネルラインを活かした巧いパーツ分割に、気持ちよくパーツが合う精度とまさに文句なしのプラモです。各モールドもくっきりしているので、塗膜やパーツ整形で埋まるようなことはないでしょう。戦後日本の空に新たな歴史を切り開いたT-1を、ストレスなく旨みだけを味わえるプラッツのプラモは、きっと10年後も素晴らしいプラモとして多くの人が楽しめる内容だと思います。

▲各パーチがピシピシとあいますし、パネラルインを活かした分割になっているので、合わせ目も少ないプラモになっていまよ。初めてのジェット機プラモにオススメです

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

デカっ……デカルチャー!「PLAMAX 機首コレクション 1/20 VF-25F」が見せる世界。

 目を疑いましたよ。マクロスシリーズの戦闘機、バルキリーの機首「だけ」の、しかも笑っちゃうぐらいデカいプラモが誕生したのですから。ガハハ。うふふ。マックスファクトリーから12月発売予定、「PLAMAX MF-51 minimum factory 機首コレクション VF-25F」のサンプルが届いたので、早速組み立てましたよ。ご覧あれ。

▲G(ジャイアント)・機首!!

 手に持ってるのは機首の裏側。これだけでテレビのリモコンよりデカいです。キャノピーもデカい。えっ……デカすぎる。プラモデル界のマクロス級ですわ。1/20スケールの戦闘機、恐るべし……。このままでは「デカい」と言ってるだけで一万字突破するので、今後の文章全ての末尾に「しかもデカい」が省略されてると思ってください。

 しかしこの大きさだと、キャノピーや機体表面の、なめらかな流線型の機微がよくわかります。緩やかなパーツの線と線が、弧を描いて面となり、3次元的に複雑な面を構成している様が、大きいからこそよく感じられるます。大きいというだけで、モノの見方が変わって楽しいのです。

▲主脚は各支柱が一体成型になっていて、パーツが数がとっても少ないです。

 その上、主脚も脚収納庫もディテールはマシマシ。完全にデカさの恩恵ですね。

▲流し込み接着剤でガッチリ接着するために、ノリシロの形状がよく考えられています。組み立てる途中でそんな工夫を発見するのもオツなものです。
▲逆にコックピットは11パーツでさらにディティールマシマシ。操縦桿のグリップ、小さなスイッチまで彫刻されているのです。
▲コクピットをボディでバゴっと挟み込みます。豪快にプラスチックをくっつけていく気持ちよさ満点。
▲金属のシャフトが主脚の支柱と、プラモデル自体の支柱を兼ね、ちゃんと自立するナイスアイデア。露出したメッキが質感バッチリです。
▲G(ジャイアント)・組立完了!!

 ブースに収まりきらなくて、我が家の階段で撮影しました。全長34センチ!正しさとは!迫力とは!それが何か見せつけてやる(でっけぇわ)。

▲下から覗き込むのがとにかく最高。

 格納庫のメカニカルなゴチャゴチャ感と、機体裏側のシュっとした未来的パネルラインが最高のアンサンブルを生み出しております。

 しかし、機首だけ切り取ったこの姿、まさに望遠レンズで切り取った構図のスナップのような、戦闘機の美味しいところだけを切り取ったような、画期的なプラモと言えましょう。

 良い写真はときに、写していなくてもフレームの外に広がる世界を我々に想像させるものです。胴体や翼、ジェットエンジンが見え無いからこそ、その断面の先にあるはずの世界を幻視させてくれて、何だかソワソワ、ワクワクするのです。まるで「サモトラケのニケ」みたいですね。

▲ゴージャス☆デリシャス☆デカルチャー♪

 それに何と言ってもminimum factoryの1/20スケールの人物プラモを脇に置くと本っ当に絵になります。笑顔になります。ふふふ。

 そんなデカさと痛快さに笑っちゃうプラモデル、「機首コレ」ですが、来週は付属のシールを貼って完成編といたします。お楽しみに!

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

アニメプラスチック 『宇宙よりも遠い場所』としらせ編

▲出典:海上自衛隊ホームページ

 『宇宙よりも遠い場所』(以下「よりもい」)というのはとてもすごいアニメだったので、おれはどうしても劇中に登場した南極観測船・七神屋ペンギン饅頭号を手元に置いておきたくなったのだ。しかしペンギン饅頭号はなかなかグッズとして売り出されなかったので、モデルになった砕氷艦・しらせのプラモデルを買うに至ったのである。

 「しらせ」には初代しらせ(AGB 5002)と二代目しらせ(AGB 5003)があり、おれは二代目のAGB 5003のほうを慎重に注文し、届いた箱を開けて出てきたのは南極の大地のように真っ白なプラスチックだった。小学生のころにHGのガンタンクとストライクルージュしか組んだことがなかったおれは「さすがにこれは無理」となってしまい、クローゼットに放り込んだ。2018年の夏だった。

 そのままクローゼットの中で3年熟成させていたしらせのプラモデルを2021年の夏になってようやく取り出すきっかけになったのは、よりもいのキャラクターフレグランスが発売されるというツイートを見かけたことで、「せっかくなら三宅日向の香水とペンギン饅頭号を並べたいじゃないか」と思ったのだ。『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』(2019年のアニメ)を見てプラモデル熱が再燃し、ガンプラやガンダムではないプラスチックで遊んでいたおれは、ふたたびしらせと対面した。

 三年間の準備期間を経たおれの目で見ると真っ白なプラスチックはおおまかに塗るべき色ごとにパーツが分けられているように見える。説明書の組立図よりも小さいような細かいパーツもあるものの、流し込み接着剤と瞬間接着剤を使い分けられるようになったおれにとってもはや恐るるに足るものではない。

 組み立て説明書(と水転写式デカールの貼り方説明書)には上級者向けに「ちょっとした工作でよりリアルに仕上げられるよ」という挑戦状……もとい、アドバイスが載っていた。このあたりの丁寧さはこれまでやってきたプラモデルにはない親切心で、よかった。なんとでもなるはずだとやってみたらなんとでもなったので、おれもプラスチック上級者を名乗ります。

 最近、第63次南極地域観測隊出発の様子をYoutubeライブ配信で見ながらじぶんの作ったプラモデルを眺め、なかなかよくできているじゃんという深い満足を得た。机の上にいつでもペンギン饅頭号があるというのは、そういう生活である。

びびびんご

1993年生まれ。求職中。アニメとマンガとゲームがすき。

紳士の生き様でプラモが作りたくなる!/「第二次世界大戦紳士録」

▲本書の山本五十六がかわいすぎるのだ

「今日の授業のテーマは、「卑弥呼は美人だった」でしょうか? です」。

小学3年生の時、この授業によって僕は歴史の面白さに目覚めました。小学3年生ながら、教室では「鏡があれだけ出土するのだから、相当自分に酔ってたはず……だから美人!」などその時代に出土したものなどから想像力を膨らませて、卑弥呼の容姿をみんなでイメージしました。卑弥呼が美人かどうかをみんなで探っていると、2〜3世紀の日本の姿が少しずつ見えてきます。そこでみんな気がつくんですね。「あ、先生は卑弥呼を調べることで当時の日本の姿をみんなに知ってほしかったんだ。これが本当のテーマなんだ」って。

▲ドイツ軍と日本軍の紳士の生き様をコミカル&シニカルな漫画で僕たちに見せてくれる最高の1冊!

今回ご紹介する「第二次世界大戦紳士録」はまさに「人」から歴史に触れていける素晴らしい1冊です。漫画家・ホリエカニコ氏により描かれる、ドイツ軍と日本軍の男たちの生き様を知ることで、その時代の空気感も感じることができます。難しい本を読む前に、ドイツ軍と日本軍のキーマンたちをこの1冊で知ると、あなたの中でイメージができると思います。その後で類書を読んだ時、きっとスポンジのように新しいことが吸収できると思います。

▲こんなにかっこよく紳士を描いたと思ったら……
▲漫画ではコミカルに激変! このギャップが最高

超イケメン紳士から漫画内ではコミカルなイラストに激変します。これによって紳士たちがいきなり僕らの身近な存在に感じられます。結構過激な内容でも、ギャグっぽく見せてしまうホリエカニコ氏のセンスが炸裂しまくり!! そして「こんな小ネタまで調べているの本当にすごいなぁ」と感嘆してしまう内容が各人物に盛り込まれており、楽しみながらその人物の定番イメージと本書ならではのホリエカニコ氏の漫画で示されたイメージをインプットすることができます。

▲涙なくしては読めない日本軍編。俺は今、日本軍のプラモが作りたいぞ!
▲多聞アニキ……大好きだぜ

敗戦国のドイツと日本の紳士たちだけに、悲しいクライマックスを迎えている人物も多数います。それ故になんだか距離をおきたくなるかもしれません。しかしそんな彼らの生き様をこうやってコミカル&シニカルにホリエカニコ氏が描いてくれた本書は手に取りやすく、僕たちと紳士の距離をとてつもなく近くしてくれると思います。僕は山口多聞に改めて興味が湧き、空母「飛龍」が作りたくなってきました。そして彼が飛龍と共に散ったミッドウェー海戦についても調べたくなっています。こうやって一つのイメージが複数の道を作ってくれるから歴史って面白いです。プラモも歴史も楽しみたくなる紳士の背中が満載の、「第二次世界大戦紳士録」。超オススメです。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

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