

バッカニアという飛行機があって、これが私のいちばん好きな飛行機である。まるまる太ったパツンパツンのボディ、超低空を飛んでソビエトの水上戦力に核を叩き込むために作られたというその出自、そしてなにより、この飛行機のフォルムはプラモデルにされることを徹底的に拒んでいるという点……。なにもかもが、かっこよすぎる。
上下に割っても左右に割ってもそのアウトラインをきれいに再現するのがひたすら難しく、工作にしても塗装にしても、これで絶対うまくいく!というイメージが持てない。もちろん、メーカーもこの飛行機に何度か挑み、決して勝利したことはない、と断言してしまおう。

そんなバッカニア、日本でじっくりと読めるまとまった資料は『世界の傑作機』くらいのもんだったのですが、このたびモデルアートから発売された写真集はまさに青天の霹靂。いろんな塗装、いろんなマーキングはもちろん、中身も含めてじっくり眺められてしまうというのだから、モデラーにとっては「これで作れる!」と思っちゃう大事件なんですよ。そう簡単に作れないんですけどね。

掲載された写真はフィルムとデジタルが入り乱れていて、かなり古いものも多いため色あせていたり、そもそも天候が写真向きじゃないものも多くてここから塗色を読み取るのはかなり難しい。でもいいいんですよ。だってこんなにカッコいい飛行機の写真が延々眺められるのですから。めくってもめくっても、バッカニア。分け入っても分け入っても、バッカニア。ああ素敵。

そんなところ覗いてどうするのよっ!と思うようなディテール写真もバリバリ。エアフィックスのプラモデルで初めて知った「えー、そこってそうなってるんだ!」というのを実機の写真で「そっくりじゃん!」と再確認する倒錯した喜びもありますが、まあとにかくなんというか、この写真集があればバッカニアのプラモを作るモチベーションがもりもり湧いてくるわけですよ。そう簡単に作れないんですけどね。

どの飛行機にも似ていない、ブラックバーン・バッカニア。この飛行機が好きで好きで仕方ないあなたはこの写真集を買うしかないし、おそらくまた長い間「このバッカニアならカンペキに組めるぜ!」なんて新製品は発売されないことでしょう。ちょっと手間のかかる、でも力強くて美しい人。そんな人に惚れてしまった僕らのための、極上プレゼント。しかと目に焼き付けて、こんどこそビシッと作ってやるからな!という気持ちになりましたよ。みなさんも、ぜひ。