ハイパーアジア のすべての投稿

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

アニメキャラクター・ゲリラ・ミリタリー・プラモデル!!/「ダグラム 太陽の牙セット」の魅力。

▲ダグラムのキャラたちが、最新のミリタリー・プラモになりました。

 「アニメ」という、画面の奥にある物語。キャラクター達が生き生きと動き回る、触れることのできない平面的な世界。それと対を成すのが「プラモデル」。動きはしないけれども、自らの手で組み立て、その物語に干渉し、立体的に鑑賞することができるキャラクタープラモデルは、アニメーションと兄弟のようなものだと私は考えます。

 数あるロボットアニメの中でも抜群にミリタリー色の濃い『太陽の牙 ダグラム』。その登場人物たちが、1/72スケールのミリタリーミニチュア的なプラモデルとしてマックスファクトリーより登場しました。物語の主人公たち「太陽の牙」主要メンバー10人と、ホバークラフトの「グランド・サーチ」が立体化された本作。ミニチュアは指の第一関節ほどの小ささなのに、本当~によく出来ています。

▲服のシワがしっかりと彫ってあり、陰影がとっても豊かです。

 ”よく出来ている”というのは、彫刻がとても緻密で……というのは勿論なのですが、それよりも”雰囲気が良い”というニュアンスの方が強いでしょうか。10人それぞれの顔つき、骨格、立ち振る舞いなど、キャラクターとしての個性が1/72スケールのミニチュアとしてうまく取捨選択され、とても生気を感じる造形なのです。

▲筋肉から贅肉まで、肉づき表現のデパートですよ。

 太陽の牙の戦闘員は、その露出度の高さがチャームポイント。半裸とはいかないまでも、だいたい3/4裸で日頃からゲリラ活動を繰り広げています。その露出した肌のなめらかな造形と、面積の小さな戦闘服のくたびれ感のコントラストが楽しいです。ミリタリーミニチュアとしてはこれ以上無いほどユニークでしょう。

▲左からダンシング女子、インテリメガネ男子、顔の濃いアウトロー系男子。こんなに小さいのに顔がちゃんと違います。

 とくに面白いと感じるのが顔の造形。アニメキャラの立体化なのですが、平面でペターっとしたアニメキャラ然としていません。目元の掘りが深く、現実の人間に近い顔つきをしているのです。アニメ・ダグラムのキャラデザもそれなりに目は小さめで、リアル寄りではあるのですが、それよりも更にリアル寄り。かといって、実際の人間の顔ともちょっと違うような、なんだか実在していそうな、2.5次元的な造形バランスの良さがとても面白いと感じます。
 さてさて、造形の素晴らしい太陽の牙セットですが、これだけ小さいのにプラモデルとしての面白さまで、ぎっちり詰まっています。見たことのない分割のパーツと、それによる組み立ての工程はエキサイティングで最高です。エキサイティング、やっていきましょう。

▲このビッグEガンと肩の筋肉のスキマよ!

 入り組んだ複雑な造形の表現と、色塗りのしやすさを両立させるため、機転の利いた美しいパーツ分割が多々あります。そのうちのひとつがこちらのチコちゃん。いたずらにパーツを増やしてディティールを追い求めるのではなく、わずか2パーツで簡単かつ豪快かつ必要十分な彫刻が楽しめるナイス巨漢です。

▲キャナリー姐さんの分割もお美事。機銃に右手と右足がくっついてますが!?

 もし手と足と銃がバラバラだったら、このサイズで膝立ちポーズの接着はなかなか難しいでしょう。塗装する人にとっても、接着前に太ももの塗装をしておけば塗り分けが楽ですね。

▲最強のゲリラ、クリン君のピンとした姿勢。育ちの良さが滲み出ております。

 巧みな分割のおかげで、誰が組んでも固定ポーズがバシっと決まります。姿勢が良いキャラはキリッとカッコよくなりますし、ダルッとしたポーズの奴はアウトローな雰囲気がキマります。

▲ ダグラム(別売)が横に立つと最高の景色になります。

 既存ダグラムシリーズのプラモと同スケールなので、並べて遊ぶと人数分、間違いなく10倍は楽しいです。クリンがダグラムの横に立てば、その巨大さとコクピットのサイズ感から乗り込んで操縦できそうな雰囲気がよく伝わります。逆に「闘志の象徴」としてのダグラムが横に仁王立ちしているだけで、クリン達まで強くカッコよく見えてきます。
 そんな「ロボットと人間の物語」としてのダグラムの魅力を模型によって体感出来る「太陽の牙セット」は情景プラモとして大変素晴らしい出来栄えとプレイバリューを秘めています。ダグラム好きにはたまりませんし、原作をまだ知らずともダグラム入門として完全にアリです。
 プラモデル単体でも十分楽しめる上に、ロボットと並べることで雰囲気のある情景が生まれる楽しさは、アニメや漫画を鑑賞する楽しさにまったく引けを取らないのですから。

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存在しない思い出の模型/タミヤのアクセサリー・プラモデルを後部座席に乗せて。

 人間は時に、乗ったこともない、見たこともないモチーフのプラモデルを完成させます。私にとって、amtの1967年式マスタングがそれです。ボディには気に入った色を吹き、内装はネット画像検索でピンと来た、黒い革張りコーディネートを参考に塗ってみました。

 あとはボディをシャーシに被せるだけでいよいよ完成。しかし、こうやって内装まで色を塗ってみると、「実際にこんな車に乗ってみたいな」という思いが強く沸いてくるもんですね。しかし、そんな気持ちさえ模型に出来るかもと思って、もうちょっと手を加えることにしたのです。

▲そこで引っ張り出してきたのが、組み立てだけしてしばらく寝かせておいた、タミヤのキャンパスフレンズセットⅡ。

 こちら、服やアクセサリーの「シワ」のプラモデルとでもいうべき素晴らしい造形の逸品。プラスチックであるものの、触るとへこんでしまうかのような彫刻。布や革などの素材ごとに質感表現が違っており、実感たっぷりな点が最大の見どころといえるでしょう。そしてこれに色を塗ることで、さらにその質感をブーストさせてみたいと思います。

▲まず、ホワイトの水性塗料(写真はファレホ)を下地として塗装します。

 私が使ったのはファレホという水道水で薄められる塗料です。代替品としてはクレオスの水性ホビーカラーやシタデルカラーなどでも良いでしょうし、スプレーが吹ける人は白い缶のサーフェイサーを吹いた方が楽かなと思います。

▲今度はシャバシャバな水性塗料をダクダクに塗ります。

 凹んだところに塗料が溜まるように塗りたくって陰影を強調する塗装方法を採用します。ギターケースの塗装には、シタデルカラー コントラストの「GORE-GRUNTA FUR」という色を使いました。簡単に陰影のあるオレンジ系の革の色になって、かなり面白いです。

▲紙袋と鞄にも、シタデルカラーを採用しました。

 ちょっと陰影が大げさかなという気がしますが、実際に肉眼で見ると存在感があって、これはこれでなかなか良いと思います。

▲ 塗料が乾いたら、後部座席に塗装した小物だけを乗せて、
▲ボディを被せたら完成です。覗き込まないと全然見えませんけどね。

 車といえば思い出すのが、社会人ニ年目の時にちょっと頑張って買った初めての車のこと。マスタングみたいなクラシックカーではなく、ごく普通の大衆車でしたし、今は手放してしまったのですが、バンド活動でメンバーと機材を乗せてライブやら練習やらに奔走したり、彼女を乗せてドライブ(という名の送迎)に繰り出したり、夜中にコンビニまでビールを買いにすっ飛ばしたり、色々な思い出がありました。
 キャンパスフレンズセットⅡに付属のギターケースやカバンなんかは、ちょっとだけ自分の思い出と重なる部分があったので、小物だけでもと思って車に乗せてみたのです。若い頃、何かの間違いでこんなにおしゃれなマスタングにでも乗れていたら、それもまた違う楽しい思い出になったのかもしれないなと、存在しなかった青春に思いを馳せたのでした。

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プラモのエンジンから感じるパワー/amt 1967マスタングGTを組み立てて。

▲純白の美しい樹脂……!amt 1/25 1967 マスタングGT ファストバックを組み立て始めました。

 今日はなんだか、カープラモを作るモチベーションが高い。それはたぶん昨日、映画「マッドマックス」を見たから。バイオレンス!車!バイク!あとは虚無!みたいな話なんですが何故か元気を貰えるんですよね。純粋にカーアクションがかっこいいというのもあるんですが、「とにかくエンジンにガスを入れて回せ、生きる為に。死ぬ為に」的なハードボイルド感に突き動かされるものがありますね。そしてV8エンジンを積んだ車が、生命力の象徴とでも言いましょうか、とても魅力的なガジェットに思えてくるのですよ。

▲まず最初に組み立てるのは、そんなV8エンジン。

 「自動車とは、ボディでもシャーシでもなく、まずエンジンである」と訴えてくるかの様な存在感です。全体的にパーツ数が抑えられてはいるのですが、エンジン回りだけはパーツ点数が多く、とても丁寧に立体化しているように感じます。さらに、接着すると見えなくなってしまうというのにシリンダーブロックの8つの穴までちゃんと造形されているのです。確かに、ただ単に見えるところだけ作っただけでは既製品のおもちゃと一緒であり、これぞプラモデル組み立ての楽しさの真髄と言えるかもしれません。

▲シャーシの裏がイイんです。

 エンジンを組み立てると、今度はそこからシャーシが生え、エグゾーストパイプが生え、シャフトが生え、まるで夏休みに毎日水やりした朝顔みたいにどんどん成長していきます。車体裏の狭い空間に棒状のパーツ群を折り重なる様に接着していくと、見る角度によってさまざまな表情を見せる複雑な立体となります。実車では楽しめない、模型での景色ってズバリこれですね。

▲筆の先に注目。

 さて、組み立てが終わって説明書の塗装指示に目をやると、Zの次に「AA:Ford Engine Blue」という色指定が。ネットで検索してみると、確かに初代マスタングのエンジンなどはフォードのコーポレートカラーで塗られており、真っ青なんですね。勉強になりますね。

▲そんなわけで黒いサーフェイサー(下地塗料)を吹いてから筆塗りです。

 手持ちの塗料の中で、箱絵のエンジン色に一番似ていたシタデルカラー・マクラーグブルーをチョイスして塗りました。
 そして、エンジンの頭にメッキパーツのエアクリーナーと、シリンダーカバーを被せて完成です。中身が。これだけで充分カッコいいね。しかし、こんなに小さいのにその何倍もある車体を動かす力を持ってるんだからエンジンってすごいですね、改めて。
 プラモデルのエンジンは、今にも動き出しそう……という感じでは無いし、細部まで完全再現されている……わけでは無いのですが、ただのトイでは無い、エンジンが持つ機能性、そして美観とは何ぞやという答えを凝縮して、デフォルメして、丸裸にして、教えてくれた気がしたのでした。

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音楽聴いて、プラモデル作る/オリジナル・ラブとamtのマスタングGT。

▲私の好きなミュージシャン、オリジナル・ラブ。そのアルバムの中で一番のお気に入りが、この4thアルバム『風の歌を聴け』(’94)です。

 3rdアルバムまでのアダルトでJAZZっぽい、まるで深夜の首都高を流すオシャレなポルシェの様なサウンドから一変、ソウルフルで骨太、まるで日差し照りつけるアメリカのルート66をひた走るマスタングの様なサウンドに化けたこのアルバムのグルーヴは「本物」です。それは当時新しく加入した小松秀行の伸びやかなベースと、サポートとして参加した佐野康夫のタイトなドラムがガッチリ噛み合い、紛れもないブラックミュージックの音がするようになったため。まるでガンダムの横にガンキャノンとガンタンクが並んだ様な抜群の安定感。
 象徴的なのは1曲目の「The Rover」。ウィルソンピケットの「ムスタング・サリー」(’66)のようなガツガツ前に進むグルーヴの古き良きソウルを、90年代式にアップデートしたとも言える豪快なファンクネスが楽しめる珠玉の1曲と言えるでしょう。

 さて、そんなアルバム『風の歌を聴け』のアートワークで大大的にフィーチャーされているアイテムがフォード・マスタングです。先日、久々にCDを引っ張り出して歌詞カードをちらちら見ていたら、今までは全然気にもならなかったのに、さっぱりした水色の、ビシッとしたフェイスのマスタングが何故だかとても気になるのです。昔バンドマンだったのでミュージシャンが使ってる楽器が気になるって事はよくあったんですが、ここ数年プラモデルを作るようになったら、そのアートワークで使われる小道具大道具的なオブジェクト、それに持たされた意味まで含めて気になるようになっていたのです。

「マスタングのプラモデルが欲しいかも。」

▲そう思った時には既に、amtの1/25マスタングGTファストバック1967が手元にありました。判断が早い。

 アルバムアートワークで使用されたマスタングはコンバーチブル(オープンカー)でしたが、探しても売ってなかったので、まぁ顔が同じならいいやと思ってファストバック(ハッチバック)のプラモデルを購入しました。ほぉ~こんなカタチなのか~と、歌詞カードの写真と見比べてみたりして、まずは楽しみます。

▲しかし、よく見比べてみると、どうやら微妙にフロントグリル周りの形状が違う。

 よくよく調べてみると写真のマスタングは1966年仕様であることが判明。ああ、そんな違いがあるのだなぁ、と今までまったく知らなかったマスタングに少しずつ詳しくなっていく自分。ふと、高校生の時にピチカート・ファイヴ(オリジナル•ラブの田島貴男が一時期在籍していたグループで、洋楽のサンプリングや名曲のフレーズを引用して作る曲も多い)が好きで、その元ネタを調べまくっていた時の自分が重なります。

▲色ぐらいは寄せようと思って、一番それっぽいメカトロウィーゴカラーの【みずいろ】をチョイスして買ってきました。

 本物には触れたことも見たことも無いので、私にとってマスタングはガンダムみたいな存在なのですが、さて、風のように爽やかなみずいろでプラモデルのマスタングを完成させたら、どんな歌が聴こえてくるのでしょうか。これからが非常に楽しみであります。

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0.15mm幅で、真っ直ぐに/プラモデルをキレイに切断するなら「タミヤ 精密ノコギリ」

▲ノコギリの組み立てキット!

 プラモデルをカットしたい。小さな切断幅で。具体的に言えば0.15mm幅。そして真っ直ぐに。そんな時に役に立ったのがこちら。タミヤ 精密ノコギリⅢ (カット用)~FINE CRAFT SAWS Ⅲ (THICK-BLADED TYPE)~であります。英語呼びだとハイパーカッコいい。

 タミヤ精密ノコギリは3種類あって、Ⅰはカットもスジボリもおまかせ、0.1mm幅の万能タイプ。Ⅱはそれよりも歯の間隔が細かい0.1mm幅のスジボリ用。そして今回紹介するⅢは、切断するのに適した0.15mm幅のカット用です。私はこれらを勝手に、竜馬、隼人、武蔵と呼んでいます。

▲精密ノコギリⅠ(竜馬)の紹介記事。

▲ツインスターの刻印がオシャレ。

 ランナーにくっついたノコギリを外し、柄をパタリと折り畳めば完成。プラモデルみたいじゃないですか。
 柄の部分を3つ折りにすることによって、刃の部分は薄く、且つ持ちて手が厚くなり強度が出ます。このため、ぐにゃぐにゃせずに安定して真っ直ぐ切断できるようになっているんですね。賢い。

▲デザインナイフに取り付ければ完璧。
▲今回の切断目標。

 ハセガワ・1/20グローサーフントの脚部です。接着剤で組み立てたところ、合わせ目に隙間や段差が出来てしまいましてね。合わせ目は消したいんですが、隙間を埋めてヤスリで平すのも何だかそういう気分じゃないし、かといって合わせ目は気になるのです(なんてワガママな奴)。
 そこで、合わせ目を逆に切断してしまえば良いのではという浅はかなアイデアを思いつきます。切断したラインは自動車のボンネットやドアのパネルラインのようなものと(無理矢理)想定して、幅4mm。それを1/20にすると0.2mm。しかし0.2mm幅のノコギリは近所の模型店で売っておらず、その近似値としての0.15mm幅のノコギリが欲しかったというわけなのです。

▲ノコギリの形状は4種類あるので、プラスチックの形状に合わせて使用可能。
▲切れ味もよく、サクサク切断できます。
▲もとも合わせ目だったところということもあり、真っ直ぐ切断できました。
▲塗装するとこんな感じです。

 うまくいきました!手首でノコギリを引くと軸がブレるので、身体を半身で構え、肘で引くというノコギリの基本が大事ですね。しかし、誤魔化しの技術ばかり上手くなってしまうな私……。まぁ楽しかったのでヨシ!

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ドライブラシによるプラモ・メイクアップ!/メカニカルな雰囲気、出していこう。

▲ハセガワ・グローサーフントのうなじ。

 メカニカルなディティールが密集したプラモデル。私にとってご褒美です。銀色のドライブラシ塗装で簡単にカッコよくなるので。目的は、ディティールのエッジに明るい色を付け、凹みには影色を残し、立体感を強調すること。化粧で言えば、チークやアイシャドウを施すようなものでしょうか。プラモデルも化粧で化けるんですよね。成人式で久しぶりに会って見違えた同じクラスだったあの娘(誰?)のような感動をここに……。

▲まずはドライブラシ塗装の下準備。表面をつや消しにします。

 塗料を乗せるには、下地処理をするとうまくいきやすいです。ドライブラシをする場合は、表面を粗(あら)にします。サーフェイサーや、つや消し塗料で表面をつや消しの状態にしてやると表面が少しザラつくので、塗料の粒子が表面にひっかかって色がつくというわけです。ファンデーションみたいなもんですね。
 今回はプラスチックのダークブラウン色を生かしたかったので、プラスチックに直接つや消し塗料をエアブラシで吹きました。缶スプレーのつや消しや、黒のサーフェイサーでもよいですね。

▲ガサガサッ!

 半乾きの筆で塗料をなすりつけるのがドライブラシです。まず塗料を、硬めの筆(ドライブラシ専用筆や、使い古した筆をカットしたもの)に半分ぐらい染み込ませたら、その8割をキッチンペーパーになすりつけて落としてしまいます。
 そして今回使うのは水性塗料シタデルカラーの「リードベルチャー」という鈍い銀色。これが大のお気に入りでして、こいつをブラックやダークブラウンで塗装したメカニカルな部分になすりつけると、カーボンやオイルで煤けた車のエンジンルームのような雰囲気が醸し出されるのです。

▲ガシガシッ!

 あとはエッジの部分を撫でるように塗料をなすりつけてやればOK。あまり奥まで筆を入れたり、ムラの無いようにまんべんなくやると意味が無いので、ホドホドのところで作業を止めます。つかもうぜ塩梅。

▲バシャバシャ!

 ドライブラシだけでも十分にカッコ良いのですが、さらにその上から墨入れ、というよりフィルタリング(ここでは水っぽい塗料をまぶして全体の調子を変えること)をするとくぼみに塗料が溜まり、立体感がさらに強調されて好きです。私としては水で洗ったり薄めたりもできるシタデルカラーのナルンオイルが大推薦です。

▲こぼさないように注意して作業しましょう。
▲メカッ✨

 乾かして完成です。冒頭の写真に比べて、抜群にメカっぽく化粧できたな!と自画自賛してしまう出来栄え。プラスチックが、煤けたダイキャスト合金や、オイルにまみれたシリンダーのようになったんじゃないでしょうか。まさにドライブラシ塗装は、マシーネンクリーガーが持つ、「メカニカルな”雰囲気”を突き詰めたリアルらしさ」にぴったりな、雰囲気の出る技法だなと思ったのでした。

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想像力を掻き立てるプラモデル。ハセガワ マシーネンクリーガー 1_20 グローサーフント。

 様々な業界で囁かれる慢性的な人手不足。労働力としてのAI・ロボットへの待望論。耳をすませばディストピアSFの世界がガッシャンガッシャンと足音を立てて近づいてくる気がする2022年1月。そんな時、私はハセガワのプラモデル「マシーネンクリーガー ヒューマノイド型無人邀撃機 グローサーフント 1/20」を組んでみたくなったのです。ガッシャンガッシャンと箱の中から音がした気がして。

 マシーネンクリーガーシリーズ、雑誌やネットで見かけてはいたのですが組み立てるのは初めて。約900年後の地球を舞台にした、ちょっと影のありそうな世界観。その片鱗に今、触れてみたいのです。そして何よりプラモデルは巣篭もり趣味に最適。

▲焦げた餅のようなカタチのプラモデル。プラモと焦げた餅は食べてはいけない。

 パーツは黒に近いダークブラウン一色。黒光りして綺麗です。クリアパーツも一部付属しています。そしてランナーを見て確信しました。グローサーフントは、ヌメっとした曲線の装甲からチラ見えする、ガチャガチャした細かなパーツ群が、私の血を滾らせるロボットであることを。

▲脚の節が1個多い。

 トリの脚のような、多関節脚部。ヒトのようで、ヒトならざる構造のロボット。燃えます。そしてこれは完成したときにわかるのですが、このトリ脚のお陰で重心をとりやすく、かなり安定して2足で自立します。驚きました。

▲900年後もボルトナット留めは有効のようです。まだインチネジはあるのでしょうか。

 ナットのパーツが使いきれないほど付属しております。指定取付箇所は10数箇所ですが、自由に機体をナットだらけにすることが可能です。板についているナットを切り出すのに、両刃で先が細くて底がフラットな、グッスマの極薄刃ニッパーがとても便利でした。

▲ピンセットで細かいパーツを接着している時が一番「プラモデル作っているぞ……!」という実感が湧きますね。
▲見よ、フレキシブルパイプ!ぐにゃあああ。

▲さらに瞬間接着剤で、ゴムチューブを接着します。

 様々な太さのパイプやチューブが、メカメカしさを演出します。小さなナットの取り付けもそうですが、多種多様な形状の部品を切り貼りしていくうちにどんどん密度が高くなっていき、ちょっと面倒だと感じながらも気分は徐々に高まっていきます。手が止まりません。

▲ギギギ……デキタ……。

 無骨さ。不気味さ。アンバランスな四肢。機械的彫刻の複雑さ。装甲のなめらかさ。協和と不協和が織り成す、情報過多なアンサンブル。それが2本足で立ち上がった時、電撃が走りました。私の脳に。グローサーフントの電子回路に。炉には火が入り、動力はゴンゴンと唸りをあげ、メラメラと排熱が始まり、関節のモーターはキュルキュルと高周波を鳴らし、センサーカメラはジャキジャキと焦点を合わせ、サーチライトがビカビカと光り始めたのです。「オマエハダレダ……!」なんということでしょう!

▲ここまで組み立てるのに半日ぐらいかかりましたが、満足度はとても高く、素組みで充分にかっこいい。

 付属の解説書には、グローサーフントにまつわる様々なエピソードが散りばめられています。無人兵器部隊の頂点を極めた機体であったとか。AI損傷によって度々暴走を起こしたとか。戦略的価値のない小島をを防衛している所属不明機があるとか。停戦後に小さな遊園地で子供たちに風船を配る機体が目撃されているとか。

 恐ろしいほどに想像力を刺激するパッケージです。「この世界は想像次第なんだぜ。」と、語りかけてくれるようなプラモデルでありました。

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ブルータス見て、バストールのプラモ塗る。昆虫色はクリスタルカラー重ね塗りが面白い。

 BRUTUS(ブルータス) 2021年12月15日号は昆虫特集。南米に生息する「オオニジダイコク」という綺麗な虫が、バシッとした白背景で表紙を飾っておるのですが、この虫、以前私がPLAMAXのサーバインを塗装する時に参考にした虫ではありませんか!

 私は結構プラモ脳なので、魚とか虫とか派手なキノコとかを見るとつい「その時、ふと閃いた! このカラーリングは、プラモの塗装に活かせるかもしれない!」とか思ってしまうんですが、今号のBRUTUSを読み進めてもそう。ふと目に止まったオオセンチコガネというピンクのような、マジョーラカラーのような、不思議な色の虫!これを見た瞬間、この虫はバストール……!と思って、家に保管してあったバストールのキットを急に作り出したのでした。キッカケってこういうことか~~。

▲私、オーラバトラーで一番好きなのはバストール。たまに再販されますよ。

 さて、昆虫っぽい色の塗装をするのに個人的に気に入っているのが、クレオスのクリスタルカラーというラッカー系塗料。これを、エアブラシで重ね塗りして、グラデーションをつける手法が好きなのです。クリスタルカラーはとてもユニークなメタリック塗料で、黒系の(明度が低い)下地だとメタリック粒子が派手に発色し、白系の(明度が高い)下地だと粒子が地味に発色してパールコートのような質感になります。昆虫の写真をよ~く観察しながら、フィーリングで色を重ねていきます。実験大好き。

▲フィニッシングサーフェイサー1500ブラックをエアブラシで吹きました。

 メタリック塗装はより平滑なツヤ有りで下地を仕上げることで、よりメタリックらしい光沢を得ることができますが、今回は敢えて艶消しのサーフェイサーを下地に使い、艶消しメタリックな方向で塗装してみることにします。乾燥するのが早いので……。

▲次に満遍なくクリスタルカラーの「ルビーレッド」を吹きます。めちゃいい色!
▲次に、四肢の先の方にだけ「トパーズゴールド」を吹きました。ゴージャス!
▲最後に、ゴールドを全部潰してしまわないように、四肢の先にトルマリングリーンを吹きました。ちょっと地味な変化か?

 狙った色とはかなり違う色にシフトしましたが、これはこれで面白いのでヨシとします。クリスタルカラーは重ね塗りしてどんな色が出てくるか予測しづらいので、逆にそこが面白いですね。この偶然(アクシデント)から得られるものが、いきあたりばったりモデリングの醍醐味であります。

▲コクピット周りは緑がイイよなやっぱり。

 クリスタルカラーはエアブラシ推奨と書いてありますが、無理やり筆塗りしてみます。筆ムラ不可避!そこで逆に、筆ムラで模様を書くようにして塗ってみます。私はイイと思いますよ。

▲できました。バストール、とぶ。

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プラモデルの時間を止める。「雨の日の車」の模型を作った話。

 雨の日のドライブが好きです。フロントガラスの水滴越しに滲む信号機の光。密室感。ワイパーがピシーッと水を切っていくそのライン。水溜りにバシャッと入る感覚。全く濡れずに移動できる快適さ。特にカーステレオで、雨にまつわる曲を流している時が最高。この時期なら、荒井由実の「12月の雨」からの~山下達郎「2000トンの雨」からの~David Ruffin「Let Your Love Rain Down On Me」、これです。この流れが最高です。ルーフにポツポツと当たる雨音がレコードノイズのような心地良さを演出してくれること請け合い。移動DJブース営業車ブチ上がり状態です。

 しかし雨はやがて止みます。そこで模型です。模型は時間を止められます。雨の日の私の高揚感までも、模型は留めておいてくれるのです。雨が止んだ日、私は「雨の日の車」の模型を作りたくなったのです。

 さて、ここに以前私が奇跡的速さで完成させた「フジミ模型 1/24 フェアレディZ S30」のプラモがあります。私が乗っていたのは営業車のプリウスなのですが、細かいことはいいでしょう。ワイパーをブチっと取り外しまして、「動いている瞬間」風の角度で再接着しました。

▲紙皿と歯ブラシとUVレジンを用意します。

 「UVレジン」とは、ねばりけのある透明度の高い樹脂で、紫外線を当てると短時間で硬化するクラフト材料です。太陽光に直接当てると数秒で硬化するので、太陽光の入らない部屋で作業します。歯ブラシは私の愛用する「アクアフレッシュ レギュラー ふつう」でございます(ウェーブの形状がかっこいい)。

 まずUVレジンを紙皿に適量出し、歯ブラシで薄く伸ばしてから毛先全体に少量のUVレジンを付着させます。

▲水滴っぽくなれや……と念じながら、バシッ!バシッ!と歯ブラシでボディを叩きます。
▲失敗したら「UVレジンクリーナー液」を染み込ませた綿棒や、柔らかい布で何度か拭き取ればリセット可能です。

 そこで、レジンクリーナーの効用を逆手に取ります。綿棒に染み込ませたら、ワイパーが動いたであろう部分の水滴を拭き取り、ワイパーの動きを表現します。

▲UVライトを当てて、硬化させたら完成です。太陽光に暴露してもOK。
▲オーバースケール気味ですが、それが逆に目立ってよろしいです。

 できました。雨の日のドライブの高揚感と、雨粒の表現が目論み通りうまくできた高揚感。それらがないまぜになって、プラモのボディの上に留めておくことができたのです。嬉しい。雨は止みません。時間は止めることができるのです。

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中日異文化交流と異世界転生プラモデルと。SUYATA 「1/48 艦上爆撃機 彗星」

スヤタ 1/48 蒼穹の連合艦隊 艦上爆撃機 彗星 プラモデル SYTSRK-005

 彗星です。中国のプラモデルメーカー「SUYATA」が放つ、「1/48 艦上爆撃機 彗星」です。蒼穹の連合艦隊と銘打ったこのシリーズ、日本海軍の兵器と同じ名を冠した謎SFチックな機体がいくつかリリースされていて妙な魅力があります。名は体を顕す、日本的機体名のせいかもしれません。

 もう10年以上前の話になりますが、私は大学の講義で「中国経済論」を履修していました。ちょうど中国経済が爆発的な発展をみせ、名目GDPが日本を抜いて世界2位になるかどうかの頃です。その時の講義で忘れられないことがあって、教授の話の中で頻繁に出てくる「江沢民」(こうたくみん)の発音が、どうしても「倖田來未」(こうだくみ)に空耳してしまうのでした。それ以降中国の経済発展のイメージがギャルでアゲアゲハニーFLASHなイメージと完全に合致。変わるわよ。中国がなんだか身近な存在になったような気がしました。勘違いなのですが。

 閑話休題。ここからはプラモデル、彗星の話。

▲シルキーなつや消しっぽい仕上がりのパーツ。

 落ち着いた色みのグリーンに、パキッとしたスジボリ。「パキッと」とは、スジボリのエッジが光り、ミゾにしっかりと影が落ち、濃いグリーンのラインが目を惹くということ。プラスチックが単純にキレイなのです。質感が良いだけでテンションが上がります。

▲独特のディティールと形状。

 SFメカってちょっとした生体っぽさがキモというかお約束みたいなフシがあると思うのですが、この彗星は色と形状からアゲハ蝶の幼虫を連想しますね。

▲クリアパーツはかなり厚みがあって、ツヤツヤ。べっ甲のような質感なのです。
▲背中合わせの複座式!背中方向に進むジェットコースター怖いよね。

 面白かったのはパーツを噛み合わせるオスメスの形状に、細長いスリットとバーを多用していたこと。これ、とても具合が良いです。パーツをバラしてもピンが折れたりせず、しかも接着剤を使わずとも意外としっかり噛み合うので、組み立てのストレスをほとんど感じませんでした。できるなら全部これにして欲しいぐらいです。

▲未確認戦闘機完成。超素敵。

 知らぬ存ぜぬメカがあれよあれよと知らぬ存ぜぬカタチになっていく楽しさで、組み立ての体感速度はかなり速かったです。(実際は、写真を撮りながら、ニッパーで切った跡をそれなりに処理しながら、休憩しながら1時間半ぐらい。)パーツを見てもそれがどこに付くか次の展開があんまり想像つかないぞ……っていうのは、それこそがプラモデルを組み立てる醍醐味のひとつのように思います。星新一のショート・ショートを読んでいる感覚に近いものを感じました。

▲(何だかわからん)デカールを貼りました。

 そして狂ったジャポニズム感を醸し出す、日本語のような何かのデカールが味わい深いです。何が味わい深いのかというと、漢字は中国から日本に伝わってきたものですが、そんな漢字を多用する日本で大戦期に開発され漢字で命名された戦闘機「彗星」が時を経て中国のメーカーから「1/48 彗星」の謎SF戦闘機プラモデルとして2021年に異世界転生し、謎の日本語(絶対に「分かってワザとやっている」!)を纏って日本に輸入されたことに、異文化交流による文化の醸成、ねじれ、可笑しみを感じるのです。

スヤタ 1/48 蒼穹の連合艦隊 艦上爆撃機 彗星 プラモデル SYTSRK-005

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

巨大なプラモ、「機首コレ」を縦に飾りたい!汎用性抜群、アルミ棒orパイプ切断のススメ。

▲小さい模型も最高なのだが、デカい模型も最高なのだ。

 その巨大さによって脳にドーパミン雪崩れてくプラモ、「PLAMAX MF-51 minimum factory 機首コレクション VF-25F」(近日発売)です。パーツが大きいお陰でストレス無くあっという間に組み立てが終わります。その勢いで合わせ目も消さず、シールをペタペターっと貼って完成させただけなんですが、あらまぁかっこいいこと!

▲すごく薄くて丈夫な、謎ビニールシールの効果で段差もあまり気にならない(当社比)。

 そして驚いたのが、コーションマーク(注意書き)の文字が大きくてしっかり読めることです。そのシールを貼った各部位の凹凸にちゃんと意味がもたらされ、ディティールがただの見栄では無く、リアリティを獲得しているのです。エライ。
 さてそんな機首コレですが、ある事をふと思いつきました。「縦」に飾ってみたら、せっかく機首の左右に貼ったシールをどちらもいっぺんに見れて楽しいのではないかと。しかも省スペース化になるのではないかと。最高なのではないかと。やりましょう。

▲スチール棒の台座支柱が、ランディングギアの油圧シリンダーも兼ねているナイスアイデア賞。

 台座から機首を取り外します。すると、キャノピーの後ろがフラットなので超安定して自立します。しかし、ランディングギアの油圧シリンダー部分が隙間になってしまいますね。気になる。どうしましょう。作りましょう。

▲ローラーブレード式のパイプカッターを用意します。

 こちらは細めの鉄管や銅管を切断する時に使用する、設備屋さん電気屋さんにはお馴染みの工具です。パイプは、ペンチやサンダーなどで切断するとつぶれて歪んだり、バリが多く出てしまいますが、これなら切断面を歪めることなく比較的綺麗に切断できます。3mm~32mm径にまで対応しています。

 そして今回はシリンダーの代替品として、6mmのアルミ棒を切断します。ホームセンターでも数百円で売ってます。厳密にいえば、本来のパイプカッターの用途外なのですが、アルミのような柔らかい素材で6mm程度の細さであれば全然イケますのでやってみましょう。

▲10cmで切断する部分に墨出しします。
▲まず、パイプカッターにアルミ棒を挟み込んだら、ネジを回してローラーブレードの部分をアルミ棒に軽く押し当てます。

 そして、パイプカッター本体をアルミ棒の周りを1~2回転させる→ローラーブレードを締め付ける→パイプカッターを回転させる→締め付け……を繰り返します。ペンチかプライヤーでアルミ棒を保持するとよいです。

▲工程を5~10回繰り返しているうちに、ポロっと切断できます。切断面はこんな感じ。
▲スッっと挿入、適当な瞬間接着剤で接着すれば完成!イケてますよ!
▲機首コレ自立形態完成です!縦に置くことで左右のシールがどちらも見える!絶景!
▲台座のディスプレイで見えにくかったランディングギア周りが御開帳!仏壇!

 金属棒や金属パイプは模型の支持に使うことも出来るし、ディティールに使用することも出来る強い味方なんです。パイプカッターさえあれば簡単に切断できるので、ディスプレイのアイデアをカタチにする幅がグッと広がるのではないでしょうか。

▲ゴーっと吹かして急上昇。デスクの置物として最適。

 大きなプラモ「機首コレ」は、私のようなモデラーのワガママを受け止めてくれる器の大きい模型でした。組んだモデラーの数だけ面白いアイデアが浮かんでくるのではないでしょうか。電飾も出来そうだし、フィギュアと組み合わせたジオラマも面白そうね……。デスクに置いて、眺めては色々と妄想するだけで、私の気分も急上昇 oh ohなのです!

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デカっ……デカルチャー!「PLAMAX 機首コレクション 1/20 VF-25F」が見せる世界。

 目を疑いましたよ。マクロスシリーズの戦闘機、バルキリーの機首「だけ」の、しかも笑っちゃうぐらいデカいプラモが誕生したのですから。ガハハ。うふふ。マックスファクトリーから12月発売予定、「PLAMAX MF-51 minimum factory 機首コレクション VF-25F」のサンプルが届いたので、早速組み立てましたよ。ご覧あれ。

▲G(ジャイアント)・機首!!

 手に持ってるのは機首の裏側。これだけでテレビのリモコンよりデカいです。キャノピーもデカい。えっ……デカすぎる。プラモデル界のマクロス級ですわ。1/20スケールの戦闘機、恐るべし……。このままでは「デカい」と言ってるだけで一万字突破するので、今後の文章全ての末尾に「しかもデカい」が省略されてると思ってください。

 しかしこの大きさだと、キャノピーや機体表面の、なめらかな流線型の機微がよくわかります。緩やかなパーツの線と線が、弧を描いて面となり、3次元的に複雑な面を構成している様が、大きいからこそよく感じられるます。大きいというだけで、モノの見方が変わって楽しいのです。

▲主脚は各支柱が一体成型になっていて、パーツが数がとっても少ないです。

 その上、主脚も脚収納庫もディテールはマシマシ。完全にデカさの恩恵ですね。

▲流し込み接着剤でガッチリ接着するために、ノリシロの形状がよく考えられています。組み立てる途中でそんな工夫を発見するのもオツなものです。
▲逆にコックピットは11パーツでさらにディティールマシマシ。操縦桿のグリップ、小さなスイッチまで彫刻されているのです。
▲コクピットをボディでバゴっと挟み込みます。豪快にプラスチックをくっつけていく気持ちよさ満点。
▲金属のシャフトが主脚の支柱と、プラモデル自体の支柱を兼ね、ちゃんと自立するナイスアイデア。露出したメッキが質感バッチリです。
▲G(ジャイアント)・組立完了!!

 ブースに収まりきらなくて、我が家の階段で撮影しました。全長34センチ!正しさとは!迫力とは!それが何か見せつけてやる(でっけぇわ)。

▲下から覗き込むのがとにかく最高。

 格納庫のメカニカルなゴチャゴチャ感と、機体裏側のシュっとした未来的パネルラインが最高のアンサンブルを生み出しております。

 しかし、機首だけ切り取ったこの姿、まさに望遠レンズで切り取った構図のスナップのような、戦闘機の美味しいところだけを切り取ったような、画期的なプラモと言えましょう。

 良い写真はときに、写していなくてもフレームの外に広がる世界を我々に想像させるものです。胴体や翼、ジェットエンジンが見え無いからこそ、その断面の先にあるはずの世界を幻視させてくれて、何だかソワソワ、ワクワクするのです。まるで「サモトラケのニケ」みたいですね。

▲ゴージャス☆デリシャス☆デカルチャー♪

 それに何と言ってもminimum factoryの1/20スケールの人物プラモを脇に置くと本っ当に絵になります。笑顔になります。ふふふ。

 そんなデカさと痛快さに笑っちゃうプラモデル、「機首コレ」ですが、来週は付属のシールを貼って完成編といたします。お楽しみに!

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音楽とプラモデル。ブンブンサテライツ『OUT LOUD』feat. タミヤ『1/24 アルピーヌ ルノー A110 モンテカルロ ’71』

 ガンダムが好きだったり、戦闘機が好きだったり、プラモデルへの入り口って様々だと思いますが、私が初めてカーモデルを作ったキッカケは、音楽が好きだったからです。その音楽とは、ブンブンサテライツの1stフルアルバム『OUT LOUD』です。

 私が中学生だった20年ほど前、周囲で流行っていた音楽といえばポップパンクとか青春パンク、ちょっと知ってる子はピストルズとか、何故かパンクばかり。反抗期だった私は「体制的に反体制的な音楽なぞ聞いてるんじゃねぇ~」などとツケあがっていたので、アニソンと渋谷系とブンブンサテライツばかり聞いていたのでした。今思えば謎ですが。

 いわゆるビッグビート(というジャンルに便宜的に分類される)の本作。その魅力を一言で表すと「生音の反復・反響によって増幅された快楽」とでも言いましょうか。スタジオで収録されたトランペットやドラムの上質なサンプリング音源を執拗に切り貼りし、ディレイやリバーブを多重にかけたその楽曲群からは、気持ちいい音が遠くから無限に聴こえてくるような、暗いトンネルの向こうからヘッドライトを照らしたレーシングカーが爆音でこっちに向かってくるような、そんな疾走感とパワーを感じます。

 筆者的には特に、バキバキにリバーブのかかったリムショットが響き渡るドラムソロの5曲目『Intruder』~7曲目『Oneness』までの一連の流れが大好きです。ちなみに、9曲目の『On The Painted Desert』はPS2ソフト ナムコ『リッジレーサーV』のエンディング曲になっていますね。

 さて、そんなOUT LOUDのアルバムジャケットの写真に写っているのが、メカニックスーツを着たブンブンサテライツの2人と、アルピーヌ・ルノーA110です。2人が作り上げたこの美しくも激しい音楽を、レーシングカーとして速く・美しく作り上げられたA110になぞらえた、とてもいい写真です。

 これを見た中学生の時に、よ~し、プラモデルを作るぞ~とはなりませんでしたが、それから十数年、たまたまA110のプラモデルを見つけたときに「これはブンブンの……!」と、ピンと来まして、つい2年ほど前になんとなく製作してみたのでした。

 ところどころ失敗もしてるし、ジャケットのA110はツール・ド・フランス仕様で、プラモデルのモンテカルロ仕様とは多少異なるのですが、まぁ細かいことはいいでしょう。まるでサンプリング音源を切り貼りするように、デカールを切り貼りして初めて作ったカーモデルは、私の中で最高にカッコよかったのですから。OUT LOUDを聴きながら作った、アルピーヌ・ルノーA110、思い出のプラモデルとなりました。

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今日は使ったことのないマテリアルを積極的に使う日/ハセガワのコルセアIIを塗るあれこれ!

 箱絵が最高にカッコよくて買ったハセガワのコルセア2です。買ってからずーっと何色で塗るか悩んでいたんですが、紆余曲折の初志貫徹で、白とグレーを基調とした箱絵と同じカラーリングで塗ることにしました。

 ランナー3枚だけだから組み立ても余裕でしょ~とタカをくくっていたんですが、ミサイルや開いたハッチがかなり多くて、しかもその接着が「面」では無く「線や点」なのでなかなかに苦戦しました。大食いチャレンジのラストスパートで苦しいフードファイターの気持ちが今ならわかる。マンネリな作業に味変を取り入れたい……。

 そこで、失敗してもよいから、今まで使ったことの無いマテリアルを使って「経験値を増やす」というモチベーションを足掛かりに製作を続行することとしました。

 時に飛行機のキャノピーの塗り分けですが、超絶便利な専用のマスキングテープが売られていたりするのでそれを買えば楽ちんです。しかし、敢えて、今までやったことのないマスキングゾルを使ったマスキングにチャレンジする事としました。使用したのはGSIクレオス Mr.マスキングゾル改です。

▲色が綺麗!!

 乾くとこんな色になるんですね。粘度が高くて表面張力が効くので、ゾルがフチで止まり、はみ出さずに塗るのが思ったより簡単でした。やってみるもんですね。あと、マスキングテープをデザインナイフでカットする方法に比べれば、パーツを傷つけるリスクが無いのもよろしいです。デメリットといえば、乾燥前の塗ったパーツを落とすとベチャッとなって大変ということぐらいでしょうか(2回やりました)。塗装後の仕上がりが楽しみです。

 楽しくなってきましたよ。今度は使ったことのなかった、ガイアノーツのサーフェイサーEVO「スカイブルー」を下地塗装として使ってみることにしました。

▲色が綺麗!!

 思ったより真っ青。しかし眼福です。ゾルだろうがサフだろうが、やっぱり色が着くと楽しいですね。制作途中でいろんな色に変化していくというのもオツなものです。そしていよいよ、サフの上からラッカーのMr.カラーをエアブラシで本塗装してみます。

▲青色が透ける……それが、逆に綺麗だと思いました。

 これは最初から薄々分かっていたんですが、案の定、青色はホワイトで隠蔽しきれませんでした。(グレーはそこそこ隠蔽してます。)しかし、エアブラシで届きにくい入り組んだところ(私を苦しめたミサイル密集地帯)にブルーが残って、なんとも儚げな色になっているではありませんか。昨日の敵は今日の友です。

 さて、これから細部の塗装とデカールの貼り付けに入っていきますが、あとは最後までハイ・テンションで駆け抜けられそうです。手癖でやっつけるのではなく、また新しい未体験メソッドを取り入れながら作ってもいいですね。その道程でも、新たな発見があるかもしれませんから。

▲そうそう、新たな発見といえば、クレオスのMr.マスキングゾル改にはもともとハケが付属していますが、同社より発売の、接着剤用筆に交換すると筆が小さくなって塗り分けが容易になりました。
▲それに乾燥後はとても綺麗なクリアブルーになるので、キャノピーの塗装に採用することにしました。これはこれでいいでしょう。

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メッキ輝くスティングレイに釣られて。/アメリカンカープラモ amt 132 ’63 STINGRAY

 新しい街に引っ越してきた時のような、知らなかった銘柄のお酒がとてもおいしかった時のような、そんな高揚感をプラモデルに感じることがあります。私にとって、アメリカの模型メーカー『amt』のプラモデル、1/32 ’63 STINGRAYがそうでした。

 ”SCALE STARS”と謳った、1/32スケールのこのシリーズ。初めて手に取りましたが、パーツ数がかなり抑えられていて、シンプルな構成でとても組み立て易かったのです。その代わり、サイドミラーやバックミラーなどが大胆に省略されています。ところが、様々な部分が省略されているからといって、模型としてダルな雰囲気は一切無く、むしろキリっとした印象です。美味しい部分だけを掬い上げた、とても巧妙な割り切り方に思えます。

▲初めて「スティングレイ」の名を冠した63年式の2代目シボレー・コルベット(C2)。なだらかで扁平なフォルムは、角度によって様々な表情を見せてくれます。

 ドアハンドルやエンブレム、ワイパーまで一体成型になっていますが、ちゃんとエッジが立っていて存在感があります。比較的小さい1/32スケールでの組み立てやすさと見栄えのバランスを考えると、これが最適解のようにさえ思います。

▲特にシャシー裏の彫刻は見事。エキゾーストパイプの力強いライン、バンドで止めた配線まで繊細に造形してあって、素晴らしいです。
▲そして嬉しくなるのがメッキパーツの煌びやかさ。

 これも手のうちで角度を変えると、キラッとした光に目を奪われます。魚釣りで、ルアーの反射光に反応してしまう魚と一緒ですね。スティングレイに釣られる人間なのです。

 組立てに関しては、バリ取りなども含めて、デザインナイフによる調整が必須です。ほとんどのパーツがハメ込み式なのですが、メッキパーツの方が若干大きくてそのままではハマりません。しかし、受けの白いプラスチック側をデザインナイフで削ってやると面白いようにハマります。中にはテールライトとマフラーが一体のパーツになっていたりと、かなり面白いパーツ構成の部分もあり、組み立ての楽しさも味わえます。

▲塗装するパーツもこれだけ!

 ボディーにはタミヤスプレーのダークブルー、内装とタイヤにクレオスのフィニッシングサーフェイサー1500を吹きました。あとは細かな部分をタミヤのペイントマーカー、マッキーを使って仕上げます。しかし、マーカーで塗るには難しい小ささなので、芯先を削ったり、場所によってはインクを出して筆塗りをします。

 最後に、塗装したパーツ群にメッキパーツをはめ込んでいって完成です。

▲amtの外箱はデザインがおしゃれ。箱絵の上に乗せて撮影すると、とても楽しいです。

 ホイールのメッキも、光り方によっては走っている様にさえ見えます。車内をのぞき込むと、かなり大きめに造形されたメッキのハンドルが抜群の存在感を放っています。大幅にデフォルメされているわけではないのですが、写実的というよりも、そのカッコよくて印象的なイメージそのものを具現化したようなプラモデルなのでした。

 輝くメッキのフロント・リアバンパーを目線に持ってきて、手でクルクル回してみて、その造形をプラモデルならではの角度で味わうのがオススメです。

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私を酔わせた、美しい月と、コルセア2と。

▲月とエアインテークの対比があまりにもカッコよくてジャケ買いしてきたハセガワ 1/72  A-7A コルセアIIです。ずっと眺めていられる。

 すっかり冷え込んできて、澄んだ空気にバシッと月が浮かぶ秋の夜。出かけたついでにふらっと寄った模型店で買ったコルセア2を持ち帰ってきました。さっそく箱を開けてランナーやデカールや説明書をマジマジと眺めてみたり、写実的で繊細なタッチによる美麗な箱絵を堪能してみたり……プラモは買ってくるだけで楽しいホビーだと思う今日この頃。

▲店員さんに断って説明書を見せて貰い、指定色の塗料も一緒に買ってきたりして。段取りが良いぞ私。
▲しかし途中で「F4U コルセア」みたいな色で塗ってみてもカッコいいのでは?」という悪魔の囁きが聞こえてきましてね。黄色とネイビーの色も仕入れてみました。優柔不断!
▲これよりサッポロ生ビール黒ラベル(アメリカの国籍マークと同じ星柄だ)を飲みながらじっくり思案に耽ることとします。

 ランナーは潔く3枚+クリアのキャノピー1枚。ビールのせいなのか、なんだか機体は秋刀魚のように見えてきますし、大量のミサイルも秋刀魚のようであります。最近高いんだよね、秋刀魚。ジュル……いかん、配色を決めなくては。

 あーーっっと!ここで急にスケールアヴィエーション2021年7月号でハードなウェザリングを施したコルセア2が表紙を飾っていたことを思い出しました。こんな仕上げもかっこいいよなぁ。どうしよう。

▲完全にわからなくなって迷子。何かヒントは無いかとネットサーフィンに没頭。沖まで流されたところで、電子書籍で洋書のコルセア2資料集を発見。なんだか目移りするぐらい沢山写真が入っている……。

 ウーンワカリマセン……。結局今日は何色に塗るのかさえ決まらずでした。しかしこうやって、あーだこーだ自問自答するのも充実した「余暇」なんでしょうねきっと。さて、今日はもう遅いので寝てしまいますが、明日にはきっとイイ考えが浮かんでくることでしょう。頼んだぞ明日の私。それではまた。

▲あれ?飲み口とエアインテークが完全に一致……金と白で塗ってもカッコいいかも……?

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クルマプラモの完成を早く見たいがためのチューニング/マーカー塗装最速理論。

 プラモデルの制作って、結構性格が出る気がします。私はファイナルファンタジーなどのRPGをやるとき、アイテム収集なんてほとんどせず、できるだけ低レベルで最短の道程でラスボスまで辿り着きたい派でして、時と場合によりますがプラモも大体そうで、個人的に重要だと思った工程だけ施行して、いち早く完成した姿を見たいと思ってしまうのです。作ってて待ちきれないんですよね。

 フジミ模型のフェアレディZもそうです。前回の記事でプラスチックのボディをコンパウンドで磨いて表面処理をフィニッシュとした後、今回はペンによる部分塗装だけで、プラモデルの完成としました。時短の割にはなかなか良い感触で満足です。

 さて今回、特によく使ったのはタミヤのペイントマーカーのクロームシルバー。伸びも発色も光沢も良いという3拍子揃ったハイパーなマーカーなんですが、ペン先が太い!!窓枠が塗れない!!このままでは終わらんぞ!!

▲ということで、奥の手を使います。

 ゾリゾリゾリ……と繊維質のペン先をデザインナイフで削ってやることにしました。カスがペン先につくので、キムワイプなどで拭ってやります。

▲遊びは終わりだ!!窓枠が塗れてしまうのでした。

 ペン先が細くなっただけで、使い勝手がバツグンに良くなりました。はみ出したらエナメルの溶剤を含ませた細い綿棒でサッと吹けば、だいたいはOKです。しかし、場合によっては拭った部分がエナメルで侵されてプラスチックが若干光沢を失ったり、拭った塗料が広がって更に汚くなるなんてこともよくあるので、はみ出さないに越したことはありません。こういう時はルーペなどを使い、慎重に、ゆっくり、呼吸を止めて、はみ出さないように塗るのが最短のゴールだったりします。

▲それとマッキーもペン先を細くしてやると、奥まった部分にもペン先が届いて便利です。
▲赤、オレンジ、黄色の3色はクリアパーツやメッキパーツに直接塗る機会も多いので、持っていて損はないと思います。
▲窓枠に触らないように気をつけながら、他の部品を接着していって完成です。光り物って美しいですね。

 また、タミヤペイントマーカーは完全乾燥まで時間がかかるので、塗ったあと触らないように、細心の注意を払って作業し続ける必要もあり、簡易なメソッドにはそれなりのデメリットが伴うことも思い知らされます。しかしまぁ、ゲームと同じで、そんなリスキーな作業もスリリングで結構好きだったりするのですが。とにもかくにも、ものすごく速い車のプラモが、ものすごく早く手に入って、私は嬉しかったのです。

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プラスチックに直接「Mr.コンパウンド極細」で、いきなり新車の輝きに!

▲「これは未塗装のプラモ。青い成型色のボディをコンパウンドで1回磨いただけなんだ。イカスだろ?鏡面に映った男前がさ。」

 フジミ模型1/24フェアレディZ S30 湾岸ミッドナイト仕様は、成型色のコバルトブルーがとても綺麗なカーモデル。塗装で塗りつぶすのが勿体ないくらいに。そこで、この成型色を活かして、塗装をせずに仕上げることにしました。

 かといって、キットのままではちょっと半光沢気味なんで、どうにかしたいのです。やっぱりこれを新車のようにビカビカに仕上げたいのが人のSAGAというもの。そこで、プラスチックのまま研磨してみることにしました。

▲Mr.コンパウンドの極細をチョイス。

 クレオスのMr.コンパウンドは「粗目」「細目」「極細」と、3種類の番手があって、極細は最も目の細かい8000番手相当にあたります。パッケージでは「超鏡面仕上用」と謳ってあり、とてもロマンチック。実践あるのみ。もともと平滑なボディですので、粗目と細目をすっ飛ばして、極細からいきなり研磨してみます。

▲研磨用の小さなクロスが10枚入ってるのも嬉しいポイント。よく振って少量をクロスの上に出します。
▲あとは無心で研磨します。ネットラジオを聴いたり、小林さんちのメイドラゴンを見ながら作業するとあっという間です。

 水分が多めのコンパウンドなので、水磨きのような感覚で綺麗に磨けます。研磨粉のカスがあまり出ない点もGOODで、とても使いやすいですね。磨き終わったら、適当な中性洗剤や歯ブラシを使いながら流水でコンパウンドの粉を落としてやれば、研磨完了です。

▲「この写り込みを見てくれアニキ、新車の輝きだ……!」

 天候や住環境やその日のやる気によってスプレーやエアブラシ塗装などが出来ないこともありますが、研磨だけならお手軽ですね。お手軽が最高という訳ではないですが、選択肢の一つとして最高です。

 カーモデルじゃなくても、メカトロウィーゴやハロみたいな、曲線的なキャラクターモデルでも成型色のまま、ピカピカのボディが手に入りそうです。綺麗な成型色のプラモを発見したら、コンパウンドで磨くだけ……ハマりそうな予感がしております。

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悪魔的に美しいコバルトブルーのプラモデル。フジミ模型 1/24 「フェアレディZ S30湾岸ミッドナイト仕様」


 誰よりも速く車を走らせることに魂を惹かれた者たちが繰り広げる狂喜の群像劇、漫画「湾岸ミッドナイト」が今、私の中でアツい。カーチェイスの描写が素晴らしいのです。

 アオリで、フカンで、広角で、望遠で、工夫を凝らした様々なアングルで、マンガのコマの中を駆け抜けるフェアレディZ、ポルシェ911、GT-R32などの魅力的なスポーツカー。ダイナミックな擬音と集中線による臨場感。読者である私を一瞬のうちに首都高の彼方へ置いてけぼりにしてしまうスピード感とブッ飛んだ登場人物たち。ファナティック。もっと早く読んどけばよかった。

 そして漫画を読み終わる間もなく、気づいた頃には、主人公が駆る「悪魔のZ」と呼ばれるフェアレディZのプラモが家に届いておりましたとさ。

▲ハコを開けてビックリ。成形色のコバルトブルーが超キレイなんです。

 完璧です。とても深い青。プラスチックが若干光を透かしているせいか、透明感があるような。コバルトブルーの桃源郷です。ゴールのビジョンとして、他のパーツを組んでいる傍らにこれがあるだけで、プラモデル製作のモチベーションがグッと上がりますね。

▲エンジンのランナーは、これまた見事に黒光りするガンメタルです。
▲説明書の一番最初の工程でエンジンを組むことになります。メッキパーツを被せて完成です。このカタマリ感がいいですね。
▲車体裏、駆動部分のガッシリした造形、マフラーの曲線の造形もgoodです。

 エンジンはシャフトに力を伝え、排気は効果的に行われる。そんな普段あまり見ることの無い車の構造が、プラモデルとして顕現されると嬉しくなるのは何故なんでしょう。

▲ボディを被せるのが待ち遠しい……!

 やっぱり何度見ても成型色が最高です。自分でこの色を出すのはなかなか難しそうなので、どうにかして成型色を活かした作り方をしたいですね。どうやって攻略しましょうか。このまま磨いてみようか……このままトップコートを吹いてみようか……くるおしく、身をよじるほど悩ましい……そんな逡巡も、たまには楽しいものです。

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工事中のプラモデル/「ハセガワ 1/35 建設作業員セットA」で、工事現場に思いを馳せる。

▲おはようございます…!ハセガワ1/35建設作業員セットAです。本日の作業は舗装工事、作業人員は4名、周囲の安全確認徹底で作業致します。それでは、ご安全に!

 車を走らせるにも快適に歩行するにも無くてはならないインフラ、それがアスファルト舗装道路。忘れてしまいがちですが、それらは大勢の職人達の汗と涙によって作られた努力の結晶であります。そんなことを思い出させてくれるのが、ハセガワの「建設作業員セットA」です。アスファルト道路工事で、かつてそこにあった職人の勇姿、アスファルトに咲く花たちの、稀有なプラモデルを組み、味わってみます。

▲人と工具に分かれた、ランナー2枚のシンプルな構成。
▲特にネコ(手押し一輪車)は複雑な鉄パイプの曲げ具合が丁寧に造形されていて、本キット一番の見どころ。
▲筋骨隆々……ではない中肉中背の体格の職人たち。実際、職人さんでもムキムキの人ってそんなに多くないんですよね。
▲タミヤの白セメントで、腕の角度を調整しながら接着していきます。両足と、持たせた道具の三点で立つようにさせるのですが、なかなかムズカシおもしろいです。うぬぬ……
▲30分の苦闘(?)の末、ニッカポッカ2人組が完成!

 ミリタリーではない、普通のヘルメットのプラモを作ったのは初めてかも……。平和なカタチです。ネコとスコップは、アスファルト合剤や砕石を敷設するときの微調整で使ったりしますね(実は筆者は現場監督経験あり)。

 あと左の人、工事現場で半袖は基本NGなので、現場監督から「明日からは長袖でお願いしますね……」「え~~しょうがないな~~」なんて会話が発生する可能性があります(よくある光景)。それに、右の職人(たぶん60代)の腹の出方(たぶんビール腹)が最高です。現場後のビールは格別ですからね。

▲そしてユニフォームを着た、(おそらく大手舗装会社の若手)2人組が完成!

 格好の違いから、先のニッカポッカ組は応援組か、別の職種の職人ではないかと邪推します。左の彼女が持ってるレーキ(トンボ)はアスファルト合剤を慣らすのに使用。そして右の機械は「プレート」と言って、ガソリンエンジンの下の重い鉄板を小刻みに振動させて、ロードローラーが使えない場所や、細かい舗装場所でアスファルトを締め固めるのにかかせない道具です。ガソリンのタンクあたりの造形も、ホントに良く出来てます。現場で見るやつまんまです。

▲いやしかし、ネコを押すおっちゃんの渋い表情。舗装工事は大変なんですよホントに。

 ミリタリーミニチュア同様、工事現場のミニチュアも、ある意味では「戦場のミニチュア」かもしれません。他の3人も何とも言えない、現場の苦悩を体現したような表情で造形されていますので、是非実物を手にとって確かめてください。

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プラモで旅情。筑波山とファンタジーとケッテンクラート。

 涼しくなってきて何かと本が読みたくなる、つるべ落としの秋の夜。panpanya氏の漫画短編集『おむすびの転がる町』に収録された「筑波山観光不案内」が、とてもおもしろくて感激してしまいました。筑波山観光界隈の雑多な雰囲気をさらに摩訶不思議なファンタジー空間へとねじ曲げながらも、旅のおもしろみをやわらかなタッチで表現した見事な漫画です。これを読んですぐ、「明日の休み、久しぶりに筑波山へ行ってスナップしたいな……」と思いました。

 最近、防湿庫にしまいっぱなしだったレンズもいくつか持っていこう。それと、ついでに絵になりそうな被写体も持っていきたい。漫画に出てきた直立歩行するカエルみたいな、ファンタジーなフィギュアがいいな。お、丁度いいところにタミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.377 ドイツ軍 Sd.Kfz.2 ケッテンクラート中期型が!

▲秋の夜は長いので、漫画を読んだらすぐにガーッと作りました。

 近ごろ流行りの異世界転生モノは、中世ヨーロッパ+剣と魔法的な(ドラクエ的な)世界観が多いですが、もしあと1000年後に異世界転生モノが流行るとすれば、世界大戦期+巨大ロボット的な(ガンダム的な)世界観が流行る可能性だってあるわけでありまして、そういう見方をすればミリタリーミニチュアは未来のファンタジーといえましょう。

 それに、nippperの記事で以前、ケッテンクラートのフィギュアだけにスプレーして、旅支度が完了だ!ってフミテシ氏がやっていたのを、いつか真似してやってみたいと思ってたんですよね。真似は模型の本懐です。そこで筑波山のカエルをイメージして、タミヤスプレーのコバルトグリーンをフィギュアに吹いてみましたけど……最高です。

 日曜の朝。私の住む土浦市から車でワンツーファイブを抜け、約50分。やってきました筑波山……のロープウェイ乗り場の駐車場……の隅っこにある一見廃墟(現役です!)と化した遊具場に。登山客が横目に通り過ぎていくここが、筑波山で一番ファンタジーな場所です。

▲パチッ……!
▲「私たちはどうやら、異世界に迷い込んでしまったようだ……」
▲「巨大なスイッチのような、何かの兵器だろうか……ここは崩壊した未来の世界なのか?」

 ケッテンクラートのフィギュアは、トボトボと歩いている姿がとても印象的です。そして、一番好きなポイントは3体とも、目線を正面ではなく、斜めに向けて移動していること。そんな意思を持って何かを見つめながら移動している姿を、逆に背後から撮影することで、フィギュアと同じ視界を共有し、その情景に没入することができると感じています。

▲逆光気味に撮って、シルエットを撮るのもいいですね。
▲朝や夕方の太陽が低い時間帯なら、伸びた影にピントを合わせるのも楽しいです。
▲屋外撮影っていいもんですね……。

 誰もいない場所へ、プラモに旅行をさせることで、ちょっとした異世界旅行を満喫しました。旅を模する、模型旅。そして旅する模型、ケッテンクラート。あ、いや、旅する模型ってのは私が勝手に思い込んでるだけですが、遊びのすべては想像次第だということで、何卒。

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いまにも動き出しそうなウルトラ生フィギュア!/タミヤの陸上自衛隊 戦車乗員セットを組み立てた話。

▲凛々しい顔つきの砲手(左)と、逞しくベテラン感あふれる車長(右)の箱絵がかっこいいね。タミヤ 1/16陸上自衛隊 戦車乗員セットです。

 ご苦労様です。働くアニキのプラモデルです。私の住んでいる街には陸上自衛隊の駐屯地があるので、通勤時間帯には自転車で通勤する迷彩服の隊員さん達とよくすれ違うんです。そんな彼らがプラモデルのパーツになってバラバラと卓上に現れると、既視感と非現実感がないまぜになって不思議な感じです。

▲だって、めちゃくちゃ日本人の顔なんですよ。

 まずランナーを眺めると目を引くのは、とてもリアルな顔面の彫刻です。どこかですれ違ったかもしれない、ほんとにそのあたりで出くわしそうなアニキの顔がプラスチックになっていてどこかファニー。それもそのハズ、実はこのプラモデル、本物の自衛官さんの3Dスキャンデータを元にして作られたとのことなんです。リアリティがある……というよりも、リアルをプラモデルに落とし込んだ模型なんですね。すごい。

▲この動画に出てくる元島さんという方がオリジナル!自衛隊車両にやたらめったら詳しい!(当然)
▲そして、兎にも角にもシワのプラモデルなんですね……!

 人間のプラモといえど、表面はほとんど衣服なわけです。迷彩は色を塗らないと現れませんが、迷彩服のしっかりとした生地感、シワのでき方が、ありありと表現されております。私はイラストとか描かないのですが、絵描きの人はこれを手に持って見回すことで、迷彩服のシワの陰影表現なんかの参考資料になるんじゃないでしょうか、どうでしょうか。

▲89式小銃もパキッとした造形でかっこいいな……!
▲ワケのわからないパーツだったものが、どんどん人のカタチになっていくのが、何度プラモデルを組んでいても面白いと思うポイントですね。小銃の接着は説明書よく見ないと間違えますのでご注意(間違えた)。

  合わせ目がシワの山に来てたりしますので、パーツをしっかり重ね合わせたら、接着剤が滴らないように瓶の口でがっつり雫を落として、筆ペンでなぞるように、ツーっとなぞっていくとよい思います。

▲出来ましたね!左が戦車の周囲を警戒する砲手君。そして、右が車長の元島さんの半身!

 あれ?砲手君、箱絵よりだいぶ……っていうか、こっちも元島さん(を調整した?)顔じゃないですか!?いやでも、かっこいいから大丈夫です!しかし、どちらとも背筋にピンと芯が入っていながらも、落ち着き放ったベテランの佇まい。アクションの無い超ニュートラルな姿勢が逆に独特です。個人的見どころは、砲手氏の迷彩パンツの折り目と、生地が重みでストンと落ちたところの絶妙なシワが造形として素晴らしいと思います。それと、半身の車長は1/16のRC 10式戦車に乗せられるようですよ。こうなると、そっちもめっちゃ欲しくなりますね。

▲仕方ないので1/48MMの10式戦車(こっちにも小さい元島さんが乗っている!)に車載しました。ちょっと狭いですか?

 1/35や1/48のミリタリーミニチュアより、かなり巨大なので、なかなか迫力のあるキットです。そして、迷彩と肌色を塗ったら、ホントに動き出してしまうんじゃあないだろうか、明日どこかで元島さんに会うんじゃないだろうか……と思うぐらい生気を感じさせられる造形で、ハラハラさせられた面白いキットなのでした。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

ハイ・ファイな楽器のプラモはいかが? ミニアート 1/35 楽器セットが奏でるパワーを聴いた話。

 ブラジルのミュージシャン、イヴァン・リンス、77年の傑作アルバム『SOMOS TODOS IGUAIS NESTA NOITE』(邦題:今宵楽しく)。こちらに収録された、アルバムと同名曲のイントロは、哀愁を帯びた、まさにサウダージなフレーズで演奏されるアコーディオンの音色で、とても心地よいのです。そして、シンセサイザーでそんなアコーディオンの音色を真似して作り、弾いたりして遊ぶことも面白いです。音量の立ち上がりや減衰、倍音の構成、ゆらぎ……。模型ならぬ”模音”を作って、模して遊びます。模して遊ぶことで、その音に対する理解が深まり、より美しく感じられ、楽しみも増すのです。

▲さて、アコーディオンのプラモデルが入っているらしく、気になって買ったキットがこちら。

 ミニアート 1/35 楽器セットです。同じランナーが2枚入っています。

▲驚きました。超シャッキリした、ハイファイな造形じゃないですか!

 鍵盤、ジャバラ、グリルのメッシュ、しっかりとアコーディオンを”模したもの”として、確かな存在感があります。月並みな表現ですが、「ほんとに弾けそう」と思っちゃんだからしょうがない。

▲アコーディオンの鍵盤の反対側についているのがベースボタン。これもすごい解像感。スライド金型を使った本気(マジ)な造形です。

▲弦楽器の表現もすごい。弦は張ってなくても、弦がそこに見えるようです。

 バイオリンのなめらかな曲面とホールの表現も素晴らしい。ギターやマンドリンのペグもちゃんと再現されているし、バンジョーに至ってはフレットにポジションマークの点まで打ってありますよ!?見てるだけで楽しいです。

▲さて、パーツがちっちゃくて切り出しがちょっと大変でしたが、組み立てはサクっと終わります。

 アコーディオンやギターなどは、要はハコなので、パカっと重ね合わせて、流し込み接着剤をちょびっとだけツーっと流せばそれだけで完成します。

▲バイオリン、バンジョーに至っては、ニッパーで切り出してデザインナイフでバリを削っただけで完成してしまいますぞ。これぞファストモデリングの究極型のひとつ、といった趣。
▲逆に、苦戦したのはバスドラムとトランペット。パーツがほっそい!

 結構ポキポキいってしまい大変でしたが、粘度が高くて硬化まで時間のあるタミヤセメントを細いパーツの端につけながらピンセットで位置を調整して何とか事なきを得ました。ドンドンパフパフ!苦戦した分、デキがよくてですね、特にトランペットが今キットの一番のお気に入りになりました。今度、絶対に金色で塗ろう。

▲こんなにもちっちゃくて、しっかりした造形のアコースティック楽器群。指に乗せるだけで嬉しくなります。

 しかし、どうしてこういった楽器のチョイスになったかわからないのですが、なにやらケルト音楽っぽい品揃えのような気がしますね。ケルティック・パンクの雄、The Poguesのアルバムジャケットを再現するなら必須のキットでかも?

 さて、1/35ということなので、タミヤ1/35ミリタリーミニチュアなんかの情景や小物なんかにもバッチリ使えそうなキットです。「休息」とか、「武装解除」、といったキーワードであれば間違いなく主役となりますよね。楽器の模型は音を奏でることはできませんが、音楽が持っているパワー自体は”模する”ことができるんじゃないでしょうか。

▲俺の歌を聴けえええ!!~弾より愛を込めて~

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

模型を近くで/両眼で見るということ 〜「ふくよかな立体感」の話。

 小さな模型には、実物(大きなもの)とはまったく違った鑑賞体験があります。遠くにある実物をそのままの遠近感を持ったカタチで目の前にに引き戻したような、「圧縮された立体感」があるのです。さらにその小さな模型を、「近くで見る」こと自体も、模型が私達を惹きつける重要な理由のひとつだと感じます。

 以前作った、小さくてかわいい私のお気に入りプラモ、スイート1/144メッサーシュミットBf109は、表と裏の色を全然違う色で塗ったので、見る角度によって印象が全く変わります。しかし、模型をちかくで、両眼で、見るといったときに得られる印象は、もっとミニマルな角度が関係してきます。

 普段、私達は2つの目でモノを見ています。両目は約7〜8cm離れて水平に並んでいます。その為、何かひとつの物体を見つめているとき、左の目と右の目で見ている映像は全く同じではありません。角度的なズレ、「両眼視差」(りょうがんしさ)があります。

▲近くのものを見る時は、両目がより角度のついた視線になり、左右の目で得られる情報は異なります。
▲遠くのものを見るときは、遠ければ遠いほど両目の視線が平行に近づいていくので、左右の目で得られる情報にどんどん違いが無くなっていきます。

 モノを見る距離が近ければ近いほど、左目で見たモノと右目で見たモノの見えている「面」が異なります。その2つの視覚情報を脳内で合成し、1つの物体として認識するため、立体としての量感、空間を伺い知ることができるのです。逆に、目視の対象が遠ければ遠いほど、左右の目で見る情報の差が少なくなり、脳内で合成されたモノの見え方も平面的なものになっていきます。

▲遠くにある山や雲は平面的な”画”として目で見ているに過ぎません。それでも山や雲に立体感を感じるのは、空気遠近(遠くのものが霞んで見える現象)や、光や影の付き方、知識や経験則によるもの。

 また、立体感を得る要素のひとつに「ボケ」があります。近くで模型を見るということで、背景がボケて、モノの存在感が増すように感じられるのです。

▲まず片目をつぶって、ドイツ兵(人差し指でもOK)を顔の前にもってきて、もう一方の目で凝視してみます。

 片目だけで見た像は、両眼視差で得たステレオな情報の像とは違い、平面的な画(写真)と同じです。しかし、この平面的な画に奥行きが見え、大体の距離感がつかめるのは、背景のボケ具合や、手の大きさの見え方から距離が憶測できるためです。

▲今度は、ドイツ兵をさらに顔に近づけて見てみます。

 目視の対象を顔に近づけるほど背景のボケ具合は増し、凝視したドイツ兵が周りの背景から切り離されます。その存在がますます浮かび上がるのです。

 そして両目を開けてみます。ボケ感があり、角度のそれぞれ違う、2つの視界が脳内で合成され、片目で見た時とは違う、とてもはっきりとした存在感が生まれます。小さい模型を近くで見るということは、ボケ感と両眼視差を最大限に含んだ立体の情報を見るということであり、遠くにあるもの、大きなものを見つめることとは違う、”ふくよかな立体感”を感じることができるのです。

 写真で表現できる模型の美しさはたくさんあります。しかし、写真では表現できない立体感というのも確実に存在し、それは模型をその手で持った時、机の上に置いた時、実際に眼の前で見た時に姿を表します。「プラモデルを作って、目の前で見る」まず、これだけで最上の視覚体験のひとつを楽しめると思うのです。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

小さな模型だからこそ感じる魅力。「圧縮された立体感」の話。

 プラモデルは卓上や手に持って鑑賞できるサイズゆえに、えも言われぬ魅力があります。例えるなら小さな飴が口の中で溶け、舌の上に広がり、鼻腔を突き抜ける、甘美な香り。耳に心地の良い音楽を英語圏で”ear candy”と表現することがありますが、見ていて心地の良い模型はまさに”eye candy”と表現できるでしょう。

 先日作った青島文化教材社1/32プリウスのプラモデルが、メタルシールをペタペタ貼っただけでとても簡単に、キャンディの様にキラキラした仕上がりになって、とても嬉しくなりました。

 小さな模型には、キャンディのようにギュッと美味しさが詰まっています。その美味しさの要素のひとつが、「立体感」だと思います。巨大なもの、遠くにあるものでは感じることのできない、小さな模型だからこその、圧縮された立体感があるのです。スケールモデル(縮尺模型)を例に、この”感じ”につい考えてみたいと思います。

▲1 /32プリウスのプラモデルを手に持って見つめてみました。

 上の写真は筆者の主観的な視界のイメージを、できるだけ写真の画角と被写界深度(ピントの合い加減)で表現した画像です。私には模型がおよそこんな風景で見えています。手を伸ばした先のプリウスと眼球との距離(鑑賞距離)は約50cm。車のフロントからリアまで、パッと視界の中にプリウスの全体像を収めることができます。

▲次に1/1の実車を50cm離れて立ったところから見てみます。

 これも筆者の視界のイメージを出来るだけ写真で表現した画像です。迫力はありますね。ですが、視界にすべてを収め、全体像をまるっと鑑賞することが出来ず、その奥行きすべてに目の焦点を合わせることは難しいのです。1/32のプラモデルと同じカタチの見え方を1/1の実車で再現するには、50cmを32倍した16m離れた距離から見る必要があります。

▲16m離れた場所から撮影。プラモデルと大体同じ印象のカタチに見えます。

 しかし、16mというのは(個人的な感覚ではありますが)目視で鑑賞するのにはちょっと遠い。風景と一体となった実車を眺めるということなら、どの距離から見てもよいと思いますが、車そのものにフォーカスして鑑賞するということであれば、もっと近づいてまじまじと見たいです。実車を見ることと、プラモデルを手に持って見ることは、まったく異なる鑑賞体験です。

 プラモデルのプリウスは、細部は実物と異なるし、素材も違います。しかし、手に乗せればカタチがよく見えます。いざ車に乗ってしまうと車のボディが全く見えなくなってしまうのとは逆で、車全体を俯瞰したようにカタチがよく”解る”のです。何より、実車を望遠レンズで撮影したような遠近感、圧縮感のまま、手元に手繰り寄せたようなカタチが眼前に現れる妙な面白さがあります。これこそが、小さな模型(とりわけスケールモデル)に感じる魅力のひとつ、「圧縮された立体感」だと思います。

 また、小さい模型だからこそ「身体の近くで鑑賞できる」ということ自体が、立体物を認識する上でとても重要な効果があるのです。次回は、模型を鑑賞するとき、どのように我々の目が機能しているのかを交えて、小さな模型の魅力により迫っていきます。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

超ピッタリサイズのシールを貼るおもしろさ/AOSHIMA ザ・スナップキット 1/32 トヨタ プリウス

▲まさかシールを貼ること自体がこんなに面白いとは思わなくて、貼る前のシール写真を撮り忘れちゃったのよね……。

 ふらっと寄ったショッピングモールの模型屋さんで、青島文化教材社のザ・スナップキット 1/32 プリウスを買ってきて、平日の夜にパッと作りました。私が普段乗ってる会社の営業車が同型のプリウスなので、何となく作ってみようかな〜という安易な理由だったなのですが、プラモデルを作る理由って安易なら安易なほど良いと思うんですよね。「思ったより楽しかった!」ときの喜びって大きいじゃないですか。そんな侮れないプラモデル体験でした。

▲個性的な顔の4代目プリウスのボディがゴロンと入っており、特徴的な丸いピラーに沿った窓ガラスもクリアパーツでバコンと形になっています。

 今回のキットは「スーパーホワイト2」というボディカラーのプリウス。ふむふむ、真っ白で無垢なイイ色だ。ボディは塗装せずにこのままで完成とするのが一番オイシそう。そして説明書に目をやると、まず1番最初の工程が「ボディのシール貼り」になっているとな……!?

 プラモデルにおけるシール貼りって、組み立てた後に貼っていくもんだとばかり思ってましたが、いやはや最初にシール貼りを完了させてから組み立てるのもなかなかいいもんです。チマチマしたシール作業をやっつけてから、大まかな組み立て作業になっていった方が確実にストレスが無いですね。

▲シールだけでなく、パーツの組み立ても楽しく完了します。特に、白眉なのはこの内装パーツ。

 なんと、ほぼこのランナー1枚だけで内装が完成してしまいます。ニッパーで切り離して、左右と上の部分をパタンと折り曲げてやると、「アッ」と言う間も無く内装が完成してしまう仕組みなんですが、まるで飛び出す絵本みたいなカタチが飛び出す楽しさと驚きに溢れています。

 小さなシールにはピンセット必須です。しかし、ピンセットを使うと気持ちよく貼れるというのが超大事。それに、紙のシールで少し厚みがあるので結構つまみやすく、粘着力も丁度いい強さなので、思ったより簡単に貼れます。そして何より楽しいのが、パーツの凹凸にシールの形状が異常なほどピッタリ納まることです。これによってめちゃくちゃシールが綺麗に貼れます。

▲シールの端とパーツの端を合わせてやって、綿棒で片側から押し付けていくだけでビシっと凹凸の形状に沿ってキマります。気持ちいい。

 このとき、先の細いクレオスの「Mr.綿棒 先端極細硬化タイプ」がかなり役に立ったので、レコメンドしておきます。

▲窓枠もシール!大きさが超ピッタリなので、慎重に貼れば綺麗にキマります。

 そして面白いのが、シールにディティールが「描いてある」ということです。フロントグリルやワイパーも彫刻でちゃんと表現されてはいるのですが、その上から絵柄の入ったシールを貼っていっちゃいます。そしてそれを綿棒で押し付けてやると凹凸が浮かび上がって、2次元と3次元が融合したような面白い仕上がりになります。最近の実車のグリルなんかも車種によっては、プリントでイミテーション的に表現してたりしますから、でっかいプラモデルみたいなもんだと思ったりしますよね。

▲メタリックパーツにシールを貼った上からクリアパーツを乗っけてサンドイッチにしたりもします。ライトのガラスが尖ってて「にせウルトラマン」みたいで好きなんすよね。
▲できた~!塗装は全くしてませんが、シールのチカラってなかなか凄い。

 子供の頃からシールってペタペタ雑に貼るものだと思ってたフシがあって蔑ろにしていたんですが、「正確に計算された大きさの、綺麗なプリントのシールを、ピンセットを使って丁寧に貼る。」という体験はかなり新鮮なものでした。

 今回の製作では、ストレートタイプの先が尖ったピンセットを使用したのですが、シールがやわらかいのでそこそこ傷つくというアクシデントがありました。アウチ。しかし、先が丸くなったタイプのピンセットを使えば良かった!と製作後に気付きましたね。今度作るときははこっちを使おう!

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

ゾイドワイルドの季語は夏!?/「組み立てるハッピー」を凝縮したクワーガとカブターで遊ぼう。

▲夏休みの戦場だ!

 ゾイドワイルド、透明な人形が付属していて、ゾイドに騎乗しているんですよね。じつはこの人形、1/35スケールなんです。それなので、タミヤ1/35ミリタリーミニチュアシリーズと一緒に遊んでも楽しいんですよこれが。

 はい、いきなりですが連日暑いですね。この時期になると夏休みに汗をかきながら部屋で黙々とプラモを作っていた小学生の頃の記憶がフラッシュバックします。筆者は1999年から展開したゾイド第2期ドンピシャの世代でして、アニメがとても面白かった影響でかなり夢中になりました。デススティンガーが最高に好きだったのよ。

 さて、現在は第3期の『ゾイドワイルド』シリーズが展開中ということで、今更ながらちょっと気になってクワーガとカブターを買ってみました。夏っぽい思い出が欲しかったので……。いやしかし、これがホントに良かったんでビックリしましたね。なんで早く買わなかったんじゃワレ!

▲あらかじめパーツが切り離されているが!?いいのか!?いいのです。

 プラスチック成形の組み立てキットなので紛れもなくプラモです。よーく見ると、ところどころにゲートから切り離された跡がある……。じつはこれ、ゾイドの化石(という設定)なんです。バラバラになった化石(パーツ)は袋に小分けにされており、それを発掘(開封)して、復元(組み立て)するという体験が待ち構えております。そしてパーツは「発掘見取図」というシートに並べられるようになっており、一目瞭然でめちゃくちゃにわかりやすい。すごい。

 プラモはまずニッパーでパーツをランナーから切り離すもの……という固定観念が私から切り離されました。組立てだけなら工具が要らないってのも大事なポイントで、この日私は生まれて初めてリビングでプラモデルを作りましたもんね。こんなふうに「プラモのオイシイ部分だけ気軽につまみた〜い」なんて、夏バテ気味な今の私の気分にぴったり。タカラトミーの、ほんとうに小さいキッズにも門戸を開くぞという意気込みも感じられて良いです。

▲まずゼンマイギミック付きの骨格部分を組み立てます。

 ゼンマイを回すとギャアギャア言いながらワシャワシャに動きます。超おもしろい。サイズ感も普通のカブトムシよりひと周り大きいだけなのもあって、めちゃくちゃにムシっぽいです。それに、しっとりした半光沢ブラックのパーツにはメカメカしい彫刻がビッシリ。まるで昆虫採集の高揚感。

▲いやいや~!クワーガ、カッコいいな!

 甲殻をパチコンとはめ込んだらあっという間に出来ました。なめらかな曲線のボディと、ガチャガチャの骨格。それをシンプルな色構成でまとめた、秀逸なデザインが私の心の少年の部分を鷲掴みです。メタリックな処理がされた目もイイね。

 カブターの方は鮮やかなブルーグリーンで、イエローのグラフィティっぽいシールを貼り付けると超POPな感じに仕上がって最高。昔のゾイドシリーズっていわゆる「リアリティ」を意識したSFっぽさがカッコよかった印象なんですが、今期のゾイドワイルドシリーズに関しては、芯の部分はちゃんとSFメカとしての造形をしつつ、外装としてキャッチーさを上乗せしている感じがとても素敵です。

 また、なんといっても、ゼンマイやモーターで迫力ある動きをするのがゾイドの魅力のひとつ。そんなゾイドと1/35MMを外に持っていって走らせると、とてもいい眺めですよ。20年の時を経て、ゾイドが私の中で、今、熱いです。心の最高気温が更新されました。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

知らないモノからこそ、シンプルな「作る歓び」がある。/SUYATA 蒼穹の連合艦隊 伊四百

 今日も元気にネット通販の海を潜航していると、何やら見たことの無いメカニカルなプラモを発見。何だこれは。気になる。子供の頃、お菓子売り場で何だかしらんがカッコよさげな食玩を見つけて興奮した記憶が蘇る。そうだ、こういう時はスピーディーにこっそりとカートにブツをぶち込むのだ。中国のプラモデルメーカー、SUYATAからリリースされた、蒼穹の連合艦隊「伊四百」を買いました。

 蒼穹の連合艦隊とは……説明書を見ても、略してSRK(!)という情報ぐらいしか説明はありません。伊四百って大日本帝国海軍の潜水艦じゃないのですか……機体の解説は3行ほど書いてあって、どうやら隕石型魚雷を搭載した「特型潜空艦」らしいです。そうなの……。何もわからん……。

 実物も無い、バックグラウンドも(ほぼ)分からない、架空の乗り物のプラモデル。「ここが再現されてないぞ……あの時期のあの色と形を再現しよう」なんて込み入ったこと(勿論それも楽しいのですが)を何も考えずに、プラモデルを作るという行為に集中できる気がします。新番組のアニメ第1話を見るようなワクワク感がありますね。

▲ふむふむ、パーツ数も少なく小粒で、サクッと組み立てられる。

 流し込み接着剤(速乾)が滴らないようにして合わせ目を撫でてやる。パーツの合いが良く、合わせ目はほとんど目立たない。気持ちいい。

 そしてこの個性的なキャラデザですよ。サメのようなフウセンウナギのような流線型ボディの横っ面に、包丁でパックリ捌いたようなミゾが面白いデザイン。スケールモデルの艦船のような渋さでは無く、キャッチーなキャラクターモデル的カッコよさがあります。

▲露出配管はロマンだよね。

 ピンセットでしか掴めないほど小さいパーツの接着。これが意外と楽しいのです。パイプの両側がねじれた角度の断面で、流線型のボディとミゾの中にポコン!っと合わさります。そこに流し込み接着剤をほんの少しツーっと流してやれば、カンペキに施工完了。やっぱり気持ちいい。精度の良いプラモデルの接着は一種のアトラクションだと思うのですね。

▲1時間ちょいちょいで完成。あら素敵!

 初めてカタチを拝む物体ですが、とてもカッコいいんじゃないでしょうか。バタ足する怪奇生物が卵(機雷らしい)をポコポコ落っことして行くようなユニークなシルエット。シューティングゲームの3面あたりで出てきそう。部位破壊しながら倒すやつね。

▲下から覗き込むと見える主機の彫刻もたまらんね!

 ぬらっとした外装の下に、吊り下がったメカメカしい塊がいいですね。宇宙だね。スペース·サブマリン音頭だね。

▲謎メカなので、何も考えず好きなカラーリングで塗って遊ぶことができました。大満足です。

 見知らぬプラモデル、宇宙の潜水艦「伊四百」は、いつの間にか大人になり、プラモデルを1個作るにも雁字搦めになりがちな私に、「シンプルにプラモデルを作る」という遊びを、歓びを、サルベージしてくれました。よく知らないプラモデルほど、純粋に楽しめるってのはありそうですね。

ハイパーアジア

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プラモデルのもっとも美しい瞬間。ボークスのKOG-ATはずっと「完成」していた……。

▲ボークス IMS 1/100 KOG-ATの骨格が組みあがりました。完成までもう少し。

 こんなに骨格の美しい架空のロボットは、ファイブスター物語に登場するモーターヘッドを置いて他にないでしょう(ハイアジ調べ)。ただ単に線を増やして情報量を増やしたのではなく、意思を持ったデザインの力を感じます。そしてこれらは外装を組み立て、接着してしまうと見えなくなってしまうのです……。なんてもどかしいのだろう。しかし、装甲を纏った凛々しい姿を見たいのも確か。この”途中”の美しさを噛み締めて、組み立てていくことにしました。

 最終的に見えなくなってしまう骨格だけれど、ゴールドのスプレーでしっかり塗装しておいてよかった。様々な「面」で構成された腕の骨格は、コントラストの強く出る金属色と相性抜群。モーターヘッドは面白いことに、フェイス(顔)が固定で動かないという設定があるのですが、それとは反対に複雑な機構でよく動く腕や、細く尖った動きのある指のパーツはとても雄弁。なめらかなヘッドの装甲と、ゴツゴツな骨格の対比も楽しめます。

 ガバッとした大きなスカート型の装甲と、メカニカルなピンヒール型脚部の対比に見惚れてしまう。情報量の緩急がついていて、完成した姿よりもカッコいい可能性があるのではないだろうか。いやしかし、組み立てを進めてみたらもっとカッコ良くなるかもしれない。どうなってしまうんだろう。嬉しいジレンマだ。

 ああ、バキバキな骨格がスラっとした脚線美に生まれ変わっていく。骨格のラインも捨てがたいが、こちらも美しい。接着が必要な箇所のため、もう後戻りはできない。

 しかし、これでよいのです。前に進むことにします。流れていく景色を楽しむドライブのような、満腹になるまでの過程を楽しむディナーのような、そんな時間が流れます。

 プラモデル製作の工程がすべて完了。まぎれもなく「完成」です。目的地には見たことの無い絶景が広がっていました。満腹です。

 しかし今思うと、この最後の瞬間だけが「完成」では無かったのかもしれません。私見ですが、完成とは現時点で持ちうる技量と気力(脱力しているときもある)によって、そのものの美しさが最大効率に達したときの状態だと思っています。

 その考えをもうちょっと時間軸に縛らないで拡張するならば、組み立て途中の骨格むきだし状態が最も美しいと思った時に、そこで完成としてもよかったかもしれません。また、ランナーにゴールドのスプレーを吹いただけの状態が最も無垢で輝いていたので、そこで完成でもよかったのかもしれません。

 今回組み立てたKOG-ATは、そんな沢山の「完成」を経て、最初から最後の工程まで、それぞれ違うベクトルで、最も美しかったのです。ちょっと言葉遊びのようですが、言い換えればプラモデルは開封してから組み立てや塗装をしている間、「ずっと完成し続けていた」と言えるのではないでしょうか。作成中のどの時点でも、かけがえの無い完成した瞬間だったんです。

▲塗装に使ったのはこれだけ。スピーディーで多幸感に溢れるひとときでした。

 ボークスのKOG-ATは、そんなことを考えさせられてしまうほど、とても良いキットだったなと思いました。また、こんなプラモデルに巡り合いたいですね。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

最新ロボットプラモ&ランナーまるごと塗装で味わう、”組み立ての神髄”!ボークス1/100KOG-AT 〜おきらく製作紀行〜

 結論から申し上げます。ランナーごと塗装したロボットプラモの組み立てはストレスフリーでハイパー楽しいです。例えるならアクセルベタ踏みでクリアするレーシングゲームのような爽快さ。すんごく気持ちのいいスピード感です。塗装の段取りに悩む必要もなく、ブレーキを踏まずにブワァーっと組み立てられるので、どんどんイイ景色が見えてくるんですよ。イヤッフゥ〜!!

 ボークスから出ている『ファイブスター物語』の最新プラモデルキットは、そんな「ランナー塗装組み立て」にかなり向いてるんじゃないでしょうか。モーターヘッドって、シンプルな色の機体が多いですからね。形状の妙で見せるロボットですから、複雑なカラーリングなんていらないってのが永野メカの特徴とも言えます。そんなわけで、先週はKOG-ATをゴールドのスプレー3色だけ使ってランナーごと塗装したんですが、これが大正解。

 塗装をやってくれた先週の私よありがとう。ランナーから切り離して、組み立てるだけで”完了”していくじゃねえっすか……。何より、塗装の為にバラして手戻りしなくてよいということが、スムーズで最高。どんどん形が変わっていく部品群の美しさに没入できます。パーツのオスとメスがいろんなところで噛み合っていく気持ちよさ。合体ロボットアニメの合体バンクが手の中で再現されていくような、そんな体験。

▲もちろん、デメリットもあるんだナ。

 ニッパーでランナーから切り離すと、ゲートの跡が白化してちょっと目立ちます。こういうディティールなんじゃオラ~!ボケ~!と言って押し切ることも可能ですが……。

▲タッチアップして万事快調。

 マッキーの金が大活躍でした。ある程度はこれでいいと思うんですよね。完成した時に、細部のタッチアップ跡よりも全体的なカッコイイ印象の方が完全に勝るので、最後の写真までお付き合いください。

▲チョイっと塗装するだけでモーターヘッド最大のカッコいいポイント「半眼」(はんがん。仏像の目と一緒なのよね。)もバッチリキマる。
▲そしてフレームも最新キットならではのアイデア。

 一番唸ったのはこの股関節の部品群です。(前作のKOGから取り入れられた機構らしいです。)まず、Oリング(!)を仕込んだボールジョイントの突起部分を、輪っかから突出させます。そして輪っか同士を合体させると、ボール部分が向き合うようなかたちになるんですが、そのボール同士のスキマに丸くへこんだビス付きのブロックを咬ませます。

▲そして下からネジを締めるとボールジョイントが圧迫されて、股関節のしぶみが調整出来るんですよ。骨盤と筋肉だよこれは!

 ロボットプラモって関節がぐにゃぐにゃになってポーズつけるのが大変……なんてことありがちですが、これならポーズをつけたあとに固定できたりもするのでめちゃ便利。これ、なかなか革新的なことだと思っておりまして、おそらくほとんどのモーターヘッドモデラーがあまりやらなかったであろう「ブンドド」(ぶ~ん、どどどという擬音を口にしながらガシガシ遊ぶこと)がモーターヘッドで出来てしまうんですよマジで。これでモーターヘッドの駆動音を何種類も口ずさみながら遊べるな!!ピキッピキッドドドドドフィフィフィフィゴゴゴゴゴ!!

▲世界一設定画を凝視した大好きなロボットですが、立体を組み立てていくとまるで形を理解していなかったことに気づきます。何なんだその腰回りのパーツの配置は!?天才なのか!?
▲ああ、良すぎて溜息しかでない……。頭のトサカと腰のアーマーが「Z型」で、点対称的なシルエットなんだね、すごいね。

 最新キットの出来の良さと、デザインされてから30年近く経つロボットデザインの金字塔が見事にドッキング。さらに、ランナーまるごと塗装のスピード感が加わって、高次元のプラモ体験を満喫してしまいました。ありがとう、ありがとう……。いろんな最新キットもこうやって「組み立ての体験」自体を楽しむという方向性も大いにアリですね。さて、タッチアップの跡、どうでしたかね?そして次回は完成の機運……!ではまた。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

ゴールドの輝きに魅せられて。金のスプレー3色で、ボークスのKOG-ATを建立する旅路。

▲ファイブスター物語(F.S.S.)のラスボス的存在、KOG-ATの最新キットなる!

 コミックス初登場でいきなりバギャアアっと大破する姿が美しい、光り輝く黄金の電気騎士「KOG-AT」(ナイト・オブ・ゴールド・A-T)。クラウン型の頭部が、まさにキリスト教美術の光輪のように神々しくて、インパクトのあるロボットなんですよね。

 ロボットプラモの組み立ては途中でどうしても作業っぽくなってしまいがちですが、プラモデルのパーツとしてバラバラなKOG-ATを組み立てるという行為は、決闘の末バラバラになったKOG-ATを再構築して、時間を逆行していくような体験になるんじゃないでしょうか。そう考えると時間の流れの自由なFSSの世界を体験するようで、ワクワクしてきませんか?私はする。

▲成形色は落ち着いた2色のゴールドでめちゃ綺麗。
▲ひとつひとつのパーツが複雑なオブジェのよう。『ファイブスター物語』に登場するロボットは美術品でもあり兵器でもある。

 全身を金色で身に纏うという事……架空のロボットという存在を、さらにあり得ない「超越した存在」へと昇華させるような感覚があります。ツタンカーメンの黄金の棺や、アガメムノンの黄金マスク、金箔張りの仏像のような、向こうの世界へと繋がる、燦然と輝く神の領域の入り口、とも言える色が「金色」なんじゃないでしょうか。

▲そしてここに、神の領域へと近づきたいという性(さが)を持たされたモデラーが手にしたものがある。

 錬金術師が火をもって、ある物質から他の物質を抽出したように……最後の審判の日、神が火によってすべてのものを分離し、正しきものと罪深きものに区別したように……幻像騎士団がL.E.D.ミラージュのフレイムランチャーによって星団を蹂躙、天照帝の威光を示したように……モデラーはスプレーという火を持って、極楽浄土に最も近い色彩である、「金色」をこの世に焼き付けることが出来るハズなのだ。

 さて、そんなわけで(どんなわけだ)国内で模型用塗料を販売する代表的なメーカー、GSIクレオスとタミヤから「ゴールド」と銘打ったスプレー2色と、タミヤのちょっと高級な「メタルゴールド」スプレー、計3色をチョイスして、スプレー塗装をガシガシやっていきたいと思います。プラより綺麗な金色を求めて……。

▲塗料の定着性を着実なものにするため、プラパーツ表面をランナーのまま洗浄。画像は乾かしてますの図。

 KOG-ATはほぼ金色のデザインなので、パーツを切り離さずにランナーごと豪快に塗装していくことにします。必要最低限保持できるように、パーツを切り離せるところは切り離してから塗装するという効率的な手段もありますが、今回はしませんでした。普通に忘れたからです。

▲しゅだっっ!!
▲屋外スプレーは最高。金は青空に映えまくりますね。
▲クレオスのゴールドを下半身パーツに吹きました。

 プラに直吹きです。凄い、光沢感が凄いわ……。スプレーキャップと色味はほぼ同じ赤金(金と銅の合金)系統なんですが、キャップとはツヤが段違い!まるで仏具のような光沢という印象。

▲そしてタミヤのゴールドは上半身に使います。

 これもプラに直吹きしました。3色の中では一番、中間的な金色と言えるんじゃないでしょうか。天使の光輪のような、蓮華座のような神々しさ。しかし、スプレーキャップの色味ってほんと中身と一緒ですね。

▲最後はタミヤのメタルゴールド。骨格のパーツに吹きました。

 このメタルゴールドだけは下地に光沢ブラック系のスプレーをしないと、色が定着しない(塗膜が物凄く弱くなる)特殊なスプレー(今回はダークブルーを下地に使いました)。その代わり粒子が超細かくてなめらかな塗面になるので、かなり鋭い輝きを放ちます。3色の中では一番上品な色合いで、見事な青金系統の色です。

▲3色3様の極楽浄土。

 バビュッとゴールドスプレーでランナー塗装完了!あとは組み立てるだけです。組み立て後に、「塗装どうしよ……」とウンウンポクポク悩むより、キラキラな立体がバキバキと組み上がっていくエキサイティングな時間をシンプルに楽しめるんじゃないでしょうかね。それに冒頭の写真のとおり成形色もキレイな金色なわけですから、パーツを切り離した跡もあまり目立たない気がしますよ。それはどうかな!?次回に続きます!!

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

ひょうたんから駒?/透明プラ板から、「謎のモヤモヤ素材」が生まれるんだなこれが。

 飛行機の写真集を眺める。最高にかっこいい。何がかっこいいかって、ジェットエンジンの排気によって出来たモヤモヤ、「陽炎」だ。これが好き。

 これは熱されて密度が低くなった空気と、周囲の冷たく密度の高い空気が混ざり合い光が屈折するため。こういった現象をシュリーレン現象と言うらしい。水に砂糖とか塩を入れるとモヤモヤするのも同じシュリーレン現象なんだって。

 さて、これをなんとか模型でも再現できないものかと色々考えました。そこで白羽の矢が立ったのが、「透明プラ板」。これを何かしらイイ感じにアレしてモヤモヤを表現できるんじゃなかろうか。どうだろうか……。

▲タミヤの0.3mm透明プラ板です。1枚1枚の間に薄紙が挟まっており、キズが付かないようになっている、なんとも丁寧な商品。

 そうだ、これをヒートガン(エンボスヒーター)で熱してみよう。プラ板を熱すると収縮しますよね。キーホルダーとか作りましたよね。あれを、部分的に起こせばモヤモヤになるんじゃないかなと思ったんですよ。思ったんですよ……。

▲めちゃ熱くなるので、下にダンボールを敷いて、いざ……

▲あらあら~?

 収縮した部分が周りのプラ板を引っ張ってきて、めちゃくちゃ歪んでしまいました。なんということだ……

▲やけくそ!ランダムに端からプラ板を熱してみる。

 いや〜、ストレス解消に最適!っていうのは置いといて、なんか面白い素材ができました。ジェット飛行機のモヤモヤにはなりませんでしたが、掌の上の空気を固めたようなモヤモヤっちゃあ、モヤモヤが。

▲こうはならんやろな……
▲気流のように見えなくもない……ターンエーの風。

 でもこれ、プラ板で出来てるので、任意の部分を切り抜いて、ロボットのマントみたいにしたり、クリアーオレンジとかで塗装を施して爆風みたいな表現をするのに結構使えそうじゃないですかね?

▲ハサミで切り抜いてみました。マントみたいなのは結構いけるかも。

 可能性は感じますね……。いろんな曲面の集合体なので、「おっ、この部分はアレに使えそうだな!」という場所が結構見つかったりしてなかなか面白い。ジオラマにもいろいろ使えそうだ。

 しかし、本題の「陽炎」は再現叶わず……。再現方法の情報求ム!!

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

最新のSDガンダムだからこそ、刃物をじょうずに使って「美しすぎるプラスチック」を讃えたい!

 ふらりと寄った模型屋さんで、ふらりとSDガンダムを買いました。20数年ぶりに。箱を開けると小学生の頃、武者頑駄無で遊んだいろんな記憶が蘇ります。こんなマンガがついててワクワクしたんだよなーとか。メッキパーツがキラキラしてカッコよかったんだよなーとか。家族旅行の時、車中で組み立ててたらすげー酔ったなーとか。

 買ったのは「天覇曹操ウイングガンダム」。パッケージデザインがあまりにもトゲトゲしてカッコよかったのでね。いやしかし曹操というキャラクターに、さらにウイングガンダムを憑依させちゃうなんて発想がぶっ飛んでて最高。そして大人になった私の心までをも、一気に少年時代までぶっ飛ばしてくれるのでした。

 過剰なほどのラインの多さ。ありとあらゆる力強い角度でデザインされたウイング。さらにその中に稲妻のような、太い凹凸のラインが入る。形状だけでここまで派手に見せることが出来るのか。そしてきっと、このラインをなぞるようにしてマジックで色をつけて楽しむキッズも今はいるのだろうな。どうかな。

▲なんと言っても一番に目を惹くのは、複雑な面構成のクリアパーツ。

 角度の違う面ごとに濃淡が違って見えるクリアブルー。さらに、透過して重なった面と面は、より色の深いブルーに見える。とても幻想的。美しすぎる○○じゃないけど、これは本当に「美しすぎるプラスチック」だ。

▲そして、手で外せるパーツに衝撃を受けるおじさん……!まことに!?

 パーツをひねるようにすれば、ランナーから簡単にもげます。なんとおおぉ……!ランナーとパーツを繋ぐ境目の「ゲート」が極端に細くなっているからこんなことが可能なんですね。しかし、ニッパー不要で楽チンとかどうのこうのより、「バリが小さくて綺麗にパーツが切り離せる」ということが純粋に素晴らしい。

 手でもぎるのでバリは必ず出るんですが、デザインナイフでナメるだけでかなり目立たなくなる。バリが小さいので力がいらず、プラを必要以上に抉ったりするミスが減るので簡単。

 私なんかは子供のころから「プラモデルはニッパーで切り離すもの」という認識がありました。しかしこれ、そのアクションを1個すっ飛ばして「プラモデルはデザインナイフでキレイに成形するもの」という基本概念へ置き換える可能性をも秘めているのではないでしょうか。

 これを手でもぎって終わらせたら勿体ないですよ、カテジナさん!生活における(正しい使用用途の)刃物の有益性は語るまでもありません。プラモデルをきっかけに様々な種類の刃物、道具に触れる子供たちが増えれば、世界が豊かになると言ったら言い過ぎかもしれませんが、私は良いことだと思いますよ。

▲ディティールの洪水だわ。

 グレーと黒をベースに、イエローとブルーでド派手に装飾、さらに差し色のレッドで引き締める、見事なカラーバランス。私が子供の頃に作った、カラーメッキがビカビカのSDガンダムとはまた違った味わいがあってステキ。

 これはいいものだ。令和の模型キッズに幸あれ。そしてデザインナイフを持ち、いろんな道具に触れて、過去の大人達よりもっとカッコいい模型を作ってくれ。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

白磁のように美しい超兵器プラモ/ハセガワ VF-1J/A ガウォーク バルキリー。

 アニメ「超時空要塞マクロス」、見たことないんだよね~という人に、是非プラモから入門してみることをオススメしたくなるほどかっこいいプラモを先日組み立てましてね。写真の戦闘機みたいなロボットみたいなやつがそう、ハセガワのVF-1J/A バルキリー ガウォーク形態です。

 戦史入門としての戦車模型……。ガンダム入門としてのガンプラ……。様々な物語(歴史も含む)に登場する花形の戦闘兵器。そんな戦闘兵器の造形、3次元の情報を摂取するには、プラモデルを組み立てるのが最適解(プラモ原理主義)。プラモデルをメディアミックス展開の一部と拡大解釈すれば、すべてのプラモデルが物語の入り口になり得るハズです(プラモ脳)。よく知らない話やメカでも、プラモデルを作るところから始まる出会いって、多角的で立体的な、あなただけのストーリーになるんじゃないでしょうか。

▲主翼の情報量がすごいんじゃ。

 スジボリは太いものと細いものとメリハリがバッチリ効いています。そして極小のリベット!アニメのように誇張した表現ではなく、リアリティを感じる彫刻ですね。

▲組み立ては速乾の流し込み接着剤がいいです。薄いパーツ同士のエッジがビシっとキマってウルトラヘヴン。
▲ギアによって可変翼が左右連動して動くんですね。トムキャットのプラモで見たことある仕組みだ……!
▲急にロボっぽくなってきたぞ……

 飛行機のジェットエンジンがロボットの足みたいに変形してホバリングするのが、ガウォーク形態(飛行機と人型ロボットの中間形態!)のミソですが、今回のキットのミソもここ。この足、意外とよく動くんですけど、ありとあらゆる手段でグレーのポリキャップを隠していて、まったく「可動プラモ」っぽさを感じないんですよ。

▲極小のパイロットの彫刻によって、「あぁ、こんな大きさの戦闘機なんだな」というイメージが物凄く掻き立てられますね。
▲Zガンダムみたいなダクトだ(バルキリーが先です)。

 とにかく随所に配置されたディティールがぐるぐる眺めて楽しいプラモです。リアリティの為だけでなく、ただ単にディティールがミチミチだと気持ちいいんですよね。リストの超絶技巧曲のような、ヴァン・ヘイレンの速弾きのような。

▲伝説の爆撃機!(爆撃機ではない)

 戦闘機からロボットが生えとります。シュールでリアルで、めちゃくちゃカッコいい。変形はしないんですが、その分スキのない造形が楽しめます。専用の曲線的なスタンドもいい。

▲謎の超兵器感。ハンドパーツが異常なほど表情豊か。

 アニメでは作画されないようなところまで、手に取る様にわかる……。というかプラモなので手に取ってます。数年前にTVシリーズも含めて初代マクロスは一通り見たのですが、ここってこんな形してたのか!?という発見が沢山あってびっくりしましたよ。またもう一度アニメを見たら、見方が変わりそうです。

 ハセガワのガウォークバルキリー、プラスチックは白磁のように真っ白で、とても美しい成形色です。だからもうちょっとだけこの状態で飾っておこうと思っています。久しぶりに「愛・おぼえていますか」を見て、それからどうするか決めようかな。しばらくホバリングして待っててくれ。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

「貯蔵タンクのプラモデル」を組める世界に生きる。

▲人類に「貯蔵タンクのプラモデルを組む権利」が与えられた!

 現実に存在する大きなものが、手のひらにすっぽり収まるミニチュアになることによって得られる喜びがあります。世界の一部を圧縮して手に入れたような感覚。PLUMから2020年に突如として発売された、ユニークな工業地帯のプラモデル群は、私たちの普段触れることの出来ない「世界」を届けてくれます。

 その中でも、個人的に一番ピンと来たのは貯蔵タンク。ウルトラマンの怪獣「ペスター」(ヒトデが2体合体したやつ)のせいです。主食が石油なのでコンビナートで大暴れ、オイル貯蔵タンクを強襲して周囲が火の海になる強烈な光景が脳裏に焼き付いているのです。何の貯蔵タンクか商品名では明らかにしていませんが、私の中ではもうこれはオイル貯蔵タンクということで。

▲ステアウェイ・トゥ・貯蔵タンク。

 一発で成形されているのに、しっかり階段と手すりになっていて笑っちゃいます。しかもビタっとタンクの外周に綺麗にハマりますからね。人類の叡智を感じるパーツです。

▲貯蔵タンクの手すりを挿し込む人生経験が得られる。

 それなりに細く、綺麗にカーブのついた手すりのパーツ。差し込むだけで完成してしまう構成はお見事。一周ぐるっと綺麗に挿し込めた時は、「おぉっ!?」っと夜中に声が出ました。

▲「タンク・ブラザーズ」が完成!なかなかカワイイ。

 よく見るとパネルラインも入っていて、結構リアリスティック。まるっとしたタンクと、階段の細かさのコントラストが良いです。

▲さらに、「大量のパイプが組み立てられる権利」も与えられた……!

 実はこの付属するパイプ群が、めちゃくちゃボリューミー。さらに継手も豊富で配管の自由度が超高い。どうやって配管しようか悩ましいわ……自由度が高すぎると、逆に手が止まってしまうことってありますよね。

▲はい!そんなわけで、実際にオイルターミナルに取材に来ました。

 そんな時、実物を見て参考にするのが手っ取り早いですよね。なんでもネットに書いてあると思うなよ!……と言いつつ、ネットを頼りにオイル貯蔵タンクについて調べると、群馬県は高崎市の工業地帯がアツそうだったので、さっそく見学に来たのでした。っていうか貯蔵タンク、鉄道模型のジオラマとしてイケるのか。

▲実に綺麗なミントグリーンのオイルタンクが並んでおり壮観。

 この色で塗るのもいいですね~。ウィーゴカラーでいけるかな。

▲リアルなウェザリングだ……
▲タンクの下部にパイプが接続されてるんですね。

 タンクの直ぐそばにバルブが付き、網目状のフレキシブルパイプ(振動などから配管を守る)が接続、そこからフランジ接合で鋼管を配管。オイルがポンプで圧送されてくるんでしょうか。遠目からなので判別つきませんが、配管径は200~300φくらいありそうですね。太い。

▲うおおおお!縦横無尽な配管!

 ビッシリ配管した上に、ビッシリ配管を横断させている……!架台はホントにこうやって使うのね。なるほど。配管を、配管っぽいな~と思わせる要素って、実は配管そのものではなくて、それを固定する支持金物だったりするんですよね。

▲配管のイメージが沸いてきたところでやってみますか!

 さて、模型から実物に興味が沸き、模型にまた戻ってきました。せっかく「工業地帯のプラモデルが売られている世界」が実現した、ちょっとだけ豊かな世界になったんですからね。貯蔵タンクのプラモを組み立てる、ヒマ(余裕)のある生活、送ってみましょうか。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

バイクのプラモに乗せたいもの。スピーディかつ丁寧に、私の速度で作るタミヤ 1/12 カワサキ Ninja H2R。

▲メタリックブラックの成形色が渋い。

 私はいま、とっても速くてカッコいいバイクを、とっても速く/早く作りたい。タミヤ 1/12 カワサキ Ninja H2Rを、身体が、心が求めていた……。

 かといって雑に作るつもりはなく、丁寧にポイントは抑えて、かつスピーディーに作りたいんです。ちゃんとしたものを作りたいという気持ちと、「あるもの」をいち早くニンジャH2Rに乗せたいんです。

▲とにかく缶スプレーは素早くビシっと決まるので最高。

 塗装指示通りにメタリックブラックのスプレーをサっと吹きました。良い色。しかしこれ、あんまり色が変わったかどうかわかんないな!?タミヤの成形色すごいな!?でも、ちょっと輝きが増した気がするのでヨシ。

▲色がちゃんとしてほしいバイクの心臓部は、缶スプレーを3色だけ使いました。

 黒いパーツだけは半光沢具合が素晴らしいので、塗装せずに接着しちゃいます。実は速乾タイプの流し込み接着剤を使えば、塗装したパーツでも塗膜を溶かしながら無理矢理に接着できちゃうんですよね。

▲細かいところの塗り分けはシタデルカラーが最速最強です。

 下地処理をしなくとも、生のプラの上に2回ぐらいペロっと塗ればこの通り。触らなければどうということは無いのです。特にこのストームホストシルバーは、筆塗りでも輝きがバツグン。

▲ブレーキディスクの孔開けは手数が多いので、やるかどうか非常に迷ったんですけど……やりました。

 向う側が透けてかっこいいので。でもウマ娘しながらやったら一瞬で終わりましたね。

▲丸裸のエンジンに跨って、前後のタイヤだけで爆走するとんでもメカだなという驚きがあります。人間がバランサーなんだな。
▲メタルシールがビッカビカで、心が加速する……。
▲で・き・た!

 私なりのスピードとクオリティを両立させた、私にちょうどいいニンジャが出来ました。精密なメカが手に収まる感覚。バイクという概念そのものを手にしたような気分でなかなか嬉しいものですね。

▲さて、ここに2004年発売のフィギュア「1/12 まほろさんとスポーツバイク 無免はいけないと思います!Ver.」があります。

 昔買えなかったフィギュアを最近手に入れましてね。ドゥカティっぽいバイクにメイド服のまほろさんが搭載されており、非常にカッコ可愛いくてよろしいんですよ(編注/これはMVアグスタですね)。

▲真の目的です。

 実はまほろさんをニンジャに乗せてみたかったんですよね!!……ってあれ……?微妙に浮いちゃってるな……!?

▲だけど、右足はちゃんとステップに乗ってるし、背後から見たら究極にカッコかわいいじゃん!心がビュンビュンするんじゃ……。

 あぁ、これから(まほろさんがちゃんと乗れる)バイクのプラモを探し求める人生のサブクエストが始まってしまう予感……。でも、次のバイクはもっと上手く、速く作れそう。だから楽しさも加速する気がします。次はどれがいいでしょうか。

ハイパーアジア

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神秘の塗料「Mr.クリスタルカラー」/メタリックでパールな、美しすぎる装甲を手に入れよう。

▲図書館で昆虫図鑑を貪る休日……

 昆虫は美しい。特にタマムシのようなキラキラ光った甲虫。まるでメロンソーダやシャンパンの泡が生き物になったかのようでウットリする。無色の太陽光を反射して様々な波長の可視光線を魅せてくれるなんとも奇妙な、生命の神秘。すごいよ昆虫。ありがとう昆虫。

 そして模型用の塗料にも、輝く昆虫のような「神秘」があることをご存じでしょうか。その神秘の名は……。

▲クレオスの『Mr.クリスタルカラー』……全8色!

 白く透明な瓶に乳白色の塗料が入っており、パッと見てどんな色になるかわかりませんね。どぉなっちゃってんだよ。じゃあ、これをハイキューパーツのメタルカラーチップ(左面が黒地、右面が白地)にエアブラシで吹いてみますね。すると……

▲なん……だと……
▲めちゃくちゃにキレイな色になったが!?

 「黒い下地に塗るとメタリックカラー」のようになり、「白い下地に塗るとパールコート」のようになるのでした。下地の色によっていろんな表情を見せる面白い塗料です。

 さてここで、違う色のクリスタルカラーを重ねて吹けば下地のメタリックが透過して、派手な昆虫っぽい色を表現することも可能なのでは?という仮説を立てました。そう、冒頭で図書館に行っていたのは資料探しのため。今回は図鑑で見つけた、南米に生息する「ムラサキオオニジダイコク」(”Megaphanaeus lancifer”でググって)という虫をイメージして、マックスファクトリーのサーバイン(今週発売!)の塗装にチャレンジ。

▲下地を黒系にすると色がビシっと発色します。たまたま家にあったメタリックブラックスプレーをビャッと吹きました。
▲アメジストパープルをエアブラシで満遍なく吹きます。
▲サファイアブルーを足や肩の先っぽに、パープルを残すようにしてざっくり吹きます。
▲最後に、ブルーを全部つぶしてしまわないようにターコイズグリーンを吹きます。
▲特に繊細なテクニックはいらず、バーッと端っこにめがけて吹くだけ。

 使ってるうちにコツを掴んできましたが、なんかエアブラシで重ね吹きすればするほど輝きを増し、テロッテロなメタリックになっていくようです。で、特に光らせたい部分のツノや手の先にはターコイズグリーンをかなり厚めに吹いていきます。すると……

▲ギャー!カッコイイ!国宝か!?(玉虫厨子)

 筆者の所感としては、かなり応用が効く塗料で、塗装の可能性はイデの力と同じ「無限大」(エヴァでも可)のような印象を受けました。いろいろ試しましたが、下地がつや消しでも結構光るし、平滑に仕上げようとしなければ筆塗りでも案外いけます、光ります。実際、肩の赤い部分と手の甲の2つの小さな丸の部分はルビーレッドの筆塗りです。ラッカー系塗料なので換気はじゅうぶんに行いましょう。

 前から存在は知っていたのですが、塗料の良さって使ってみないとわからないもんですね。数百円で買える「神秘」、おすすめです。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

プラモデルを説明する言葉。優雅なカーモデル「EBBRO 1/24 シトロエンDS21」を組み立てる。

 「君はシトロエンDSに乗ったことがあるか。」そんな言葉で始まる説明書のプラモデルがある。エブロの1/24シトロエンDS21だ。そこには詳細なスペックなど書かれていない。夜の住宅街でDSに乗った時、ヘッドライトがステアリングに連動して動くことについての驚きと感動が綴られているのだ(その下は単純な英訳ではなく、主にDSの先進性やデザインについて語られているのが面白い)。

 対向車も現れない深夜の道路を、ひとり車で走っているとき「世界には自分と車だけだ」と思うことがままある。それはプラモデルを作っているときにも、よく感じることのように思う。

 プラモデルを開封し、パーツをひとつひとつ組み上げていく。その時に見えてくる、さまざまなカタチのキラキラした街並み。どうやって塗装しようか……と組み立て、走りながら悩み考える時間。それらは夜道のひとりきりのドライブに似ている。静かで涼しい時間だ。

▲乗ったことのない車のプラモデル。ハンドルの形状。バックミラーの位置。ひとつひとつに驚きと発見がある。
▲いろいろ悩んだ結果、春らしい色に塗ることにした。みどりのような青のような、メカトロウィーゴカラー・うすみどり。
▲メッキパーツがふんだんに使われていてキレイ。
▲頑張って塗装を施し、険しい道のりをドライブしてきたご褒美が、このボディをシャーシに被せる瞬間かもしれない。薄明りの中、山を越え、急に海が見えてきたようだ。
▲ふと、外箱にも説明書と同じエッセイが載っていることに気付く。その中から「シトロエンDS」の文字を切り抜いて……
▲ナンバープレートのように貼り付けて完成とした。

 実物がどのような機能を有していようが、プラモデルはそのカタチを抽出し、愛でるための物体だ。しかし、そのカタチを愛でるためにも、何が美しいのかを感じ取るためにも、まずは言葉ありきだ。そんな外箱のエッセイ(だったもの)と、プラモデルの物理的融合を果たせたのではないだろうか。感無量だ。

 シトロエンDS21のステアリングに追従するヘッドライト、流線型のボディ。これらはまさに未来への道を明るく照らし、スッと優雅に進んでいくデザインのように思う。その威圧感を与えない優しいカタチをしたヘッドライトは、今まで作ったどのプラモデルよりも美しく、眩しかった。

ハイパーアジア

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ハイパー解像感!令和の快物プラモデル、MAXサーバインの美しさに酔う……!

 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』や『機動警察パトレイバー』などのメカデザインで知られる出渕裕氏。その真骨頂のひとつがOVA版ダンバイン(1988)の主役メカ「サーバイン」です。そして当時、そのサーバインの超ディティールなソフビ製キットがマックスファクトリーから発売されていたのですが、なんと30余年ほど経った今、プラモとして転生しました。オーラロードが開かれた……!

 そんなマックスファクトリー製プラモのサーバイン、本当に”気持ちいいロボットプラモ”です。何が気持ち良いかというと、「高精細な造形と、それを最大限に活かす無可動のパーツ構成」です。

▲ウジュルウジュルした関節の、生々しい素体……煌びやかな装飾の施された甲冑……正反対の意匠が融合する。トキメキ。

 なんといってもこのキットは、サーバインとしての元デザインの良さを壊すことなく、彫像としての完璧さと美しさを固定モデルとして成立させていることでしょう。関節などを動かすためにデザインを犠牲にしたフル可動プラモがダメという話ではなく、それはそれでしか表現できないポージングがあるわけなので、「どちらを取るか」という話です。このサーバインは造形のほうにステータス全振りなんです。

▲これは脚部ですが、なんと、装甲にウジュルウジュルした関節がくっついてます。筋繊維のようにウジュルウジュルしていて見事な彫刻。

 パーツの先端はめちゃくちゃシャープ。大人向けです。当然、パーツはシャープであるほど解像感が増すわけで、従来のロボットプラモがHDやフルHDだとしたら、このサーバインはさしづめ4Kぐらいのまでのポテンシャルがあると言っても過言ではないと思います。

▲ニッパーでパーツを切り出したら、デザインナイフでバリ取り。パーツをえぐらないように気を付けて……スッ!
▲ツーッ…!速乾の流し込み接着剤を使って組み立てます。ウジュルウジュルの分割がほとんどわからないほどバチピタ……!
▲脚部の組み立てが気分爽快!ペタペタ貼るだけですぐ終わる……無可動すばらしい。
▲仮組みする場合は、粘着のり・セメダインBBXが良い感じです。クリアパーツに使っても白化しないので便利。

 胸部パーツ、羽、目はクリアパーツ。若干スモークがかかっているので、クリアでも輪郭がはっきりします。ウジュルウジュルした素体を見ていると、「ホントに主役メカなのかな君は。というかメカなのかな」という気持ちになってきます。目だけは我慢できず先にクリアレッドのスプレーを吹きましたが、塗装の段取りについて十分に配慮された分割のパーツが多く、何色に塗ろうか妄想が止まりません。

▲すごい造形で”しかも”あっという間に出来ました。神々しくも禍々しい、仁王像の様な迫力。
▲バックショットも圧巻。正面は悪魔、背後はまるでミ・フェラリオ。

 どの角度から見ても美しい、スタチューとして完璧な佇まい。そして鎧の装飾や、関節のウジュルウジュルなど、モールド周辺がしっかりと凹んだ彫り込みになっていて、ひとつの彫刻としてバツグンの存在感を放っています。そしてその彫り込みは解像感を増すだけのメリットに留まりません。一つは筆塗りでの塗り分けの難易度を下げること。そしてもう一つ、スミ入れ塗料が流れ込みやすくなり、スミ入れしたときに圧倒的に映えるんです。見て動画(30秒)。

▲クレオスのウェザリングカラー・レイヤーバイオレット原液を流しています。成形色と相性バッチリ!

 ウェザリングカラーは油彩なので、プラスチックにそのまま使ってもOK。綿棒やティッシュで拭き取りも容易です。あとは鎧のフチに金色を塗るだけで超かっこよさそうですね。筆者的にはシタデルカラー・リトリビューターアーマーの筆塗りがオススメ。

 もともと超ディティールのソフビキットをダウンサイジングしているプラモなので、ディティールがさらに限界までギチギチに詰め込まれた恐ろしくもカッコいいキットです。ハイパー解像度のサーバインは部屋に置くだけで、時空が歪んだようにそこだけ異世界(バイストン・ウェル)。令和の聖戦士様(モデラー)よ……これを組めばハイパー化すること間違いなしですぞ……!

ハイパーアジア

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穴よりも「ドリル」が欲しかった!/組み立てる。色を塗る。マイ・ハンディドリルを手に入れる。

 いい道具はいい。しっかりした機能に加え、意匠や手触りにも気を配った、ちゃんとした「道具」。持ってるだけで、なんか模型が上手くなった気がする。やる気が湧く。そう、モチベーションは売ってたりする。モチベーションを買えるなら安いものだ。しかも、なんかあったとき役に立つんだから、一石二鳥。

 穴を空ける予定は無いけど、便利そうでカッコイイ、タミヤの電動ハンディドリル。つい買っちゃった。

▲ドリル……それは組立式!!

 プラキットのモーターライズはタミヤの十八番ですが、まさか電動ドリルまで工作キットにしてしまうとは恐れ入る。まさに「1/1電動ドリル」。組み立てるということは、構造を把握できるワケで、自分で分解して修理も可能ということ。理に適った商品かもしれませんね。

 いやしかし、こう……プラスチックだと、どうしても色を塗りたくなるよね……モデラーとしてさ。よ~し、家に引きこもりがちなモデラーの外出チャンス!行きますか!屋外での缶スプレー吹きに……。

▲情熱の赤、光沢のイタリアンレッドをスプレーしてきました!ゼェ、ハァ……
▲塗膜を乾燥させて翌日。つや消しのNATOブラックをスプレーしてきました!フゥ……

 そうそう、大面積はマスキングテープじゃなくて養生テープでマスキングするとコスト的にも工数的にも楽です。

▲仕上げに、シタデルカラー・コラックスホワイトを面相筆で筆塗り。

 塗膜の強度はアレだけど、重ね塗りすればつや有りの上にも意外と塗れるのよ。逆に考えるんだ。塗膜は剥がれてもいいと。また、組立てにはニッパーとピンセット、ドライバーとラジオペンチが必須なので注意されたし。

▲ギヤにグリスを塗って、モーターをはめて、単3電池2本を仕込みます。ミニ四駆ライクで楽しい……!

 完成すると、モーターのシルバーが排熱スリットからチラ見えしてるのが熱い!文字通り!無駄のない形状!特に意味の無い塗装!いや、テンション上がるから意味は、ある。

▲誤動作防止ロックや、ドリルチャックを着ける為に回転をロックするボタンがついており、機能は本格的。

 ドリル径は1mm~3mmまで対応しており、キットには2mmのドリルが付属します。軽量小型でとりまわしが良く、なかなかパワフル。特に、プラモデルの台座に穴を空けたり、真鍮線の軸打ちなんかに効果を発揮しそうですね。

▲うおおお無駄に穴を空けまくるぞ〜〜!!

 今、私は「高速で楽に穴をあけられる」という未来を手にしました。カッコイイ道具は所有欲を満たすだけでなく、持っているだけで未来の分岐点を増やしてくれます。

 ゼルダの伝説みたいなアクションRPGで、新たな道具によって行けるエリアが増えるのと同じですね。ギュルギュル進むんです。ギュルギュル。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。