小さな模型だからこそ感じる魅力。「圧縮された立体感」の話。

 プラモデルは卓上や手に持って鑑賞できるサイズゆえに、えも言われぬ魅力があります。例えるなら小さな飴が口の中で溶け、舌の上に広がり、鼻腔を突き抜ける、甘美な香り。耳に心地の良い音楽を英語圏で”ear candy”と表現することがありますが、見ていて心地の良い模型はまさに”eye candy”と表現できるでしょう。

 先日作った青島文化教材社1/32プリウスのプラモデルが、メタルシールをペタペタ貼っただけでとても簡単に、キャンディの様にキラキラした仕上がりになって、とても嬉しくなりました。

 小さな模型には、キャンディのようにギュッと美味しさが詰まっています。その美味しさの要素のひとつが、「立体感」だと思います。巨大なもの、遠くにあるものでは感じることのできない、小さな模型だからこその、圧縮された立体感があるのです。スケールモデル(縮尺模型)を例に、この”感じ”につい考えてみたいと思います。

▲1 /32プリウスのプラモデルを手に持って見つめてみました。

 上の写真は筆者の主観的な視界のイメージを、できるだけ写真の画角と被写界深度(ピントの合い加減)で表現した画像です。私には模型がおよそこんな風景で見えています。手を伸ばした先のプリウスと眼球との距離(鑑賞距離)は約50cm。車のフロントからリアまで、パッと視界の中にプリウスの全体像を収めることができます。

▲次に1/1の実車を50cm離れて立ったところから見てみます。

 これも筆者の視界のイメージを出来るだけ写真で表現した画像です。迫力はありますね。ですが、視界にすべてを収め、全体像をまるっと鑑賞することが出来ず、その奥行きすべてに目の焦点を合わせることは難しいのです。1/32のプラモデルと同じカタチの見え方を1/1の実車で再現するには、50cmを32倍した16m離れた距離から見る必要があります。

▲16m離れた場所から撮影。プラモデルと大体同じ印象のカタチに見えます。

 しかし、16mというのは(個人的な感覚ではありますが)目視で鑑賞するのにはちょっと遠い。風景と一体となった実車を眺めるということなら、どの距離から見てもよいと思いますが、車そのものにフォーカスして鑑賞するということであれば、もっと近づいてまじまじと見たいです。実車を見ることと、プラモデルを手に持って見ることは、まったく異なる鑑賞体験です。

 プラモデルのプリウスは、細部は実物と異なるし、素材も違います。しかし、手に乗せればカタチがよく見えます。いざ車に乗ってしまうと車のボディが全く見えなくなってしまうのとは逆で、車全体を俯瞰したようにカタチがよく”解る”のです。何より、実車を望遠レンズで撮影したような遠近感、圧縮感のまま、手元に手繰り寄せたようなカタチが眼前に現れる妙な面白さがあります。これこそが、小さな模型(とりわけスケールモデル)に感じる魅力のひとつ、「圧縮された立体感」だと思います。

 また、小さい模型だからこそ「身体の近くで鑑賞できる」ということ自体が、立体物を認識する上でとても重要な効果があるのです。次回は、模型を鑑賞するとき、どのように我々の目が機能しているのかを交えて、小さな模型の魅力により迫っていきます。

ハイパーアジア
ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。