見てくださいこのランナー!……っていきなり言われてもなんのこっちゃい、ですよね。今日紹介するのは諏訪のメーカーから発売されたピーエムオフィスエー 工業地帯シリーズ C 煙突です。煙突のプラモと言っても、銭湯や焼却場のアレではなく、工場に設置されているような「トラスで囲われた煙突」なのですよ。
プラモというのは射出成形機というマシンでギッチョンギッチョンと量産されるのですが、これはだいたい金型から取り出されて適当なプラスチックコンテナとかにストックされます。そのあとで必要なパーツを必要な数量ピックアップして袋詰めされ、製品用パッケージに説明書などといっしょに詰められて出荷されます。
ここからは推測なんですが、このトラス構造は細くてランナー同士が絡まったり、工場内でガシャガシャ移動しているうちに折れたり曲がったりしやすそうな形状なんですよね。で、なるべく平らな状態で、ランナー同士が引っかかって破損しないように保管しておきたい。そこで、「ランナーをキレイに積み上げる」という発想が出てきたんじゃなかろうかと。
ランナーをたくさん積み上げようにも、こう複雑な形状だとキレイに重なってくれません。ということで、ランナーのところどころに穴と棒を設けて、ぴしっと重ねて置いておけるようにしてあるんですよね(たぶんこれって梱包時にも有利なんだと思う)。
煙突なんか組んでホンマにおもろいんだろうか、と思いましたよオレも。ただnippper的には「模型を組み合わせて置くと楽しい」ということに貪欲なので、この美しいランナーの見た目とサヨナラしながら組みましたよ。組んだ。
そしたらこれがめちゃくちゃに楽しい。べつにどこが動くわけでもないし、点対称のトラスと棒を積み上げていくだけなんですが、これまで味わったことのないような優しい時間が流れていく。なにより、フニャフニャの構造がトラス同士をピシリパシリと組み合わせていくことにより、信じられないくらいの剛性を獲得していくんです。え、これって構造模型じゃん。カタチに意味がある!というのが手から直接脳髄に伝わってくるじゃん!
さらに奮っているのが、赤と白のプラスチックがうっすらピンクとクリームに振ってあることなんですよね。純粋な赤と白のプラスチックはどちらも透けやすいのですが、こうして明度をコントロールする(複数の顔料を混ぜる)ことで透けにくくなっている上に、空気遠近法(遠くにあるものは彩度が落ち、明度が上がって見える現象のこと。富士山が茶色い溶岩でできているのに、遠くから見ると薄紫みたいに見えるアレです)の演出も兼ねちゃってるんですよね。すごい。
ちなみにこのプラモ、ノンスケール(明確な縮尺の設定がない)で、1/80〜1/150くらいの鉄道模型の向こう側に置くといい感じですよ、というサジェスチョンがされています。ということで、好きな物と合わせて飾るといきなり情報量がグンと増していいんじゃないでしょうか。怪獣とかもあり。
ピーエムオフィスエーの工業地帯シリーズはこのほかにも貯蔵タンク、蒸留塔、精製炉が発売されています。組み合わせていけば工場夜景を作ることだって夢じゃない(実際、説明書では電飾をするための方法も書かれています)。どんどん広がるインダストリアルな景色、たしかにあなたのプラモを引き立ててくれるナイスなストラクチャなので、いくらでも増やしたくなりますね。
みなさんも、ぜひ。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。