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ほとんどの人にとっては、自分で所有したり操縦したりという経験をしたことがないのが飛行機のロマンチックなところ。実物はとても大きく、その全体像を一望したり、古い機体の細部をじっくり眺めたりする機会はなかなかありません。だからこそ、飛行機は自分で模型を作ってそのシルエットをじっくりと味わうのに最適なモチーフ。より速く、より遠くへと飛ぶために試行錯誤されてきたからこそ研ぎ澄まされたカタチで、時代によって姿が大きく変わるのも特徴的です。

全種美味しい「タミヤ 1/72 零戦プラモ」!今日はどれ食べる?/総生産数No.1の零戦「五二型」編

▲先っちょがすごい、零戦総生産数の半数以上を占める五二型(派生型を含めて)が登場だ
▲ちょっとマッシブな零戦。パッケージイラストのシルエットも力強い

 約1500円で超絶かっこいい零戦が手に入るのが、このタミヤの1/72スケール ウォーバードコレクションの零戦たちです。吸着するようなパーツ精度、美しく成型されたプラスチックの質感、光が当たると映えるモールドたち。どれをとっても一級品。まさにタミヤの飛行機模型。これまで各タイプお届けしてきましたが、今回は最高速度、火力の強化を重視した五二型をご紹介します!

▲組むだけでこの美しさ。掌に収まる珠玉の零

 零戦の後ろにある〇〇型という数字。これは前の数字が機体や翼を改修した回数、後ろの数字がエンジンの改修回数。前回紹介した二二型と後ろの数字は同じ……。そう肝心のエンジンを日本軍はこの時点で更新できていません。しかし米軍の戦闘機は高速・重武装となり日本機に襲いかかります。なんとかエンジンを換装することなく性能をアップさせ米軍機に対抗することはできないものかと改修されたのが、この五二型です。注目するのは、主翼と排気管です。

▲こちらの「C」というランナーが五二型の特徴が詰め込まれた専用ランナー。キットのランナー枚数はクリアーパーツを含めて3枚
▲主翼はエルロン(主翼の後端に付けられた補助翼 で、飛行機を横転、ロールさせるのに使う動翼)が翼端まで達し、左右50cmずつ短縮された円形の形となっているのが特徴
▲奥が二二型の12m翼。手前が五二型。形状の違いは一目瞭然
▲次に特徴的なパーツがこちらの単排気管。排気ガスによるロケット効果での速度向上を期待したもの
▲単排気管が入る専用パーツ
▲まさに五二型を作る儀式のような単排気管の取り付け
▲これにより、カウルが非常にマッシブな印象に。機首が力強いシルエットになる
▲左が集合排気管の二二型。右が単排気管の五二型。ディテールが別物

 急速に強力となっていく米軍機に対抗すべく改修された五二型。僕の中での印象は「窮地に立たされた零」というイメージがあります。そして新エンジンのない中、当時の戦局の変化になんとか対応しようとした努力が見える熱い零戦でもあります。火力も強化され見た目は他の零戦に比べて本当に力強いシルエットです。ぜひタミヤの究極のコレクションキット、1/72スケール 零戦シリーズでお楽しみください。

▲手前から、五二型、二二型、三二型、二一型。全て素晴らしいキットなので、ぜひ全種食してください!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

丸ハダカ!ドラネコたちの写真集。知って作るか、知らずに作るか。

 プラモはどうやっても本物にはならない!ならないけど本物が気になる!このジレンマよ。矛盾を抱えて人間は生きていくのです。

▲この写真を見てうひょ~と思うか、こりゃ無理だ〜と思うか、人間はふたつに分けられます。

 このたびモデルアート社から刊行された『F-14 トムキャット細部写真集』はトップガンとかでも超有名な米海軍の人気ナンバーワン選手、F-14トムキャット(実機)のあんなところやこんなところが鮮明に映し出されたフォト満載の写真集。

 で、上に掲げたのは「まずはじめに見開きドカンと一枚の写真、これでまずホンモノのトムキャットの肌の感じを分かれ!」というすごい編集パワーを感じるページです。そしてこの見開きに、この本のメッセージが込められている、と私は直感しました。

 パネルやリベットやサビや塩やオイルや塗装がドワ〜っと入り混じったテクスチャが目の前に実在するのかというくらい巨大に印刷されており、「これを1/48とか1/72とかでヒャクパー再現する……のは無理ですね!」ということが突きつけられます。そしてその感覚は、続く詳細なディテール写真たちにおいても共通しています。

 とにかく、世の中の実在するメカというのは(プラモを眺めているだけでは一生理解できないほど)複雑で、汚く、ガチャガチャしたところとスパーっとシャープなところの入り混じった、造形と質感の複合体であるということがわかります。

 こうした写真を見て「本物はこんなにごちゃごちゃしているのか……これを全部再現するのは無理だぁ……」となってしまう人がいます(自分もモチーフによってはその仲間になります)。そういうときはめっちゃ小さいプラモを作ってみましょう。飛行機であれば、1/144みたいなスケールがそれにあたります。モチーフのカタチがどーんと味わえる反面、「ホンモノをそのままデカチビ光線銃で縮めることでプラモが作られているのではない」ということが一発で理解できるからです。

 箱が本の半分くらいのサイズで安くてサクーっと作れる内容なのがいいんですよねレベルの1/144トムキャット。

▲細部とはなにか。
▲しかし、これはトムキャットに違いない。
▲あんなに複雑に見えた主翼も1枚になってる。
▲ふたたび、細部とはなにか。

 プラモの面白いところは「なんだか実物っぽく見える」という結果があっても、「精密に実物を縮小したから」「色や質感がそっくりだから」「前後の景色がそれっぽいから」「なんだかわからんけど写真の魔法か?」(もしくはそれらの複合技)といったように、その理由(=過程)がまちまちな点にあると思います。そしてそれらは絶対にホンモノではない、というのが最高に楽しい。特撮映画の撮影風景を見て「えーっ!」と驚く、あの感覚です。

 しかし、この種の驚きを作り出せる人々に共通しているのは「モチーフをきちんと観察したことがあるかどうか」ではないでしょうか。モチーフというのは本物のカタチや構造を見ることだけに限りません。金属とはなにか、サビとはなにか。塗装とは、ゴムとは、ガラスとは……?

 模型のワンダーを手に入れようとしたとき、「ホンモノを知っている人は、プラモでも絶対に再現しなければいけない」のではなく、「ホンモノを知っているからこそ、プラモにおける省略のしかたがわかる」「ホンモノを知っているからプラモにウソを混ぜて”らしさ”をブーストできる」というのを忘れてはいけません。

 知ってて作るか、知らずに作るか。

 大丈夫。詳細で目も眩むような実物のディテール写真を見てビビることはありません。あなたは知った上で、自分のやりたいこと、やってみたいこと、できそうなことを選び取れるモデラーになったのですから。まずは、知ることです。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

 

やりたいことと、やれること。3日で作る「1/32のミラージュ2000」/3日目の話。

▲模型なんだな。

■塗料の乾燥は風呂がいいのではないか。

 組み立て、塗装、汚しを駆け足でやってきましたが、模型で一番時間がかかるのはどこかというと、じつは乾燥を待っている時間なんですよね。接着剤も塗料も、乾燥しないと次の工程に進めません。生乾きで触ってしまって指紋がついたりしたら進めないどころか逆戻りだもんね。

 「乾燥を待つ間、ほかの作業をしていればいいじゃないか」という考え方もあるんですが、日中の仕事ならまだしも模型作ってるときに全作業を洗い出して、香盤表を組んで並列処理することを前提に進めるのはとても難しいことです。ということで、乾燥の話。

 モデラーのあいだで有名なのが「山善の食器乾燥機」です。塗装したパーツにホコリが付かず、熱くなりすぎてパーツが溶けることもないというニーズと食器を乾燥させるというスペックがバチピタにハマりすぎて本来の用途ではほとんど買われていないとすら噂されるこのマシン。

 私も何度か購入を検討したことがあるんですが、ただでさえ狭い作業スペースにこれを導入しても絶対に物置にしてしまう自信があり、またこれを使わせてもらった際に、剛速でカチカチに乾くというより「普通に待ってるよりは塗料に熱が入って塗膜の強度が上がるよね/ホコリが付かないっていいよね」くらいの実感でした(使ってる人はどれくらいの時間入れているんだろうか)。あと単純に1/32のジェット機が入らん。

 で、私が模型の乾燥に使っているのが浴室。浴室って家の中でもっともホコリがなくて、風呂入ってない時間は家賃を溶かしていく空間です。浴室乾燥機能が付いてる物件であれば、塗った端から大きな塗装ベースにパーツを林立させた状態でボーンと置いておくとかなりのスピードで45度〜50度くらいの熱が入り、指触乾燥(指で触れても指紋がべっとり付かない)までの時間が短縮できます。

 浴室乾燥、電気代が心配かもしれませんが3時間で100円くらいだということなので、180時間使うまでは山善より安いしなにより風呂入ってない時間の風呂場が機能を帯びるというところにロマンを感じます。これぞバスロマン。

 今回は基本塗装(最初に塗ったグレー)で一度浴室乾燥、緑の迷彩は塗ってる端から乾いていくのでそのままウェザリングに突入します(ウェザリングの方法は昨日の記事を参照のこと)。

■秘技、ウェザリングカラー生乾きでクリアーコートの術

 ここからがヤバい話(偶発性の獣)なのですが、私がよくやる方法として「ウェザリングカラーが生乾きの状態で上からクリアーコートする」というのがあります。

 そもそもGSIクレオスのウェザリングカラーって油絵の具系なので、完全乾燥までものすごく時間がかかります。特にツヤあり〜半ツヤの塗膜への施工だと、塗ってから24時間程度でも全然定着していなくて「マスキングテープ貼って剥がしたら汚れがすっかりキレイになっていた」みたいなこともしばしば。

 で、その昔に1/48のファントムIIを作っているとき、「ウェザリングカラーの上にクリアー吹いてクリアーが固まれば上から触れるじゃん」と思い立って缶スプレーのトップコート(その時はツヤ消し)を吹いてみたのです。結果としてウェザリングカラーの粒子の一部がクリアー層の中にモワーっと溶け出して、表面張力とか乾燥速度の勾配とかさまざまなフォースの導きによってなんかすごくいい感じにパネルラインの近くにキューッと引っ張られていく(で、その溜まり加減がなんだか妙にリアル……)という奇跡現象が起きたのです。アンビリバボー……。

※この秘技はなにか予測不可能な反応が起きる可能性もあるので、必ずテストピースとかで本番の組み合わせを試してから実行してください。

 今回はデロンデロンのツヤありにしたかったので、2日目の最後にウェザリングカラーが生乾きの状態で上から「水性プレミアムトップコート 光沢」をまるまる1本吹ききり、浴室乾燥にGO。「スプレー1本吹ききる(小さい模型なら「X回全体を覆うつもり」と心に決める)」というのは全体のツヤの不均一をなくすためのおまじないだと思ってください。

■世の中には危険なデカールがあるぞ!

 3日目はほとんどデカール貼りの作業になりますね。最後の組み立ては完成したパーツたちを瞬間接着剤やセメダイン模型用ハイグレードでビシバシ貼っていくだけなので(注意は必要ですが、テンションは高い)、デカールを無心で貼る時間のほうが全然長い。

 今回製作したキティホークのミラージュ2000Dは超大判デカールが3枚くらい入っていて(なにしろスペシャルマーキング機を何種類も再現できるようになっているのです。値段のなかでもデカールの比重がすごいことになっていそう)、パッと見の発色はとても鮮やか。まずは絶対に見えなくなることが確定しているコクピットのコンソールのデカール(これは失敗したら筆でそれっぽく塗っておけばいいという保険がかかっていることもあり、まずデカールの素質を知るために試すいいポイント)を貼ってみます。まあこれ試したのは1日目なんですけど。

 涼しい顔してデカーリングQuickトレイをおすすめする写真を撮影していますが、じつはこのとき顔面蒼白。なんだかわからんが、デカールが異様に薄くて柔らかい……。しかも一箇所が密着するとテコでも動かなくなるという危険なヤツなのです。

 nippperでは何度も書いていますが、デカールを貼っている人間は「位置決めするときはテロテロ動いてほしくて、ここだと決めたらビタッとくっついて一生剥がれないでほしい」という、マッチングアプリの条件入力でもまずないくらいの矛盾した要求を心に持っています。

 しかし、このキットのように「パーツの上に乗った瞬間ビターっとくっついて一生動かない」というデカールに遭遇するともはやパニックです。いくら筆を水で濡らして撫でても動かないとなると、細長いラインのデカールとか巨大なマークとかは最初から「全集中 位置決めの呼吸」で貼るしかない。強くなれる理由が分からない。助けてくれ。

 ここで慌てて「ああ、これがあるじゃん!」となったのがハイキューパーツのデカールフィクサー(だからあのタイミングで記事になったんだね……)。海外製のプラモでたまにある「非常に柔らかくて薄くて定着性も高いんだけどパーツの上でおいそれ動かせない」というデカールを貼るときには必携と言えましょう(あと古い国産キットもノリが死にかけだったりするので、これで増強してあげるとシルバリングが防げるとのことです)。

▲今回は使わなかったけど、こんな巨大なイラストがよくわかんないところでベタッとくっついて動かなくなったら悪夢です。

 おかげさまでミラージュの特徴である赤い破線のウォークウェイラインもつるつる滑らせながら位置決めをして、キレイに貼ることができました。あと「ちょっとシワ寄ってるな」とか「ちょっと浮いてるところがあるな」と思ったら、私はよくタミヤのマークフィットをサラッと塗って、これまた上からいじらずに浴室乾燥にぶち込んでいます。数十分もすればケミカルが全部乾燥してデカールもビターっとパーツに馴染んでいますから、慌てず騒がず浴室乾燥を活用しましょう(おうちの人とはちゃんとコミュニケーションを取って許可を得ましょう)。

 あとはマッキーのペイントマーカーで垂直尾翼の上や受油プローブ先端のギラリを塗ったり、アンテナをちまちま植えたりして完成です。

 こんなでっかい飛行機を3日で作るというのは締切や自分のスケジュールの問題もあるのですが、それ以上に「ひとつの模型に注ぎ込むパワーをコントロールする」という向き合い方でもあります。

 どんなスケールでも、どんなジャンルにでも応用できる時短テクニックや便利なツールは存在します。また、「今回のプラモの課題」を決めて完成させることで、自分の苦手なこと、得意なことが浮かび上がってきます。こういう経験値が少しずつ溜まっていくと、サッと完成させるのもじっくり取り組むのも変幻自在にできるようになるはずです。いきなりカンペキを目指して息切れしているあなたにこそ、「3日で作る」を試して「なるほどこんなもんか(じゃあ次はこうしてみよう)」というサイクルを回すきっかけを作ってみてもらいたいと思うのです。

 ではまた、明日のnippperで会いましょう。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

やりたいことと、やれること。3日で作る「1/32のミラージュ2000」/2日目の話。

▲模型だよ

 キティホーク社製1/32のミラージュ2000Dを3日で作る。昨日の記事の続きです。ウェブでの連載記事というのは本当に難しいもんで、なかなかヒキのある続け方をするのはセンスが必要っぽいですね。

 この作例が掲載されているスケールアヴィエーション2020年9月号には、いろいろな人が作り倒した古今東西のミラージュがてんこもりですのでぜひゲットして読んでください。

■脚を出さないと飛行機模型は超速で作れる!

 さて、3日で作るためにすごく大事な決断をしたのを忘れていました。それは「飛行状態で作ること」です。飛行機のプラモってだいたいが胴体/翼で構成されていて、それらをくっつけるととりあえずは飛行機のカタチになります。しかし、経験上「だいたい飛行機のカタチになった」というのは完成までの4〜5割程度の進捗。こまごまとしたアンテナや車輪、キャノピー(コクピットの窓)など、飛行機らしさを盛り上げるディテールはそれなりに作業時間を取られますし、失敗できない(ごまかしが効かない)緊張感が続きます。

 今回は映画『ナイト・オブ・ザ・スカイ』の機体をイメージしながら作りました。世界でいちばん戦闘機が飛んでいるシーンがカッコいい(話が面白いとは言ってない)映画なので(しかも劇中のかなりの時間、本物の戦闘機がブンブン飛んでいて感動します。オレはもう20回くらい観た)ぜひDVDを買いましょう。中古なら激安なのでリンクから探してください。

 飛んでいる飛行機は車輪が出ていませんので、脚収納庫のフタを閉めることができます。これはすごい。説明書のなかでもかなりのパートをスキップできますからね。

▲この辺の作業を全部やらなくて良くなるのでスピードアップがすごい。

 脚扉は最初から閉状態で組めるようになっているプラモもありますが、このキットは基本的に開状態で組むことしか想定されていない仕様でした。作例で実行したのは「脚扉の裏側に2〜3本プラ棒を長めに接着しておき、胴体とツライチにピタッとハマるようになるまでそれぞれの長さをカッターとかヤスリで調整する」という作戦。文字で書くとすごくめんどくさそうですが、本当にツラツラでビッタリ合うまで追い込まなくても大丈夫(だって機体の裏側だし、あとで取り付けたドロップタンクでほとんど見えなくなります)。

■ガンプラ用の塗料はミリタリーモデルでもガンガン使える! 

 塗装指示はかなり暗いグレーとグリーンの2色だったのですが、あとで汚し塗装をすることを考え、少し明るめ&派手めのグリーンを模型店に並んだ瓶を見ながら選びました。グレーはとにかく素早く一気に塗ることを考えてガンダムカラーのスプレー「MSグレー ジオン系」をチョイス。

 ガンプラ用の塗料、とくにグレー系、グリーン系は通常のミリタリー向け塗料にない微妙な色調のものが多いのと、やや明るめの色はあとからウェザリングカラーやスミ入れ塗料などでどんどん暗くしてトーンを変えられるので、暗いよりはコントロールしやすいと考えています。

■ウェザリングカラーはたくさん混ぜたほうが迫力が出ます。

 グレーをスプレーして、エアブラシでグリーンをニョロニョロと描いて迷彩塗装が終わったら(流石に筆で巨大な飛行機を塗っているとすごい時間がかかるので、エアブラシは時短プラモの重要ツールですね……)乾燥を待ちつつ他の作業をします。先述したように、飛行機はちまちましたパーツが案外多いし、最後の最後に取り付けないと折れたり剥がれたりして大変なので、こまかいパーツは予め下ごしらえをして置いておくのが大事。

 で、指で触っても指紋が付かない程度に乾燥したら(じつはこれは全然乾燥したことになっていないのですが……)GSIクレオスのウェザリングカラーを表面にバンバン塗っていきます。黒、青、白、グレーをランダムに乗せて、模型屋さんで売っている安くて大きな筆(毛が抜けまくるので注意)に溶剤を含ませて表面を叩くようにしてタッチを付けていきます。このへんは実際にやっているところを今度このnippperでも紹介してみようと思います。

▲昔作ったタミヤのトムキャット。これくらいハデにタッチを付けないと、後でよく見えなくなる!

 で、本当はここからクリアーコートをして2日目のおしまいとなるのですが、ほかにも合わせて書きたいことが出てきたのでまた明日。ではでは。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

やりたいことと、やれること。3日で作る「1/32のミラージュ2000」/1日目の話。

▲模型です。

 からぱたです。nippperはPCで読むと写真がデカくていいです(挨拶)。

 昨年の全日本模型ホビーショー(だったよな?)にて、キティホークというメーカーから1/32スケールのミラージュ2000D/N(複座型)が発売されると発表されたとき、展示会の会場で「ずぇーったいに作ります!」と固く決意して、やっとその日がやってきました。待ち望んでいたプラモを作るのは最高。いつか作ろう、じゃなくて、「早くほしい!とにかくいま見たい!」という気持ちは模型を最速最高の仕上がりにするための最高のスパイスだよ。

 作例は『スケールアヴィエーション』2020年9月号に掲載されていますので、まずそちらを購入してから本記事を読んでください。

 SAの記事には超かっこいい写真が掲載されていますが、nippperでは製作中に思ったことや、知っておくと役立つことをいくつか綴っておこうと思います。模型誌とその副読本的な関係になるといいですね。

 さて、「本業とnippperの更新を毎日やりながら3日で仕上げる」というのが今回の課題。無理だろうと思った?オレも思った。で、漫然と作っていたら絶対に3日では収まらないので、まず「3日で作る」と決めてからその方法を風呂や通勤やトイレタイムをフルに使ってウーンと考えます。脳内で説明書を反芻しまくるくらい考えておくと、実際に作業をし始めてから「あ、あれもやりたい」「これもやっておいたほうがいいのかな……」と迷ったときにも「やっぱり予定になかったことはやらない」と決めて前に進むことができます。

 このように、事前にやりたいこと、やれることを決めておくのは模型を素早く作る(素早く作りたくない人はいくらじっくり作っても大丈夫です)のにすごく大事なことなので、ぜひ取り入れてください。模型以外の人生のすべてがそうなのかもしれない。人生は寄り道だらけだから……。

 マインドセットとしては下の記事がすごく役に立つと思います。見えないところ、全体像からすれば些細なことをTPOに合わせてスキップしたり、解像度を落としたりすると、ひとつひとつの作業のハードルが下がって肩の力が抜けます。

 で、めっちゃデカいんですよね。1/32のミラージュって全長が45cmくらいあって、ご覧のとおり仮組みの時点でプラモ向上委員会のワークステーションを優にはみ出る始末。

 デカい模型、置き場所に悩みますが、いいことがたくさんあります。まず目に優しい。よく見えます。そして小スケールでは目立つような傷やアラがあっても、1/32ほどのサイズになってくると相対的に小さくなり、全然気にならなくなります。デカさと難易度は全然関係ない。むしろデカい模型は簡単です。パーツもデカいし(小さいパーツがすっ飛んでいっても見えないし)、多少不器用でもどうにかなる性が高い。

 合わせ目が完璧に消しきれなかったとか、接着剤がちょっとはみ出たとか、塗り分けのラインが少しよれたとか、すべては広い宇宙を思うと些細なことです。大きな模型であればあるほど、気にならなくなる。「少年よ、巨大な模型を作れ」とクラーク博士が言ったのは、そうした理由によるものです。言ってませんね。

 コクピットも「なんか暗いグレー(昔何かを塗った余り)」をスプレーしてからGSIクレオスのウェザリングカラーをビチョビチョビチョとランダムに残してニュアンス付け、コンソールのたぐいは最終的にほぼ見えないと判断して塗り分けなし。パイロットはシタデルカラーで「15分以内に塗る」と決めて、それ以上追い込まないことにします。

 そもそも私、せっかちで飽き性なのでずーっと同じところを触り続けているというのが向いていない。向いていないので、先に時間を決めて集中することで作業の種類をどんどこどんどこ変えていくことができるわけです。いろんな作業があっちこっちにとっちらかっているぶんには飽きませんので、みなさんも自分の性格に合わせてプラモとの向き合い方を決めましょう。

 初日はコクピットと胴体、主翼に尾翼と飛行機のカタチを成す大まかなパーツを全部接着してしまいます(そうそう、機体の下に吊るミサイルとかタンクとかは本当にあとで嫌になるので、最初に組むのが最高。ガンダム完成〜っつって、そこからバズーカ組むのダルいじゃないですか……さっさとブンドドして遊びたければ、武器やオプションは先に組んだほうがいいよ……)。

 接着剤が乾燥するのを待ちながら、今日はグンナイ。ということで、この記事も3日に分けてお届けしてみようかと思います。またね!

からぱた/nippper.com 編集長

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「腕時計を抱く飛行機」に魅せられて。Ju-52 IWC。

 スイス製の腕時計を多数所有してきたが、一番のお気に入りはIWC(インターナショナル・ウォッチ・カンパニー)のパイロットウォッチ・マーク15である。一見地味だが、内部に軟鉄製耐磁シールドを備えた軍用ゆずりの実用性と、高い工作精度によって生み出された11連ブレスレットの付け心地は、オーナーのみが味わう事が出来る歓びだ。

 ドイツレベルの1/72 「Ju-52 IWC」は、このマーク15のプロモーションとして企画されたプラモデルだ。腕時計の宣伝にJu-52を飛ばし、しかもそれをプラモデル化することが果たして広告として成功したかどうか不明だが、少なくともわたしは腕時計とプラモの両方を買ってしまった。

▲腕ではなく「翼を抱く時計」。そしてIWCのロゴが機体をよりスマートに見せる
▲ドイツのユンカース社が開発した航空機。ジュラルミンの波形外板(コルゲート)が特徴
▲この翼に時計のデカールを貼る。まさに時と同じ様にコルゲートにIWCのマーク15が刻まれる
▲ニュースペーパーのようインストの紙質と雰囲気。手に取る物をワクワクさせてくれる模型の説明書はキット作りの楽しさをさらに上昇させてくれる

 両方手に入れて初めて気づいたことがある。それは、Ju-52の翼に貼られた巨大なマーク15の広告は、1/72スケールにすると腕時計とほぼ同じ大きさになるということだ。これは偶然か、はたまた狙い通りかは不明だが、ますますIWCというブランドを好きになった瞬間だった。

プラモ極道

愛知県出身カリフォルニア州サンノゼ育ち。かわいいネコちゃんと甘いケーキに目がない。

フランス生まれの美人戦闘機、ミラージュ尽くしの『スケビ』最新号!

 ボンジュール!からぱたです。飛行機模型専門誌『スケールアヴィエーション 2020年9月号』が本日発売となります。巻頭特集はフランスを代表する主力戦闘機、ミラージュをフィーチャー。ページをめくってもめくってもミラージュ、マジで夏の蜃気楼だぜ!

 表紙と巻頭を飾るのはウェザリング(汚し塗装)の達人、林周市さんによるキティーホークの1/32 ミラージュ2000C。ピッチピチ&ビッグな新製品を情感豊かに作り上げたその作例は必見です。

 からぱたは特集のイントロ(ミラージュの良さを語り尽くしたためすげー長い)を書いたほか、林さんとは真逆の方向性で同社の2000D(複座型)を3日で作るという荒業を敢行。その仕上がり具合については誌面を見て確認してください。

 さらにはイタレリの比較的新しい1/32ミラージュIIIC、アヴァンギャルドの1/48クフィル(エリア88が好きなら全員卒倒!)、モデルズヴィートの1/72ミラージュ4000、スペシャルホビーのミラージュF.1などとにかくさまざまなタイプのミラージュが大集合しております(映画『ナイト・オブ・ザ・スカイ』を20回くらい見ているワタクシ的には滝沢聖峰さんが描いたイラストが最高すぎて泣いた)。

 連載もド渋くブレゲー763プロヴァンスやカナディアCL-215、IA-58Aプカラなど「ちゃんと組み立ててあること自体が偉すぎる」というプラモの大行進。超有名フライトシューティングゲームからあの機体をフルスクラッチしたり、シメに登場する松本州平さんのド派手なミラージュIV(普通の人はこのタイプすら知らんつーの)など、見どころたっぷり過ぎ、読むところ多すぎの飛行機模型過剰摂取状態でお届けします。

 nippperのエースライター、クリスチさんの「模型×文芸」もミラージュネタで攻めまくった今回のスケビは必買&必読な上に速攻でミラージュを作ってみたくなること間違いなしですので、みなさま即座に書店orネットでゲットしてください。よろしくな!

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

全種美味しい「タミヤ 1/72 零戦プラモ」!今日はどれ食べる?/優美なるゼロ「二二型」編

▲連載3回目は、「二二型」。前回紹介した「三二型」よりも数字が減っていますね。その理由とは…
▲美しい空。超激戦地「ソロモン戦域」の空はもしかしたらこんなにも美しかったのかもしれません

 コレクションサイズである「タミヤ 1/72 ウォーバードコレクション」で4種発売されている零戦を、1キットずつ取り上げていく本連載。今回は最も美しいシルエットの零戦とも言われる「二二型」。南方で連合軍の強力なライバル達と熾烈な空戦を繰り広げた零戦です。本題に入る前に、零戦の「二二型」のこの数字の意味をおさらいしましょう〜。

★前の数字/機体の改修回数(主翼など)
★後ろの数字/エンジンの改修回数

 前回ご紹介した「三二型」と「二二型」を比較すると、前の数字が減って戻っています。これ、実は三二型でデメリットとなった部分を戻したことにより「二二型」と言う風に数字が戻っているのです。主に主翼形状を三二型の前の二一型が採用していた12mの主翼に戻したんです。つまり大雑把に言うと“「二一型」主翼+「三二型」のエンジン”=「二二型」爆誕

▲12mの長く美しい主翼と「栄」二一型エンジンがおさまるカウルからの流れるような機体ライン。バランスの取れた優美なる零戦を楽しむならこの「ニニ型」で決まりです

 機体形状の美しさはスペックのバランスの良さにも直結するのかと思えるほど、三二型から改善されました。最大速度は三二型よりわずかに劣るものの、主翼内に増設された燃料タンクにより三二型で低下した航続距離を2560kmまで回復。旋回性能も向上し、零戦本来の性能をバランス良く向上させることができました。

 優美なる零は、その振る舞いも美しい。細かくて組み立てるのが難しそう……。そんな風にこれらの写真を見ると思うかもしれません。でも安心してください。迷いのない接着位置、吸い付くようなフィット感、接着剤を流し込むとズレずにピタリと貼り合わさるパーツ精度であなたを導いてくれます。二二型がそっとあなたに寄り添ってくれます。

1/72スケールは完成すると全長約12.6cm、全幅約16.7cm。各タイプコレクションして飾るのにぴったり。そして、タミヤのパーツは本当に綺麗ですね。プラの色の零戦を見ていると、何かいろんなことを思って僕は零戦と対話している気分になります
▲奥が三二型。翼の形状が全く異なります。ニニ型の落ち着きのあるフォルムが際立ちますね
奥が二一型。どちらも美しい翼です。二一型の折りたたみ翼端装置(空母に搭載する時のエレベーター内でのスペースを確保するため)
は、二二型にも搭載されています

組み立て時間は約1時間。夏休み、またはステイホームのお時間に。誰もがその名を聞いたことがある「零戦」という魔法の様な言葉の響きを持つ飛行機と時を過ごしてみる。この小さくて美しいプラモがもしかしたら今の僕たちに何か元気や勇気をくれるかもしれません。零戦には人の心を動かす何かがある。僕はこのタミヤ 1/72スケールの零戦で初めて飛行機模型を完成させることができました。きっとあなたのきっかけにもなりえると思います。ぜひ「タミヤ 1/72 零戦」、そしてその中でも美しい「二二型」をぜひ作ってください。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

「解像度とスピード」。プラモを作るときに役立つマインドセットの話。

 安くてパーツ数の少ない飛行機模型は、サクッとカタチになってよろしい。そうめんを啜るように、サッと作りたい。とくにハセガワの「安い方のファントム」なんて、どシンプルだ。いつでも手に入って、あっという間に組み上がる。

 飛行機模型の最初の工程は、コクピットであることが多い。こまごましたディテールが集中して、塗り分けもいっぱいある。作業に没頭すれば楽しいが、やることが多くて面倒だとも感じる。決してカンタンだとは言えないこの作業、これが億劫でなかなか製作のスタートを切れないとか、ここで息切れしてしまう人、多いのではないだろうか。

 どーんとクローズアップする。作業しているときの視界はこんなもんだろう。とにかく、「ディテールがあるからこれを全部塗らなきゃいけない」とか、「操縦桿やフットペダルがパーツ化されていないから作らなきゃいけないのかな」とか、この解像度だと考えてしまうのだ。

 戦闘機のパイロットも夏の暑さで溶け気味だ。あなたはこんなとき、どうする。

 「塗ったところでうまく見えない」とか、「これじゃあディテールがさっぱりわからないからサードパーティーのイケてるパイロットをスカウトしてこよう」とか、なんなら「彼らはなかったことにして、無人の戦闘機を作ろう」とか。

 もったいないぜ。考えている時間がもったいない。いまはインターネットの時代。展示会だっておいそれできないんだから、顔を近づけてこのパイロットを見る人はいない。このボヨンとしたプラスチックがパイロットらしく見えれば、それでいいんだ。

 ぺろりとオレンジを塗る。この時代の自衛隊のパイロットはオレンジのフライトスーツを着ていた。顔も「このへんが顔かな?」というところを薄めた茶色でサッと撫でておけばいい。

 説明書に書いてある塗り分けは、シートベルトと手袋と、酸素マスクとホース……。「こんなもんだろ」という色を適当に選んで、それっぽく。

▲科特隊みたいになった

 「うわ、きったねえ!全然ヌルくて見られたもんじゃない!」と悲鳴が聴こえてきそうだ。靴だって塗ってないし、適当すぎるんじゃないのか。

 ……しかしそれは、こんな巨大な写真で見ているからだ。落ち着いて、思い出してほしい。

 ほら、そこには確かに、オレンジのフライトジャケットに白いヘルメットをかぶったパイロットが乗っている。さっき見たコクピットのサイドコンソールなど、微塵も見えない。「だから塗るな」とは言わない。この写真を見て、塗るか塗らないか、どれくらい塗ればいいのかをちょっと考えてほしいのだ。

 精緻なコクピットにリアルな人間が座っている様子をグーンとクローズアップして見せたいのではない限り、飛行機模型の写真というのはこんな感じで撮影されるものである。

 世はまさにインターネット時代。写真を撮るのはあなた。あらゆる写真はスマホで消費されて、全体の雰囲気が良さそうであれば「いいね」のボタンが押される。安心しよう。あなたが見せたいのは、雰囲気良く作られた飛行機模型だ。あなたが欲しいのは、「おー、カッコいいっすね!」の称賛だ(そうじゃない日は、ガッチリ作り込めばいいだけの話)。

 大事なのは、「いま手を付けているところが全体に対してどれくらいの大きさなのか」「完成したあと、ここってどれくらい見えるもんなのか」を考えること。限られた人生、ひとつでも多くのプラモを作りたいと願うなら、このことをたまに思い出すと、きっといいことがあるはずだ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ/ハセガワ 1/72 アメリカ陸軍 P-40N ウォーホーク

 フミテシが週末に向けてオススメ模型をご紹介する本コーナー。今回は1/72スケールでさくっと飛行機を組めて、しかもお値段もお手軽のハセガワ定番のシリーズからひとつオススメします。「アメリカ陸軍 P-40N ウォーホーク」です

 P-40シリーズは、アメリカ陸軍航空隊のみならず連合軍の主力戦闘機として第二次世界大戦のあらゆる戦場で活躍。量産性にすぐれ、取り扱いやすく、かつ頑丈な飛行機でした。

▲価格は880円。ランチ気分で買えますね。凹モールドも綺麗で、一昔前のきっととは思えません。キット構造は至ってシンプル。コクピットは胴体の下から接着するタイプです
▲キットは飛行状態と駐機状態を選択出来ます

 飛行機模型でちょっとやってみて欲しいのが「飛行状態で製作してみる」ということです。脚を作らないだけでめちゃくちゃ早く完成させることができます。それこそ仕事帰りにキットを買って、その日にぺたぺたと貼り、その日の夜に手に持ってブンドドまで行くのも不可能ではありません。飛んでいる状態を手に持ちながら妄想するのは飛行機模型の楽しみでもあると思っています。

▲表面も綺麗。羽布張りの表現も模型らしいモールドで強調しており、翼にアクセントを与えています

 1000円でお釣りがくるハセガワの1/72のP-40N ウォーホークは今夜あなたを素敵なフライトに連れて行ってくれる模型だと思います。脚を閉じ、「あなたの頭の中の空の旅」をぜひお楽しみください。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)


プラモの塗装図はでっかい画面でカラーが吉。ファインモールドがいい仕事してます!

 TOP GUNの続編は残念ながら再び公開延期になってしまいましたが、模型業界では需要を見込んで展開されているF-14トムキャットのプラモが元気だぜ。選択肢としてはハセガワとかタミヤとかがメジャーですが、ファインモールドからも1/72のモデルが発売されています。

▲公式の完成見本写真。かっこいー!

 で、いま同社のピチピチの新製品なのが「1/72 F-14Aトムキャット“トップガン”」という仕様で、アメリカ海軍戦闘機隊の戦技向上を目的として編成された戦技教育部隊(トップガン)に所属する機体のカラーリング2種から自分で選んで塗装しよう、というもの。

 MiGっぽいスプリッターパターンの迷彩か、グレーのツートン(タッチアップ痕と迷彩が混在しているように見える)が選べるのですが、説明書はモノクロ印刷。ファインモールドの製品ページに行ったら……なんと高解像度のフルカラー塗装図が用意されてるじゃありませんか!実際にリンク先で見てください。

▲こちらも同社ウェブサイトより。

 先日紹介したBANDAI SPIRITSのメカコレ/ビークルコレクションしかり、組み立てや塗装の指示は大きければ大きいほど見やすいですし、とくにカラーリングについてはカラーで見たほうが間違えない&イメージをつかみやすいのがいいのです。

 昨今ではカラーの説明書も増えてきましたが、各メーカーがこうして「PCやタブレットのでかい画面で見られること」のアドバンテージを理解して、いろいろなデータを提供しているという流れは歓迎すべきことだと思います。みなさんも「オンラインにあるプラモ資源」を発見したらタレコミをしてくださいね!

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

ふたつの戦闘機プラモで楽しむ「ユニフォーム交換」の儀式。

 nippperを読んでいるとアメリカの艦上戦闘機も作ってみたくなったので仕事帰りに模型屋さんに駆け込みました。たまたま在庫があったF6Fヘルキャットを買い、ついでに久しぶりにゼロ戦も作るか~という気分になったので同じ棚にあったゼロ戦も買い、F6Fヘルキャットとゼロ戦を同時に作ってみることにしました。どちらもハセガワの1/72キットです。

 言うまでもありませんが、かつて日本とアメリカは戦争をしました。日本は広大な地域をカバーする長い航続力と優れた格闘戦能力をもつゼロ戦を開発し、他国の戦闘機を圧倒しました。アメリカも負けてはおらず、ヘルキャットなどゼロ戦に対抗しうる戦闘機を次々と開発し、戦闘機個々の能力ではなく集団戦で勝つ方法を模索しました。しだいに日本は劣勢になり、結果は誰もが知るところです。今回は、そんなかつての敵同士を同時に作っていくことになります。

▲左がゼロ戦、右がヘルキャット

 戦闘機プラモのセオリー通り、まずコックピットから組み立てる手順になっていますが、早くもここで両機の違いを目の当たりにすることになりました。ヘルキャットのコックピット、めちゃくちゃデカい。

▲上がヘルキャット、下がゼロ戦

 胴体もヘルキャットの胴体がゼロ戦の倍以上くらいの太さで、「同じスケールだよな…?」と思いました。こんなデカい胴体の戦闘機が飛ぶのか…?!

▲エンジン。左がゼロ戦、右がヘルキャット。

 エンジンを組み立てていても気筒の数と直径の違いを目の当たりにします。頑丈で重量感のある機体をデカいエンジンで飛ばすヘルキャットと、華奢で軽量な機体を繊細なエンジンで飛ばすゼロ戦。設計思想や工業力の違いを、たった数パーツのパーツから感じることができます。

 ハセガワの1/72プラモデルはサクサクと組み立てることができるので、2日程度で二機の組み立てが終わりました。こう並べてみても、両機の違いは一目瞭然です。「自分が乗るとしたらどっちだろう」と考えてしまいました。

 組み立てたプラモデルで模擬空中戦をして遊んでいると、そう遠くない昔にこのような死闘が繰り広げられ、多くのパイロットや機体が帰ってこなかったことが思い起こされて、このまま完成させてもただの戦争の再現になってしまうな、と思いました。

 そこで、塗装とデカールを入れ替えてみました。

 スポーツにおけるユニフォーム交換のように塗装とデカールを入れ替えることで、プラモデルくらいはノーサイドにしたいな、と思ったのです。


 史実でも墜落したり不時着したりした機体を鹵獲(ろかく)して、自軍のペイントを施した上で解析したり戦力に算入したりした例はありますが、今回はそんな物々しい理由ではなく、単純な思い付きです。

 かつて死闘を繰り広げられた戦闘機同士がユニフォーム交換のように塗装を交換し、翼を並べて飛ぶ姿を眺められるのも、自分で組み立てて塗装してデカールを貼れるプラモデルならではです。敵同士だったプラモデルを同時に組み立てることで両者の違いや歴史に思いを馳せることができました。最後まで史実に忠実に作るもよし、塗装を変えてノーサイドにするもよし。

 二つ以上のプラモデルを同時に組み立てることで、色々と見えてくるものがありました。プラモデルが同じスケールでラインナップされている意味はこんなところにもあるのかもしれません。

C重油

1991年生まれ。山口県の小さな漁港出身。大きな港に就職し大きな船を見ているうちに船の模型が作りたくなり、フルスクラッチも始めた普通の会社員。

「ざっくり2000円のプラモ」だと、ハコの中にはいったい何が入ってるんですか?

 プラモの話をいっぱい書いているnippperですが、たまに冷静になります。書いている人間すら、どれがあたりまえのことで、どれがあたりまえじゃないことなのかが分からなくなる瞬間があるんですね。で、今日のテーマは「そもそもプラモのハコって何が入ってるんですか」という話。

▲いろいろ記事を展開するぞ、と思って買ってきたタミヤの1/72飛燕。実売2000円くらいでした。

 タミヤ1/72の飛燕ってものすごく良作だと聞いてたんですが、まだ組んだことなかったし、これはシルバーメッキ仕様というスペシャルバージョン。銀を塗らんでも、ギンギラギンの機体が手に入っちゃうっていうんですから、見てみたい。

▲これが全貌。なんか、すごくないですか。

 もう何千というプラモのハコを開けて見てきた自分でも、冷静にこの内容物を眺めてみると、けっこう新鮮な驚きがあります。これがスペシャルバージョンだから、みたいなのもあるかもしれないけど、2000円でこんだけ色々出てくるという事実を、改めて噛み締めたい。

 紙に印刷されたものが5枚、プラモのランナー(ワク)が3枚、水転写デカールが1枚。これにハコが付いて2000円。安いよ、これ。

 プラモのキホンのキが書いてある「Tech Tips」という紙。必要な道具、気をつけるべき作業についてのアドバイスがてんこ盛り。

 機体の解説が書いてあるパンフレットみたいなやつ。文章、写真、イラストで飛燕の知識を一気に吸収できます。これ読んでるだけでもけっこう時間かかりますよ。

 組立説明書。これがないと始まらないもんね。

 メッキ仕様の模型を作るときの注意とお手入れ方法(!)。こういうところまでちゃんとフォローアップしてくれるの、タミヤっぽい。

▲塗装とマーキングの図。
▲迷彩パターンはラッカーやアクリルじゃなくて、エナメル塗料で塗れとの指示。なるほど。

 慣れてくるとプラモって箱開けてこまごました注意書きに生返事でバーっと作業してしまうんですけど、こうして見るとものすごい量の文章と図でもって、作り方から実機の知識から注意点から完成後のケアまで、しっかりとユーザーに伝えようとしているんですよね。これを書いて印刷するだけでも、大変なことですよ。

 ランナーはハコとほとんど同じサイズのものがまず1枚。シルバーメッキはギラギラのミラーではなく、ちょっとサテン地になっているのがお上品です。ベアメタルではなく、銀塗装された機体の質感をちゃんと考えてある。

 で、小さめのランナーが1枚。こちらも同じ質感でメッキ処理されています。

 キャノピーなどが収まった、透明のランナー。

 そして最後に、水転写デカール。通常のマーキングに加えて、迷彩塗装を貼るだけで再現できちゃう「迷彩デカール」まで付いてくる。

▲こちらは公式のサンプル写真。とりあえずハコの中にあるものを全部くっつけるとこうなる。
▲こちらがバッチリ塗装して仕上げた公式のサンプル写真。

 さて、この飛燕を完璧に仕上げるぞ〜!と思うと、そこにはいろんな作業を積み重ねていく必要があります。nippperでは、なるべく作業を分解して、ひとつのテクニック、ひとつのマテリアル、ひとつのツールをそれぞれひとつの記事として展開していきたいと思っています。なぜなら、そのなかからやってみたいこと、買ってみたいもの、練習してみたいこと、自分には向かなそうだと思うことを読者の皆さんに選んでもらいたいから。

 人間って、目の前にバイキングがあると全部食べてしまいたくなります。でも、食べられる量や料理の好き嫌いは人によって違うのがあたりまえ。nippperは、「バイキングの攻略法」ではなく、ひとつひとつの料理の味や特性をしっかり伝えていくメディアとしてじっくりと続けていくつもりです。この飛燕を作るのだって、ハコを開ける瞬間から100も200も考えることがあるのですから、プラモは安価に始められるのに恐ろしくて素敵な趣味だな、と改めて思ったのでした。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

あっという間に完成する「超スペシャル試作飛行機」。3年越しで、思い出を形に。

▲全天候作戦能力、短距離離陸、低空での超音速飛行、1850km以上の航続距離を持つ核兵器搭載爆撃機という過大な要求に立ち向かった英国空軍の試作爆撃機

 2017年9月。英国にあるイギリス空軍の博物館「ロイヤルエアフォースミュージアム・コスフォード」で僕はこの怪鳥と初めて出会った。英国のコスフォードとダックスフォードの世界に2機しか現存しないイギリスの試作爆撃機。その衝撃の出会いから3年、ついに僕はこのTSR-2をプラモで楽しむことができた。ピットロードの1/144。正直nippperを始めていなかったら、僕は1/144スケールの飛行機模型に目をむけていなかったと思う。1/72、1/48、1/32と言った飛行機のメジャースケールばかりを追いかけていたと思う。クリスチさんのSWEETの記事は僕にもう一つ新たに飛行機模型の楽しさを教えてくれた。そしていつかはTSR-2を作ってみたいと思っていた僕の気持ちをそっと押してくれた。だから僕はピットロードから発売している1/144のTSR-2を手に取った。君はどんなキットなんだい?

▲航空機の博物館を訪れたのはこの「コスフォード」が初めて。英国の試作機の洪水で初めてを知るなんて今思うとすごい贅沢。脳は焼け死にました
▲ロイヤルエアフォースミュージアム・コスフォード。ロンドンから約2時間の地にある広大な博物館。異国の地でひとりで特急に乗り向かう緊張感。そしてTSR-2はその序盤でいきなり現れるのだ。面喰いますよ、そりゃ
▲ダックスフォード帝国戦争博物館。こちらは映画「バトルオブブリテン」や「メンフィス・ベル」のロケ地にもなった場所。コスフォードよりも広大で、各場所にエントランスまで戻るまでに何分かかるよという表札もあります
▲航空機の佃煮状態のダックスフォード。そんなぎゅうぎゅうの中でもTSR-2は異彩を放っています
▲ピットロードのTSR-2の成型色は、絶妙にアイボリーな白。もう塗らなくてもあのかっこいいTSR-2の姿が手に入ると確信してしまいます
▲胴体は上下分割。左右割のように天面に合わせ目がこないから素敵
▲TSR-2において数少ない白以外の部分「エンジンノズル」。これだけ切り取って缶スプレーや筆塗りでさっと塗ってあげれば最高のアイコンになりますね
▲小スケールでも「人」がいるのはすごく嬉しい!
▲あの特徴的な淡いラウンデルなどが入ったデカール
▲キットは脚庫扉、兵装庫扉を閉じた状態にできるパーツも付属。そして台座も付属するので飛行状態で展示も可能。この状態ならさらに早く形になるっす。僕は脚を出している姿が目に焼き付いているので、開いている状態で製作
▲この状態まで5分です。パーツのハマりも悪くなく、5分で怪鳥の全貌が見えます。超楽しい
▲TSR-2のオリンパスエンジンの半身を味わえます。刺身でいきましょう
▲本当にあっという間に組み上がります。1時間でTSR-2の、しかも充分に満足できるボリュームのプラモが手に入るんです。正直迷う箇所はひとつもありませんでした

 そしてこれまでnippperで紹介してきた「タイヤを黒く塗る」、「素組みにデカールを貼る」「水性プレミアムトップコートの光沢でコートする」、「シタデルカラーで細部を塗る」を実践してみたのがこちら。この白い成型色だからこそできること。グレーの成型色ではできないことです。どうぞ。

▲僕が見たTSR-2は輝いていました。光沢です。そしてラウンデル(丸いマーキング)というものはなんでこんなにかっこいいのでしょうか?これを貼るだけで一気に見映えが変わります
▲飛行機模型でタイヤのワンポイントは非常に効きます。そしてTSR-2ならエンジンノズルも欲張って金属色を塗っておけばもう完成っすね
▲さらに欲張ってキャノピーも塗り塗り。筆塗りでベロベロだけど、俺は満足!
▲そしてもう気がついていると思うけど、下にはクリアーの下敷きを敷いて撮影
▲iPhoneXが台座になるくらいのサイズだよ

 お土産。僕は旅の最高のお土産である「感動」を手に取るのに3年かかってしまいました(デラーズフリート!)。でもnippperでプラモの見方が増えていなかったら、感動を手に取ることはできなかったかもしれません。そしてそのような感動を満たしてくれる手に取りやすいプラモが世の中にあるのに、見えていなかった自分。まだまだプラモを楽しめる伸び代はそこら中にあるんだ!と、今回このピットロードの1/144 TSR-2が教えてくれました。出会えて本当に良かったと思っています。きっとあなたにとってもそんなプラモが近くにあるかもしれませんよ。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

美味しいとこだけ味わいたい。MENG KIDS He177

 爆撃機を作りたい!と思ってもたいていが大きくて、作れたとしても部屋に置くところがなかったりして結構悩ましい。作りたい理由は特徴的なグラスノーズと呼ばれたりする前面キャノピー、両翼に付くダイナミックなプロペラ、後ろを向いた銃座……見ているだけで力強く飛ぶであろう姿や意地でも飛ばしてやろうという設計者の考えが生む迫力に心が動かされる。

 そんな「かっこいい!」「すごい!」を抽出した模型というのがあって、MENG KIDSの飛行機たちがそれ。デフォルメされたその姿にワクワクしながら私はHe177を選んだ。

 ハコを開けてみると個包装されたランナー、黒、灰、透明の三色の成型色、機体下部がまさかのワンパーツ……と、剥かれた甘栗、カットされたスイカと言わんばかりの充実っぷりで衝撃。接着剤も不要ということで、こんな甘味に溢れた模型も珍しい。

 しかも、特徴的な前面キャノピーはクリアパーツの上にぴったり収まる格子状の枠が別パーツ。ケーキの上にイチゴを乗せる権利が購入者のために用意されているというありがたさ、というか「ここを楽しめ!」と言わんばかりのパーツ分割の連打。

 驚きのパーツ分割、模型設計の巧みさを味わいながらあっという間に出来上がり。
 パーツ点数が少ない場合ってややもすると薄味すぎる場合がありますが、このキットに関してはそんなことは全くなし。理由はシンプルでユニークなもので、それは「デフォルメの面白さ」を楽しむことができるから。

 He177の特徴はしっかり味わえるけど、どこを短くして、大きくして……と設計者が考えたバランスをも楽しめるので、「何がどれくらいの大きさに変わっているのか?」を感じながら作れるというわけ。これはとくに普段飛行機を作っている人ならなおさらそうで、大きい垂直尾翼とか、キュッと短くされた翼幅といった、普段と違うバランスを楽しめると思う。

 He177が割と直線的なフォルムをしているせいかデフォルメされても丸っこくなりすぎず、一定のシャープさが保たれているのも良いところ。

 そして最後、箱に収まるのが偉い。箱も厚手の強度のある紙で、かなり破れにくいです。なんでそんなことを知っているかというと、実はこれは二機目で一度完成させたものの、手放してしまったから。箱をビリビリに破ろうと思ったらとっても硬かった。

 手放したその翌日にすぐに後悔して再注文したキットということで、それだけ私が気に入ったキットだということもここに書いておきます。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

47歳のプラモ、「フジミの1/48ゼロ戦」はこんなにすごかった!

 いつもどおり模型店をそぞろ歩いていると、「零戦」と書かれた黒くて見慣れぬ箱を発見。メーカー的なデザインの統一感みたいなのをあまり感じさせないこのパッケージ、どうやらフジミの製品らしい。値札はなんと900円。箱も薄いし「どこかのメーカーの1/72をリパッケージ(箱デザインを変えて売る手法)かしら」と訝しみながら開封してびっくり。これは1/48スケールじゃないですか!

 箱の幅いっぱいに入った主翼はディテールもシャキシャキで「すわ、新キットか!?」とよく見てみると、凸型にびっしり並んだリベットの彫刻あり。こういうのは比較的古いキットじゃな……。

 クローズアップすると、はっきりとした凹線で入れられたパネルライン、浮き出すように彫刻されたガンパネル、そして整然と並ぶリベットに、布のような雰囲気で彫刻された動翼……。めちゃくちゃワクワクする陰影に満ちていて、今すぐにでもダーッと塗って、スミ入れをしてその立体を味わいたくなります。

 本物の零戦を見たことがある人ならわかると思いますが、実際はこんなに凸凹していないし、こんなに「布〜!!」って感じに仕上げられた部分もありません。これはモケイ的にムードを盛り上げるための演出なんだよな、と捉えるのが大人っちゅうもの。

 エンジンまわりは流石にあっさりめに見えますが、どうせカウリングをかぶせたらプロペラの隙間からチラリとしか見えないところ。それよりなにより、サクサクサクッとカタチになりそうなパーツ数、濃い味のディテールをどれだけのスピードで味わえるか、こっちの胃袋の力を試されているんです。

 ちょっぴりバリもありますから、これはデザインナイフでサーッとカンナがけすれば問題なし。合わせ目を消すとリベットも消えてしまいますから、こういうプラモは合わせ目を処理してはいけない、というのがマイルールです。

 プラモのセンパイに話を聞いてみると、このプラモの初版は1972年。当時できる最大限の努力がここに工業製品として刻まれ、2020年にほとんどそのまま売られているというのは、プラモの面白いところでもあり、恐ろしいところでもあります。そして、「フジミの1/48零戦の完成度を見たタミヤが翌年に同じく1/48零戦をリリースした」というエピソードを聞けば、このプラモの実力が当時いかなる評価を得ていたのかが想像できるというもの。

 素敵だな、と思ったのは脚収納庫のカバー。飛行状態と着地状態がそれぞれ用意されていますから、「飛んでいるところ」を表現したければ、パーツが細かくて工作難度のやや高い着陸脚の製作をすっ飛ばすことができます。

 キャラクター性をブーストしてくれるリベットを残し、くっきりとした彫りの深い顔立ちを味わい、ただ貼って、好きな色に塗り、飛行する零戦の姿をぺろりと喰らう。こういうプラモって、いまではそんなに多くありません。とくに1/48スケールの飛行機となると、まずまずの精密表現が求められる時代ですから、パーツ数は多くなりがち。

 濃い味のデカールもいろんなマーキングが用意されていますし、キャノピーの枠もガッチリと彫刻されていますから、塗って仕上げるのも気楽に、豪快に楽しめます。

 安くてパーツ数は少なく、機体表面の凹凸が豪快に彫刻されながら、知名度もある。古いプラモには、今のプラモとは違った美点というものがあります(そして私はこういうプラモが大好きです)。当然、組みにくいものや不正確であるという誹りを受けて歴史の舞台から姿を消してしまうプラモもあります。

 箱を開けるまで、何と出会うかわからない。プラモの楽しさとは、かくも量子論的で、かくも冒険的で、歴史学的、考古学的な広がりすら持ち合わせています。みなさんも、新しいものが良い、古いものはダメ、と決めつけずに、貪欲にプラモの縦横の広がりを探検してください。とにかくこの零戦、シンプルながら奥深い表現と、価格とボリュームと組やすさのバランスに考えさせられることの多い一品。いちどは見てみたほうがいいですよ。ぜひ。

からぱた/nippper.com 編集長

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全種美味しい「タミヤ 1/72 零戦プラモ」!今日はどれ食べる?/「三二型」編

▲翼端がスパッと短い角型の主翼が特徴のツッパリ零戦が登場だ!

 コレクションサイズである「タミヤ 1/72 ウォーバードコレクション」で4種発売されている零戦!前回は真珠湾攻撃でも使用された零戦でお馴染みの「二一型」をご紹介しました。

▲「二一型」についてはこちらの記事をみてね

今回はその改良タイプとして開発が進められた「三二型」をお届けします。「二一型」と比べながらみていきましょう。

▲タミヤ 1/72零戦はこちら4種をラインナップ。今回のお題は上から3番目の「三二型」です

タミヤ 1/48 傑作機シリーズ No.103 日本海軍 三菱 零式艦上戦闘機 52型/52型甲 プラモデル 61103

まずは前回のおさらい。「二一」とか「三二」という数字ですが……

★前の数字/機体の改修回数
★後ろの数字/エンジンの改修回数

 ですので、「二一型」から「三二型」へは、機体とエンジンの両方を改修しています。機体は「速度向上のため両翼端を50cmずつ二一型より短縮。急降下能力などが改善されたが、航続距離は1000km低下してしまった」というのが特徴です。

▲高高度性能や最大速度、ロール性能などの向上を目指した「三二型」。最大の特徴である50cmずつ短縮された翼により速度は11km/h向上するも、重量増加や燃料タンクの容量減少により航続距離を大きく落としてしまいました
▲左が「二一型」のランナー。右が「三二型」のランナー。ぱっと見同じの零戦でも胴体や翼は異なります。もちろん「二一型」とは異なるこだわりの新規パーツ構成
▲上の画像が「二一型」の「栄」一二型エンジン。下が「三二型」の「栄」二一型エンジン
▲計器板も二一型とは異なるパーツがセットされます。本当にこの零戦シリーズのコクピットの解像度はやばいですね
▲完成後にのぞき込むとこんな感じです
▲一番の特徴である主翼翼端。こんなに形が違います。このスタイルを楽しめるのが、まさに「三二型」の醍醐味
▲上が「二一型」、下が「三二型」。エンジンカウルのデザインも変更されます
▲比べてみるとシルエットが大きく異なります。特に「三二型」は主翼形状が角型なので、他の零戦とは一線を画していますね

 様々な施策を盛り込んで兵器はアップデートされていきます。その中にはやはりバランスを欠いてしまったものなども多いです。三二型も性能の偏りなどが見られ、次の改修タイプ「二二型」へとバトンを渡します。でもこのような変遷をじっくり見ることができるのも「同じスケールで多数のバリーションがキット化されている」プラモと言う物の特徴だと思います。タミヤが送る至高の零戦で、零戦の特徴を指差し確認していくのも非常に「ヨシ!」な楽しみ方だと思います!角でツッパリな零戦を楽しんでね!

フミテシ/nippper.com 副編集長

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プラモのパッケージ、上から見るか?横から見るか?

 プラモデルを買うとき、箱絵(天面)はもちろん見ますよね。かっこいい絵が乗ってて額に飾りたくなります。じゃあ、箱の横(側面)ってよく見ますか? プラモデルの説明とか写真とか、ミリタリーモデルなら歴史とかが書いてありますね。私は歴史についてはちょっと苦手意識があります。自慢じゃないですが世界史は赤点でした。だから、何年に配備とか、何年のなんちゃらの戦いとか言われてもピンときません(あんまりこんなこと書くと怒られそう)。なので模型の説明とか歴史とかあんまり読まずに箱絵の印象で買ったりします。ジャケ買いってやつですね。

 そんな私が「双発のプロペラ機ってかっこいいな~」と思って買った、タミヤのブリストルボーファイターMk.4夜間戦闘機。

 家に帰って、ふと”箱の横”を見てみると《模型要目》という説明書きがあります。よく読んでみるとこんな一文が書いてあるんです。

 ★成形色は黒、ボーファイターの精悍な姿を引き締める全面つや消し黒の塗装仕上げを手軽にお楽しみいただけます。

 箱の横が言っています。「パーツは黒で作っておいたから、そのままつや消しスプレー吹けばいいよ。黒いパーツを黒で塗装するような不毛な営みはしなくていいよ」
 そっか~しょうがないな~。箱の横がそこまで言うなら言われたとおりにするしかないな~。ホントはバリバリ全塗装しようと思ったけど…意地張ってもしょうがないしな~。
 なんだかだらしない奴だなと言われたくないので、機体色は箱の横に言われた通りにする代わりにそれ以外の部分はなるべく頑張ろうと思います。
 機体色以外はシタデルカラーで筆塗りしました。窓枠もマスキングテープを切り貼りして塗り分けます。デカールを貼ったらつや消しスプレーを吹いて完成です。

▲つまり、この黒はプラスチックの色そのままなのだ。

 私、これくらいの大きさのプラモデルは大体途中で飽きて投げ出すことが多いのですが、機体を塗らないと思うとすごく気が楽です。ランディングギア(着陸脚)やプロペラまわり、搭乗者やコクピットの部分塗装は筆塗りなら忙しくても少しづつ進められますし、このキットはデカールも少ないのでサクサク作れます。意外といい感じになってませんか?私は大満足です。

 作り終わってから、家にあるプラモデルの箱横をあらためて見てみると、箱横にはそれぞれのメーカーのプラモデルに対するアプローチが現れているような気がします。

 バンダイスピリットの箱横には「こんなふうに可動しますよ」「こんなギミックがありますよ」と完成したモノの魅力を教えてくれます。ハセガワは多くを語りません。必要な情報を淡々と語る姿は硬派な感じがして魅力的です。タミヤの箱横は塗装図と歴史、そしてプラモデルの説明。完成写真が無いその箱横は組み立てる楽しみと、どういう風に作ってもいいんだよという自由さを教えてくれている気がします。

 別にどのメーカーの箱横がいいとか悪いとかそういうことではないんです。押しの強いチャラ男も寡黙な紳士も、おとなしい文学女子も派手なギャルもみんな魅力的です。今回は年上で真面目そうなお姉さんが思いがけず優しくしてくれたので、それに思い切り甘えてしまっただけの話なのです。

もとぴ

東京在住。世界を理解するための糸口としてプラモデルを制作中。趣味の記録や思索のためにnoteも書いています。

シガレットキット/SWEET 1/144の世界。

 一服するように模型を作りたい時がある。寝る前、ほんの数十分。なんと言うか、形が欲しいときだ。何かを作りたいという衝動。あるいは週末まで待てない自分が顔を出しているのか。

 そんなときに家にあってよかったなと思うキットがある。SWEETの1/144の飛行機。今日はタミヤの傑作機を買うか悩んでいるときに買ったワイルドキャットで、パリッとしたプラの質感と味わいのある成型色。今となっては繊細な同スケールの飛行機模型は数あれど、SWEETのように「このスケールでどう成立させるのか」という判断をしているキットはそうそう無いと思う。

 作るのは簡単。コックピットが省略されていたりするので本当にサクサク進む。板チョコをパリパリ食べる感覚?いや、シガレットと言ってしまいたいくらいだからタバコを吸うように一気に吸い込んだ煙をフーッと吐くような感じ。つまり、出来上がるまではそれの連続。各工程はいたってシンプルに進み、そのまま完成まで走りきる。切って貼って組み合わせる、そのリズムが気持ちよく、最後に火を消すようにプロペラの軸を刺す。

 次の日、目が覚めるとテーブルに置いてあるそれを見る。ああ、昨日作ったんだな。これ。改めて手にとってプラの薄さが生み出す精密さに驚くのと同時に、あっという間にできたことを思い出す。デカールはまだ貼っていないが、あのカルトグラフのほどよい厚みとしなやかさのあるデカールを翼やボディに滑らせる楽しみが残っていることを嬉しく思う。

 今日は晴れていたので外で写真を撮ることにした。

 朝起きてこんな精密なミニチュアを手に取ると、「ギリギリまで寝ていたい」という気持ちよりも、朝日のもとでこの気持ちを写真に収めたいという思いが勝ったから。

 SWEETはその精密さには焦点が当たるが、出来上がるまでのテンポの良さや組み立て精度の異様な高さに驚かされるキットだ。多くの模型が細かなパーツ分割からくる精密さを売りにする中で、最低限のパーツ点数で飛行機を作り上げたと言う気持ちを持たせてくれ、それでいて仕上がりもかなりよいので本当に頭が下がる。

 この出来上がりのスピード感、夜中に一本、ミッドナイトモデリングとしてオススメ。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ/ズベズダ 1/48 Mi-24V/VP ハインド

▲昨晩届いて狂喜乱舞!ロシアの戦闘ヘリ代表「MIL-Mi24 V/VP」。通称「ハインド」。1/48スケールで44.7cm。でっかくなってロシアからやってきた!!

ズベズダ 1/48 ソ連軍 MIL-Mi 24 V/VP 戦闘ヘリコプター プラモデル ZV4823

 週末を楽しめるプラモをフミテシが紹介するこのコーナー。今回はロシア最強、模型メーカーのプーチンとも言える「ズベズダ」というメーカーのプラモをご紹介します。近年のズベズダは、実際にロシアの兵器生産メーカーや工場からデータを提供してもらったライセンス商品としてプラモを発売しています。最近だとロシアの最新戦車「T-14 アルマータ」がそうですね。この「ハインド」もライセンスキット。オフィシャルハインド。しかも1/48スケールという迫力あるアイテム。買うっきゃないでしょ。フミテシ による開封の儀、よ〜い、はじめ。

▲ハインドの生物的なフォルムをより強調するキャノピーデザイン。クリアーパーツの透明度も高いです

 一度見たら忘れないんじゃないか?というくらい特徴的なデザインの「ハインド」。様々なアニメ・映画作品でもこれをベースとした架空ヘリなどが登場します。唯一無二とも言える生物的デザインのヘリで、僕はヘリ模型デビューしたいと思います(ヘリコプターの模型は艦船模型の1/700の物しか作ったことないのです!!楽しみ〜〜〜)。

▲ディズニーシーで食べられるチキンレッグみたいな形の本体パーツ
▲超かっこいい銃身パーツ
▲メインローター。モールドはピシッとキレイに入ってます。縁部分の塗り分けもしやすそうです
▲昨今の海外メーカーの彫刻バリバリの「圧が強いんじゃ」キットに比べてすっきりした印象ではあるものの、彫刻はとてもキレイで、1/48スケールでも間延びすることはないと思います
▲パイロットも付属。1人はちょっと体を捻っていて、演出が加えられているのも良い感じです
▲この青いシート!ズベズダのデカールの特徴です。塗装パターンごとに選択して使用するものと、共通のコーション(こまかい注意書き)がセットされます
▲カラー塗装図がつきますよ〜
▲キットは各ハッチを開けた状態と、閉めた状態を制作できます。説明書内でも製作工程が分岐するのでよく確認して組んでね
▲ズベズダの説明書は、ズベズダのメーカーロゴのシルエットに乗っている番号が「使用カラー」の番号。アルファベットと数字がパーツ番号です
▲加工が必要な部分には人の手のイラストが入るのいいですね〜。スッと注目できます
▲こちらが全パーツ。318パーツで構成されますが、ハッチなどの開閉によってそれぞれ使用しないパーツが出てきます
▲メーカー完成見本写真。武装も沢山!

 ズベズダは過去に1/72スケールでこのハインドを発売し、モデルデスヤーレス(ドイツのスケールモデル専門誌「Modell Fan」が選出するモデル・オブ・ザ・イヤー)に選ばれています。そのメーカーが新たに送り出したハインド。楽しくない訳がありません。ぜひこの大注目キットを買って、7月の模型ライフ楽しんでください。7月は月末に連休もあるからね!!!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

全種美味しい「タミヤ 1/72 零戦プラモ」!今日はどれ食べる?/「二一型」編

▲コレクションサイズである「タミヤ 1/72 ウォーバードコレクション」には零戦がいっぱい!初めて零戦を買ってみようと思った時この飛行機を知らないと「何が違うんだべ?」ってなりますよね

 緑で日の丸がついてる昔の飛行機はみんな「零戦」って模型に馴染みのない人なら言ってしまいますよね。それだけ日本人の中に染み付いているってことだと思います。僕はこの飛行機を初めて作ろうとした時、「二一型?」「三二型?」「二二型?」え?何?どこが違うの?どれが強いの?って本気でなりました。飛行機模型を作れるようになったのは割と最近で、それこそ僕が「初めて完成させることができた飛行機模型」はこの中にある「零式艦上戦闘機二一型」でした。タミヤの1/72零戦のキットは2012〜2013年に発売されたキットで、どれを買ってもハズレなしのスーパーキットでございます。ですので、各零戦の特徴を記しながら、これからシリーズで全キット作ってみようと思います。第1回目は「二一型」をお届けします。

▲美しい空を舞う白い零戦。緑ではありません。二一型。かっこいいですね〜

 「二一型」はあの「真珠湾攻撃」時に使用された零戦です。正直それで十分模型を楽しめます。多くの人が知っているあの戦いで使用された零戦を作りたい!と思ったらぜひ手にとってください。この「二一」という数字ですが、前半の「二」が主に主翼形状のことで、後半の「一」というのはエンジンを指します。そこら辺は次回見ていきましょう。

▲1/72零戦のキットすべてに封入されている零戦のバックグラウンドインフォメーション。基礎知識満載!零戦のキット全種買えば保存用、使用用、お手洗い用、普及用と完璧な布陣
▲クリアーパーツを含めた3ランナーに、1発成型されたエンジンカウルで構成されます
▲1/72スケールとは思えないほどの精密さ。コクピット周りの解像度は半端ないです
▲零戦の心臓「栄」。二一型に積まれていたのは「栄」一二型エンジン
▲ワンパーツで成型されたエンジンカウルの美しさ!ディテール、形状ともに最高です。パーティングラインなんて薄すぎて、軽くデザインナイフで撫でててやれば綺麗に消えます
▲コクピット周辺が、中のディーテルが透けるほど薄い!
▲主翼は面も裏もモールド&リベットなど綺麗すぎて悶絶です。彫刻は細く深いので、筆塗りも安心!簡単にはモールド埋まりません。すごいです
▲この解像度のパーツが1/72でしかもピタピタ合うんですよ。奇跡体験アンビリ文字数

▲このキットがなぜ多くの人におすすめなのか。ご覧ください。す〜
▲ピッタ〜〜。これです。全パーツこれです。あとは流し込み接着剤の筆先をチョンとするだけです
▲胴体もピッタ〜。流し込みをす〜。この連続が快感です
▲僕が一番好きなピタポイントはこちら。7.7mm機銃が入っているパーツですね
▲置いただけです。最初から一体だったでしょ、あんた!ってツッコミを入れたくなるこの精度。快感です
▲コクピットは本体の下から入れます。この構造のおかげで、飛行機模型によくあるコクピットを塗ってから本体と挟み込むということをせずに、それぞれ塗装してから組み合わせることも可能です
▲主翼と合体!
▲この状態を「士の字」なんて言います。「士」みたいでしょ。「土」じゃないぞ!飛行機と土はやばい
▲デカール貼って完成!青空に映えますね〜。かつてハセガワの零戦を紹介した記事のように、「二一型」ならこのようにグレーの整形色にデカール貼って遊んでもありですね!
▲ハセガワの零戦二一型もこの機会にみて見てください
▲デカールだけ貼ったというのは嘘です。上のハセガワの零戦の記事をモロパクリして、エンジンカウルとプロペラだけ塗って見ました。楽しい!

 2012年から発売というと、8年も前かと思うかもしれませんが、この時点で既に現在のタミヤクオリティと遜色ないすごいキットになっているのがこの「1/72零戦ファミリー」です。お次は「三二型」というちょっとやんちゃな零戦をご紹介します。「二一型」とくらべながらお話ししていこうと思いますので、この回で「二一型」のシルエットの特徴もご紹介できればと思います。まずは「真珠湾の零戦」を作りたかったらこれ!という「二一型」のご紹介でした。零戦かっこいいからみんな作って見てね〜

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

「仮想敵機部隊」に燃える!超エリートの”専用機”のカラーリングとは!?

 「アグレッサー部隊」って聞いたことありますか。戦闘機のパイロットの訓練をするための敵役となる奴らのこと。日本の航空自衛隊では飛行教導隊と呼ばれています。当然弱いと訓練になりませんから、パイロットの中でも精鋭が務めます。
 で、彼らの乗る機体(F-15 イーグル)は空中で「あれがアグレッサーだ!」としっかり識別できるように(そしてそれぞれの機体が仮想敵として演じる役割を判別できるように)普段とは異なるスペシャルな塗装が一時的に施されています。

 このたびモデルアートより刊行された『アグレッサーアーカイブス01 1990-2003年編 2020年 07 月号 [雑誌]: 艦船模型スペシャル 別冊』は1990年から現在までに施された識別塗装をイラストと写真で網羅しようというとんでもない企画。タイトルに「01」と入っているように、1冊では収まらないので3分冊で出るというのだから驚きです。

 迷彩塗装のようなパターンもあれば、シンプルに直線的な塗り分けが施されたもの、どこかの国の戦闘機に似ているもの……などなど、ひとつとして同じパターンのないさまざまな識別塗装のすべてがイラストと写真付きで解説されており、単にF-15がいっぱい見られるだけでも超嬉しい。

 どんな塗料が使われてたのよ〜というマニアックな資料もあるのですが、この本の面白いところはとにかくいろんな塗り分けパターンとか色の組み合わせを大量に眺められるところにあります。
 なかには(主観的かもしれませんが)決してかっこいいとは言えないパターンや配色のものもありますし、文句なしに「これが制式塗装でいいじゃん」と思えるものもあります。
 こういう引き出しをいっぱい持ってると、キャラクターモデルを塗るときにも「そうだ、あのパターンを引用してみよう」とか、「このロボットはアグレッサーという設定にしちゃおう」といった”遊び”を思いついたり、人に見せたときの納得感を向上させたりする効果があります。

 そして説明的な図や記録重視の写真のなかに突如現れるエモくて情緒的な写真たち……。「再現のための資料」としても一級品の本ではありますが、戦闘機を運用する上で、こんな人達がこんなことを考えながらすごい手間ひまを掛けているんだなぁということを知っていれば、普段作る戦闘機への思いもいや増すでしょうし、架空のメカにひとひねりのアイディアを盛り込むことも可能になります。ずっしり重くて色とりどりのムック、みなさんもぜひ読んでください。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

缶スプレー、手軽に輝く銀塗装。「タミヤ メタルシルバー」でキラッと仕上げる!!

▲メタルシルバー!直球!発光!!エナメル塗料によるスミ入れができ、コンパウンドがけもOK

 東京・銀座。かつて江戸幕府が銀貨を作る機関として江戸においた「銀座」に由来する町。日本を代表する華やかな街ですよね。銀とは華やかな物。金とともに貨幣として使用された大切な存在。そんな色ですから僕たちも華やかに仕上げたい!だから金と銀の良いマテリアルはnippperでみんなと共有したいんです!マッキー、筆ペンに続き、今回は缶スプレー「タミヤ メタルシルバー」をご紹介です!

▲おや?このスプレーには相棒が必要です。ブラックがいないと、メタルシルバー本来の輝きが出ません
▲TS-14 ブラックを全体に吹き付けます。きれいな光沢ブラックです
▲乾いたら、メタルシルバーを吹き付け。一撃でこれです。メッキ調とはまた違う、非常に輝度の高いシルバー。かっこいいでしょ!

 粒子も細かく、非常に輝度の高いシルバーをお手軽に得ることができるメタルシルバー。ポイントはきちんと光沢ブラックを吹き付けてから吹くこと。クリヤー塗料も上掛けすると輝きが損なわれるそうです。

 缶スプレーのお手軽さでこのシルバーを体験してしまうと、まさに病みつきになります。さくっと組んだ飛行機に今回吹いたら、満足度が高すぎてお気に入りの模型になってしまいました。あなたもぜひメタルシルバーでカッコイイ銀模型を手に入れてください。模型の銀座nippperからは以上です。

■タミヤ スプレー塗料(ミニ)メタルシルバー 本体価格1400円

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

みんなのMY CORSAIR/いつでも待っていてくれる「濃紺の翼」

 初めて飛行機を作ろうって模型コーナーを見ていると、「迷彩、無理。ぼかし、無理」なんて、思いのほか作れるものがなくてびっくり。色を塗らないにしても、塗装済みと未塗装をbridging the gapしたいのも初々しいノービスならではの気持ちといったところ。そうなってくると良い感じに見える飛行機はかなり絞られてきて、忽然と輝くのがコルセアです。

 ネイビーの機体はなんとか塗装できそうだし、塗らなくても許される雰囲気。コルセア以外の飛行機もそうかもしれませんが、コルセアはきっと、模型をきっかけに知る飛行機としては屈指の知名度があると思います。ネイビーに塗ればなんかいい感じになる飛行機、コルセア。特徴的な翼(「逆ガル」と呼ばれる上に折り曲がったカタチ)と大きなプロペラが記憶に刻まれる。

 私はコルセアを今まで4回作りました。最初のものは、本当に最初に作ったスケールモデルで、大失敗をして今は手元にありませんが、nippperにはハセガワの1/48サイズのものが載っています。今でもかっこいいなと思う、形を純粋に味わえる仕上がり。

 次はこちら。現在発売中のスケールアヴィエーションに掲載されていますが、これは、ハセガワの1/72サイズのもので、切って貼って貼ったもの(最後の「貼る」はデカールのことね)。成型色が意外にも(?)青系の薄いグレーだったのでネイビーに塗ることなく仕上げられましたが、格闘ゲームの2Pカラーの様で気に入っています。あと、プラスチックの軽やかさがいいですね。

 そして最後。これは最近完成させたばかりのコルセアで、こちらもハセガワの1/48のもの。初めて説明書通りに色を塗り、しっかりと完成させました。増槽は飛行機の形の美しさを優先したので、「付けない」という選択をしました。

 コルセアは模型のモチーフとして見てみるとアディダスのスーパースターのようなオーセンティックさと、アイコン的なルックス。そして誰もが履けるような良さがあると思います。そのせいもあって、実機への思い入れや溜まった経験や知識から購入へ至る道とは少し違い、「飛行機を作ってみたい」という衝動によって多くの人に手に取られ、完成させられていると思います。あるいは、週末の私のように、今の自分の腕試しをするように買われていくのでしょう。

 まずはコルセア、今はコルセア。いずれはコルセア。各メーカーのラインナップも様々なスケールに及んでいることから、どんなときでも親しみを持って作られるために生まれた、そんな飛行機模型なのかもしれません。

■ハセガワのコルセアはこちらからどうぞ。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
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週末に癒やされたい「999円で買えるプラモ」の話

 コルセアっていう飛行機、いいんですよ。何がいいって、全身ネイビーブルー。イギリスで実機見てきたんですけど、エンジンが収まってるカバーとコクピットとプロペラとタイヤとエンジン以外は全部ネイビーブルーで「これだったらもうプラスチックが紺色なら優勝じゃん」って思ったんですよね。塗りたいところは塗ればいいし、まあ塗らなくても紺色の飛行機ができたら「おお、コルセアじゃん!」って思えるところが素敵。

 最近ウォルターソンジャパンという会社が展開している「モデルキット999」というシリーズがありまして、これが名前のとおり999円なんですよ、全部。量販店の割引価格ならもうちょっとした昼メシみたいな値段で買える。

 プラスチックの色もいちばんモチーフのイメージに近くなるのを選んであるから、箱開けたときに「おお、これならイケそう!」という感覚がすごい。青い飛行機を作ろうとしてグレーのパーツが出てくると「これ塗るのか〜塗るんだよな〜」という気持ちになる人にはモッテコイです(オレは塗りたい日もあるし塗りたくない日もあるし、部分塗装でどうにかしちゃいたい日もあるし、その日の気分でプラモにかける手間を選んでもいいと思う派)。

 えらい。飛行機のプラモには2種類あって、パイロットがついてるやつと、そうでないやつがある。パイロットがついてると「ラッキー!」という感じがします。無人の飛行機はちょっとさみしいし、パイロットを椅子にボーンと座らせるとコクピットの中が人間で埋まるので計器やシートを作り込まずにすむ、という効果もあります。

 エンジンのカバー(カウルという)は完成後も付け外しができるようになっているので、あとからエンジンを眺めてニヤニヤしたいという人は、金属的な色に塗ってオイルでドビドビに汚れた状態にするのも楽しいでしょう。カウルを外さないぜ!という人はべつに塗らなくても気にならないです。プラモ(とくに飛行機)は複雑でごちゃごちゃしてて腕のふるい甲斐のありそうなところがだいたいツルンとした外装で覆われて見えなくなります。どこまでやるかは、自分との対話じゃ。

 彫刻はけっこう味濃いめの凹モールドになっていますので、スミ入れも楽しいでしょうし、何もしなくても陰影がバチッと出て立体感あふれる雰囲気に見えます。やっぱこう、成型色(プラスチックの色)のままポーンと置いておくなら、これくらい濃い味のほうが見栄えがしますね。

 デカールもばっちり入ってますし、999円なら失敗しても泣かない。もう1回チャレンジできる価格で、パーツ数も多くなくて、例えて言うならバッティングセンターで気持ちよく打てるようになるまでいくつか練習する、なんていう遊び方にも向いてると思うんです。

 どこを何色で塗るかは自由ですが、エンジンとプロペラとタイヤは黒いほうがいいな、と思ったらつや消し黒の塗料やマーカーを用意すればいいですし、写真みたいにカウルにワンポイント色を入れるだけでも目を引く仕上がりになると思うんですよね。問題はキャノピーです。クリアーパーツに枠を描くというのはちょっと骨ですが、この作業は飛行機模型の宿命なんです。最初から塗っておいてくれればいいけど、それだと999円じゃなくなっちゃうかもね。まあ、これもいつか「筆でニョニョニョーっと描いてみよう」という記事をやってみます。

 4つのパーツをパチパチパチと合わせれば、だいたい飛行機のカタチが見えてきました。こまかいところをしっかり作っても、土日で楽しい思いができそうなプラモ。今週末はみなさんも999円でプラモの海を泳いでみませんか。

戦車も飛行機も999円。モデルキット999シリーズはこちらからチョイスしてください。

からぱた/nippper.com 編集長

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「ひこスぺ」でランカスターも友達だ!爆撃機だって怖くないかも。

飛行機模型スペシャル№29 特集:イギリス空軍・四発重爆撃機 アブロ・ランカスター

 模型雑誌「モデルアート」の増刊「飛行機模型スペシャル」の最新号。特集は英国を代表する爆撃機「アブロ・ランカスター」。
香港の模型メーカー・HKモデルの超特大きっと「1/32スケール アブロ・ランカスター ダムバスター」の作例を皮切りに、各メーカー・各スケールのランカスターのオンパレード!
 排気汚れの塩梅や迷彩のボケ味などもそれぞれの作例で異なっており、爆撃機の迫力を塗装でどのように表現してみようかというのが製作者ごとに見れて楽しい。

▲往年の名作キットから、近年発売されたキットまで多数の作例を掲載

 私もかつて1/48のタミヤのキットを筆塗りで仕上げたのだが、その時このデカさをどう扱っていいものか、どう向かっていけばいいのか正直悩むところがあった。
 しかし本誌を読むとおおらかに取り組んでいるところやここはこだわろう!という工作部分が途中写真から見ることができ、ランカスターへ向かう気持ちも軽くなるはずだ。本誌を読んで、アブロ・ランカスターダムバスターが活躍する名作映画「暁の出撃」を見ると、きっとあなたの机にもこの巨大な爆撃機の箱が置いてあることだろう。

▲これ1冊でランカスターに詳しくなっちゃう解説も満載

■飛行機模型スペシャル№29 特集:イギリス空軍・四発重爆撃機 アブロ・ランカスター本体価格1980円

フミテシ/nippper.com 副編集長

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花金だ!仕事帰りに買うプラモ/エアフィックス 1/72 ハリケーンMk.I

▲きっと土曜日のあなたの机上がこうなります

今週もやって来ました!シェフ・フミテシ推薦の週末オススメプラモの時間です(まだ2回目だぞ!)。今回は飛行機模型です。

海外キットでぜひとも一度は組んで貰いたいメーカーがあります。この赤い箱が目印のエアフィックスです。英国を代表するメーカーで、飛行機模型の名作を数多く送り出しています。1/72スケールという小さくてコレクションに適したサイズのキットが豊富にラインナップされているのも特徴です。その1/72スケールのキットの中から、第二次世界大戦でスピットファイアとともに活躍した戦闘機「ホーカー ハリケーンMk.I」を推薦します。ええですよ〜。

▲エアフィックスのプラモの香りはなんだか少し酸っぱい。異国のプラモの香りだ!と初めて開けたときはクンクンしたもんです。あとこの独特のグレーの色と、ちょっと柔らかくて癖になるプラの感触も特徴ですね〜
▲表面がうっすら梨地なのですが、これによりサフ無しでもしっかり塗料が食いつきます。筆塗りにも最適で、塗料がしっかり食いついて梨地も塗料により目立たなくなります
▲主翼側のパーツに操縦桿などを貼っていく面白い構造です
▲主翼のコクピット部分に覆いかぶさるように胴体が接続されます
▲士の字!エアフィックス独特のグレーの色が美しいですね〜。パーツもぴっちり合いますよ
▲マーキングも素敵。デカールは美しい印刷で定評のあるイタリアのカルトグラフ製。昨日の敵は今日の友です。終戦!

 とってもシンプルな構成で、組み立ても楽。英国のメーカーが作る英国機。週末はハリケーンと紅茶で優雅なひと時を。完成したらエールで乾杯しようね!

▲文林堂が発売している世界の傑作機、通称「世傑」。プラモのお供に、夜の枕の脇に。模型ライフが豊かになる本です。気に入った飛行機と一緒に買うとハッピーになれますよ

■エアフィックス 1/72 イギリス空軍 ホーカーハリケーンMk.I 参考価格1320円

■文林堂 世界の傑作機 ホーカー・ハリケーン (世界の傑作機№182) 本体価格1446円

フミテシ/nippper.com 副編集長

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飛行機模型を爆速で楽しむ方法。/「お楽しみ前のお楽しみ」

 ハセガワの飛行機を初めて購入しました、ミハイルです。飛行機模型ってなんだか難しそうだなと思っているあなた。私もです。今日はそんなみんなと一緒に、この「1/72スケール F-16A PLUS ファイティングファルコン」の中身を見ていこうと思う。さぁ、いくぞ!

▲斬空天翔剣!!(29歳未婚男性) ……急ぐあまり手を切らないように気を付けてね。
▲はいAランナー!ワンパーツ!
▲Bランナー!胴体下面と胴回りのパーツ!
▲Cランナー!翼関連のパーツが纏まっているようだ!
▲武装とタンクのDランナー!クリアパーツのEランナー!
▲凄い豪華なマーキングシールがセットだ、やばい。

 なるほど。どうやらランナーは全部で5枚。厳かなパッケージではあるが、中身は大分作り易そうだ。…おや?

▲突然お洒落空間(オレ調べ)が出現!!

 これは!?全てのランナーを箱から取り出しただけなのに、もう一つの作品のようではないか!私は開封してからまだ一度もニッパーを握っていないのだが……。

 というわけで、思い付きで100均のコルクボードにプッシュピンを指し、ランナーを掛けて飾ってみました。絵を飾っているようで、私はめちゃくちゃ楽しかったです。
 例え色を塗っていなくてもボックスアートも添えれば、これはもう誰が見たってハセガワのファイティングファルコンであることが分かります。

 キットとコルクボードとプッシュピンさえあれば、「模型に興味があって、どんなものか見てみたかった」「カッコイイ模型を買ったはいいものの、上手く組み立てる自信が無い」「買っても作らずに棚に置いておく可能性が大……」など、お悩みを抱える方でも直ぐにできるので、模型を楽しんでいる状態として完全に成立しちゃいます。なおかつ、満足度は激しく高いでのでオススメです。

 ※高いところに飾ると、落下の衝撃でパーツが破損する危険性がありますので、その辺りだけ注意していただければと思います!

 ちなみにこのハセガワのファイティングファルコンは1,000円以下で購入する事が出来る凄いキットだ。
 暫くこの状態を楽しんだら、しっかり作ってあげたいと思う!ではまた!

■ハセガワ 1/72 アメリカ空軍 F-16A プラス ファイティング ファルコン

ミハイル

福島県出身 1990年生まれ 模型を楽しんでいます マスキングが苦手 下のリンクの『火星深青』でブログを執筆していますので、模型に興味がある方は是非見に来てください。

この1色を足す 〜たとえば、コルセアの場合。

 塗装って面倒だなっていつも思ったりするのだけど、その割にただ切って貼るだけじゃつまらないなってわがままを言ったりもする。
 これは、つまるところ「耐えられる程度の苦労をして、結果を出したい」という話でもあって、ほどよい負荷の筋トレをするのと少しだけ似ている。

 プラモが楽しいところの一つに、この「負荷の設定を自分でできる」というのがあって、例えば色を塗るか塗らないかでそれは随分と違ったりして、どう目標を立てるのか? というのは作る前に楽しめる遊びの一つ。基本的にはガンガン負荷を上げていってボックスアートのようなものを作るのが楽しかったりするのだけど、最初からそんなことはできないし、でもやらないといつまでもできないし。というのは、プラモ趣味の苦しいところ。間を取ろうという選択肢は、あんまり聞かない。

 そこで今日は、ひとつの提案。数多ある(っぽい)選択肢の中から、ひとつを書くことにする。それは「1色を選び、ポイントにだけ塗る」というやり方。私はそれが結構好きで色々とやっていたのだけど、レシプロ機ではやったことがなかったから、それにチャレンジするのだ。

 こちらは1/48スケールのコルセア。ハセガワのものでパーツ点数が少なく、形になるまではかなり早め。模型のいいところはこうした定番キットが今も流通していて、しかも低価格なところ。加えて、古いからプロペラが小さいとか、タイヤが一つしかないとか、そういうこともない。昔から、当時の技術で最大限の努力をしているところが私は好き。そして今あげたプロペラとタイヤがレシプロ機のポイントだと思うので、それを黒く塗る。

 選んだ一色を今回は黒にしたけど、これは何色でもいいと思う。いま思いつく限りだとダークネイビーなんかはプラスチックのグレーとの相性が良さそう。黒も、今回はプロペラをタミヤアクリルのブラック。タイヤをラバーブラックと分けたけど、分けなくても良い。極論、プラスチックの色と違う色ならばそれで良いと思う。

 そのまま組み立てていくと、やはりポイントポイントで色が入っているのが良いのか、メリハリが生まれ、引き締まって見える。感覚的には塗った部分にだけカメラのピントが合っている感じであったり、ラフ画や設定画でしっかりと書き込まれている部分と、さらっとアウトラインを描くまでにとどめている部分のメリハリが生む一種の軽やかさがあって良い。大きいレシプロ機の存在感はボディを塗らずとも決して失われないという事実も見逃せない。

 作業と成果の割合を考えると、プロペラは筆で二、三度まっすぐ塗るだけ。タイヤはホイールのエッジに面相筆を合わせてじっくり塗っていくだけでこれだけの成果が出るのは、割がいい。

 塗装というのは、広い面積を塗ったり、反対に細かな箇所を塗ったりするのが難しい作業で、そこにひとつの壁がある。そこにいきなりぶつかりにいくよりは、まずはこのような、ポイントだけ塗る方法で、塗装が生む成果を手軽に体感するのは悪くない楽しみかただと思っているし、なんなら、これで得られるかっこよさで十分だとも私は思う。
 一色で塗る、というのは今回のようにプラスチックの色と合わさって「全体が二色になる」ということで、クリアーのパーツがある場合は、三色になる。これは思っているよりもずっと豊かで、部屋にぽんと置いたときも、かなり楽しい。「この1色を足す」という遊び。まずは大きめな安いレシプロ機で楽しんでみると良いかもしれない。

■ハセガワ 1/48 アメリカ海軍 Vought F4U-4 コルセア プラモデル JT25

クリスチ

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令和2年5月31日。プラモに恋をしました。

 好きです。

▲ICM「US WASP(1943-1945)」。後方支援などで活躍したアメリカ陸軍航空隊の女性部隊「WASP」。背景のボーイング・ステアマンのカラーが、彼女たちの地味なカーキの色をより明確に際立たせます。素敵なパッケージです

 女性のオーバーサイズの着こなしは、何故こんなにも「可愛さと格好良さ」が共存してしまうのでしょうか? シャツとトラウザーズのまくり方なんて本当に素敵です。男性サイズのものを現地で合わせているのかと思わせる雰囲気も、想像力をかき立ててくれます。だらし無さではなく、勇ましさを感じます。模型店で一目惚れしてしまいました。

 今回はそんな夏季/熱帯のスタイルと思われるカーキスタイルに身を包んだ3人の女神のお話です。

▲思いを寄せる彼が飛び立つ。本当はしっかりと顔を見つめて見送りたい。でも……。
▲この中にはどんな書類が入っているのだろう。辛いこと、素敵なこと様々なことを彼女は記録しているのかもしれない
▲今日はどうだった? 帰還したあいつとのこんなやりとりが今日もできた
▲男勝りな私はついついこのドロップしたポケットに手を入れてしまう。裾もアンクルブーツに被るくらいブカブカだ
▲愛機から降りる。今日も無事にミッションをこなした
▲パラシュートとハーネスをグッと肩から担いで、勇ましく。大きめの服も性に合ってきた
▲3人でいると戦場の不安も和らぐ
▲時には調子の良い奴もやってくる。少し小柄だと思うけど、顔はイケてるはね。
隣に乗ろうかしら?

 ウクライナのメーカー、ICMは様々なスケールのフィギュアをプラキットで送り出しています(輸入・発売元/ハセガワ)。どれもドラマ性を重視した内容とデッサン力のあるキットが多く、ひとつの模型に様々な物語を付加することができます。その魅力により僕は、ハセガワの1/32の「P-40」まで一緒に組みたくなってしまったほどです。組み合わせた景色を見たい!どんな絵になるのか?店頭で手に取り、お家で完成させて眺めるまでの時間は、本当に至福な体験でした。

 ちょっと男勝りで勝気な3人の女性たち。あなたのプラモにはどんなストーリーをもたらしてくれるのでしょうか? 

⬛︎ICM US 女性パイロット WASP(1943-1945)本体価格2500円(税抜き)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

あなたのボイレに「瞳」はあるか? 僕のインストの着眼点

 あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! できてんだよ。すでにBf109 G-6がよ。

▲ランナーが3枚しかないんだぜ。しかもうち2枚は小さなランナー。実質1枚じゃないか

 キットレビューしようと思って組んでたらあまりに気持ちよくて全部組んじまったんだよ。ライターとして取り返しのつかない途中写真撮影し忘れ問題。時を止めるスタープラチナ、ザ・ワールドもどうしようもない(あいつら器用なんでもう一回きれいにバラバラにできるかもしれないけど。俺には無理)……

▲タミヤ 1/72スケール ウォーバードコレクション メッサーシュミット Bf109 G-6。2019年4月に発売された現代フォーマットのG-6だ

 ジョジョネタはこれぐらいにして、タミヤが発売している1/72スケールの飛行機模型「ウォーバードコレクション」。このシリーズはイタリアの模型メーカーのイタレリ製のキットの物と、タミヤ製のキットの物で構成され、イタレリ製の物にはイタレリですよと箱に書いてあります。今回ご紹介するのはタミヤ製でシリーズの中でも新キットになる「メッサーシュミット Bf109 G-6」であります。ドイツ軍、いや人類が生み出してきた戦闘機の中でも超傑作機のひとつで、飛行機模型を知っていくと一度は作ってみたくなるモチーフです。

▲機首側面の「ボイレ」と呼ばれるふくらみに「瞳」が! 実際にあったものがこんなおしゃれなマーキングしてるんです。センスの良い模型を触ったり、知ったりすると、そりゃその人のセンスがあがるってもんです
▲Bf109は様々なタイプが存在します。その中のBf109 G-6というのはシリーズ最多の13000機以上が量産された代表的なものです。ていねいに解説された冊子も付きますので、かっこいい!と思ったら買っちゃってしまって大丈夫ですよ! 

 ちょっと今回は僕が飛行機模型を作る時に、説明書の何を作る前にチェックしているのかというのをご紹介します(途中写真わすれちゃって~)。特にこのキットは非常に優秀な構成で(特に主脚が最高)、道に迷わず形になります。そうやって自然と経験値を積んでいけるキットがタミヤには多いですよね。

▲コクピットの取り付け方! 飛行機模型は本体でコクピットを挟み込むか、それともBf109 G-6のように本体の下から入れられるのかを僕は良く見ます。前者であればコクピットをまず塗って。後者であれば、本体を組んでみたりしてある程度形にしてみたりします
▲水平尾翼はその名の通り水平にしたいですよね…。このキットのすごいのは、水平尾翼の両翼が1パーツになっていて、それを垂直尾翼で抑え込むようにして取り付けることで、ガタつかずに水平尾翼の水平を出せるところです
▲そしてよくチェックするのは合わせ目です。消すものなのか?ディテールなのか? これまでの説明書は「読み取れ! 感じろ!」というニュータイプの稲妻みたいなのが多かったのですが、最近は実機ではこうですよと優しい一文が入っていたりします。ありがたや
▲絶対にチェックするのはパーツ番号や塗料番号とは違う「数字」が出現した時。その多くはパーツの取り付け順です。これを見忘れてけっこう痛い目を見たりしたので、しっかりチェックするようにしています
▲このキットの一番素晴らしい点は、主脚の位置が誰でもバシッと決められることです。飛行機の脚って接着が難しいものが多いです。上にかぶせるパーツで隠れる部分に取付用の軸が設けられ、これでがっちりと固定されます。最高です
▲キャノピーは開閉選択式。コクピットも1/72スケールとは思えないほど精密です。パーツ精度がばちピタなので、接着しなくてもパーツがきれいに乗るので、気分で差し替えて良いと思います

  おそらくこのキットは、最も作りやすくそして美しい1/72スケールのBf-109 G-6であると思います。スタイル、パーツ精度も言うことなし。そして説明書もすごく丁寧に作られています。丁寧すぎて読むところが多いくらいです。じっくり読んでみると、あなただけの製作イメージが沸いてくると思います。あなたの描いたイメージがうまくいって形になった時、絶対にその行為は楽しい!と思えるはずです。タミヤの1/72 メッサーシュミット Bf109 G-6。今週のあなたの模型スケジュールに入れてみてはいかがでしょうか?

■タミヤ 1/72スケール ウォーバードコレクションNo.90 メッサ―シュミット Bf109 G-6

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

その合わせ目をあぶり出せ ハセガワ 1/72ライトニング F Mk.6

 プラモを作っていると必ず発生する、合わせ目。
 消したり、消さないで済むように設計が工夫されたりする。
 まるでそれは、プラモがプラモであることを隠すための作業のようだ。

 プラモはプラモデルというプロダクトとして成立するものなのか、それともやっぱり本物に寄せたいという気持ちを受け止めた存在としてそこに完成するのかが、難しい。上手くなったり、たくさん作ったりしているとそういうことがわからなくなって、気づいたら決まったような動きで慣れきったゴールまで進む。いつも走るジョギングコースみたなもので、約束された大変さと、達成感を楽しむスポーツの中の1種目になっていく。

 そこを、思い切って裏切ってみる。合わせ目は境目だ。つまり、消さなければそこは右と左や前と後ろの境界線。そのラインからあっちとこっちは違う世界だと、決めてみる。そうすると、いつもと説明書の見え方が変わってくる。

 ふだんと違う頭の使い方をして塗ったパーツ達は思いのほか、綺麗だ。調和があって、リズム感もある。ピアノの黒鍵と白鍵のバランスのような感じ。それを、どうなる?どうなる?と貼り合わせる。

 結果的に生まれたのはリズムであり、プラモがプラモであるという痕跡の合わせ目は隠されるべきものであると同時に、たまには日の目を見ても良いという事実だ。このハセガワ 1/72ライトニング F Mk.6がどのように分割され、それが組み合わさって立体になるのかがよくわかる。この飛行機の特徴である、直線的でありながら丸みのあるフォルムや増槽の配置は、前から後ろへ気持ちよく伸びる茶色とグレーのストライプのためのキャンバスとなった。こんな風に規則的にパーツが分割されていたなんて、という秘密があぶり出されるかのように。

 片方から見れば茶色が濃く重厚感のある感じ。当然であるが、もう片方から見ればグレーの面積が増えるので軽さが出てくる。

 やはり、合わせ目は合わせ目であるが、それと同時に境目である。

 その境目が織りなすリズムは今回はたまたまストライプであったわけだが、他の飛行機は、車は、戦車は、どんな模様を隠してしれっと私たちの前に存在しているのだろう。夜の帰り道、レンガ敷きの歩道が引き剥がされ、複雑な工事跡があらわになっているときの、思わず見てしまう「あの感じ」。それを私たちはいつでも見ることができる。

■ハセガワ 1/72スケール 飛行機 Bシリーズ

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

それはまるで、額に入れて飾りたくなるような。

ハセガワから先日、”1/32 A-4E/F スカイホーク”が再販されました。
「再販」というのは、過去発売されたプラモがもう一度生産され、模型屋さんの棚に並ぶという意味です。

このキットが最初に発売されたのは1976年。
その後も機体のマーキングやパッケージのイラスト、写真が変更されて何度も再販されてきました。
今回の再販の知らせはインターネットで知ったのですが、
背中にコブの付いたスカイホークの姿は『エリア88』というマンガで見たのを思い出させる迫力があり、
これはいちど自分でも作ってみたいなぁ、とムラムラ来てしまったわけです。

出荷日を過ぎて何日かあと、模型店に行く機会があったので飛行機の棚を覗いて驚きました。

最近のハセガワのパッケージデザインではスタンダードとなった白を基調としたものではなく、
サイドにビシッと締まった黒い面があり、箱の天面には画面いっぱいにスカイホークのイラストが入っています。
僕はすっかりこの絵が気に入ってしまい、レジへと足を運んだのでした。
(4000円くらいで巨大な飛行機が買える、というのもベテランキットのいいところだと思います)

帰ってきて、まずこの絵をいつでも眺められるようにデジカメで撮影しました。

手前の機体だけを見ると、超望遠レンズで撮影したような印象。
極限まで遠近感を減じて、機体の体積が大きく見えるように描いています。
主翼の下に吊るしたドロップタンクは手前のより奥の方が大きいように錯覚しますし、
水平尾翼後縁の左右長さもほとんど差がないように見えます。
結果として、実機よりもずんぐりむっくりで、身の詰まった雰囲気に見えます。
実機がいかにも強くなさそうなカタチなので、写実的な絵の為せる範囲でマッシヴさを演出しているのかもしれません。

舞台はベトナム上空でしょうか。太陽は奥の方から斜めに機体を照らす半逆光。
背中のエッジが明るく光っていて、そのアウトラインが機体の側面や主翼の上に影となって落ちています。
均質なグレーに塗られた機体であるはずなのに、明るさによって色調が違ったり、
垂直尾翼やコブにはパネルごとに異なる色相の茶色が乗せられています。

けっこうな高度を飛んでいるように見えますが、機体下面は海の色を反映して、涼やかなブルーに見えます。

大きなドロップタンクの間に挟まれた爆弾は本来濃いグリーンであるはずなのですが、
そこにグリーンの絵の具は使われていないことにも気付かされます。
奥の機体はサッと左にロールを打って、これから高度を一気に下げるのでしょう。

手前の機体の周りには白いモヤのようなものが出ていて、カラッとした日差しに反するかのように
空気がたっぷりと湿気を含んでいるのを教えてくれます。
このモヤは、結果として手前の機体と奥の機体がゴチャッと一体化して見えなくなる効果も担っています。

機体のメリハリと体積を極限までブーストし、
さらに二機の大きさを変えて遠近を表現しつつ、ひとつの飛行機の特徴を余すことなく画面に入れ、空気と海岸線でまとめる。
これにより、製品の魅力と特徴を最大限に伝えるパッケージイラストに仕上がっています。

このパッケージイラストを手掛けたのは佐竹政夫というアビエーションアーティストで、
氏は数々のプラモのパッケージや本のイラストを手掛けています。
このパッケージは90年代の再販のときと同じものが復刻されているようですが、
メーカーのロゴや機体名は左下に控えめに入れられていて、全体のデザインはシンプル極まりないものとなっています。

しかしこの絵の迫力、見れば見るほど複雑な色使いはいつまでも眺めていたくなるような魅力があります。

齢44歳のキットですから、いまの目で見るとパーツは少なく、
各部の合わせ目をしっかり確認しながら接着していくとあっという間に飛行機の形になります。
かといって大雑把なモデルなのかと言えばそんなこともなく(自分で調整しないとうまく貼れない部分もあるにはあるのですが)、
案外繊細な表現も随所に見受けられます。
なによりも、大きな飛行機が少ない手順でドンドンドンと姿を現していく様子は本当に気持ちが良く、
多くのパーツを組み合わせて緻密なものを作るのが主流となっている最近の大スケール模型とは違う快感があることに気づくはずです。

(たとえば「このスカイホークと同じくらいのパーツ数で、ディテールの表現やパーツの精度は現代風」というコンセプトのプラモがあったら、
僕は喜んで買うと思います)。

偶然なのか、胴体のパーツがめいっぱい箱に入っているから当たり前なのか、
プラモの大きさは佐竹氏のイラストとほとんど同じです。

この機体をベタッとしたグレーで塗ってしまっていいのか、このイラストのようにコッテリと、
たくさんの色を使ってイラストのように仕上げていくのか、僕にはまだ決心が付きません。
(と同時に、いまの状況下では欲しい塗料が満足に買えないという物理的な理由もあります。)
スカイホークになろうとしているものは、この状態でかれこれ2週間ほど作業場のスペースを我が物顔で専有しています。

そろそろ次のプラモを作りたいから、一旦このスカイホークのことは横に置いておこう。そう考えたときに、ひらめきました。
次に作りかけのスカイホークと向き合うときは、色を塗るときです。
それまで、パッケージのイラストをいつでも眺められるようにしておこう、と。

家のある一定の場所にイラストを掲げ、何度も見るうちに、やりたいことが自分のなかではっきりするのかもしれない。
そう思い立って、クローゼットから使っていないポスターフレームを取り出し、
箱の四辺を金尺とカッターでキレイに切断してから、水平垂直に気を配って収めたのです。

あなたはこれまでに「額に入れたくなるようなプラモのパッケージ」に出会ったことがありますか?
もしあったら、思い切って本当に額に入れて飾ってください。
プラモとカッコいい絵がいっしょに買えるという驚きとともに、
これまで見たこともなかったような、ピリッとした空間が生まれます。

みなさんも、ぜひ。

■ハセガワ 1/32 A-4E/F スカイホーク 3800円(+消費税)

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

模型を吊るし、揺れたのは心。

 模型を吊る。天井から模型? 子供か!? いやいや、そんなことはないです、なかったです、という話です。
 1/72 タミヤのメッサーシュミットを組み立てました。久々の飛行機模型にワクワクして。車輪を出し、キャノピーを開いた状態で組み、いつもの棚の上に置いたところ、何か物足りない。

 のびのびと空を飛ぶ機械が地面に張り付いている姿は、いまいち伸びやかさが足りないと感じ、やっぱりディスプレイスタンドが欲しいと思いました。でもちょっと待てよ、飛行機なら吊って飾るという手があるじゃない? 博物館でも天吊り展示は展示品の目玉じゃない?クジラの骨とか。

 吊ってみましょう。

 しかしこれが難しい。理想は紐が最小限にしか見えないということ、つまり『蜘蛛の糸』のごとく一本の糸で、模型がつられている状態。しかも左右の平衡が取れており、前後もそこそこ、ちょっとだけ前方が上に向いてる方がいいのかな? 飛行機は基本左右対称なので、主な調整は前後のバランスになるかのな?

 妻にもらった黒色の木綿糸の先端に瞬間接着剤を付け、模型に軽く接着し、まず一回吊ってみる、大きく前に傾く。糸を切り、いくらか前に再接着する、まだ傾く。「必ずイメージ通りの均衡を保つポイントがあるはず!」を心の支えに……もうちょい。コクピット内のシートの座面あたりでバランスを取ることに成功しました。あれ? 意外と3回の試行錯誤で決まったぞ?

 それを天井から吊ってみたんですが、笑みが止まりません。何とも言えない感動と快感が目の前に現れたのです。

 下からスポットライトを当てると、まるで夜間飛行のような緊張感がひしひしと伝わってきます……が、僕は何をやっているんだ? そんなおかしさがまた込みあがって来たりもします。

 しかし、しかし、そのあとですよ。部屋の明かりを消して、部屋を後にするときに、いつもよりさみしくなったのはなぜ? その後寝室で寝てるときも、仕事でオフィスで働いている時も、ずっとつられて浮いている、その模型の存在がたまらなく愛おしく感じるのはなぜ?……。なぜこんなに心を揺さぶられるのかよくわからない。これまで模型を吊ったことなんて、一度もなかったのに。

mat

1969年生まれ。模型ライフを綴ったブログmat modeling service運営 。製作から撮影まで、模型誌には載っていない80を超える独自How toを配信中。ホビージャパン誌 第22回オラザク選手権大賞ホルダー。

ハチドリのような存在感。eduard 1/144 MiG-21 BIS

 1/144の名だたるキットたちがある中で、とりあえずコレを楽しんでみるかと思ったのはやはり「勢い」と「神秘」。プラモに少し興味を持つと「エデュアルド」という名前をとてもよく聞くことになるのですが、それでいてチェコのメーカーだっていうのだから、気になる。プラモって本当にいろんな国で作られていて、作るたびにその国の考え方みたいなものに触れられるのがとても楽しい。

 というわけで、エデュアルドのMiG-21。チェコを簡単に「東欧」と一括りにしてはいけない気もしますが、革靴の世界だと、東欧の靴は固有の魅力があります。細かな装飾、独特なシェイプ、よその国では誰も思いつかないような、少しだけ濃いアイデアやバランス。このMiG-21はまさにそれ。

 写真のとおり、見た目は小さいのにとてもシャープ。翼なんかピシーッと薄いので本当にしびれます。指でつまむと裏側の指の感覚が伝わりそう。細いパーツ、小さいパーツが要所要所で出てきますが、だからこそ感じるメーカーの底力。裏を返すと、もう見えないくらい小さいのに感じられる足回りの緻密さ。ランナーにくっついた状態のときから、小さいときにテレビチャンピオンの「手先が器用選手権」で見たサイコロのピラミッドのような、「ひゃー」ってなるパーツたち。で、それを作らせる。誰に? 私に。私って……? 模型を作り始めてまだ2年くらいの私です。それで、うまくいくというから恐ろしい。

 模型を作ってて「あ、コレは俺でも作れるな」って思える瞬間というのは結構あって、その中でもかなり大きいのが位置を決めてくれること。どこにつけたら良いのか、どの角度でつけたら良いのかを無言で教えてくれると本当に嬉しい。

 そしてこのMiG21の足回りはそんな嬉しさの塊。主翼下部の脚は1ミリに満たないちょっとした突起が、パシッとハマる。このおかげで全くと言って良いほどブレない。カバーは「折り曲げる」って指示があるのだけれども、薄い切れ目が入っているのでたやすく曲がる。脚を支えるパイプは両端共に完璧な角度でカットされていて、パズルのラストワンピースを納めるように気持ちよくハマる。写真で完全に見せられないのが惜しいところですが、見えないくらい目立たないガイドを作っているという点がこれまたすごい。

 この気持ち良さが縦横1cmにも満たない世界でパシパシパシっと発生するわけで、本当によくできたミニチュアを楽しく作れる!というのがこのキットの醍醐味なんです。

 しかも、実はこれ、2つ入っているんですよね。Dualってことで。

 2つあるっていうことは1つはこうして組むだけ。もう一つは塗って仕上げるなんていう楽しみ方もできます(なんとマスキングシートがついている)し、2つとも同じように仕上げることもできます。さらにいえば普段やらないようなこともできるのもポイントですね。

 私はこの小ささの中にぎゅーっと詰まった緻密さにやられてしまって、それをフルに楽しもうと、キャノピーオープン状態で仕上げました。もちろん細かな作業ですが、これだってバシッと決まる。

 飛行機は鳥だな、といつも思うのですが今、手元にちょこんと置いてあるだけでもまるでハチドリのような存在感が発生しているし、ピトー管やノーズコーンの切っ先のピリピリとした緊張感が伝わってくるのは、このキットの緻密さとそれを作った私の記憶がリンクしているから。

 作った人にしか味わえないにしても独特すぎるこの感じ、最高です。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

定番中のド定番、「ハセガワのゼロ戦」を組んでみる。

飛行機といえばゼロ戦、飛行機といえば1/72、飛行機といえばハセガワ。僕たちはなんとなく、そう思っているフシがあります。
そしてふと思うのです。「そういえばハセガワ 1/72のゼロ戦って、組んだことあったっけ」と。
1000円札一枚で買える、王道のスタンダードのど真ん中。組み立てるにはニッパー、デザインナイフ、接着剤の3つがあればいいですし、
休みの日の気晴らしにサクッとカタチになってくれる抑制のきいたパーツ数がうれしい。
そんなキットのレビューをお届けしようと思います。

▲ハセガワが「定番」に指定しているゼロ戦のプラモ。実勢価格はだいたい1000円。

▲このプラモの初版は1993年。説明書は黒とシアンの2色刷りです。

▲マーキングは3種類から選べます。灰色なのは坂井三郎機と赤城搭載機。あなたはどっち!?

▲本アイテムの初版は1993年発売。金型はちょっとくたびれ気味ですが、シャープなラインは健在。

多くの人にとって「ゼロ戦といえば緑でしょ〜」というイメージがあるかもしれませんが、
灰色に塗られた21型というのは太平洋戦争のはじまりに活躍し、その強さで世界を驚かせたタイプ。
どんな色調のグレーなのかについてはこれまでにもいろんな説が唱えられてきましたが、
今回はせっかくプラスチックがグレーなので、そのまま組むことにします。
垂直尾翼の裏側には丸い出っ張り(突き出しピンの跡)があって、
そのままだとピッタリ組めないのでニッパーやナイフで削り落としておきます。主翼の周りにもちょっとしたバリがあるので、これもちょっとずつ切り落としていけばきれいなアウトラインが出てきます。

マーキングは赤城搭載機、板谷 茂少佐機に決定。プラスチックの肌にそのまま貼り、
いちばん目立つカウリング(エンジンのカバー)だけ缶スプレーでサクッと半ツヤの黒に塗装します。所要時間はたった10秒。
半ツヤ黒の缶スプレーはいろんなプラモに使えますから(そして家にないといざというときに困ることが多いから)、
プラモ屋さんに行くたびに買って備蓄しておきましょう。

小さなパーツを慎重にくっつけて、完成!
機首が黒く塗ってあるだけで「おお、ゼロ戦だ」という感じがしっかり出ることに自分でもびっくりです。

サラッと貼って、デカールを貼るだけでもプラモの表情はとても豊かに見える、というのは僕も最近になって気付かされました。
もし「やっぱり塗ってみようかな」と思ったら、また買ってチャレンジできるのがスタンダードのいいところ。
誰でも知ってる飛行機だからこそ、こうしていつでも楽しめるキットがあるというのはとっても安心できることだと思うのです。

ハセガワ 1/72スケール 三菱 零式艦上戦闘機 21型 本体価格1200円(税別)

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。