「デカールに漂う異国」を追う ズベズダ 1/43 UAZ 3909 消防車

 いつだったか、上野はアメ横にある中田商店でロシア軍の軍服がやたら品揃えが良い時期があった。ものすごい不思議だったので、いろいろと調べていたら「ロシア軍のトップが変わったから」とまことしやかな話をするものを見つけたが、真相は果たして……。

 ロシアのことはほとんど知らない。私はデザインの専門学校を出ているので、ロシアといえばロシアンアバンギャルドだと思う程度。あの、強烈な個性から察する他とは違う事情。全く読めないロシア語。怖さと魅力が交差する。しかも、火のような危険さではなくドライアイスのような、ヤバさ。

 ZVEZDA(※編注/ズベズダと読む。ロシアを代表するプラモメーカー)のプラモはそういう意味ではいつかは触りたいものだった。かの国の人たちはどういう原理原則を持って物を作るのだろうか、そして、それは私にとって良いものか悪いものか。いつかは、いつかは……と思いながらラインナップを眺めていたら出てきたのがこのUAZ 3909 消防車。

 この1/43のカーモデルは単純にかわいい。サイレンをつけようかどうか悩んだけど、そのユニット丸ごとがクリアパーツだったりして試しにつけてみたら無くてもよかったので無しにした。色を塗ったり綺麗に仕上げる場合はもちろん、あったほうがいいだろう。キット自体は本当にちんまりとしてて、よくできている。特筆すべきはミラーの細さだろう。このおかげで急に小ささに精密さが加わるといっても良い。我が家に足りないのはこういったかわいらしいバンだったのだとつくづく思った。それでいて組み立てに不自由する場面はない。箱組みさせられるボディはぴったりで気持ちがいいし、強度もよく考えられている。

 あまりにも可愛いのでしばらくはデカールを貼らずに放置していたが、やはり不思議な魅力を放つロシア語。貼らずにはいられない、というかここまで日常的に意味を持つであろうロシア語のデカールを貼る機会はもうないと思ったりもしたのだ。

 貼ることで生まれたのは、ひとことで言えば”異国”。

 とてつもない個性を急に獲得したそれは、「ZVEZDAの模型を作ってよかった」と思える個性だった。

 ロシア語のおかげか、マトリョーシカと並ぶと、とても良い。マトリョーシカと相性の良い模型は、なかなかないだろう。英語のようにパッと調べればわかるものでもなく、フランス語のようになんとなく優雅なものでもない、謎のロシア語。謎なんて言っちゃ失礼といえば失礼なんだけど、でも、謎。あの頃、中田商店に突然現れたロシア軍の服のように。

クリスチ
クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。