模型を吊る。天井から模型? 子供か!? いやいや、そんなことはないです、なかったです、という話です。
1/72 タミヤのメッサーシュミットを組み立てました。久々の飛行機模型にワクワクして。車輪を出し、キャノピーを開いた状態で組み、いつもの棚の上に置いたところ、何か物足りない。
のびのびと空を飛ぶ機械が地面に張り付いている姿は、いまいち伸びやかさが足りないと感じ、やっぱりディスプレイスタンドが欲しいと思いました。でもちょっと待てよ、飛行機なら吊って飾るという手があるじゃない? 博物館でも天吊り展示は展示品の目玉じゃない?クジラの骨とか。
吊ってみましょう。
しかしこれが難しい。理想は紐が最小限にしか見えないということ、つまり『蜘蛛の糸』のごとく一本の糸で、模型がつられている状態。しかも左右の平衡が取れており、前後もそこそこ、ちょっとだけ前方が上に向いてる方がいいのかな? 飛行機は基本左右対称なので、主な調整は前後のバランスになるかのな?
妻にもらった黒色の木綿糸の先端に瞬間接着剤を付け、模型に軽く接着し、まず一回吊ってみる、大きく前に傾く。糸を切り、いくらか前に再接着する、まだ傾く。「必ずイメージ通りの均衡を保つポイントがあるはず!」を心の支えに……もうちょい。コクピット内のシートの座面あたりでバランスを取ることに成功しました。あれ? 意外と3回の試行錯誤で決まったぞ?
それを天井から吊ってみたんですが、笑みが止まりません。何とも言えない感動と快感が目の前に現れたのです。
下からスポットライトを当てると、まるで夜間飛行のような緊張感がひしひしと伝わってきます……が、僕は何をやっているんだ? そんなおかしさがまた込みあがって来たりもします。
しかし、しかし、そのあとですよ。部屋の明かりを消して、部屋を後にするときに、いつもよりさみしくなったのはなぜ? その後寝室で寝てるときも、仕事でオフィスで働いている時も、ずっとつられて浮いている、その模型の存在がたまらなく愛おしく感じるのはなぜ?……。なぜこんなに心を揺さぶられるのかよくわからない。これまで模型を吊ったことなんて、一度もなかったのに。