軍艦プラモの小さすぎるパーツを超拡大してくれる「魔法のパンフレット」、あります。

 戦車プラモは1/35、飛行機プラモは1/72、みたいな「ちょうどいいスケール」というのがあります(個人差アリ)。手のひらよりもちょっと大きくて、フォルムとディテールがそこそこ再現できるサイズ。これが艦船の世界だと1/700ということになるのでしょう。フネはだいたい細長いのでコレクションするのにもこのスケールがイイ感じだとされていて、模型屋さんに行くと1/700の艦船模型がいっぱいあります。

 1/700というのは人間がざっくり2.5mmくらいのサイズになってしまうので、他のジャンルの模型よりも小さいパーツが多いです。ピンセットでつまんでそ~っと貼らないといけないのもいっぱいあって、「カタチを作っている」というよりも、パーツのひとつひとつがすでに構造物になってて、船体という土台にバンバン植えていくような感覚になります。この感覚はなにか一つのモチーフを小さくしたミニチュアと言うよりも、博物館で見る都市計画模型とかのほうに近いんですよね。

 最近では「ゲームで知ってる!」という人も多いような気がしますが、こういうこまかいパーツのひとつひとつが何なのかを知っているかそうでないかが、艦船模型を作る楽しさを理解できるかどうかの違いに直結するよなぁ、と思うんです。例えて言うなら地図の上に超小さい家を建てていくとき(どんな時!?)「ああ、2階建てだなぁ」「木造だわ」くらいの解像度で理解しているか、「ここ、いつも挨拶する田中さん家だ」「これは山田さん家で、二世帯住宅なんだよ」というのを理解しているかくらいの違いがあります。

 で、そんな理解を爆発的にブーストしてくれるパンフレットがあるのでこれを買うとすごいよ、という話。艦船模型の世界でも絶大な存在感を放つタミヤが販売している『軍艦雑記帳 上巻/下巻』です。軍艦のことを知りたいけど分厚い資料を読みたいわけじゃない人も、薄くて特濃なこのパンフレットには絶対に興奮すること間違いなし。そもそも模型メーカーが作っている資料なので、「模型を作るときに知っておきたいこと」が分類され、バッチリ記載されています。豊富なイラストとめっちゃ親切なテキストで、のっぺらぼうだったプラモのパーツがいきなり4KのプラズマTVレベルの解像度に見えてきます。

 上巻には「艦橋」、「煙突」、「前檣(しょう)」、「後檣(しょう)」、「航空兵装」、「火器」、「魚雷」、「爆雷」の8章を収録。ひとつひとつの軍艦をピックアップしてその詳細にどんどん入っていくミクロな構成ではなく、「まずフネっていうもんはだいたいこういう構造物の寄せ集めで出来ているんだよ〜」というのを俯瞰して見せながら、それぞれのパーツの特徴を説明してくれます。そう、軍艦は大きくカタチが違うものにも共通の兵装や構造物が乗っけられているので、この軍艦雑記帳を見ると「あ、あのフネに付いていたこの兵装、こっちのフネのここにも付いてるやん」ということに気付けるようになります。

 下巻には「船体」、「艦首」、「艦尾」、「船体と装着品」、「甲板」、「甲板の装着品」、「上部構造の装着品」、「艦載艇」、「特殊艦艇」の9章を収録。この2冊を手元に置いておけば「なんでこんなに小さいキノコみたいなパーツを貼らなければならないんだ……」となりそうなときでも「これは空気を入れ替えるための出っ張りなんじゃよ〜」と訳知り顔で対処することが出来ます。まさに山田さんと田中さんの人となりを知ることのできる艦船模型界のタウンページ。

 とにかく、「艦船模型はなんだか難しそう」「超絶テクニックの作例を見てると、オレには作れなさそう!」という人もこの軍艦雑記帳があれば「フネってちゃんと整理して見ていくとそれぞれに意味のあるパーツの寄せ集めなんだな!」ということが直感的に理解できるようになりますし、ひとつひとつのパーツに愛着を持って接することができるようになります(少なくともオレはこれがなかったら「なんかグレーの細かい突起がいっぱいあってすごい」くらいの理解力のまま生きていくことになっていた……)。ちょっと慣れてきて、ディテールアップパーツを買うとか他のキットから好みのディテールのものを移植しようとか、そんな贅沢をしたくなったときにも最適の水先案内人になってくれます。

 一家に上下巻、本棚の隅っこに軍艦雑記帳を忍ばせておいて「艦船模型、もう作れるもんね!」というお守りがわりにしてみてはいかがでしょうか。

軍艦雑記帳《上巻》(税込792円)《下巻》(税込み660円)

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からぱた
@kalapattar

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。