ロボットプラモを中心に、いろんなメディアで作品をドバドバ発表しているプロモデラー、NAOKIさん。彼が最近TwitterやFacebookでUPしまくっているのが、空をバックにしたプラモの写真である。これがやたらめったらカッコよく、”リアルな雰囲気”に仕上がっているので、「いったいこれはどうやって撮っているのか!?」というのを、私からぱたが遠隔テレビ会議アプリ「zoom」を使ってインタビューしてみたぞい。
からぱた 最近Twitterとかfbに携帯で撮ったプラモをいっぱいUPしてますやん。すごくカッコいいんですけど、やっぱCOVID-19的な事情で生まれたアイディアなんですか?
NAOKI じつは2年前の正月から半年くらい、似たようなことをやってたんだよね。あの頃使っていたのはiPhone 6とかで、作例をスタジオで撮影する前にアングルのアイディアを出すための仮撮影をしていたのよ。そしたら、雑誌の作例写真よりも強いパースが付いて「あれ、こっちのほうがカッコよく見えるな」という写真がたまに撮れるんだよね。
からぱた 標準〜中望遠のレンズ(焦点距離が長く、あんまり歪まないレンズ)を使うのが伝統ですもんね。モノのカタチとか、一枚に入れられる情報量が多くなるとか、メリットもいっぱいあるんですけど、たしかに広角でバーンと遠近感のある写真のほうが雰囲気が出るのは分かります。
NAOKI で、これを外で撮影したら空とかビルが入ってもっとカッコよくなっちゃうのでは?というのがきっかけ。もともとプロモデラーはあんまり外に出なくてもいい職業なんだけど(苦笑)、COVID-19の自粛期間はマジで外に出ないようにしてたから、たまには外の空気を吸おうと思って自宅の屋上で撮影したのをSNSにアップしてる感じ。
からぱた これ、画像にも書いてあるけどiPhone 11 Pro MAXで撮影してるんですよね。3つカメラが付いてるスマホですけど、超広角を使うんですか?
NAOKI いや、真ん中の×1倍のカメラ(ほかのふたつは×0.5の超広角と×2の望遠レンズが付いている)。超広角はパースが付きすぎて、歪みが強いしあまり画質も良くないんで、いろいろ試した結果いちばんスマホっぽい画角で撮るのがいいな、っていうことに落ち着いた。イングラムはあんまり大きくないメカだから、なおさらパースを抑え気味にして巨大に見えないようにしているけどね。
からぱた このイングラム、塗装とか汚しもしてあるわけですよね。
NAOKI これは全部ビシッと塗装した完成品。でも、「外撮り」ってモノをしっかり見せて「ドヤッ!」ってするのが目的じゃなくて、背景込みでなんか実在感のある一枚の画になるのがおもしろいと思うんだよね。だから、ディテールとかカタチをしっかり見せるための説明的な写真じゃないのよ。だから、たとえばこのウォーグレイモンとかは組んだだけで塗ってもいないしシールすら貼ってない、いわゆる「パチ組み」なんだよね。
からぱた え、ホントに!? たしかに組んで屋上とかベランダに行ってこれ撮影するだけなら全然ハードル高くないですわ。「逆光は被写体の七難隠す」って言うくらいだし、手前が暗くなるようにスマホカメラの明るさ調整すればいいんですもんね。
NAOKI これがドピーカンの青空だとあまりおもしろくなくて、雲が出ていて、隙間から陽が差しているときを狙ったのよ。曇りのほうが手前も真っ暗にならないし、画としても全体にテクスチャ(質感)があって、「合成写真でいいじゃん」みたいな写真にならない。
からぱた なるほどね。俺がいちばん「すご!」って思ったのはこのエルガイム Mk-IIなんですけど、もうめっちゃくちゃ下から撮ってるわけですよねコレ。
NAOKI これは俺も気に入ってて、ほんとにヘビーメタルが実在して足元から見たらこんな感じかもな、っていう雰囲気が出ている気がする。一眼レフの広角レンズって大きいからここまで近寄れないし、ピントも全体に合わせるのは難しい。スマホだから撮れる写真だよね。
からぱた スマホのほうがピントが手前から背景まで全部合う、というのは間違いないっすね。あと、これ家で撮ったらいくら背景の紙があっても、その外にある天井とかタンスとか写って生活感バリバリ出ちゃうし、外で撮るのが最高。あと、なんか飛んでるエールストライクガンダムがいるじゃないですか。これはさすがに撮影したあとにPhotoshopとかでいじってますよね?
NAOKI これ? これはね、撮る瞬間にピュッって動かしてるだけ(笑)。
からぱた マジで!? こんなうまくいきます?
NAOKI 一発では無理だから、結構な枚数を撮ってイイ感じのやつをピックアップした。
からぱた っていうか、これそもそもどうやって飛ばしてるんすか? 投げてる?
NAOKI 全部片足か靴底を片手で持って、もう片方の手でスマホ構えてプルプルしながら撮ってる。
からぱた しんど!! っていうか、原始的!!
NAOKI このやりかただとどうしても持っているところを写真の外に追い出さなきゃいけないから、被写体のどこかが絶対に見切れちゃうんだけどね。でも、なんの道具も用意しなくていいし、地面だと水平に置かなきゃいけないけど、手で持ってれば角度が好きに変えられる。ウチの屋上も案外撮影できるアングルが限られるから、ちょっとした調整が大事なのよ。
からぱた なるほどね。じゃあさっきのエールストライクガンダムは左足のつま先を持って、撮影するたびにピュって進行方向に動かしてるってこと?
NAOKI そう。で、そのたびに膝が「グニャ」ってなるから、写真見て、ポーズ直して、またピュってやって……。
からぱた そういえば全部の画像にタイトルとかスマホの機種とか、そういう文字列をかぶせてますよね。これでスタイリッシュに見えるみたいなところはやっぱりあるんですか。
NAOKI このシリーズって、「ブツをちゃんと見せる」が目的じゃないから、空まで含めて一枚の画にしたいわけですよ。プラモに寄り過ぎるとプラモの出来が気になっちゃうし、空の表情もいっぱい見せたい。そうすると間が空いた印象もあるっちゃあるので、字だけはPhotoshopで入れてますね。Photoshop持ってない人も、スマホで写真に字を乗せられるアプリもあると思うから、それは試してみてもいいんじゃなかな。
からぱた しかしこうやって見ると同じ場所なのにいろんな空の表情があっておもろいですね。
NAOKI スタジオ撮影って、背景が決まっていて、ライティングが決まっていて、いつでもビシッと撮れることが大事じゃない? でも空をバックにして撮ると、雲のカタチとか太陽の向きとか、偶然の要素が作用することがけっこうあるんで、「おっ!太陽出てきた!」って慌てて屋上に行って撮ったりすると、けっこう楽しいもんなんですよ。