「キットレビュー」タグアーカイブ

完成させるためのテクニックではなく、「このプラモデルはどんな内容だったのか」「どこがおもしろいのか」にフォーカスしたキットレビューを集めました。

「プラモの説明書が僕らを突き放す時」/その自転車の目的地。

 延期になっていたツールドフランスの開催日が明らかになった。
 昨年は久しぶりに全ステージを三週間にわたって視聴したのだけど、選手それぞれのガッツあふれるプレーや思惑が交差する中でのレース展開は毎度のことだが面白い。他にも美しいフランスの景色や山岳ステージの本当に大勢の人に囲まれ、ときに手を触れられながら「Allez!Allez!(がんばれ!行け!という応援フレーズ)」と声援を一身に浴びて走る姿など画面越しに興奮が伝播するシーンは枚挙にいとまがない。

 その中で私が好きなシーンは、チームのメンバーの一人が大量の飲み物や食料をチームカーから受け取り先を行くチームメイトに届けに行くシーンだ。数時間単位で自転車に乗る彼らは飲食を行いながらステージを走り切るわけだが、その補給係はアシストと呼ばれる選手が行うことが多い。時折、個人での勝利をミッションとしたエースが行ったりすると、その献身的な姿にそれこそ胸が熱くなる。

 というわけで、タミヤの自転車セットの話。このキットは「自転車と人」という大多数の人間にとって最も身近な乗り物と人間を組み合わせたもので、今回の「ドイツ歩兵 自転車行軍セット」以外にもイギリスのものがあり、いずれも自分が乗ったことがあるせいか、手に取るように自転車の重さや、それを手で支えたり、またがったりする兵士の感覚がわかるのでとても良いキットだと思う。

 自転車は、ほとんど完成していて、ハンドルとペダル、荷台などを付けるだけ。細かな作業ではあるが、入り組んでいるわけではないので比較的楽。左右のペダルの位置関係だけは注意が必要だけれども。

 それよりも、面白がってほしいのは、「あなたが作ったこの人はどこからどこを走るのか、何の為に走るのか」ということである。私はたいてい、「ちょっとその辺まで」をイメージしている。そう、この手のキットはヘルメットや水筒などの荷物が多くついていて、説明書に取り付け指示が書いてあるが、それと同時に「自由に取り付けてください」と書いてある。

 つまり水筒をたくさんつけて前線の仲間に届けに行く自転車兵を作ってもよいし、反対に何もつけずに、ちょっとその辺までひとっ走り行ってくるということにしてもよい。
 ヘルメットや銃などを複数積んで、仲間の忘れ物を届けるみたいな世界観も楽しいし、飯盒と水筒、布袋だけでちょっとしたキャンプ△感を出すのも面白い。

 私はこういった荷物に関してはどのように取り付けるのかいつも悩んで、結局説明書通りにつけることが多い。ただ、自転車の場合は物語の方向付けがとてもしやすいと思っている。プラモにおける「自由に取り付けましょう」は「さっきまではバシバシ指示を出してきた説明書が突然、私たちを見放す瞬間」だ。これを巧みに乗り切り、固有の達成感を得るための第一歩として、「自転車と」人はとても良いキットだと思う。

■タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.240 ドイツ陸軍 歩兵 自転車行軍セット プラモデル 35240

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

プラモオイルショック!?アクセサリーのアクセサリーがすごい!!!

▲1/35スケールのガソリンスタンドのあれっす

人も、アクセサリー。模型にも、アクセサリー。あなたの魅力を引き出します。模型には、メカや戦車、飛行機などのモチーフを引き立ててくれる、プラモの世界を豊かにしてくれる小物プラモたちがあふれています。そんな小物を見ているとガソリンスタンドでみる「ガスポンプ(フューエルポンプ?)」のプラモが! こいつはオイラの模型給油口を満たしに行かねば〜ルンルン。オーライッ!! オーライッ!!

▲お! 4つもポンプがあるじゃねぇか。こいつは油に敏感なグリーンアーミーファイヤーメンが黙っちゃいない。出動!
▲ドサッ。なんだなんだ?シールみてえのが入ってるぞ
▲ファイヤーメンがあわてて水をかけようとしたのを、ちょっと待てメンがちょっと待て。こいつに水はやばい。一気に役立たずになるぞ!気をつけろ。水転写デカールって言って、水に漬けるとマーキングが浮いてきて、それを模型に貼るんだ。シールより格段に薄くてリアルに仕上がるのよ
▲シェル?bp ?ロシア語?OK……オーケェ〜!!!!こりゃ会社のロゴですね。各国のメーカーのロゴです
▲ディーゼル、スーパー、アラビア語でなんちゃら〜、A-80……。ガソリンの種類だ!ファイヤーメン、お前の出番だぞ! そして料金メーターか! なんかデカールが面白すぎるぞ。こいつはまさにオイルショックだね! 

 ミニチュアに興味を惹かれて買ってみたら、なんだかすんごいデカールが4枚もどっさり。キットはこのデカールを様々に組み合わせることで、各国のガスポンプを再現できます。オイルメーカーのカッチョいいロゴやガソリンの種類の文字デカールなんてなかなかないですよね!しかもこちらデカールの名門・イタリアのカルトグラフ製!印刷も綺麗でうっとり。やっぱり模型のアクセサリーも、人の心を惹きつけます。モダンガスポンプ。あなたの模型にオイルのアクセント。安くて盛り沢山で、こんなのびっくりですよ!!オススメです!

▲セルフになってから、多くの人が握ったことがある給油ノズルもいい感じ!触る前には静電気除去するんだぞ! あばよ!!!

AMMO MODERN GAS PUMPS 参考価格900円(税抜き)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

花金だ!仕事帰りに買うプラモ/タミヤ 1/48 エイブラムス戦車

▲コレクションに適したサイズ感&1/35スケール譲りのシャープなディテールが素晴らしい1/48ミリタリーミニチュアシリーズ

 待望の週末模型ライフ! 週末を楽しくしてくれるキットをフミテシがご紹介します。ランチタイムにチェックして、お仕事終わりにぜひ模型店へ! 第1回はタミヤ 1/48 ミリタリーミニチュアシリーズ(以下1/48MM)の「アメリカ M1A2 エイブラムス戦車」です。世界最強の戦車をこの週末に作りましょう。

▲ライトサンドの成型色で、パーツを組んだだけでもはやエイブラムス
▲戦車模型が初めての人は、プラ履帯(りたい=”キャタピラ”のことね)の組み立て方に最初戸惑うかもしれません。説明書に書いてある組み立て順の番号でパーツを接着していくことを守るのがいちばん大事。絶対に攻略できます!
▲戦車兵もアメリカンなアニキが付属。1/48スケールですがキリッと引き締まった表情まで分かるほどくっきりとしたディテールになっています
▲車両に施された滑り止めの細かさはタミヤの真骨頂
▲シャシー、本体、砲塔と組み立て後もバラせるので、塗装もしやすいです。パーツの合いもぴったりなので、塗装後でもきれいに接着できます
▲1/48のエイブラムスはこのくらいのサイズ。1/35スケールだと比較的大きくなる現代の戦車も、1/48スケールならお手軽サイズで楽しめます!

 金曜日の夜に買って、土曜日に模型を作る。そして夕方にはとてもかっこいいエイブラムスが自分の机の上にある。そんな「普通のリズム」で最強の戦車を楽しめるキット。本日の帰りにぜひどうぞ。

■タミヤ 1/48 ミリタリーミニチュアシリーズ アメリカ戦車 M1A2 エイブラムス本体価格2200円(税抜き)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

小さくたって精密だ。「隠れバイク模型」で軽率に走り出せ!

▲バイク!小さい!

 バイクのプラモってパーツのひとつひとつがむき出しの機能のかたまり!というわかりやすさと、細いのとか小さいのとかキラキラ光るメッキといった繊細さも兼ね備えていたりして、作ってるだけで構造がドドドドっと脳内に押し寄せてくるので最高に楽しい。それ故にちょっと難しそうだな、と外からモジモジ眺めている人というのも多いのではないでしょうか。わかる。わかるぞ。オレも「なんかイケそう」と思えるバイク以外は買ってもそっと棚にしまったままにしてありますもん。

 どっこい、世の中には「隠れバイク模型」というのがあり、これは小さくてパーツ数が少なくてビシバシビシ!と作れば「お〜、バイクじゃん!」という気分になれるアイテム。今日は家に潜んでいた「隠れバイク模型」のひみつを教えます。

▲バンダイスピリッツ メカコレクションの新サイクロン号。仮面ライダー新1号付きです

 いやサイクロンってバイクじゃないじゃん!仮面ライダーじゃん!って思ったあなた!仮面ライダーが乗っているのはバイクだ!大丈夫!(大丈夫?)ベースとなっているバイクはスズキ ハスラーTS-250IIIという車種なので、中身がちゃんと入ってるこのプラモはキャラクターモデルとスケールモデルの中間にあるというか、あなたはスズキ ハスラーTS-250IIIにガワをかぶせて新サイクロンを作るということになる。わかるだろうか。オレも書いていて混乱してきた。

 ちなみにメカコレシリーズは箱の上蓋のウラに説明書が印刷されているという環境に優しい設計なのですが、優しすぎてかなり見えにくいので、メーカーがちゃんとPDFの説明書を配布しています。PCの画面とかタブレットで見れば快適だZE!

▲この状態だとスズキ ハスラーTS-250IIIなんですよ
▲新1号も付いてるぞ。真っ黒だから気になる人は塗ろう
▲こっちはタミヤの1/35MMシリーズより「陸上自衛隊 オートバイ偵察セット」

 タミヤは1/6や1/12といったスケールを中心にすごく高品質なバイクモデルをいっぱい発売していますが、1/35のミリタリーミニチュアシリーズにもバイクが入っているアイテムがたくさんあります。この陸上自衛隊の偵察部隊が使っているバイクはホンダのXLR250Rという車種で、まあ自衛隊用にいろいろカスタマイズされているのですが、「これは市販車モデル!」と信じ込んで銀と黒と赤と青で塗り分けたら絶対かっこいいはずだと思い、棚の中で熟成させています。

▲すっげえディテールがしっかりしていて、パーツも少ないのでサクーンと組んでも立体感バリバリのバイクがゲットできます
▲こっちは新1号ではなくイケメン偵察ライダーと、指示を出す戦車長が付属

 「落書きの……教科書と……」と鼻歌を歌いながらふたりのライダーを見比べていたら、気づいたんですよ。

 なんかこの人たち、同じくらいの大きさじゃない?

▲このふたつ、何気なく選んだんですけど……
▲バチピタ(股下の造形がちょっと合わないけど、埋めるか横から見ればわからんちん)
▲仲良くやろうぜ。

 ……ということで、バンダイメカコレの仮面ライダーシリーズがだいたい1/35スケールで、MMシリーズのバイク同様「ババっと組んでちょいちょいと塗って、おーバイクができたぞ!」という感触を速攻で味わえるアイテムなんだよね〜というお話でした。みなさんも、精密なバイク模型を組むのはちょっとおっっかねえな……と思った場合は、小さくてもリアルなバイクを自分の好きなようにカスタマイズして遊んでみませんか。ちょっと色を足すだけでも「オレのバイク!」という気持ちになれますので、ぜひともやってください。ではでは。

タミヤ 1/35 陸上自衛隊 オートバイ偵察セット(税込み1100円)

BANDAI SPIRITS メカコレクション 仮面ライダーシリーズ 新サイクロン号(税込770円)

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

兵士は「緑」が最高!!/AIRFIX VINTAGE CLASSICS「1/76 USAAF人員」

▲B-17が飛び立つ飛行場とアメリカ空軍の兵士たちが描かれた「1/76 USAAF人員」。現在のエアフィックス赤パッケージで登場です

 模型の故郷・英国を代表する模型メーカー「エアフィックス」が、発売当時(このキットは1974年!)のイラストを使用しながら、現行アイテムの特徴である赤を貴重としたパッケージデザインでリニューアルしているシリーズ「VINTAGE CLASSICS」。模型店に行ったらちょっとしたコーナーになっていたので、その中から気になった「1/76 USAAF人員」(人員!?)を1つ買ってみたよ。それは愉快な仲間たちによるエアフィックス劇団でした。

▲箱を開けるとグリーンアーミーメン。赤い箱から緑の兵士が生えたランナーがずいずいと出てきて大興奮ですよ!
▲4本のグリーンアーミーメンツリーがでてきました
▲スパナメン!?レンチメン?!今日も元気に整備整備♪
▲ちょっと静かなベテランワークメン。“行こうみんなでフンフフン♪”
▲ファイヤーメン?飛行場で火はやべ~ぞ!!ダッシュよ
▲“ちょっと待てメン”にパイロットメン。給弾ベルトメン。弾重そうですね~
▲警備メンの目を盗んで駆け抜けるメン。あとはこれ機銃メンですかね? 物騒なの持ってます
▲俺たちがパイロットの目!! 機体を誘導するマーシャラーメン。らっしゃい! 張り切ってます! カバンを持った下の乗り組みメンもいい感じ

 成型色が緑になるだけで兵隊さんが愛おしくなる人類の発明「グリーンアーミーメン」。歩兵じゃなくてももちろんバッチリはまるかわいらしさ。軟質プラなのもヴィンテージ感を味わえて楽しいプラモです。エアフィックスVINTAGE CLASSICS。楽しさは決して古びないですね。

■エアフィックス VINTAGE CLASSICS 1/76 USAAF人員 本体価格800円(税抜き)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

黒と銀と、あなたの好きな色。/「ビビリのカーモデル」を作る。

 クルマのボディをツルツルに仕上げてみたい。ただそれだけでプレコーの光沢を吹くという記事を書いたのですが、ボディだけあってもしょうがないのでクルマのカタチにしてみようという思い。

 プラスチックの色はベージュ。ボディは赤く塗ったけど、シャーシやタイヤがベージュじゃ締まらない。とりあえず黒く塗っておこう。ライトやバンパーがベージュじゃ締まらない。とりあえず銀に塗っておこう。このふたつの塗料は、だいたいのクルマの模型をどうにか「クルマだな」と認識させてくれる便利な色です。セミグロスブラックとシルバーと、あなたの好きなボディの色。これはその日の気分で大丈夫です。赤じゃなくても、緑でも、青でも、微妙な茶色や、つや消しのグレーでも、あなたが塗料の棚の中で「あっ」と思った色でいい。

 このタミヤ1/48MMシリーズのビートルを見ていてすごいなぁと思ったのが、Aの枠とBの枠(この枠のことをプラモ好きは「ランナー」と呼びます)が区切られていて、「Bを銀に塗るとかっこいいよ」と言葉少なに僕たちに語りかけてくるところ。ミリタリーテイストにも、民間の乗用車テイストにも組めるよう、パーツがなんとなく分かれているんです。説明書には明言されていないけど「かわいいビートルが欲しいな」と思ったときに、ユーザーに小さな驚きを与えてくれる。こういうところがタミヤのプラモのすごいところです。

 シートの色はベージュでいいでしょう。プラスチックのまま。ホイールキャップとバンパーは銀。あとは黒く塗って、注意深く窓ガラスをはめます。プラモはやろうと思ったらやることがいくらでも増えていきます。やることが増えると、失敗する確率も少しずつ増えていきます。リカバーできればいいけど、失敗したら悲しいし、悔しい。だから、今回は「できることだけやろう」と決めて、失敗しそうな塗り分けや、時間のかかる塗り分けはしません。逃げ腰に見えるかもしれませんが、こうやって決めればひとつの「新しいチャレンジ」と、たくさんの「自信が持てる作業」を組み合わせて、昨日の自分より少しだけ前に進むことができます。

 プラモの経験値は、「完成した」と思ったときにチャリンと音を立てて自分に足されます。完成というのは、自分にとってのゴールライン。昨日の自分ができかったことをひとつプラスして、プラモの箱に入っているワクワクをしっかり味わえたなと思えれば、それは完成です。誰かにとっての完成と、自分にとっての完成は違っても大丈夫。今日、僕はツルツルのボディのクルマをひとつ手に入れました。次はどんなことを覚えて、新しい模型を作ろうかな。そんなことを考えながら、グラスを傾けるのが楽しいのですから。

■タミヤ 1/48 MMシリーズ

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

世界一有名な城を築城せよ!/童友社 姫路城

▲国宝のプラモ。あなたのお家にも国宝を

 現代日本人のDNAレベルまでに「城」と言ったらこのイメージが刷り込まれている暴れん坊キャッスル&世界遺産「姫路城」。世界に誇るJAPANアイコン。そして模型屋さんのVIP席である棚の上に堂々と置かれているそのお姿。当時のフミテシ少年は中をみたくても届かない……模型屋さんのおじさんに取ってくださいと言って見せてもらって、すっと無言で返す勇気もないから声をかけられない……。結局どんなプラモなんだ?とモヤついておりました。大人になったオイラには、もう恥ずかしさも店のおじさんの心をチクリと刺すこともありません。「童友社 1/380 日本の名城DX01 姫路城」無血開城!!!!

▲開門!
▲情景や石垣がドン。僕らは大工さんになったり庭師になったりするみたいですよ
▲本丸がパイルダーオン!する構造でござるよ。殿
▲城主の瓦紋? なんだウルトラクイズか? 全部同じ紋じゃないか?
▲正面が変わった? 裏と表があっていい。それがプラモデルなのさ
▲ぷにょぷにょした木!木を植えるのだ
▲新緑! 目にも鮮やか。整えろ!!
▲袋に粉が!毒見だ!毒見を呼べ。殿お下がりください!! 緑のういろうか?
▲奇妙なグリーンパウダーは芝生でござったか
▲ういろうではなくウレタンというものであるか。緑豊かな城は平和の象徴ですな。殿
▲白鷺城の名に恥じぬ白さ。白すぎて青(ホワイトバランス~)
▲屋根のランナーはまるで町のよう。姫路城の豊かさ~
▲え!?鯱鉾って「金」じゃないの?お好みで金! 金で行きたいですよね~

 芝生を生やしたり、木を植えたり、築城したりとひとつのキットでそれらを楽しむ要素がギュッと詰まったプラモ。それが「童友社 1/380 日本の名城DX01 姫路城」。私もですが、城郭模型の箱って目には入っていたもののこれまでほとんど開けたことが無く、今回やっと開けることができました。地面がドカンと入ってたのにはまさに衝撃でした。今年の夏はどこかの城主になってみようと思います。目指せ一国一城の主!!

■童友社 1/380 日本の名城DX01 姫路城 本体価格4500円(税抜き)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

【PR】タダでもらえるロボットを強化する!グッスマ製「エグゾフレーム」の可能性!

 現在YouTubeでタダで見られるアニメなんですが、『OBSOLETE』(オブソリート)というものがあります。突然地球の近所に現れた宇宙人が「石灰岩1tと交換でめちゃくちゃ便利な2.5mくらいの大きさの汎用ロボット”エグゾフレーム”をくれる」という交換条件を持ちかけてきて、それによって人類がどう変わっていくのか、というのを描いたアニメです。

 地面を掘ることさえできれば誰でも簡単に軍事転用可能な夢のマシンが手に入ってしまうわけで、貧乏国家だろうが超大国だろうがそこは平等。それを利用して世界に対して喧嘩を売っている武装組織アウトキャスト・ブリゲードと、それを追うアメリカ海兵隊の話が縦軸になってるんですが、その背後の事情(宇宙人の目的とか)はまだ謎。今年の冬に後半が配信されるそうです。面白いしタダなので、全員見ましょう。

 このOBSOLETE、聞けばそもそもがプラモデルありきの企画だったそうなんですが、そのキットを広く知ってもらう方法が奮っております。エグゾフレームのプラモが一番最初に世に出たのは、雑誌『月刊ホビージャパン』のオマケとしてだったんですね。ランナー1枚で完結する単純なプラモなんですが、組んでみるとこれがよく動くし、組み立ての単純さも程よい。おもしれーなー、といじっていてハッと気がつくわけです。これ、謎の機械をほとんどタダでばらまいてるOBSOLETEの宇宙人と同じ行為じゃないかという事実に……!

 その後もWebキャンペーンで3000人にタダでプラモを配ったり、3Dデータを無料配布したりと、とにかく「エグゾフレームを無料で配る」という行為に発売元のグッドスマイルカンパニーは邁進。「フレームはタダ。あとはキミたちの創意工夫でガワを着せれば、アウトキャスト・ブリゲードみたいに世の中をひっくり返せるかもしれないよ」という、本編同様のメッセージを暗に送ってきているのです。目を覚ませ、僕らの世界が何者かに侵略されてるぞ!

▲自宅が暗すぎるので、エアコンの室外機の上から失礼します。左から素エグゾ、海兵隊エグゾ、アウトキャスト・ブリゲードのエグゾです

 で、ここまでやったところでようやく、ちゃんと金を取って普通に売るエグゾのプラモデルが登場しました。「MODEROID 1/35 アメリカ海兵隊 エグゾフレーム」と、「MODEROID 1/35 アウトキャスト・ブリゲード エグゾフレーム」だそうです。でも税込で2300円。安いな。で、早速組んでみたんですけど、プラモで見ると、劇中で動いているだけだとよくわかんないエグゾのモダンウォーフェア性をビンビンに感じられるんですね。

▲細い手すりやデコボコなフックが目に嬉しい海兵隊エグゾ上半身。全体をシナイグレーで塗り、シャックルのとこだけ赤く塗装すればイスラエル仕様だと言い張ることもできましょう

 例えば海兵隊エグゾの上半身、ここにはモダンウォーフェアみがパンパンに詰まっています。全体の形はストライカー装甲車のようなカクカクした楔形(最近の装甲車両がやたら角ばってるのは、素材の金属が固すぎて曲げたりひねったりできないからだそうです)にまとめられ、シャックルやらフックやらでデコボコ。胸にくっついてるシャックルの形も、ドイツ戦車みたいな「U」の形ではなく「Ω」みたいな形のやつで、これ一発でかなりのモダンウォーフェアみを感じます。あと、背中上面にくっついてるキューポラがただの丸いハッチではなく八角形になってて周囲に細い手すりがついてるのも、「し、市街戦用にゴテゴテした銃座がついてるハンヴィーとかで見たことある~」というムード。いや~おじさん嬉しくなっちゃうよ。

<06/04追記>デザイナーの石渡さんによると、胴体前面〜上面の棒状の部品はワイヤーガイド(トラップとして張られたワイヤーを切るためにワイヤーをカッターに誘導するガイド)だということです。で、「乗員用の手すりでもあります」と教えていただきました。インタラクティブ!

▲目玉の周りのカバーとか、「ここは薄い鉄板でできてまっせ!」という目配せがすごい。そのメッセージ、しかと受け取った……!

 対するアウトキャスト・ブリゲードのエグゾ。一見すると丸っこいんで、「はは~ん、なんかソ連の戦車みたいな鋳造っぽいデザインってことなのかな」と思ってたんですが、どうも組んで見てみると様子が違う。パネルの縁の処理とかに「ここはあんまり分厚い板でできてませんよ」というポーズが見えるのですね。つまりこっちの機体は「最新の複合装甲とかをイジるだけの予算も技術もないから、加工が容易な薄い鋼板をプレス機とかで曲げてガワを作ってるよ」というジェスチャーが仕込まれているわけです。カ~ッ! よくできてんな!!

▲横から見ると一目瞭然、上半身の厚みが全然違う! 海兵隊エグゾは前方に向けて尖った楔形だから、銃弾とかは斜めに跳ね返しそうだな~

 あと、2体を並べて上や横から見てみると、パイロットの上半身(つまりダメージを負うとすぐ死ぬ部分)に対する防御が、圧倒的に海兵隊の機体の方が手厚いことがわかります。海兵隊エグゾの方が、上半身のフレームに被っている装甲が前方に分厚いんですね。エグゾフレームはパイロットがおんぶされるような形で機体の背中側にのっかるので、上半身前方の装甲はそのまま生存性に関わってくる部分。つまり同じフレームを使っていながら、どっちかというとアウトキャスト・ブリゲードの方がすぐ死ぬわけです。切ないな~。このへんも、プラモで見てみないとよくわかんなかったとこですね。

▲武器のグリップが全部丸棒! これは大英断! 断固支持!!

 というわけで「ふ~ん、モダンウォーフェアじゃん……」とか言ってたわけですが、実はこのプラモはオモチャっぽい割り切りもしっかりしてます。というのも、鉄砲のグリップが全部丸棒なんですね。特にアウトキャスト・ブリゲードのエグゾが持ってる重機関銃はグリップから銃を支えるフレームが伸びてるデザインなんですが、その辺全部割り切ってただの棒を持たせる形になってます。つまりこのキットは「劇中の再現」と「遊びやすさ」だったら、ギリギリのところで遊びやすさの方に舵を切ってるんですね。

 つっても海兵隊のエグゾが持ってるライフルは劇中でもグリップが丸棒そのまんまだったりして、「オッ、ここはオモチャの都合を考えてるのかな」とか思ってたりしたわけですけども。ただとにかく最近の「ライフルを持っている手/握り手/開き手/開き手パート2……」みたいな感じで手首ばっかり無限に増えていくオモチャには辟易していたところ。こういう「いんだよ鉄砲なんか丸棒突っ込んで持たせとけば!」というストロングな姿勢は断固支持でございます。

▲手元にあるミリタリー・オモチャと組み合わせれば遊びがワイドだ! みなさんは別にエアコンの室外機の上に並べなくてもいいです

 というわけで、「複雑現代兵器的なリアル感の演出と、割り切った遊びやすさは両立できる」というのが、このキットの教えてくれた一番重要なことでありましょう。願わくばこれを両立したオモチャがたくさん増えてくれるとおれが楽しいんですけども。つーわけで、みんなもこれ買って机の上をモダンウォーフェアにするといいと思います。あと繰り返すけど、OBSOLETE本編も見ろよな!

グッドスマイルカンパニー MODEROID 1/35 アメリカ海兵隊 エグゾフレーム

グッドスマイルカンパニー MODEROID 1/35 アウトキャスト・ブリゲード エグゾフレーム

しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

2001年 自宅で宇宙の旅

 ニッパーを握りたくない日もあるわけですよ人間。それでもなんかこう、小さいものを眺めてうふふとなりたいのがプラモ好きのゼータクなところで、まあそういう気持ちにバチーっと応えてくれる塗装済み完成品というのが世の中にあるんだから嬉しいじゃないですか。こんなに小さい模型なのに、うまいことできてるなぁ……これだって、工場で誰かが塗ってるわけでしょ。すごいや、と。

▲これがどーんと家に届いたのよ。マジで嬉しいよね。

 『2001年宇宙の旅』はもう何度見たかよくわからんのですが、一昨年の夏に大阪のエキスポシティでレーザーIMAX上映がありまして、たまたま出張のタイミングが合ったので巨大すぎるスクリーンと巨大すぎる音響で鑑賞することにしたわけですよ。そしたらなんかもう、全然いままで観ていた2001とは違う体験で、全身筋肉痛になって「うわー、人生変わっちゃったよ」みたいなことを考えましてですね。終わったあと居酒屋で一人ビール飲みながら「うーん、これは結婚しないとダメだな」とかよくわからない結論に至ったんですよ。なんなんだよ、すげえよキューブリック。

 EVA PODは最近メビウスモデルから1/8というめちゃくちゃにデカいプラモが発売されましたが、こちらは直径45mmくらい。すげえシャッキリしてますが、腕を畳んだ状態なのがちょっとなぁ〜とか思いつつ、もう一個欲しい。改造したい。あとライトを光らせたいねこれは。最高です。

 アリエス号は見た瞬間に青く美しきドナウが脳内で鳴り響きますわよ。記憶する限りマスプロの立体物はなかったと思うので、これが模型になると知ったときは狂喜乱舞しました。脚がビョーンって出てくるあのシーン!そんで花びらみたいなハッチがドワーって開いて、下からのカットにバーンって変わってノズルがビターっと綺麗に並んでるのが見えてくる!そう、この模型の正面は真下だぜ。買った人にしか見えないんだから、こりゃもうアナタも買うしかない。

 ムーンバスの中でまずそうなサンドイッチを食べたいと思いますよね。これまた「下ってこうなってんのか〜」という模型。こちらも往年のプラモがあるんですが、手のひらサイズでシャキシャキしているのも凝縮感があってよろしい。

 オリオン号は惜しくもパンナムのマークが入ってないんですが、まあオトナの事情がたくさんあるので自力でなんとかしましょう。こちらは全長145mmとちょっと大ぶり。1/400の旅客機とかと並べてそのサイズ感を味わいたいですな。

 そんでもってディスカバリー号!こちらも最近メビウスモデルからめちゃくちゃにデカいプラモが発売されまして、これはガバーっと完成させて友達の家に押しかけ、勝手に天井から吊っておきました。このディスカバリー号は全長250mmとコンパクトなので、家が狭いマンでも飾れます。吊ってもいいかな……と思ったんですがこちらは全体が樹脂でできていてけっこうしなりますので、付属の台座で飾るのが吉でしょう。

 でも、やっぱビシッと真っ直ぐになって木星に向かうところを見たいじゃないですか。下に月面というのもなんか違うし。こう、漆黒の宇宙にボカーンと浮いているのがディスカバリーじゃん。

 ▲からぱた秘伝のスーパー撮影(大汗をかく)によってディスカバリーが飛びました。

 いや〜、正直『2001年宇宙の旅』って昔は正規版権を取得したグッズが新規で出せないというなかなかエグいコンテンツだったのですが、ここ数年で状況が変わってきたのかグッズ出まくり、プラモ出まくりの確率変動ハイパーボーナスラッシュという様相を呈しており、フィギュアとかプラモとか全部買っていると破滅しそうです。でもいいの。楽しいから……。

 そうそう、HAL9000のプラモがあるんですよ。一人で寂しそうに光っている彼のところに、たくさん仲間が来てよかったね、ということで、こうした完成品の類というのは一度生産されて在庫がなくなるとなかなか再販しない(もしくは二度とお目にかかれない)ことがほとんど。あるうちに買っておく、不安だったら予約する、というのは鉄則ですので、お見逃しのないように。じゃあね!!

■ベルファイン ディスカバリー号(6800円+税)

■ベルファイン アリエス号&スペースポッド(6800円+税)

■ベルファイン オリオン号&ムーンバス(6800円+税)

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

再会。僕の大事な模型/タミヤ 響

▲1972年に発売。タミヤ 1/700 ウォーターラインシリーズの中でもベテランキット「日本駆逐艦 響」

 また模型を作れるようになった、あの時の自分に会いたくて。

 数度の大損傷にも関わらず太平洋戦争を生き抜いた日本海軍の武勲艦「響」。戦後も復員艦として多くの日本人を運びました。そして僕自身もこの「響」のプラモと友人のおかげで、またプラモ趣味に戻って来ることができました。このプラモを手に取らなかったら、きっと違う人生になっていたと思います。それだけ僕の中では大事な模型。

 そして初めて作ったスケールモデルでもありました。25才の時だったと思います。

▲パッケージを裏返すとカラー図があります

 単純に仕事のプレッシャーで大好きな模型が嫌いになってしまい、それを心配した友人がヨドバシ新宿ホビー館に僕を引っ張って行きました。しかもほとんど覗いたことがない「スケールコーナー」。なんもわかりません。そして、もうプラモ無理や……と会社も辞めようと本気で思っていました。そこで差し出されたのがこの「響」でした。

 「駆逐艦って言って小さいから組むだけなら1日で終わっちゃうよ。値段もお手軽だしね」と。その時、正直「買ったら組むしかないよね〜……」と思いましたが、信頼している友人の言うことだしなーと、全く知らない艦船模型をレジに持って行ったのでした。

 これが後に月刊ホビージャパンから発売されたHow to本「艦船模型製作の教科書」へと繋がるのですが、それはまた別のお話。そして僕はこの響をなんと買った日に完成させてしまったのです。2年ほど模型が作れなかった自分が1日で。あの体験は本当にヘレン・ケラーの「ウォーター」のように、僕をプラモの海へと連れ出してくれました。

▲家に帰り、とにかく箱を開けました。確かに小さいしパーツは少ない
▲説明書にこんなにも解説が入るんだとびっくり。この辺りから目に光が宿ってきました。プラモ買いまくって作れば詳しくなれるのでは……そんな単純なことにここで気がつくのでした
▲イラストから来るベテランキットの風格! ちょいゆるいイラストに、やってみるか!と変に気合いが入ったもんです
▲キットの中によくわからないパーツが集まった小袋があったんですよ。全くわからないし、なんか八九式なんちゃらかんちゃらとかいっぱい書いてあって、当時は怖くなってそっと箱に戻しました
▲そして今、あの時の自分を思い出しながら「響」と遊んでみよう。少し太ったし、結婚もして子供もいるぞ
▲バラストのパーツを初めて手にした時、金属の棒を中に入れて一体何が起こるんだ?って本当に思いました。でもあの時、今まで知らなかった模型に触れているんだという感動はこのバラストが一番重く感じさせてくれたかな
▲あの時には無い「速乾タイプの流し込み接着剤」が今はある!当時よりも君をカッコ良く綺麗に貼れる自信が僕にはあるよ
▲どうだい?船体と船底があっという間にくっついただろ。それにしても俺よりも君は年上なのに背筋もピンとして、綺麗にパーツが合うなんてすごいね。俺も頑張るね
▲当時は怖くて使えなかった、同梱されているウォーターラインシリーズ用のパーツセットの意味も今はわかる。ランナー同士を見比べて、該当パーツを探していくんだ
▲左がキット当時のパーツで、右が追加されたディテールアップパーツのもの。そう、こちらは昔のキットをよりディテールアップできるようにと後から追加されて、キットと一緒に同梱されるようになったものだったのです。その善意をわからず、僕は閉まったんですね。ぜひ使ってください!
▲流し込み接着剤でパーツを貼っていく楽しみを教えてくれたのも響でした
▲小さなパーツがひとつの塊になっていく……俺が形にしたんだ…とワクワクとドキドキでいっぱいになりました
▲これまでデカール貼りとかでしか使わなかったピンセットのありがたみに触れた瞬間。怖いけど、やれるぞ!と全集中したもんです
▲青年からおじさんになった私は、使い終わった流し込み接着剤の蓋に付いている細い筆が欲しくて、白蓋接着剤とマッスルドッキング
▲煙突、艦橋と軍艦のアイコンがグレーの塊の中に現れて軍艦になった時、俺は今なんかすごいものが組めたんじゃないか!模型ってこんなに面白いのか!と感情が爆発しました
▲プラモの撮影が大嫌いでした。自分が思える写真が全く撮影出来なくて、何度もスタジオで泣いてました。それも響が変えてくれました
▲プラモの楽しさを再認識した僕は、ポジティブの塊に変身。怖かった撮影にも立ち向かえるようになりました。カメラマンさんや先輩に食らいつきまくり
▲だから、あの時より君を綺麗に撮影できると思う。今見ても本当にかっこいいね
▲約10年ぶりの再会。当時嬉しすぎて、そのまま梱包して会社にも持って行きました。紹介してくれた友人のマジで?って顔と、完成した模型見ながら話した楽しさは忘れることはないと思います

 触ったことが無く、自分の視界に入ってなかった物と出会い世界が広がる。当時プラモの世界の広さを知る旅へと僕を連れて行ってくれたタミヤの響。僕にとっての大事なプラモ……。そして今また、nippperというメディアでプラモの海へと航海にでました。『あなたが再出発し、あの時感じたプラモの楽しさを多くの人と共有できる航海にしましょうね』と響からメッセージをもらった気がします。楽しい航海をしていきましょう。

■タミヤ 1/700 日本駆逐艦 響(ひびき)本体価格1200円(税抜き)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

その感覚が消えないうちに/「ブルーインパルスの思い出」を作る。

 金曜の昼間、家の上をブルーインパルスが飛んだ。それがどんな意味を持っているのかを論じているヒマはない。オレたちはプラモが好きだ。見たものはプラモで作らないと気がすまない。T-4のプラモを速攻で買って、ババっと作ってあの鮮烈な記憶を自分の手で再現したい。

 でも、だ。いままで何度かブルーインパルスの飛行展示を見て、一度としてその模型を作ったことがない。なぜなら、ブルーインパルスは6機でひとつの画として機能するし、白く伸びたスモークが3次元的にその機動を束の間描き出し、やがて空に薄く消えていくあの光景こそが本体だからだ。自分の家の机の上にチョンと1機のT-4が置いてあっても、それは”ブルーインパルス”ではなく、それを構成する要素のひとつでしかない。たとえ6機作っても、それを青い空間に立体的に配置する術はない。なんて難しいモチーフなんだろう。

 多くの人がSNSでつぶやいていたとおり、今回の飛行展示にはスモークを引かないグレーの機体が随伴していた。美しい編隊から少しだけ距離をおき、6機をときにエスコートするように、ときに後ろから応援するように機動するあの機体は、フライトの全てを記録し、安全を確保するのに不可欠だった。全ては決まりだ。アイツを作れば、フライトの記憶が蘇るだろう。

▲「Mr.セメント SP」を使えば超能力者のようにプラモを早組みできます。

 ブルーインパルス仕様ではなく、グレーのT-4を買ってきて、一気呵成に組み立てる。説明書の順番を追っていたら、記憶は薄れ、パッションは萎み、この週末は終わってしまう。どうすればいいか。

▲箱開けてから1時間くらい経過。

 コクピットは組まない。思い出の中の機体は飛んでいなければいけないので、脚は出さない。飛行機模型は、このふたつをスルーすることで、とんでもないスピードで「士の字」になる。パーツをもいで、ひたすら貼る。合わせ目も、ゲートの処理も置き去りにして、ただ速く。速く。

▲色とりどりの部隊マークがかっこいい!

 グレーのT-4に入っているデカールは豪勢だ。およそ実在するマーキングがすべて再現できるのではないかと思うほどの量で、コーションデータ(こまかな注意書き)の類も十全に印刷されている。これを全て貼っていても、やはり感動はどこかに行ってしまう。あの機体に不可欠と思われる派手な要素だけをピックアップして、ただ速く。速く。

 機体をまるっとグレーに塗りつぶしたら、キャノピーの裏側に6つの機影を描き、伸びるスモークを描く。背景となる空の色をエアブラシで吹いて、随伴機は、飛んだ。

▲土曜に組んで、日曜に塗る。プラモの最短スプリントレース。

 プラモを作るのは楽しい。楽しいが、あらゆることに気を配っていたら時間がかかりすぎることもある。人生は有限で、人間のモチベーションは儚い。もっともっとたくさんのプラモを作るために。少しの満足感を何回も何回も得るために。僕はいつでも「このプラモを通して何を見たかったのか」を考えるようにしようと思う。

■ハセガワ 1/48 川崎 T-4 “航空自衛隊” (2,200円+税)

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

令和2年5月31日。プラモに恋をしました。

 好きです。

▲ICM「US WASP(1943-1945)」。後方支援などで活躍したアメリカ陸軍航空隊の女性部隊「WASP」。背景のボーイング・ステアマンのカラーが、彼女たちの地味なカーキの色をより明確に際立たせます。素敵なパッケージです

 女性のオーバーサイズの着こなしは、何故こんなにも「可愛さと格好良さ」が共存してしまうのでしょうか? シャツとトラウザーズのまくり方なんて本当に素敵です。男性サイズのものを現地で合わせているのかと思わせる雰囲気も、想像力をかき立ててくれます。だらし無さではなく、勇ましさを感じます。模型店で一目惚れしてしまいました。

 今回はそんな夏季/熱帯のスタイルと思われるカーキスタイルに身を包んだ3人の女神のお話です。

▲思いを寄せる彼が飛び立つ。本当はしっかりと顔を見つめて見送りたい。でも……。
▲この中にはどんな書類が入っているのだろう。辛いこと、素敵なこと様々なことを彼女は記録しているのかもしれない
▲今日はどうだった? 帰還したあいつとのこんなやりとりが今日もできた
▲男勝りな私はついついこのドロップしたポケットに手を入れてしまう。裾もアンクルブーツに被るくらいブカブカだ
▲愛機から降りる。今日も無事にミッションをこなした
▲パラシュートとハーネスをグッと肩から担いで、勇ましく。大きめの服も性に合ってきた
▲3人でいると戦場の不安も和らぐ
▲時には調子の良い奴もやってくる。少し小柄だと思うけど、顔はイケてるはね。
隣に乗ろうかしら?

 ウクライナのメーカー、ICMは様々なスケールのフィギュアをプラキットで送り出しています(輸入・発売元/ハセガワ)。どれもドラマ性を重視した内容とデッサン力のあるキットが多く、ひとつの模型に様々な物語を付加することができます。その魅力により僕は、ハセガワの1/32の「P-40」まで一緒に組みたくなってしまったほどです。組み合わせた景色を見たい!どんな絵になるのか?店頭で手に取り、お家で完成させて眺めるまでの時間は、本当に至福な体験でした。

 ちょっと男勝りで勝気な3人の女性たち。あなたのプラモにはどんなストーリーをもたらしてくれるのでしょうか? 

⬛︎ICM US 女性パイロット WASP(1943-1945)本体価格2500円(税抜き)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

兵隊タワーバトル! 〜欲望のままに接着したい〜

 このタミヤ 1/48 「WWⅡドイツ国防歩兵チーム」の箱の中には15体の兵士フィギュアが入っている。私のは使いかけだ。パッケージアートを眺めていた私は、「この人形達、後ろの方で全部接着したらパッケージの絵のとおりに作れるんじゃないか?」とか、そんなことを考えてしまった。つまり、頭と袖を接着したりとか、膝と背中を接着したりとかだ。現代のパワフルなマテリアルならそれが可能かもしれない。しかし見たところ描かれている一人一人の大きさが違うし、そんなに上手くいかないだろうなあ。

 でも、小スケールならできるはず!一度閃いてしまったからには、今は兵士同士を接着したくてたまらない。ミハイルはもう、遊びたくてたまらなかった!このキットには、体勢が不安定な兵士のために、直径2センチほどの台座が用意されている。これを使わない手はない。

作品No.1「突撃、偵察、かくれんぼ」
 本来、塀を乗り越えようとしている小銃手の体勢が、他の兵士の肩に手を置いたのが運の尽き。ビビって前に出られない兵士になってしまった。「無理無理、超無理っす、先輩お願いします」。こんな変なポーズでも、手前の兵士に密着させて流し込み接着剤をスッと入れれば固定される。人形遊びの可能性を確かに感じてしまった!これは楽しい!

作品No.2「せんぱぁ~い、仕事終わりました?マッハで飲み行きましょうよ。」 
 定時上がりの浮ついた空気に、一人残業の上司。「うるせえ!俺は残業なんだよ!肘を置くな肘を!」金曜仕事終わりの開放感でテンションが高い様子。右のヤツの陽キャ感がやばい。後ろで雄たけびを上げているのは、元々は地に伏せた状態で機関銃を構える真面目なソルジャーだ。

作品No.3「早く帰りましょうよ。ここ、何か出るって噂があるんです。」
 何かの存在に怯える3人。左の人は左手で戦車長の肩を叩いています。彼の左頬には戦地で捨て駒に利用され散った怨霊の手が、みたいな。デス・ストランディング的な。最終的に余った人形をひとまとめにしたら、完全に精神を病んでいる人の世界になってしまった。
 「縦に積んでみる」というのは今回一番やりたかった事でした。でもまさか本当に掌の面積でここまで接着できるなんて! 1/48は小さいから、重さも軽い、という事もあってギリギリ成立しました!

 3作品を並べてみました。密度がすごい。当たり前ですが、ある程度の人数をまとめてみるとひとつひとつにボリューム感が生まれてかなり満足です。造形の細かさといい、最近のミニチュアの駒みたいですね。こういうものだと思って塗るとしたらどんな感じになるかな……。

 「しかしこんな強力な接着剤… 一体どんな接着剤なんだ…。」って、見切れてる! 見切れてる!

 今回は歩兵を接着して遊んでみました。この遊びはめちゃお手軽にできるので、もし兵士セットが半端に余っていたらやってみよう!(マジで?)このほかにも豊富なアクセサリーが用意されているので、水筒をひたすら高く積み上げたり、機関銃を複数地面に突き刺してマミさんを思い出してみたり、アイデア次第で楽しみ方は無限大だ!じゃあな!!

■タミヤ 1/48 ミリタリーミニチュアシリーズ No.12 ドイツ陸軍 国防軍 歩兵チーム プラモデル 32512

ミハイル

福島県出身 1990年生まれ 模型を楽しんでいます マスキングが苦手 下のリンクの『火星深青』でブログを執筆していますので、模型に興味がある方は是非見に来てください。

世界一愛溢れるプラモ箱

 そこはまさに2人だけの世界。誰もがひと目見て幸せな瞬間だと感じる。プラモのパッケージアートの力。
 僕らはそんな力に引き寄せられて模型を手にしてしまう。

▲愛、希望、解放。
キスには人間を揺さぶる力がある

 戦車の模型だから戦車をメインに。そんな硬い事は言わずに、切り取った世界でも良いじゃないか。それこそ模型の切り取り方を素敵な景色として提示してくれている。心がつかまれる。

 模型の中の話も楽しいけど、パッケージアートを見た感想をみんなでお話しするのもありだよね。早くそんな話をしたい。その日は必ずやってくる。2人もそんな時間をきっと過ごして、キスをしたんだろうからね。

▲箱の中身は?2人の幸せな時間を僕には邪魔できないよ。ごめんね

■モンモデル 1/35 アメリカ軍中戦車 M4A3 (76)W 勝利のキス 参考価格15000円

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

何度でも作れるという幸せ。タミヤ 1/48 シトロエン 11CV スタッフカー

 プラモはその気になれば何度でも同じものを作れる。
 同じ幸せを何度もかみしめることができるのが一見楽しそうなのだけど、そこは人間。メインカラーが変わったり、どこをどう塗るのかがそのときの気分で変化する。ここにわざわざプラモを作ることの面白さがあったりする。

 タミヤの1/48ミリタリーミニチュアの中でも屈指の名キットが「シトロエン 11CV スタッフカー」。私はこれを教えてもらって、作ることにしたのだけど、最高だった。ミリタリーミニチュアシリーズはこういう「隠れカーモデル」みたいなものがいくつかあって、これもそのひとつだ。公式写真のマイナスネジみたいなライトカバーの他にクリアパーツもついていて、そのおかげでミリタリー感の無い、小さくてよくできたカーモデルが出来上がる。

 作るのはかなり簡単。見た目は最高。色も何色に塗っても最高。つまりどこをとっても文句がない。雰囲気が良さも手伝ってか、塗らなくても最高だと思う。出来上がるまでの時間は、なんというかコーヒーを入れて、お菓子を食べてと、しばしのティータイムを味わうような感じで、手間をかけるのが楽しい時間が続く。そして、それを何度でも味わう。

 サイズ感が手頃なのでどこでも作れる。塗るのも、さほど難しくない。朝塗ったり、仕事から帰ってきて夜に塗ったり。いつでも塗れる程よい大きさ。筆で撫でる曲面もつるんとしていて気持ち良い。

 その日の気分で色を混ぜてチャレンジ。いつもは塗らないパステルカラーなんかも遠慮なくGO。好きな色が見つかったりするし、そうでなくても好きな色の11CVを引き立ててくれる渋い一台が出来上がる。それくらいにこのキットはいろいろなことを受け止めてくれる。守備範囲が異様に広いのだ。

 最終的に6台作った。確かひと月半くらいで作ったと思う。
 とにかく楽しい。いろんな色を塗ったが、どうやってもエレガントなカーモデルが程よいサイズ感でノーストレスで出来上がる。これはすごい。
 たくさん作ることの最大のメリットは作業工程の最適化のように思えるが、冒頭にも書いたとおり、同じものを何度も作っているのにそのときの気分で何をどう塗るのかはかなり場当たり的になったりすることが可視化される面白さとも思う。そして、それが決まった形になって部屋に並ぶことが気分が良い。

 うっとりするようなブラックの実車を見たときに「わ、模型の通りのエレガントさ!」と思ったりもした。それほどまでに雰囲気の良いキットを自分の思いのままに塗る遊び、最高だと思いませんか? 

■タミヤ 1/48 ミリタリーミニチュアシリーズ No.17 シトロエン 11CV スタッフカー プラモデル 32517

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

放送から10年以上経った仮面ライダーを中心線で割って飲む!

 こんばんは、向井秀徳です(違)。冷凍都市ならぬ風都からお届けいたします。

▲サイクロン!!!!!!!!
▲ジョーカー!!!!!!!!!!

 パピコ、雪見だいふく、キットカット。共通する特徴はなんでしょう〜カチカチカチカチはい時間切れ!!正解はふたりでパッキリ分けられるお菓子でした〜。いいですよね分けられるお菓子。そんなお菓子のように、パートナーと、お子さんと、職場の仲間と。ふたりで分けて作ってハイパー楽しいプラモがあるので皆さんに見せます。

 オレ?一人で組みました……。

 嫁さんの鏡を拝借して撮影したので上の写真は完全にウソなのですが、このプラモは仮面ライダーの半身がふたつ入っていて、合体させると仮面ライダーサイクロンジョーカーになるという構成になっています。実際はこう。

 菅田将暉と桐山漣、ふたりが好きな方を組んで最後に合体するという遊びかたができるというエクストリームなプラモとなっており、ランナー構成も色がパカーっと分かれているのでとにかく組んでシール貼ると良い景色が生まれます。

 で、半身ではなく一体のアクションフィギュアとして組むこともできるしそれはそれでめっちゃポーズとか取って遊べる(というかまあそっちが普通の遊び方としてまず説明書では書かれています)のですが、下の写真のパーツを見たら「え、普通に組むよりまずこっちで遊びたい!」と思いませんか。オレは思いましたね。

頭〜胴体のパーツを固定する板状のパーツからいろいろな形のダボが突き出ています。一度ふつうのアクションフィギュアとして組み立てたあとにバラバラに分解し、外装パーツをポチポチとこの板にくっつけていくことで、ふたつの半身が出現します。

(腕と足は動きますが、当然胴体はこのカタチに固定されます。この固定というのがいい。ポーズがビシッと決まって、モノとしての剛性感も出て、本来的な意味での「模型!」という感じがするので。)

▲サイクロン!!!!!(2度目)
▲ジョーカー!!!!!!!(2度目)
▲「もしかして……」「わたしたち……」
▲「「ジョーカーエクストリーム!!!!!!」」

 いわゆるロボットプラモってだいたいが左右対称で右腕組んだら左腕組まなきゃいけないし、右脚組んだら左脚組まなきゃいけないし、ああもうめんどいな〜と思うことがあるんですが、この仮面ライダーは左右で色の違うやつが合体するというとんでもない設定を取り入れることで菅田将暉と桐山漣を文字通りダブル主役にしたとう恐ろしい番組。オレはアホなので緑色の右腕を組んだあとにまったく同じ構成の黒い左腕を組んでいたら「お、なんか新鮮!」と思ってしまった。ガンダムも左右で色が違うともうすこしモチベーションが維持しやすくなるのではないだろうか(暴論です)。

▲どうですか、組みたくなってきたしヒートメタルと混ぜて遊びたいでしょ。

 半割れじゃなくてちゃんと可動フィギュアとして組んだらどうなるんだよ!というのはまあいっぱいレビューとかあるだろうしバンダイホビーサイトに行って確認してもらえばそれで済むので、今回はこのプラモの最大のバリューである「半固定の半身ライダーをそれぞれ作って最後に合体させてたのしい!」という遊びを紹介しました。オレはエターナルが好きです(左右同色やないかい!)。

 ……ということで、現在はヒートメタルとルナトリガーも同じシリーズで発売されていますので、好きなフォームを選んでパートナーやお子さんや会社の同僚と遊んでみて下さい。ぜひ。

■BANDAI SPIRITS Figure-rise Standard 仮面ライダーW サイクロンジョーカー (税込3,520円)

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

すべてのモノに命が宿る魔法のプラモ「ヨシおじさん」を手に入れるべし。

 ▲ニッパー、ヨシ。
▲サイドミラー、ヨシ。
▲コンテナ施錠、ヨシ。
▲シド・ミード、ヨシ。
▲本来の使い方、ヨシ!

 「ヨシおじさん」というのは、タミヤの1/24 スポーツカーシリーズ No.266 ラリーメカニック セットに入っているドライバーを指す。恐ろしいスピードで悪路を走るラリーカーは、短い時間で修理や整備をしなければいけない。セットには4人のメカマンと1人のドライバー。ドライバーはおそらく「ここのセッティングが微妙だ。もっとハードにしてくれ」みたいなことを指示しているのだろう。この指差しポーズは、ありとあらゆるミニチュアにフィットする。

 メカニックの4名はパーツを選んで組み立てることによりそれぞれ異なるポーズ(寝そべっているのが2体、膝をついているのが2体)に仕上がる。工具を持たせたり、タイヤをもたせたりすればそれだけでドラマが生まれる。

 指差しポーズのドライバーは1体のみ入っている。組み立てはカンタン。切って貼ればOKだ。

 シルバーのランナーは同じパーツのくっついたものが2枚入っており、こちらには豊富な工具類が用意されている。ジャッキ、ツールボックス、ブレーキディスク、インパクトレンチ、オイルジャグ、ノートパソコンetc.……。

▲レンチやドライバーの立体感にうっとりし
▲ノートパソコンのキーボードに盛り上がり
▲PCの画面を再現したデカールもまた良い。

 ミリタリーモデルならまだしも、1/24スケールでこんなに想像力をかきたてられるフィギュアセットというのは他にあまり類を見ない。なんなら、このセットさえあればラリーカーを作らなくても「ここにはラリーカーがあるな!」と知覚できてしまうほど、このプラモは具体的な景色をカタチにしているのだ。

 大きさもまた良い。小さすぎず、大きすぎず、プラモに限らず身の回りのあらゆる小さいものにちょうどいいサイズで、指差すポーズというのは、人とモノの間に何かしらの関係性があることを一発で理解できる不思議な魔力がある。もうひとりの片膝をついたメカマンがいれば、なおさらだ。物騒な鉄砲を持ったり、叫んだりヘルメットをかぶっていたりしないのも、ユーティリティープレイヤーとしての素質に溢れている。

 「人間」というのはあらゆる人が知っているモチーフであり、それがだいたいどんなふうに振る舞い、どんな気持ちのときにどのような表情になるのか想像できる。だから、人間が置かれた景色を見ると、対象の大きさや置かれた状況が突然自分のことのように理解できるようになる。これがフィギュアの持つ最大の効能と言ってもいいかもしれない。

 キットではスバルチームかプジョーチームを選択して塗装し、各チームのロゴを再現したデカールも用意されているのだが、これはスバルのクルマやプジョーのクルマと合わせて展示するときに最大の威力を発揮するわけで、なにか写真を撮るときに、ふとそこに「指を指している人がいるといいな」と思って召喚するならば、黒子のようにアノニマスな、単色のほうが引き立て役として優秀である。

 「顔を塗るのが難しいから、フィギュアは作りません!」というのはもったいない。人間はもっとも身近な造形物であり、万物の尺度であり、そのポーズが想像力をブーストする存在だ(建築模型に決まって白い人間のフィギュアが添えられるのは、こうした理由による)。そこにただ人の形があることで、SNSや展示会におけるあなたのプラモへの注目度は10倍も20倍もアップすることを約束する。

 すべてのモノに命を吹き込む魔法のプラモを、あなたもぜひ。

■タミヤ 1/24 スポーツカーシリーズ No.266 ラリーメカニック セット 1600円(+税)

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

あなたのボイレに「瞳」はあるか? 僕のインストの着眼点

 あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! できてんだよ。すでにBf109 G-6がよ。

▲ランナーが3枚しかないんだぜ。しかもうち2枚は小さなランナー。実質1枚じゃないか

 キットレビューしようと思って組んでたらあまりに気持ちよくて全部組んじまったんだよ。ライターとして取り返しのつかない途中写真撮影し忘れ問題。時を止めるスタープラチナ、ザ・ワールドもどうしようもない(あいつら器用なんでもう一回きれいにバラバラにできるかもしれないけど。俺には無理)……

▲タミヤ 1/72スケール ウォーバードコレクション メッサーシュミット Bf109 G-6。2019年4月に発売された現代フォーマットのG-6だ

 ジョジョネタはこれぐらいにして、タミヤが発売している1/72スケールの飛行機模型「ウォーバードコレクション」。このシリーズはイタリアの模型メーカーのイタレリ製のキットの物と、タミヤ製のキットの物で構成され、イタレリ製の物にはイタレリですよと箱に書いてあります。今回ご紹介するのはタミヤ製でシリーズの中でも新キットになる「メッサーシュミット Bf109 G-6」であります。ドイツ軍、いや人類が生み出してきた戦闘機の中でも超傑作機のひとつで、飛行機模型を知っていくと一度は作ってみたくなるモチーフです。

▲機首側面の「ボイレ」と呼ばれるふくらみに「瞳」が! 実際にあったものがこんなおしゃれなマーキングしてるんです。センスの良い模型を触ったり、知ったりすると、そりゃその人のセンスがあがるってもんです
▲Bf109は様々なタイプが存在します。その中のBf109 G-6というのはシリーズ最多の13000機以上が量産された代表的なものです。ていねいに解説された冊子も付きますので、かっこいい!と思ったら買っちゃってしまって大丈夫ですよ! 

 ちょっと今回は僕が飛行機模型を作る時に、説明書の何を作る前にチェックしているのかというのをご紹介します(途中写真わすれちゃって~)。特にこのキットは非常に優秀な構成で(特に主脚が最高)、道に迷わず形になります。そうやって自然と経験値を積んでいけるキットがタミヤには多いですよね。

▲コクピットの取り付け方! 飛行機模型は本体でコクピットを挟み込むか、それともBf109 G-6のように本体の下から入れられるのかを僕は良く見ます。前者であればコクピットをまず塗って。後者であれば、本体を組んでみたりしてある程度形にしてみたりします
▲水平尾翼はその名の通り水平にしたいですよね…。このキットのすごいのは、水平尾翼の両翼が1パーツになっていて、それを垂直尾翼で抑え込むようにして取り付けることで、ガタつかずに水平尾翼の水平を出せるところです
▲そしてよくチェックするのは合わせ目です。消すものなのか?ディテールなのか? これまでの説明書は「読み取れ! 感じろ!」というニュータイプの稲妻みたいなのが多かったのですが、最近は実機ではこうですよと優しい一文が入っていたりします。ありがたや
▲絶対にチェックするのはパーツ番号や塗料番号とは違う「数字」が出現した時。その多くはパーツの取り付け順です。これを見忘れてけっこう痛い目を見たりしたので、しっかりチェックするようにしています
▲このキットの一番素晴らしい点は、主脚の位置が誰でもバシッと決められることです。飛行機の脚って接着が難しいものが多いです。上にかぶせるパーツで隠れる部分に取付用の軸が設けられ、これでがっちりと固定されます。最高です
▲キャノピーは開閉選択式。コクピットも1/72スケールとは思えないほど精密です。パーツ精度がばちピタなので、接着しなくてもパーツがきれいに乗るので、気分で差し替えて良いと思います

  おそらくこのキットは、最も作りやすくそして美しい1/72スケールのBf-109 G-6であると思います。スタイル、パーツ精度も言うことなし。そして説明書もすごく丁寧に作られています。丁寧すぎて読むところが多いくらいです。じっくり読んでみると、あなただけの製作イメージが沸いてくると思います。あなたの描いたイメージがうまくいって形になった時、絶対にその行為は楽しい!と思えるはずです。タミヤの1/72 メッサーシュミット Bf109 G-6。今週のあなたの模型スケジュールに入れてみてはいかがでしょうか?

■タミヤ 1/72スケール ウォーバードコレクションNo.90 メッサ―シュミット Bf109 G-6

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

究極のソーシャルディスタンスプラモ・テントセット

▲外の空気はうまいもんだ

 ここはアフリカ。とにかく広い。俺にあるのはこの無線機と木の箱とジェリカン。そして最高の夜を約束するテントだけだ。

▲アフリカだ。贅沢は言っちゃあならねぇ。無線機があるだけ俺は幸せだ

 どこに敵が潜んでるかも分からない。そして仲間もいつ来てくれるんだろう。世界との距離感を感じる。その距離を少しでも埋めたくて今日も俺は無線機にしがみつく。

▲故郷のパブのあの子は元気かな? この無線機であの子と繋がれたらな。そんな妄想がアフリカの楽しみ。でも今は我慢。きっと明るい明日が待っている
▲テントのメンテナンスは必要だ。壊れたらそれこそ命がやばい
▲入り口を開けておくと涼しい風が入る。日中は開けておきたい。開けるためには加工が必要なんだ。カッターで印部分を切る
▲くるくるとテントの入り口を巻き上げたパーツをカットした部分に貼り合わせるんだ。そうすると風通しの良いテントになるんだぜ
▲もちろん内側には支柱をつけないとな。テントが支えられない
▲大詰めだ。あとはパーツを合わせていくだけ。これで野営ができるってもんだぜ
▲完成だ。まぁいろいろ大変だけど、これで俺のアフリカンライフは大分快適になるってもんさ
▲ジェリカンは椅子にもなる。早くふかふかの椅子で一杯飲みたいが、もう少しの辛抱さ
▲明日? いいね! さっさと砂嵐のない国でパーっと飲みたいぜ!! あそこのビールは最高だからな!! ガハハハ

 俺の他には誰もいない。無線機から来る声が俺の安らぎであり、自身の声を届けることも俺の安らぎになる。仲間と笑って会えるのはいつの日か? たくさん話したいことがいっぱいある。テントの組み立て方とか、ジェリカンに座り続けてお尻がカチカチとか。そんなたわいもない話をはやくしたいなと思いながら、アフリカの星を見て夜を過ごすのさ(そういやそんなあだ名のエースパイロットがいるみたいだな~)。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

戦車模型界イチのスター!? みんなジープって聞いたことありますよね?

 戦車模型には、戦車以外の軍用車両も数多くラインナップされています。「ジープ」というもはや軍用・民生用を問わず同種の四輪駆動車を指すものとして広く使われているこの言葉の源流となった小型万能車、アメリカ軍のMB/GPWも多数のメーカーからキット化されています。主役にもなれるし、周囲の引き立て役にもなれる戦車模型界No.1のユーティリティプレイヤーとして君臨しています。

 もっとも手に入れやすく、何より作りやすいのが「タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ(以下MMシリーズ)No.219 U.S.ジープ・ウイリスMB」です。超ド定番の模型として広く販売されています。でも実際に中身を見たことはありますでしょうか?

▲1945年8月までにフォード、ウィリス社であわせて64万台が生産され、第二次世界大戦における連合軍の勝利の立役者ともいえるほど連合軍の足として活躍しました
▲戦争映画でも必ずと言ってよいほど登場しますし、現在でも多くの愛好家によりレストアされ楽しまれている歴史的名車です。なんか見たことあるぞ~ってなる方多いんじゃないでしょうか?
▲公認!!! スケールモデルのキットには様々なメーカーのライセンスマークを見ることができるので、探してみてね
▲タミヤMMシリーズの商品の面白さを底上げするのが、説明書の解説文です。わかりやすいものからドラマ性に富んだものまで。自分が買ったプラモに、より愛着を持つことができます
▲こんなにコンパクト!お昼から組んだら夕飯前には組み上がって、プラモ見ながら晩酌もできちゃいます
▲本体。こんな手のひらサイズの本体に様々なパーツを取り付けていきます。小さい中に様々な要素が盛り込まれるので凝縮感が半端ないです
▲記事序盤から主張の激しいドライバーアニキのパーツ。なんともアメリカ兵!って感じるポーズが魅力的です
▲ひねりのある胴体、車体に肘をかけている腕など小パーツで絶妙に再現されています。腕部の下面は、ハンドルや車体に添えられるような形状になっています
▲表情もにこやかなのが良いですよね。戦場の緊張感を感じない雰囲気があって僕はこのミニチュアがMMシリーズの中でも大好きです
▲ジープの足周りを担うドライブシャフトやリーフスプリングは、細かいパーツ分割をせずに、組みやすさを優先。足周りがすぐ完成して次に行けるのはうれしい限りです
▲エンジンも再現できるキットなんですが、そのパーツ数は4!!
▲ドイツ軍が仕掛けたピアノ線の罠を切断するためのワイヤーカッターや、牽引するための装備品・トウバーを装着したタイプ、前線部隊の強行偵察などの任務に就いたM1919A4軽機関銃を装備した仕様なども選択して製作できます
▲基本的な構成はボディ、シャシー、内装(椅子など)の3要素
▲タイヤは前輪・後輪共に2パーツ構成。貼り合わせるだけ~
▲3要素をくっつけて、ボンネットやウィンドウフレーム、装備品をつけるればジープの完成! 手のひらサイズに凝縮された要素とディテールが目に楽しいプラモです
▲軍用車両ってリアにそれらしい装備がついてるのがかっこいいですよね! ジェリカンとスペアタイヤは鉄板。後も絵になりますね~
▲ボンネットを開けると中も御覧の通り。エンジンの他の要素も含めると内部は全部で6パーツ。少ないパーツ数でも密度感を演出しています。ボンネットが開くだけで整備しているシーンなども作れたりできるので、製作の幅が広がります

 戦車模型というとどうしても戦車に目が行くと思います。でも、実は僕たちがよく目にしたり、何となく見たことあるようなミリタリーな物ってこのジープに代表されるような軍用車両に詰まっているのかもしれません。

 一度作ったことがある人も何度でも楽しめる内容ですし、初めて作る人ならきっと戦車模型・ミリタリーミニチュアの面白さを体感できると思います。机の上のインテリアにもお勧めですよ。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

デフォルメとパロディ。鳥山明とプラモ。

▲ファインモールド 1/12? ワールドファイターコレクション ドイツ陸軍歩兵・マイヤー

 オタクとは何か。それは2次元と3次元にボーダーを持たない人種。そしてプラモデルは時として、2次元と3次元が絡み合って誕生する奇妙な存在だ。相性が悪いわけがない。「何言ってんだお前」と思ったそこのあなた!まずはコイツを見てくれ。

 THE・こだわりの国産メーカー、ファインモールド社が鳥山明氏とタッグを組んで発売したそこそこ古いプラモデルです。かっくいー! スケール表記を「1/12?」としているのは、装備がしっかり考証された1/12スケールなのに対し、人間は鳥山先生のデフォルメキャラクターとしてノンスケールで造形されているから。キャラクターモデルとスケールモデルが完全に融合しているなんともユニークな模型なんですね。んちゃ!(雑)

▲説明書にも鳥山先生の爽やかイラストが。いいね。
▲箱の側面には実際の装備の写真を載せてあり、塗装の参考にもなる。

 こうしたイラストを元に製作されたプラモデルの成り立ちについて考えてみるとなかなか面白い。デフォルメキャラのイラスト(平面)を元に原型(立体)を作成する。またそれを金型に落とし込み、樹脂を流し込み、ランナーについたパーツとして「半立体・半平面的な存在」として販売。購入者はそれを再構築すれば「立体」として手元に置くことが出来るのだ。なんとまぁ、プラスチックな存在なんでしょうね。

 さっそく組み立てよう。スナップフィットのキットではなく、接着箇所もけっこう雰囲気。こういう時は流し込み接着剤でなく白いタミヤセメントを使ってアバウトに対抗する。「うーん、ここらへんかな……?まぁいいか。ヨシ!」と、現場猫の精神でやっつけていきましょう。スキマが出来てもパーティングライン(プラモを成形するときにできる金型と金型の合わせ目のライン。たまにちょっとズレたりしているものもあるよ)が残っても多少は気にしない方が吉。ほんとに気になるところだけは削ったりパテ埋めで処理しよう。

▲本人も大変そう
▲合わせ目とPL(「パーティングライン」をこう略すとカッコいい)にこそプラモデル性が宿るのだ……。

 などと訳の分からない呪文をつぶやけば大体は解決する。なんたるポエット!プラモの作り方、楽しみ方は人の個性がよく出るところ。

▲素組終了。とっても雰囲気が良い。服のシワや装備の量感が見事に彫刻されている。モールドがファイン。まさしく「ファインモールド」だ。

 気分がアガってきたところで次のステップに移行だ。私はどちらかというとプラモ塗りたい派なので、説明書を見ながら塗装してみることにしよう。

▲う〜ん、丁寧すぎる。『新宝島』かな?

 調色や塗り分けが結構大変そうね…私でも手に負えるかしら?少し冷静になってしまった。今の私は、プーアルがシェンロンに向かって「ギャルのパ……(いや、ちょっとまてよ……そんなこと頼むより……)スレンダーでしれっとした目つきで何だかこの世界の秘密を知っているけど教えられない風な陰のある雰囲気を持ち合わせていて『フフッ……先輩ってホントにただの豚……私がいないと何も出来ないんですね……』とか結構キツイことを言う割に何だかんだ俺のことが好きな2個下の後輩キャラをおくれーーーー!!!」とか言ってしまうぐらい冷静だ(冷静か?)。シェンロン「わかる……」。

 正直に言うと私はただの2次元オタのプラモ衝動買いおじさん(ほとんどビョーキ)なのでAFVや軍隊等に関してはあまり知識を持ち合わせていないし、特にドイツ軍の装備にもこだわりは無い。方向転換か?素組で飾っても味わい深いしな……。

 しかし、オタクには得意技がある。それが”パロディ”だ。冒頭で申し上げた通り、オタクとは2次元と3次元にボーダーを持たない人種。つまり、アニメ、ゲーム、マンガ、模型、フィギュア、写真、音楽、車などなど様々な趣向の中で、好きなものをミックスしたり、複数のジャンルをクロスオーヴァーさせることが得意な人達なのである。同人誌文化がこの最たる例で、まさにパロディの一大ムーブメントとも言える。そしてオタク君はすぐ「これ、〇〇みたいっすね。デュフフ☆」と言って自分の脳内で勝手にリンケージしてしまう。それはクソリプだからやめろ! だが、その脳内リンクをパロディに昇華して楽しむことが出来るのはオタク君のいいところ。私にいい考えがある。

▲グレーと黒の缶サフ(サーフェイサー。下地塗料のことだ)を吹く。

 グレーの本体はシタデルコントラストという水性塗料をバァーッと筆塗り。一回ベタ塗りするだけでこれです。勝手に陰影が出来るスグレモノ。メットはサーフェイサーのまま。ポーズがまさに「今日、一杯やってく?」的な。

 メットと肩に赤でリボンを描く。ファレホ(発色がよく、とっても使いやすい水性塗料!)の筆塗り。こういうマークは少し小さめに書き始めて、修正しながらサイズ感を見て大きくしていくのがコツ。かわいい。

 サンコーマーク工業から販売されているナンバーデカールを用意。さまざまなサイズが1枚に揃っており便利すぎる。デカールの説明書が何故かペンギンでこれまたかわいい。

▲デカール、貼る。鳥山明、軍隊といえば……。
▲そう、ドラゴンボールでお馴染みのレッドリボン軍ですね!マークがビシッと入るだけで全然カッコいいなおい!

 安易なパロディなら考証もいらないでしょう。純粋なホンモノではないにしても自分のアイデア、エッセンスを加えたそれは非常に愛しい存在となり得る。史実や原作に忠実に作るのもいいけど、それを完全に無視するのも創作活動の醍醐味のひとつであると私は思うのだ。

 オタク同士諸君、オタクなら軽率にパロディしようじゃないか。そして、自分はオタクじゃないと思ってるあなた。プラモデルでパロディ、してみませんか?

▲「こちら側へようこそ…」

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

オトナSFな黄色い箱、「Mk.44 Ausf.H ホワイトナイト」を組んでハードにビビる!!

 昔、美容室の店員にこう質問されたことがあります。「へえ、プラモやるんですね!ロボット系って事は、ガンプラですか?」と。

 で、私は「そうです」と応えてしまった。実際その時好きだったのは『マシーネンクリーガー』だったのですが。

▲箱のデザインが渋いんじゃ。

 だってだって、「Ma.K.」なんて言っても絶対伝わらないでしょう店員さん。記事を読んでいるあなたもプラモがお好きだろうか。この黄色い箱を手に取って、レジまで運んだことはあるだろうか。おそらく少数だろう。ということで、今回はこの『ホワイトナイト』を組んでみたので、紹介していきます!それからマシーネンクリーガーとは、ドイツ語で機械化された兵士って意味らしいですよ。(ほへぇ~) 

※編注/このホワイトナイトというメカはマシーネンクリーガーを生んだ横山 宏氏の作品集『ロボットバトルV』が原典となっているパワードスーツで厳密にはMa.K.そのものとは区別されますがハセガワからはこちらも「マシーネンクリーガーシリーズ」と銘打って発売されており、今回はそうした事情を理解した上であまり肩肘張らずに横山デザインを組んでびっくりしよう!という趣旨の記事としてお届けいたします(早口)

 組んでみました。プラスチックのホワイトが美しいです。クリアーパーツには、タミヤアクリル(水で薄めたり筆を洗ったりできるアクリル系のプラモ用塗料)のクリヤーブルーを塗装してあります。全体的に丸みを帯びたフォルムですが、このキットの魅力は凝縮されたディティールにあると思います。

 このキットは説明書の順番通りに組むと、まず最初に脚から組み始めることになります。キャラクターモデル好きの皆様は、この時点で「ん?少し何かがおかしいぞ」と気付くと思います。……この解像度は一体なに? メカメカしいパーツが集合してランディングギアを形成しています。組み立てには接着剤が必要なので、パーツ同士がどうくっつくのか予想しにくいところがあります。しかし、これがまた面白いところなのです。「このパーツは何? 俺は今何を作っているの?」と思いながら説明書通りに貼っていけば、答えに辿り着く筈です。フォルムから感じ取れるカッコ良さと、ちゃんとカタチになる納得感、二つの快感が同時に押し寄せます。 

▲皆さんに一番お伝えしたいポイントはここ。これは上半身の前面です。つるんとしていてシンプルですよね。この裏側はコクピットとなるワケですが、 
▲裏から見るとこうなってます。は?バケモンか?

 いやいやいやいや、なんですかこの密度。このあたりですかね、私が何を作っているのか分からなくて、全容が見えた頃にはテンションがブチ上ったのは。奥に見えるのがモニターで、その周りには謎の配線。手前の2つの大きな丸は、手を突っ込むための穴です。戦闘装甲服ですからね。模型を作っていたはずなのに、油断すると一気にオトナのSFの世界へ引き込まれます。本当にひと味違います、Ma.K. 最高! 

▲更に嬉しい情報があります。なんと先ほど見えていたモニター部分が、前面の装甲と一緒に持ち上がるのです。
▲つまり、「ハッチオープン!」なんです。

 こういう遊び心が各所に隠されており、本当に楽しく作る事が出来ます。渋カッコイイ男性のパイロットフィギュアが付属しているのも嬉しい。 

 ほかにも謎の動力や燃料タンクらしきもの、見えなくなってしまうのにとんでもなくカッコいいコクピットのシートの後ろなど、演出的内部構造が盛り沢山です。手に入れる機会があれば、是非あなたもこの感動を味わっていただきたいです。

 また、こちらの商品にはMa.K.恒例のお洒落なマーキングシールと塗装ガイドが付属しています。今回はほぼ塗装せずにお送りしてきたマシーネンクリーガーの紹介記事でしたが、お楽しみいただけたでしょうか。これを機に、この黄色い箱のプラモデルにも興味を持っていただけたら嬉しい限りでございます。美容室の兄ちゃんも、このブログを見てくれ!! ではまた!

■ハセガワ 1/20 ロボットバトルV 月面用重装甲戦闘服 MK44H型 ホワイトナイト 4200円(+消費税)

ミハイル

福島県出身 1990年生まれ 模型を楽しんでいます マスキングが苦手 下のリンクの『火星深青』でブログを執筆していますので、模型に興味がある方は是非見に来てください。

心揺さぶるプラモで冒険 ランドローバー シリーズIII

▲ドイツレベル ランドローバー シリーズIII

 やっぱりこのプラモは僕の冒険心に火をつけてくれた。ドイツレベルのランドローバー シリーズIII。屈強なデザインと足周りを見るだけでドキドキしてくる。こんな車に乗って仲間と旅に出たらどんなに楽しいだろうか? ニッパーでパーツを切るたびに心が躍る。模型が目の前にあるのに僕の頭の中は旅の準備でいっぱいだ。

▲英国を代表する、アウトドア・ライフスタイルブランド・Barbour(バブアー)。ライナーをタータンチェックで引き締める、英国らしさを感じる一着。
王室認定ブランドで、英国のアウトドア・ライフスタイルを体現するブランドです

 シリーズIIIで旅をする。きっと荒野や気候の厳しいところに行っちゃうんじゃないか。そんなとき「バブアー」があれば安心かな。同じ英国できっと相性も良いはず。肌寒さや急な雨も君に任せるよ。

▲一度は耳にしたことがあるかもしれないデニムの代名詞・リーバイス501XX。デニムの丈夫さには身を委ねたくなります。定番の501はずっと一緒にいたいデニムです

 長旅になるかもしれない。でもパンツは1本で済ませたい。そんな時はやはりリーバイス501XXだ。XXの名は伊達じゃない。丈夫さと自分の体になじんだ着心地で旅をサポートしてくれるに違いない。旅で擦れた姿はきっと旅した後の自分のように良い顔になってるよね。

▲日本では90年代のブームによりレッド・ウィングの代名詞となったアイリッシュセッター。ワークブーツの定番はどんな時でも強い味方。修理もできるので人生を共にできる靴です

 靴は旅にとって重要な要素。どんな場所に行くかわからない。できれば疲れたくもないしね。ワークブーツの代名詞「レッド・ウィング」。屈強でカッコイイ。狩りだってできる。そしてもう一度言うけどカッコイイ。強くてカッコいなんてずるいよね。ラフアウトレザーは中に水がなかなか入ってこないから、防水スプレーで皮を守っておけば旅はもう安心。僕の足元をサポートしてくれる。

▲抜群の履き心地。特にMade in U.S.A.とUKのモデルはどれも素晴らしいです。米国製、英国製のニューバランス、一度履いてみて欲しいです

 やっぱりスニーカーもないとね。旅で街に出たら軽快に遊びたい。飲み屋をはしごしたい(飲酒運転はだめよ)。ニューバランスのスニーカーは疲れとは無縁なんだ。M993。こいつとも早く旅をしたいな(最近買った)。

▲作った模型を見ながら旅の思い出を振り返る。次に同じところに行ったら景色は変わって見えるのかな?

 模型は作ると心を動かしてくれたり、さらにもっと知りたいと行動にまで移してくれる本当に素敵なものだと思っています。旅だけじゃなく、同じものが好きな人で仲間ができたり、子供がニコニコして寄って来たり。人の心を動かしてくれるものです。同じ模型でも作った時の感情は十人十色。作っている時に何を考えたのか? そんな話をするのも楽しいですよね。ドイツレベルのランドローバー シリーズIIIは僕の冒険心を焚きつけてくれました。あなたがこのプラモを作ったら……ぜひお聞かせください。

▲説明書の雰囲気も海外キットは異なります。手に取った時、同じ趣味でも国によって違う雰囲気を楽しむのも海外キットならではです
▲説明書のすごいところは、イラストのパーツが指定の色で塗られてるんですね。こんな感じの色で塗ればいいのねと直感でわかります。嬉しい!
▲まあまあボリュームありますね。組むだけなら1日でOKです
▲椅子は仕様によって選択するのでいろんな椅子が入ってます
▲エンジンも作れますよ。細かいパーツじゃなくて何となくの雰囲気な感じがすごく好印象。サクッと組めます
▲ボディは完成しています。箱の中には袋にも入ってない状態でごろんと入ってます
▲組み立てるとこんな感じ。満々満足ですよ
▲ボンネットは接着じゃなくてはめ込み式なので、いつでも開閉自由。エンジン作ったのに見えなくなっちゃったよ~も無く、むしろ友達に「エンジンカッコイイでしょ」と自慢できる構成の模型です
▲ボディは接着してなくてピシッとはまるので、僕なんかのずぼらモデラーだったら組んでこの状態から塗装します。形も楽しんでその後じっくり塗装も楽しめる車模型っていいですよね~

 一日も早く本当の旅ができる日が来ることを願っています。

■ドイツレベル 1/24スケール ランドローバー シリーズIII 本体価格4800円(税抜き)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

「400円の砂漠」で、プラモに乾いた風が吹く。

 砂漠いいですよね。砂漠。行ったことないですけど。戦車とか飛行機とかラリーカーとかドムトローペンとか、プラモになっているものが似合いがちな砂漠。しかし、戦車とか飛行機とかラリーカーとかドムトローペンだけ作っても、前提となる知識がない人から見れば「おお、ここは砂漠だ!」ということが伝わりづらい。そういう人のために、「ここは砂漠なんですよ」ということを見ればわかるようにしてくれるプラモが発売されました。BANDAI SPIRITSの「カスタマイズシーンベース(砂漠Ver.)」です

▲ランナー(プラモの枠)1枚に、こんな感じでパーツが収まっています。

 お値段税込み440円。「ただの黄土色のプラスチックじゃないか」と侮るなかれ。このプラモには風紋(砂漠のうねうねした表面)が刻み込まれた六角形の台座のほかに、モケイのシーンをぐっと盛り上げてくれるオマケだって付いているのです。

▲4つのオマケ。硬軟取り混ぜて乾いた土地(静岡?)からやってきた。

 手前のふたつは岩。大小の岩が用意されていて、これを置くと「平らな砂の地面」にいきなり変化が付きます。岩は不動(=静)の要素ですが、説明書にはお好みで配置して良い、と書いてあります。

 そして奥のふたつは風。砂塵を巻き上げて移動するさま(=動)はプラモとしては珍しい。プラモというスタティックな遊びなのに、不定形の「風」を具象化したパーツがここにあるわけです。人のポーズやたなびくターバンを表現して「風」を感じさせるようなモケイを作るのもいいのですが、置くだけで「はい、ここ砂漠です!砂漠ですよ〜!」と主張できるのは便利です。

 六角形のベースには4つの穴が開いており、これは別売りの支柱(ロボットプラモを宙に浮いた状態で飾るための棒ですね)を刺す穴。そして穴を隠すためのフタとなるパーツもちゃんと付いていて、正しい位置にハメればピタッと表面がツライチになり、穴が見えなくなるという寸法です。

 砂塵を巻き上げながら走るシュビムワーゲン。ドライバーは先日なにかを撮影するときに拝借したのでいません。無人のクルマが砂漠を疾駆しています。サイドブレーキをかけ忘れたのでしょうか。後輪が巻き上げる砂煙がそのスピード感を演出してくれます。

 助けてくれ、ここはどこなんだ。旅人はつむじ風に巻き上げられる砂に行く手を阻まれ、乾いた喉を癒やしたいがあまりに叫ぶのです。「あれは水だ!湖だ!」と。……残念、それは蜃気楼です。

 人間(彼は惑星ベジータの王子ですが……)をデカくすると様相が変化します。ククク……。激しい空中戦から離脱し、相手よりも先に着地。構えを取り直して牽制する足もとから上る砂塵! 単にベジータをテーブルの上に置くだけでは伝わらない、動きや時間を感じさせるディスプレイがここに爆誕するのです。たぶん、BANDAI SPIRITSが本来想定しているのはこういう使い方だと思います。

 ▲突然の焼き栗!!(霜降り明星の粗品の声で読みましょう)

 不思議なのは、砂だとか風だとかの要素と同じくらい、温度が伝わってくるということ。こんな暑いところで焼き芋とか焼き栗が食えるかい! と思わずツッコミたくはなりませんか。

 このようにして、手のひらサイズの砂漠(そして岩と風)を買うことで、手持ちのプラモがいきいきとその活躍場所に収まったり、人の苦しみや強さを表現したり、周りに湿度や気温をまとわせることができる、というのはなかなかに面白い現象だと言えるでしょう。

 当然これはプラモですから、この岩や風をもっとリアルに塗ったり、砂漠の表面にザラリとしたテクスチャを付けることもできます。できますが、まずはお手持ちのあれやこれやをとっかえひっかえ置いてみて、岩の配置や風の配置をああだこうだと試行錯誤してみると、これがヴィネット(ダイオラマを極小の要素に切り詰めた表現手法)のことはじめになっているという恐ろしいアイテムなのです。

 なんと今月末にはプラスチックの色が白になった「カスタマイズシーンベース(雪原Ver.)」も発売されます。当然そちらは寒く厳しい世界を表現するのにもってこいの製品となるでしょう。青く塗れば海原に、そして赤く塗れば……。あとは想像力にお任せいたします。

 みなさんは、このプラモを使ってどんなことを表現するのでしょうか。こんなん出来たで、という写真があれば、ぜひともSNSでシェアしてみて下さい。

 ぜひ。

■BANDAI SPIRITS カスタマイズシーンベース(砂漠Ver.) 440円(税10%込)

■BANDAI SPIRITS カスタマイズシーンベース(雪原Ver.) 440円(税10%込)

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

「デカールに漂う異国」を追う ズベズダ 1/43 UAZ 3909 消防車

 いつだったか、上野はアメ横にある中田商店でロシア軍の軍服がやたら品揃えが良い時期があった。ものすごい不思議だったので、いろいろと調べていたら「ロシア軍のトップが変わったから」とまことしやかな話をするものを見つけたが、真相は果たして……。

 ロシアのことはほとんど知らない。私はデザインの専門学校を出ているので、ロシアといえばロシアンアバンギャルドだと思う程度。あの、強烈な個性から察する他とは違う事情。全く読めないロシア語。怖さと魅力が交差する。しかも、火のような危険さではなくドライアイスのような、ヤバさ。

 ZVEZDA(※編注/ズベズダと読む。ロシアを代表するプラモメーカー)のプラモはそういう意味ではいつかは触りたいものだった。かの国の人たちはどういう原理原則を持って物を作るのだろうか、そして、それは私にとって良いものか悪いものか。いつかは、いつかは……と思いながらラインナップを眺めていたら出てきたのがこのUAZ 3909 消防車。

 この1/43のカーモデルは単純にかわいい。サイレンをつけようかどうか悩んだけど、そのユニット丸ごとがクリアパーツだったりして試しにつけてみたら無くてもよかったので無しにした。色を塗ったり綺麗に仕上げる場合はもちろん、あったほうがいいだろう。キット自体は本当にちんまりとしてて、よくできている。特筆すべきはミラーの細さだろう。このおかげで急に小ささに精密さが加わるといっても良い。我が家に足りないのはこういったかわいらしいバンだったのだとつくづく思った。それでいて組み立てに不自由する場面はない。箱組みさせられるボディはぴったりで気持ちがいいし、強度もよく考えられている。

 あまりにも可愛いのでしばらくはデカールを貼らずに放置していたが、やはり不思議な魅力を放つロシア語。貼らずにはいられない、というかここまで日常的に意味を持つであろうロシア語のデカールを貼る機会はもうないと思ったりもしたのだ。

 貼ることで生まれたのは、ひとことで言えば”異国”。

 とてつもない個性を急に獲得したそれは、「ZVEZDAの模型を作ってよかった」と思える個性だった。

 ロシア語のおかげか、マトリョーシカと並ぶと、とても良い。マトリョーシカと相性の良い模型は、なかなかないだろう。英語のようにパッと調べればわかるものでもなく、フランス語のようになんとなく優雅なものでもない、謎のロシア語。謎なんて言っちゃ失礼といえば失礼なんだけど、でも、謎。あの頃、中田商店に突然現れたロシア軍の服のように。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

ハチドリのような存在感。eduard 1/144 MiG-21 BIS

 1/144の名だたるキットたちがある中で、とりあえずコレを楽しんでみるかと思ったのはやはり「勢い」と「神秘」。プラモに少し興味を持つと「エデュアルド」という名前をとてもよく聞くことになるのですが、それでいてチェコのメーカーだっていうのだから、気になる。プラモって本当にいろんな国で作られていて、作るたびにその国の考え方みたいなものに触れられるのがとても楽しい。

 というわけで、エデュアルドのMiG-21。チェコを簡単に「東欧」と一括りにしてはいけない気もしますが、革靴の世界だと、東欧の靴は固有の魅力があります。細かな装飾、独特なシェイプ、よその国では誰も思いつかないような、少しだけ濃いアイデアやバランス。このMiG-21はまさにそれ。

 写真のとおり、見た目は小さいのにとてもシャープ。翼なんかピシーッと薄いので本当にしびれます。指でつまむと裏側の指の感覚が伝わりそう。細いパーツ、小さいパーツが要所要所で出てきますが、だからこそ感じるメーカーの底力。裏を返すと、もう見えないくらい小さいのに感じられる足回りの緻密さ。ランナーにくっついた状態のときから、小さいときにテレビチャンピオンの「手先が器用選手権」で見たサイコロのピラミッドのような、「ひゃー」ってなるパーツたち。で、それを作らせる。誰に? 私に。私って……? 模型を作り始めてまだ2年くらいの私です。それで、うまくいくというから恐ろしい。

 模型を作ってて「あ、コレは俺でも作れるな」って思える瞬間というのは結構あって、その中でもかなり大きいのが位置を決めてくれること。どこにつけたら良いのか、どの角度でつけたら良いのかを無言で教えてくれると本当に嬉しい。

 そしてこのMiG21の足回りはそんな嬉しさの塊。主翼下部の脚は1ミリに満たないちょっとした突起が、パシッとハマる。このおかげで全くと言って良いほどブレない。カバーは「折り曲げる」って指示があるのだけれども、薄い切れ目が入っているのでたやすく曲がる。脚を支えるパイプは両端共に完璧な角度でカットされていて、パズルのラストワンピースを納めるように気持ちよくハマる。写真で完全に見せられないのが惜しいところですが、見えないくらい目立たないガイドを作っているという点がこれまたすごい。

 この気持ち良さが縦横1cmにも満たない世界でパシパシパシっと発生するわけで、本当によくできたミニチュアを楽しく作れる!というのがこのキットの醍醐味なんです。

 しかも、実はこれ、2つ入っているんですよね。Dualってことで。

 2つあるっていうことは1つはこうして組むだけ。もう一つは塗って仕上げるなんていう楽しみ方もできます(なんとマスキングシートがついている)し、2つとも同じように仕上げることもできます。さらにいえば普段やらないようなこともできるのもポイントですね。

 私はこの小ささの中にぎゅーっと詰まった緻密さにやられてしまって、それをフルに楽しもうと、キャノピーオープン状態で仕上げました。もちろん細かな作業ですが、これだってバシッと決まる。

 飛行機は鳥だな、といつも思うのですが今、手元にちょこんと置いてあるだけでもまるでハチドリのような存在感が発生しているし、ピトー管やノーズコーンの切っ先のピリピリとした緊張感が伝わってくるのは、このキットの緻密さとそれを作った私の記憶がリンクしているから。

 作った人にしか味わえないにしても独特すぎるこの感じ、最高です。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

「みんなが知ってるあのクルマ」のプラモ、OPEN THE BOX!!

 カーモデルのボディです。だけど、なんだか車種を思い出せそうで思い出せない、この形状。ツヤをたたえた黒いボディは、塗らなくてもイイ感じに仕上がりそうなオーラを放っています。キレイに均一にツヤのある黒を塗装するのは、あんがい難しい。これが白やグレーだったら組んだだけでは実物の雰囲気は出なかったと思うので、メーカーに感謝ですね。

 内装は茶色、シートは黒と茶色の2色になっていて、リアコンビネーションランプはクリアーレッドで成形されていて、ウインカーやバックライトをはめ込む穴が開いています。メッキパーツやデカールも賑やかで、なんだかいますぐにでも組みたくなってくる佇まい。車高は高低2種類から選んで組み立てることができるようです。

 デカールを見ればもうおわかりですね。’17年のデビュー当時は「おお」と珍しく思ったものですが、いまでは都内のタクシーのなかでも大きな存在感を放つようになった、JPN TAXIのプラモです。今回はチェッカーキャブ仕様の特別版。ハロウィンのラッピング用デカールもおまけでくっついたキットです。タクシーならではのいろいろな表示やステッカーがたくさん用意されていて、眺めているだけでも楽しい!

 カーモデルの鬼門でもある窓のフチの黒塗装も、カット済みのマスキングシールが入っているので初めての人も怖がらずにチャレンジできます。半ツヤの黒のスプレーさえあれば、「おお、JPNタクシーだ!」という仕上がりになりますね。デカールを貼るのはちょっとスキルを必要としますが、いくつかのキットで練習すればコツが掴めるはずです。肝心なのは、諦めないこと。失敗を恐れないこと。ひとつふたつミスをしても、それを外から指摘されることはないと信じましょう。だってこれはあなたのプラモなのですから。

 タクシーのプラモを象徴する「行灯」のパーツはクリアーで用意されています。これを前後貼り合わせ、屋根に乗せる興奮!JPNタクシーは自家用車としても購入できるクルマなのですが、これがくっつくと誰がどう見てもタクシーになりますね。自分だったらどんなタクシーを運転するか考えて、オリジナルな仕様にするのもワクワクします(筆者は黄色く塗ってクレイジーな感じにするのも楽しそうだな、と思うSEGAっ子です)。

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 こんなにナイスなタクシーのプラモがあると、ドライバーや大荷物の乗客なんかも欲しくなってきます。あなたはこのタクシーを使って、どんな景色を作りますか? すごく組みやすそうな印象で溢れた、誰でも知っている車種のプラモが店頭に並んでいるのはGOODの一言。みなさんも、ぜひ。

■アオシマ 1/24 トヨタ NTP10 JPNタクシー ’17 チェッカーキャブ仕様 3,800円(税別)

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

タミヤの「新・グレイハウンド」は戦車模型界の幕の内弁当じゃ!!

▲タミヤの1/35MMシリーズのM8グレイハウンドに、アメリカ戦車兵セット(ヨーロッパ戦線)、1/35 連合軍車輌アクセサリーセットからピックアップしたパーツ、新規の10 in 1 レーションカートン(WWII)をセット

 幕の内弁当のような戦車模型が発売されました。戦車模型のおもしろ要素が、箱を開けた瞬間に飛び込んで来る。それがこちら、タミヤの「アメリカ軽装甲車 M8グレイハウンド 前線偵察セット」です。

▲箱の横にはイラスト付きでアクセサリーの解説がびっしり。模型店でついつい読んじゃうんですよね~。そしてワクワクしてレジへGO!!

▲この景色があなたの目の前に誕生します。車両、人、アクセサリー……あなたの視界に収められている範囲が戦場へと変わります

戦車模型には、このキットが語ってくれているように「車両」、「人」、「アクセサリー」と様々な要素を絡めて模型製作を楽しむことができる豊かな世界があります。そのため数多くのキットやアフターパーツが世界中にあふれています。
とはいえ、個々を揃えてくるのは大変です。このようにワンパッケージでそろっていることで、“タミヤからのひとつの正解の形”を教えてもらうことができ、その経験は次の製作に活かすことができます。
作り方が簡単なだけが模型の入り口ではなく、その模型ジャンルの楽しさを味わえるこのセットのようなものこそ模型の楽しさや知見、もう1個模型を買ってみようかな? という入り口となるものではないかと作って体感しました。どんなキットか見ていきましょう。

▲説明書もこのようにM8グレイハウンドの物と、今回の前線偵察セットでの追加要素をまとめた2種が入ります

■M8グレイハウンド

▲まずは幕の内弁当の白飯・M8グレイハウンド。6輪駆動による高い機動力でアメリカ軍機甲部隊の目として偵察任務で活躍します。
▲M8グレイハウンドのドライブシャフトはこのようにランナーの中でほぼ完成しています!
▲このパーツを中心に細かいパーツをつけていきます。6輪駆動の足回りの構造を適度なパーツ数で味わえます

▲車体内部も細かく再現されているのには驚きです。オープントップの砲塔であること、ハッチの開閉を選べるキット仕様によるものと思われます。内部をのぞき込んだ時にちらりと見える戦車模型的チラリズムに応える構成です

▲タイヤはポリパーツも合わせて5パーツ。とはいえ4パーツは内側のパーツでほとんど見えなくなるので、ニッパー直切りでバンバン組んで次の工程に行っちゃいましょう!!
▲オープントップ砲塔の見せ場、砲塔の内側! 砲塔内側の砲弾ラック、37mm対戦車砲M6、砲塔バスケットと気合入りまくりの作りです!

▲完成した砲塔を上からのぞき込むと、ディテールが密集して高解像度に。フィギュア無しの場合でも安心です


■人! 「アメリカ戦車兵」

▲このキットには2種のフィギュアが付属します。周囲を警戒する車長と、弾薬箱を運ぶ兵士です

▲車長です。M8グレイハウンドが発売されたのが1998年。22年前のものになります。頭・体・腕と非常にシンプルな構成
▲弾薬箱を運ぶ兵士のフィギュア。これは2015年に発売された「アメリカ戦車兵セット(ヨーロッパ戦線)」のキットにセットされている1体。今のタミヤのフィギュアのレベルを体感できる素晴らしいものです
▲パーツ分割がとてもユニークで、パズルのようにカチカチと組み合わさります。合わせ目もほとんど出ず、しわとしわをがす~っと合わさってく体験をすると、タミヤのフィギュアの虜になってしまいます
▲組み立てへの配慮も素晴らしいのが昨今の特徴でもあります。がっちりと接着できるように大きな糊代と向きを間違えない構成で、多くの人が1/35スケールの人間をきれいに組み立てることができます
▲人の有り無しでは車両の見え方が大きく変わるのが戦車模型の面白いところです。上の写真ではただの車両ですが、下のように人が乗ることで「偵察」となり、車両の持つ意味や景色が一気にイメージされます

■アクセサリー

▲豊か!!こりゃ戦争勝ちますよ……なんて思っちゃうくらい荷物パーツがてんこ盛り。車両に盛ることでパーフェクトガンダムみたいに一気に迫力が増します
▲荷物の中で注目なのがこの「10 in 1 レーションカット(WWII)」。こちらこのキットで新たに登場したパーツです。紙製でカットして組み立てます
▲全部で8カートン分作れまして、外箱、スリーブ、中箱2種で構成されます。開いた状態や閉じた状態、作りたい景色に合わせて選択できるようになっています(僕みたいに組むのへたっぴでべこべこでも気にしない!戦場でべこべこになった!と言おう!!)

▲右のM2機関銃ランナーの他に、タミヤのMMの「No.360 アメリカ軽戦車 M3スチュアート 後期型」にも入っている最新アップデートされたM1919機関銃もセットされ、砲塔周りの解像度が一気に上がります

▲車両にこんな感じかな~って荷物を盛ったり、傍に人を立たせて遊ぶというのは、それこそシルバニアファミリーのような玩具でも楽しまれていますね

キットは過去のタミヤの物をピックアップしたバリエーション商品ですが、車両、人、小物が織りなす物語を思う存分楽しめます。このキットで戦車模型の豊かな景色を見たあなたにはきっと素敵な模型ライフが待っていると思います。「アメリカ軽装甲車 M8グレイハウンド 前線偵察セット」ぜひ楽しんでください。

■小物の面白さを超追及!「アーマーモデリング 2020年5月号が超面白い」

戦車模型雑誌「アーマーモデリング」の2020年5月号(発売中)ではアクセサリーを中心に特集。小物が生み出す効果や、小物自体の意味、小物を活かすための戦場写真の見方など、小物を通して戦車模型の見方を教えてくれる素晴らしい号です。アメリカ軽装甲車 M8グレイハウンド 前線偵察セットとの相性抜群ですよ!

■タミヤ 1/35スケール アメリカ軽装甲車 M8 グレイハウンド 前線偵察セット 本体価格4200円(税別)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

「プラモと非プラモの境界線」を探り、MSGという名の密林を探検する。

 いきなりですが、モデリング・サポート・グッズ(以下MSG)というコトブキヤのキット、ご存じでしょうか。多分模型屋さんでも、ニッパーとか吊るして売ってるエリアの近所とか、プラモの箱が積んである棚とはちょっと離れたところで売ってるのを見たことがあるかもしれません。これ、”グッズ”って書いてあるし、ビニール袋に入ったランナーを吊るして売ってるし、なんか「いわゆるプラモデル」という体裁とはちょっと違います。模型専門誌でも「頑張ってMSGを作りこむぞ!」という記事は見たことがありません。

▲こういう感じのものができる。これはガトリングガンの弾倉なんだそうです

 が、MSGは商品形態としてはプラモデルです。ランナーに部品がくっついてて、ニッパーで切り離して説明書に従って組み立てます。で、完成するとなんかロボットに持たせる銃とか、増加装甲とか、でかい剣みたいなのとかになります。MSGも昔は関節だけとかロボットの手とか、もっとモデリングをサポートする感じの内容だったんですが、最近はいろんなところに3㎜のジョイントを差し込める穴が開いてたりする、それなりに意味のある形のものが完成します。

 このMSG、組み立て自体は別にものすごく楽しいわけではありません。「ここがこうくっつくんだ~!」とか「この部品の立体感はすごいな~!」みたいな、組み立てに関する驚きや感動があるかと言われると、そうでもないです。しかし、それほど突飛な組み立て方をしなくても安定して形になり、気がついたら組み立て終わっているMSGは、「なんか今日は、ちょっとだけプラモデルを完成させた気分になって寝たいな~」という気分の時に時に案外ありがたい存在です。別に意味があるものができなくてもいい、ランナーから部品を切り取って、ちょっと部品をくっつけて寝られればもうそれでいい……。MSGはそういう寝酒みたいな作り方ができる、キャベツ太郎みたいなプラモデルなのです。

▲ちょっとずつ作りためたMSGやら、ヘキサギアの部品やら、ダイアクロンの武器パーツやらが入った袋がこちらになります

 そうやって布団の上とかでちびちび作りためていたMSGやらバンダイの「30 MINUTES MISSIONS」やらが、結構な数になってしまいました。佃煮みたいになってます。単に細かい部品だけを量産しても仕方がないので、ジョイントの径がどれも大体3㎜なのを利用して、何かメカを作って遊んでみることにします。

 とはいっても頑張りたくないので、塗装とかはしません。基本的には3㎜のジョイントに頼りつつ、それでどうにもならないところは瞬間接着剤でのイモ付けでくっつけちゃう。「キット備え付けのジョイントだけで組み立てるぜ!」というのもいいのですが、ちょっとそれはそれでめんどくさいので……。

▲MSGの「コンバートボディ」の脚のあたりと、同じくMSGの「フレキシブルアームセット」の部品をこんな感じで組み合わせて……
▲ガトリングガンの弾倉だったんですが、なんか胴体の後ろにくっつけたら虫みたいでかっこよかったんで、もうこれでいいと思います
▲頭はなんか、その辺にあった部品とガンプラのパーツと30MMのミサイルコンテナをくっつけて作ります。適当です。
▲できた~~!ちっちゃくていいぞ~~!!

 キットバッシュやミキシングビルドと呼ばれる、いろんなプラモデルの部品をぐちゃぐちゃにくっつけて形を作る模型の作り方があります(『スター・ウォーズ』の撮影用ミニチュアの作り方みたいなのの小規模なやつです)。あれはあれで大変楽しいのですが、一回部品をくっつけちゃうと「あ、これしくじったわ~」と思った時に後戻りするのが案外大変だし、なにより大量に部品を手元に置いてないと面白くないのが難しいところ。

 しかし最近増えている有形ブロック寄りのプラモデルを組み合わせたミキシングビルドごっこなら、ジョイントを接着しなければバラバラの状態に戻せるし、「そうは言ってもここは接着したいな~」という部分は適当にくっつけちゃえばいいし、やりたい放題が可能です。ブロック遊びとプラモデル作りのいいとこ取りなわけですね。気に入らなかったり飽きたりしたらまたバラせばいいので、めちゃくちゃ気が楽。やりたくなったら塗装したりデカール貼ってもいいし、ガシガシ遊ぶから色塗らないでおこうと思ったらそれでもいい。手軽になんとなく工作した気分になれて、手元にはなんか変わった感じのメカが残る。その上この手のキットは安い。いいことづくめです。

▲こういう感じで遊んでます。楽しいな~~
▲プラモとブロックトイの境目を考える私。

 これが果たしていわゆる「プラモデル」の文脈に乗っかった遊びなのか、はたまた有形ブロック遊びの延長にある遊び方なのか、個人的にはなんだかあんまり線引きできていないというのはあります。が、他のオモチャと組み合わせて遊べる、自分が作ったメカのオモチャというのはどう転んでも楽しい。3㎜ジョイントはオリジナルなメカを組み立てるためのパスポートなのです。というわけで、みなさまもぜひお試しくださいませ。

しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

定番中のド定番、「ハセガワのゼロ戦」を組んでみる。

▲ハセガワが「定番」に指定しているゼロ戦のプラモ。実勢価格はだいたい1000円。

飛行機といえばゼロ戦、飛行機といえば1/72、飛行機といえばハセガワ。僕たちはなんとなく、そう思っているフシがあります。
そしてふと思うのです。「そういえばハセガワ 1/72のゼロ戦って、組んだことあったっけ」と。
1000円札一枚で買える、王道のスタンダードのど真ん中。組み立てるにはニッパー、デザインナイフ、接着剤の3つがあればいいですし、
休みの日の気晴らしにサクッとカタチになってくれる抑制のきいたパーツ数がうれしい。
そんなキットのレビューをお届けしようと思います。

▲このプラモの初版は1993年。説明書は黒とシアンの2色刷りです。

▲マーキングは3種類から選べます。灰色なのは坂井三郎機と赤城搭載機。あなたはどっち!?

▲本アイテムの初版は1993年発売。金型はちょっとくたびれ気味ですが、シャープなラインは健在。

多くの人にとって「ゼロ戦といえば緑でしょ〜」というイメージがあるかもしれませんが、
灰色に塗られた21型というのは太平洋戦争のはじまりに活躍し、その強さで世界を驚かせたタイプ。
どんな色調のグレーなのかについてはこれまでにもいろんな説が唱えられてきましたが、
今回はせっかくプラスチックがグレーなので、そのまま組むことにします。
垂直尾翼の裏側には丸い出っ張り(突き出しピンの跡)があって、
そのままだとピッタリ組めないのでニッパーやナイフで削り落としておきます。主翼の周りにもちょっとしたバリがあるので、これもちょっとずつ切り落としていけばきれいなアウトラインが出てきます。

マーキングは赤城搭載機、板谷 茂少佐機に決定。プラスチックの肌にそのまま貼り、
いちばん目立つカウリング(エンジンのカバー)だけ缶スプレーでサクッと半ツヤの黒に塗装します。所要時間はたった10秒。
半ツヤ黒の缶スプレーはいろんなプラモに使えますから(そして家にないといざというときに困ることが多いから)、
プラモ屋さんに行くたびに買って備蓄しておきましょう。

小さなパーツを慎重にくっつけて、完成!
機首が黒く塗ってあるだけで「おお、ゼロ戦だ」という感じがしっかり出ることに自分でもびっくりです。

サラッと貼って、デカールを貼るだけでもプラモの表情はとても豊かに見える、というのは僕も最近になって気付かされました。
もし「やっぱり塗ってみようかな」と思ったら、また買ってチャレンジできるのがスタンダードのいいところ。
誰でも知ってる飛行機だからこそ、こうしていつでも楽しめるキットがあるというのはとっても安心できることだと思うのです。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

超リアルな歩兵の人形を眺めてみる。

戦車は好きだけど兵士のフィギュアまで組んで塗るのはちょっと難しいのではないか。
まあ戦車だけでも見栄えがするし、人間をリアルに仕上げるのはなんだか苦手なんですよね。
そんなあなたのための「貼るだけ人間ショー」をお見せします。

▲最近のタミヤの兵士はすごい、というのはいろんな媒体で言及されていますが、本当にすごい。3Dスキャンに原型師の技巧が注ぎ込まれた究極的造形。
▲陰影を見ているだけで模型がうまくなります。なぜならこの印影を写真に撮っておいて、そのまま塗ればいいのです。塗らなくても勝ちです。
▲昔は個人携行装備を体の表面に無理やり貼っていたのですが、最近は貼るべき場所が装備のカタチに凹んでいます。3Dソフトによる設計の賜物。
▲ガスマスクのケースのカタチにえぐられた背中。ここにパーツがスピャッとハマり、流し込み接着剤をツッと流せば固定されます。
▲なんかもう、キレイなんだよな……。
▲このキット最大の見どころかもしれない「瓦礫」。ワンパーツなのにゴチャッとした空気感が出ており、ここだけで300円くらいの価値があります。
▲貼って、家のちょっとした場所に置いてください。ピリッとした空気がそこに生まれます。

タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.371 ドイツ歩兵セット (大戦中期)

※本記事はブログ「超音速備忘録」からの抄録です。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

超ハイテンションなミニ四駆、「ジプニー」をキミはもう組んだか!?

 馬ですよ馬。馬が3頭。ミニ四駆買ったら馬が3頭付いてきた。馬自体が四駆みたいなもんですから、この時点で12駆。3馬力ゲットです。何を言ってるのかよくわからないと思いますが、ミニ四駆に馬のパーツが付いてたらテンション高いでしょ。全体像を見せろという感じなので、まずは箱を見せますね。なにこれ。すげえ。

▲極彩色の乗り合いバスがミニ四駆になってるんですよ。

タミヤ ミニ四駆特別企画商品 ジプニー FM-Aシャーシ 95551

 フィリピンで市民の足として親しまれている乗り合いバス、「ジプニー」をミニ四駆で再現。つやありレッドのABS樹脂製ボディは、愛きょういっぱいのボンネットバススタイルはもちろん、レトロなデザインのフロントマスクや車体後部の乗降口も特徴をとらえてモデル化しました。また、ひさしのついたルーフ部分とボンネット上の馬の人形は別パーツとして立体感たっぷり。塗り分けがきれいに仕上がるのもうれしいポイントです。(タミヤオフィシャルサイトより)

 ミニ四駆で「馬を塗り分けたい」という欲望にフォーカスした製品がいままであっただろうか(ないよ)。そもそもレース向きとは全く思えないこのごっついボディにギンギラギンのステッカー。タミヤの工場がフィリピンのセブ島にあるんで、「地元の人たちに喜びをおすそ分け」みたいな狙いもあるのかもしれません。 

▲ステッカーが暑苦しい。まるで湿ったモンスーン気候のど真ん中でスコールに打たれているような気持ちになります。
▲でかい図体なのでどこにでもモーター入れられただろうに、FM-Aシャーシ(モーターがフロントに来る)をチョイスしたセンスよ……。

 さて、この模型のハイライトである馬の塗り分け。あまりにハイテンションなホイルシールのギンギラギンに負けないように、光り輝く馬にしたい。そういうときに頼れるのがガイアノーツの超絶シルバー塗料、プレミアムミラークロームです。

▲エアブラシでさっとひと吹き、ターミネーター2かというくらい馬が光ります。
▲赤い成型色の屋根も銀色にしておこう。箱絵がここまで映り込むぜ……どうなってんだこの塗料……。

 シール貼りの作業もハイテンション。結構な量があるのですが、ボディの複雑な段差にビッタリ合うので迷うところはなし。とにかくバシバシ貼っていくと、みるみるうちにジョリビーのパスタのような真っ赤なボディが日光東照宮もかくやという派手さになっていきます。

▲ドゴーン!!!これがジプニーじゃ!プラズマダッシュモーターでサーキットを爆走することもできる。
▲輝く馬がフィリピンの街を駆け抜けるぜ……。

 ということで、最近はスマホアプリ「ミニ四駆超速グランプリ」にプライベートの時間をごっそり持っていかれている私ですが、ホットショットJr.の塗り分けがヤバいということに気づいたので逃避のために買ったジプニーが予想外におもしろすぎたことをお伝えします。みなさんもミニ四駆を息抜きに作ると「クルマの模型が秒速で完成するっていいな……」という気持ちになりますのでレースしなくてもミニ四駆買って達成感だけをゲットするというホビーもまたよろしいのではないでしょうか、と思った次第です。ぜひ。

※本記事はブログ「超音速備忘録」からの抄録です。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

「プラモと食」、1/35ドイツ野戦炊事セット

夜の住宅街。家々から香ってくる夕食の香り。それを嗅ぐとなんだかホッとしますよね。料理の香りは人の心を柔らかくしてくれる……どこの国の人にとっても共通する感覚だと思います。そして、そんな光景をひとつの箱に詰め込んだプラモがあります。

それが今回ご紹介する「タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.247 ドイツ 野戦炊事セット」です。戦車や兵隊などのプラモでお馴染みのタミヤミリタリーミニチュアシリーズ(以下MM)の傑作で、戦いとは異なる戦場のシーン、戦場での食事を切り取ったプラモです。

▲箱を開けた瞬間から、タミヤMMの解説イラストを多数手がける上田 信さんのワクワクするイラストが登場。レンストランのギャルソンのようにお客様をご案内してくれます。そこには武器の名前ではなく、パンやレンジ、牛乳缶など食にまつわるものばかり
▲軍服だけでなくエプロンを着用したボディのパーツや、食品などがランナーに納められています。とても優しいランナーです
▲こちらは野戦炊飯車のパーツ。煙突やら圧力鍋の口のようなものがありますね〜。そしてハウス名作劇場から飛び出て来たようなミルクポッドのパーツもそのままランナーにはまっています
▲組み上げるとこんな風に前後で連結される車両となります。野戦炊飯車は模型界では「フィールドキッチン」という名でも親しまれています。前部はリンバーといってこちらに調理材料や各種容器が積み込まれます。後部はトレーラーと呼ばれ大型レンジが組み込まれ、容積200リットルのシチュー鍋と90リットル入りのコーヒー沸かし器が配置されています。これ1台で125名から225名の兵士に食事を供給することができたそうです。そしてカラーリングもドイツを代表するジャーマングレー。機能と格好良さを両立していたなんて素敵すぎます
▲トレーラー部分。まさにここが調理台です。中央の圧力鍋は二重底で、内鍋と外鍋の間にはグリセリンが入れてあり、内鍋の焦げ付きも防止したり、保温性も確保されていました。あったかいシチュ〜が戦場でも食べられるよう兵器だけでなく、調理器も進化していったんですね
▲牛乳缶、炊飯容器、食料保存容器。入れ物がないとせっかくの料理や飲み物も意味をなしません
▲炭水化物がないと人は戦えません。小麦とライ麦の混合パンなどが主に出ていたそうです。ドイツパンを出しているパン屋さんは多いので、一度食べて見てはいかがでしょうか
▲ヨーロッパに行くとこれでもかとジャガイモが出て来ますよね。まさにもう一つの主食。ジャガイモは袋にどっさり。さらにキングオブ乳酸品のチーズ、ビタミン源である果物も出されたそうです。リンゴのパーツって塗ると赤いから作品のアクセントにすごく効くんですよね〜
▲この笑顔が彼らの戦いです。前線の兵士の腹を満たし、士気を上げる。このフィギュアも威勢が良さそうですよね
▲チームハラペコ。緊張からの解放。戦場に香るシチューの匂い、これからいただける暖かい料理への期待感でもう笑顔になるしかないですよね

そして全てを組んで配置するとこのような景色が生まれます。箱の中のものだけで、これだけの豊かな情景ができる。とても暖かいプラモです。そして説明書内の解説を読めば、当時のドイツ人兵士たちがどのような食事を食べ、戦場へと出ていったのかもわかります。プラモを楽しみ、食も知る。タミヤ編集によるdancyuのようなプラモ。あなたのご家庭にもひとついかがでしょうか?

■タミヤ 1/35 ドイツ 野戦炊事セット 本体価格1500円(税別)

※本記事はブログ「フミテシ道楽」からの抄録です。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)