「400円の砂漠」で、プラモに乾いた風が吹く。

 砂漠いいですよね。砂漠。行ったことないですけど。戦車とか飛行機とかラリーカーとかドムトローペンとか、プラモになっているものが似合いがちな砂漠。しかし、戦車とか飛行機とかラリーカーとかドムトローペンだけ作っても、前提となる知識がない人から見れば「おお、ここは砂漠だ!」ということが伝わりづらい。そういう人のために、「ここは砂漠なんですよ」ということを見ればわかるようにしてくれるプラモが発売されました。BANDAI SPIRITSの「カスタマイズシーンベース(砂漠Ver.)」です

▲ランナー(プラモの枠)1枚に、こんな感じでパーツが収まっています。

 お値段税込み440円。「ただの黄土色のプラスチックじゃないか」と侮るなかれ。このプラモには風紋(砂漠のうねうねした表面)が刻み込まれた六角形の台座のほかに、モケイのシーンをぐっと盛り上げてくれるオマケだって付いているのです。

▲4つのオマケ。硬軟取り混ぜて乾いた土地(静岡?)からやってきた。

 手前のふたつは岩。大小の岩が用意されていて、これを置くと「平らな砂の地面」にいきなり変化が付きます。岩は不動(=静)の要素ですが、説明書にはお好みで配置して良い、と書いてあります。

 そして奥のふたつは風。砂塵を巻き上げて移動するさま(=動)はプラモとしては珍しい。プラモというスタティックな遊びなのに、不定形の「風」を具象化したパーツがここにあるわけです。人のポーズやたなびくターバンを表現して「風」を感じさせるようなモケイを作るのもいいのですが、置くだけで「はい、ここ砂漠です!砂漠ですよ〜!」と主張できるのは便利です。

 六角形のベースには4つの穴が開いており、これは別売りの支柱(ロボットプラモを宙に浮いた状態で飾るための棒ですね)を刺す穴。そして穴を隠すためのフタとなるパーツもちゃんと付いていて、正しい位置にハメればピタッと表面がツライチになり、穴が見えなくなるという寸法です。

 砂塵を巻き上げながら走るシュビムワーゲン。ドライバーは先日なにかを撮影するときに拝借したのでいません。無人のクルマが砂漠を疾駆しています。サイドブレーキをかけ忘れたのでしょうか。後輪が巻き上げる砂煙がそのスピード感を演出してくれます。

 助けてくれ、ここはどこなんだ。旅人はつむじ風に巻き上げられる砂に行く手を阻まれ、乾いた喉を癒やしたいがあまりに叫ぶのです。「あれは水だ!湖だ!」と。……残念、それは蜃気楼です。

 人間(彼は惑星ベジータの王子ですが……)をデカくすると様相が変化します。ククク……。激しい空中戦から離脱し、相手よりも先に着地。構えを取り直して牽制する足もとから上る砂塵! 単にベジータをテーブルの上に置くだけでは伝わらない、動きや時間を感じさせるディスプレイがここに爆誕するのです。たぶん、BANDAI SPIRITSが本来想定しているのはこういう使い方だと思います。

 ▲突然の焼き栗!!(霜降り明星の粗品の声で読みましょう)

 不思議なのは、砂だとか風だとかの要素と同じくらい、温度が伝わってくるということ。こんな暑いところで焼き芋とか焼き栗が食えるかい! と思わずツッコミたくはなりませんか。

 このようにして、手のひらサイズの砂漠(そして岩と風)を買うことで、手持ちのプラモがいきいきとその活躍場所に収まったり、人の苦しみや強さを表現したり、周りに湿度や気温をまとわせることができる、というのはなかなかに面白い現象だと言えるでしょう。

 当然これはプラモですから、この岩や風をもっとリアルに塗ったり、砂漠の表面にザラリとしたテクスチャを付けることもできます。できますが、まずはお手持ちのあれやこれやをとっかえひっかえ置いてみて、岩の配置や風の配置をああだこうだと試行錯誤してみると、これがヴィネット(ダイオラマを極小の要素に切り詰めた表現手法)のことはじめになっているという恐ろしいアイテムなのです。

 なんと今月末にはプラスチックの色が白になった「カスタマイズシーンベース(雪原Ver.)」も発売されます。当然そちらは寒く厳しい世界を表現するのにもってこいの製品となるでしょう。青く塗れば海原に、そして赤く塗れば……。あとは想像力にお任せいたします。

 みなさんは、このプラモを使ってどんなことを表現するのでしょうか。こんなん出来たで、という写真があれば、ぜひともSNSでシェアしてみて下さい。

 ぜひ。

■BANDAI SPIRITS カスタマイズシーンベース(砂漠Ver.) 440円(税10%込)

■BANDAI SPIRITS カスタマイズシーンベース(雪原Ver.) 440円(税10%込)

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からぱた
@kalapattar

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。