ベージュのプラスチックに恋をしてしまった場合、これを手早く貼ってとにかく完成形を見たいわけです。しかしこんなにかっこいい飛行機がベージュの塊になるのもなんだか忍びない。そういうときは銀です。銀に塗ると飛行機はギラギラと周りの光を跳ね返して、この表面にびっしり入ったリベットも、スパッと入ったパネルラインも、そしてグラマラスなそのボディの曲線も明らかになる。銀は「色を塗る」というよりも飛行機の質感を変えるためのすごい塗料なんです。
そうは言っても最低限の下ごしらえはしておきましょうか。コクピットの中をなんとなく緑色に塗って、その周辺をブラックで塗っておきます。筆でそれっぽく塗っておけば大丈夫。見えるのはホラ、こんなに狭い空間。怖がらずにササッと「色が塗ってあるな」と思えるところまで行って、銀色を夢見るのです。
風防のマスキングも一応しておきましょう。幸いこの飛行機は窓枠がそんなに複雑なカタチじゃないので、「マスキングテープ貼ってから直接カッターで切っていく法」でなんとかなります。マスキングテープは薄くて曲面に馴染み、貼った上からでも窓枠がはっきり見えるGSIクレオスのものがおすすめ。これが発売されてからこっち、窓枠のマスキングが本当に面倒じゃないと思えるようになりました。
機体内部、いいでしょう。エアインテークからエンジンがちょこっと再現されてて、後端部はノズルもパーツ化されています。しっかりとした桁のパーツが3枚入ってて、中央の空間は着陸脚の収納庫になります。実在した飛行機じゃないけど、たぶんこんな感じだろうねと思える説得力がアミュージングホビーのうまいところだなと思います。完成後も見えるところは筆で銀色に塗っておきましょう。どうせ覗き込んでまじまじ見るところじゃありませんから、サラッと。
銀色は筆で塗っても楽しいんですが、ちょっとだけ時間がかかります。今回は本当にクリーンな表面がほしかったから、スプレー。本当にあっという間に銀色になって、さっきまで見えなかった曲面、そして表面の精緻なディテールがこんにちは。隠れてたわけじゃないのに、いきなり出てきたような感覚に陥るのがいいんですよ。もったりとしたベージュから、金属の塊に変貌しました。
銀色の飛行機を見ていたら、なんだか盛り上がってきたので手近な零戦のキットから日の丸と尾翼のマーキングを拝借。ペタっと貼って、あり得たかもしれない日本のスーパー戦闘機がここに完成と相成りました。
困ったときの銀塗装。飛行機がいちばん輝くのは、こういうハイテンションな仕上げをしたときなのかもしれません。みなさんも『MAD MAX』に出てきたウォーボーイよろしく、銀のスプレーを携えて一気に完成まで走り抜けたい飛行機を探してください。きっと楽しい休日が過ごせるはずです。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。