釣り好きの友達から電話がかかってきて「ブリ、いる?」というたった4文字でめっちゃ重大な内容を伝えられたことありますか。私はある。その瞬間に思い巡らすわけです。まな板と包丁、冷蔵庫の空き容量、鍋と刺し身と大根と、よく食べる近所の後輩と、それを捌き切るまでのタイム……。
みなさんの家にも、捌ききれていないデカブツがありませんか。プラモはブリと違って腐らないけど、いつまでたってもデカブツはデカブツのまま。そんなデカブツと真剣勝負するなら、ある程度こちらに余裕があって、ワッと一気にやれるだけの自由な時間が必要。そこでゴールデンウィークですよ。
これはエアフィックスの1/24 スピットファイアですが、べつにこれじゃなくてもいいんです。いつか組もうと思ってたPGガンダム、いつか組もうと思ってたタミヤのでっかいファントム、いつか組もうと思ってたアオシマのEF66……。エイヤと開けて、まずはそれを眺めながらじっくりと説明書を読んだり、「でっかいなぁ」とひとりつぶやいたり。そしてニッパーでひとたび刃を入れれば、ヨーイドンなのです。
でっかい模型は何がいいかというと、一手ごとに起きることが重大事件なんですよね。胴体のパーツを貼り合わせてようやく手のひらサイズの飛行機がなんとなく見えてくる……とかじゃなくて、もういきなり巨大な物体がそこに出現する。とくにこんなちょっと昔のプラモだと、エンジンのパーツだってチマチマしていない。ガスンゴスンと組み合わせるだけであっという間に巨大な塊が出現するのです。小さなものが見えなくたって大丈夫。なんせ相手が巨大なんで……。
でっかい模型のもうひとついいところは、薄いものが薄く見えるところ。1/72スケールの飛行機で翼のフチが0.5mmの厚さだと「うわっ」と思うくらいボッテリして見えますけど、1/24ならものすごくシャープに見える。模型の厚みって、全体のボリュームと相対的なものですからね。ただストレートに組むだけでも、模型が上手く見えるんです。シャキッと、端正な佇まいになる。
アニキだってこのサイズ。ちまちま小さいのを塗るよりずっと楽ちんなんですよ。面積は大きくなるけど、豪快に、ハイスピードで楽しめる。大きいからちゃんとしなきゃとか、小さいから気楽なんてことはありません。模型は模型。大きいとおおらかに楽しめて、さらにシャキッと見える。騙されたと思ってスタートしましょう。ゴールデンウィークは、でかい模型が似合うんです。みなさんも、ぜひ。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。