ハセガワのプラモデルはケタが命。この三笠にも左右合わせの船体がズレたり歪んだりしないよう3つのケタが入っています。ちょっと古めの艦船模型に親しんだ人ならちょっと驚くかも。ずいぶんと小さなプラモですが、側面に入れられた彫刻も、甲板の上に積み上げていく構造物もすごく細かくて、目に楽しい。三笠、ホントに良いプラモデルです。
ハセガワのサイトを覗いてみたら、「三笠1週間制作ガイド」というページを見つけました。簡単に塗装して組み上げましょう、という趣旨で丁寧に解説されているんですが、ここは自分なりにハショって一気にカタチにしていきたいところ。船体の中央部にぎゅぎゅっと集まったボートと甲板の一部だけ、茶色く塗装しておきます。マスキングはいりません。茶色く見える方向からスプレーすれば、ボートの底はプラスチックのグレーがちゃんと残ります。
このプラモデルを作るなら、ヘッドルーペと良質なピンセットが必須!反対に言えば、それさえあれば必ず組み立てることができるはずです。そーっと確実に、小さなパーツをなくしてしまわないようじっくりと貼り付けていきます。グレーはプラスチックの色のままでも、木のシートやさっき茶色く塗ったデッキのおかげでなんだか賑やかなルックになってきました。そうそう、煙突の先端はシタデルカラーの黒で筆塗り。ここも彫刻を手がかりにくるっと塗れば、マスキングしなくても大丈夫!
2日で組み上がりました。艦船模型はグレーのプラスチックだからそれらしく見えて嬉しいというのをひさびさに思い出して、凝縮感のある小さな世界をまじまじと眺めます。組んでいてとくに盛り上がったのは、艦首の両サイドにあるアンカーとクレーン。このあいだ横須賀で下から仰ぎ見た景色が、いまは神の視点で俯瞰できます。確かにこんなに大きな錨を巻き上げて所定の位置に収めるなら、それ専用のクレーンがないと大変。艦船模型はそれそのものが小さな模型の集合体なんですよね。
わずか20cm足らずの「世界最強、最新鋭の戦艦」が確かに指先に感じられます。特別な道具がなくても、塗装専用の部屋がなくても、じっくり取り組めば必ず応えてくれるハセガワの三笠。ひとたび組めば、この船のカタチも、どこにどんな武装がくっついているかも頭の中にインプットされます。この体験を携えてもう一度横須賀に行ったら、きっと実物の三笠はもっといろんなメッセージを伝えてくれることでしょう。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。