ただひたすらに細かすぎるプラモを組み立てたい日もある。/世界最強ヘリコプターのミニスケールキット

 できた。クワガタかカブトムシか。とにかく全長10cmくらいの黒光りした異様に情報量の多いヘリコプターのプラモがちょこんと完成して、気分は昆虫少年。餌は食べないけど、1200円でとんでもなく充実した時間が買えるのはすごいことだと思う。

 ドイツレベルの1/144スケール飛行機模型は高い確率で「良いキット」だ。小さいくせにビシバシディテールが入っていて、パーツの合いも良いし、ディテールにもメリハリがあるのでプラモを組んだ感触が濃厚に残る。ただ接着剤で貼っていくだけでも、知的な遊戯を楽しんでいるという高揚感があって、私はこの時間がとても好きだ。

 ただ、パーツはとんでもなくこまかい。米粒のようなパーツはピンセットで摘んで飛ばしてしまうと二度と出てこない。そっと所定の位置に置いてから流し込み接着剤でツンと貼るか、トロみのある接着剤を塗布してから所定の位置に持っていくか、全パーツで「プラモの組み立ての経験値」を問われる。スケールモデルを組み立てる教習所の最終試験みたいなもんで、これをきれいに組み立てられれば(合いが悪いキットは論外として)たいがいのプラモは美しく貼れると断言できる。

 大きめのカタクチイワシを干したようなサイズの胴体にも、キリッとしたパネルラインが走る。組み立てはハッキリ言って難しい。難しいと言っても「組めない」みたいなタイプではなく、組むのにちゃんとした工具を持っているか、ケミカルを選択できるかという試験みたいな感じ。いくら手先が器用でも、適材適所でツール&マテリアルを繰り出すことができないとクリアするのは難しい。精度の高いピンセットは必須だし、今回は部分的に「ミラクルピックアッパー」のお世話になった。いまやこれがないと米粒大のパーツをハンドリングすることはできないくらい、おすすめの道具。

▲デカールも極小サイズ。塗装してこれを貼るのは結構ホネだが、キリッとした表情になるはずだ。

 

 全体の構成は1/72とか1/48とほとんど違わない。自分が1/3とか1/2に縮んで作業しているような感じになるので、ヘッドルーペも重要。視界がギューッと狭くなって、外界の音が聞こえなくなって、緻密な世界に自分の意識が全部フェードインしていくのがわかる。いろんなことを忘れて没頭するのにはもってこいの緊張感。

 こうして写真を撮ると、いかに小さいかわかるはず。近づいて見ると、惚れ惚れするようなディテールの密度。面構成も実物にそっくりだし、センサー類の造形も「わ、ホンモノと同じだ!」と嬉しくなる。小スケールだからって省略したり、一体化してヌルくなっているなんてことはない。ひたすらにハードコア。ひたすらに実直。

 完成してみれば、そこにはまごうことなきロングボウアパッチの姿が現れる。当分は机の横にちょこんと置いておいて、気が向いたらテロンと色を塗ってみたり、あるいは何かの拍子に壊れてしまうような、繊細な完成品。この儚げで危うい佇まいも、まるで高級な甲虫のようで、私はけっこう気に入っている。

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からぱた
@kalapattar

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。