
「ヤマシタホビーってどんなメーカーなんだろ」と小さな箱を開けるとワンパーツで成形された船体が出張ってきた。緻密な彫刻と流線の複雑な交わり、この船体パーツに触れただけでも艦への並々ならぬ意識を感じ取れる。
この『特型駆逐艦 潮(うしお)』を試すくらいのつもりで組んで塗って知った「小さな艦ならではの楽しさ」という話をしたい。チマチマと切って貼ってが続くカロリー高めの組味なのだが、塗装はザックリとした塩梅でもじゅうぶんで、ゴールすると「艦プラモ、凄く良いな!」と大満足だった。

自分にとって艦船プラモというジャンルは、霞む水平線をゆく船のようなボンヤリとした存在だった。このnippperというサイトや『艦船模型製作の教科書2.0』をきっかけに艦船プラモを手にするようになって視界に入ってきたのがヤマシタホビーという帝国海軍の駆逐艦をメインに扱う小さなメーカーだ。どの艦を試してみるかは知見がなさすぎて決めかねたが「終戦時まで沈まず頑張った」という一点でこの潮にした。小さな箱に緻密なパーツがギッシリでギョッとしたのだが、同型艦のパーツが混在しているのだけで使うのはあくまでも一部。ただ、パーツを探すのに少々苦労はする。

手にしたキットが「エッチングパーツ付 限定版」だったので頑張ってみた。ディティールが爆上がりしそうなので。デザインナイフで切り出し、ピンセットで折りたたんでカタチにするには文字通り頑張りが必要なのだが、艦への取り付けは光を当てると硬化する瞬間接着剤『アロンアルファ 光』を用いればそうも苦はなかった。なお、そもそものプラパーツも同封されているので、面倒と感じたらスルーすれば良い追加パーツだ。

タミヤのオキサイドレッドをスプレーしてから呉海軍工廠グレイを吹き付けた。オキサイドレッドを残しぎみで軽くスプレーするのがポイント。ただでさえバキバキの彫刻のディティールがバキーン!と立ち上がってくる。下地のオキサイドレッドはサーフェイサースプレーなのでメタルプライマーの効果があり、エッチングパーツを使った今回はひと手間はぶけてナイス。そもそも小さな艦プラモなのであっという間に塗りきれてしまう。

小さな艦プラモは細かな塗り分けもサッと済むので嬉しい。ラッカー塗料でしっかり軍艦色にした後は水性塗料で部分塗りを。主砲のキャンバスにつや消しホワイト、煙突の頭につや消しブラック、甲板にウッドブラウン、それぞれを面相筆でチビチビと塗り足していく。キワやスジ彫り周辺は塗り残すくらいがディテールが際立って具合良い。

筆塗りがハミ出したところはマジックリンで拭き取ればOK。そう、ラッカー塗料でメイン色を塗ってから水性塗料で部分塗りを施し、そこからマジックリン拭き取りで細かな塗り分けや修正で仕上げるのがナウな模型塗装トレンドだ。

仕上げに「水性プレミアムトップコート つや消し」を吹いてから「タミヤ スミ入れ塗料(ダークブラウン)」でウォッシング。重力を意識してタテ目が残るように拭き取れば「うわ… オレ天才かも!」と自己肯定を爆発させながらゴールできる。そして小さな艦プラモは塗装工程が本当にライト。それでいて効果大。これはヤマシタホビーこだわりの緻密なディティール表現があってのこと。塗装のひと手間に対する充足感がとんでもなく高かった。一言でまとめるなら「小さいのに大満足な艦プラモ」だったのである。手軽さを知った今回なので、他の特型駆逐艦を組んで塗ってを楽しんでみたい。