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【レビュー】天国で乗る白いクルマ/ハセガワ 1:32 eもけ セリカ LB

 祖母が天に召された。101歳の大往生であった。病気とは無縁で、よく食べ、よく飲み、よく喋り、もしかしたら不死身なのではないかと思われたが、いよいよ天寿を全うしたのだろう。葬儀は教会で行われ、私はヨハネの黙示録21章を朗読することになった。式が始まる前、侍者に「聖書の朗読は久しぶりですか」と訊かれ、祖父の葬儀以来であることに気がついた。

 祖父は21年前に他界した。物静かで酒はあまり飲まず、祖父母の家に行けば帰りはトヨタのプログレで最寄り駅まで送ってくれるのが常だった。祖父の葬儀が終わり、和室には棺に入れられなかったという理由で家に戻ってきたターコイズ色のミニカーが置いてあった。「それはね、おじいちゃんが昔乗っていたクルマよ」と叔母に教わったのが、私がセリカという車種を初めて認識した瞬間である。

 祖母の葬儀の前日、準備のために両親と叔母と集まってあれやこれやと段取りをし、誰ともなく「おじいちゃんも21年経ってようやくおばあちゃんと会えるわけですねぇ」などと感慨に浸っていた。ひと息つこうとショッピングモールで喫茶店を探しているさなか、ふと私は父親に「そういえばじいさんの乗っていたセリカはどういうモデルだったんすか」と尋ねると、全く間を置かずに「白のリフトバック。GTじゃないほうのグレード。」という答えが返ってきて驚いた。葬式の時に見たミニカーがターコイズだったのは、祖父が気まぐれで買ったからだということになる。

 エンジンの種別まではわからないし、まあそもそもGTもSTもそこまで見た目に変化はないのでセリカLBを作るなら白を選べばいいのだということは分かった。ハセガワの新ブランド、「eもけ」はパーツ数が少なく接着剤を使わなくても組めるから手軽だという触れ込みだが、パーツ数は多いしビシッと組もうとするとかなり丁寧な工作が要求される。アオシマの楽プラ的なものを想像しているとだいぶ手強いのだが、それはハセガワが「楽プラにないもの」をとにかく盛り込もうとしているからであるように思える。

 アオシマの楽プラにはないもの……。シャシ裏の彫刻、前輪のステア機構(ただし左右は連動しないというのが意外だ)、ルームミラーの再現、ドア内張りやダッシュボードの別パーツ化などなど……。言ってみればエンジンレスの1/24カーモデルにかなり近い構成と言える内容で、楽プラが(工場で効率的に組み上げられるようにした)”完成品ミニカーのパーツ構成”をプラモデルに輸入したように見えるのとは大きく異なる。

 とくにシールの構成は繊細至極であり、これをすべてキレイに貼り切るにはかなりの集中力と手先の器用さが必要だろう。対象年齢は「10歳以上」と記載があるが、たとえば近所の小学4年生にこれを組ませるとするならば、説明書の読み解き方やシールの扱いかたまで保護者がかなりの部分をサポートする必要があるように思える。私はそれなりにプラモデルを作っているオトナなので、「こりゃちょっと難しいな」と思うところもありながら、なんとか1時間ほどでことは成就した。

 トヨタによれば、セリカというのはスペイン語で「天の」「天空の」「神の」「天国のような」という意味を持つ単語だという。祖父の元へと旅立った祖母があちらで再び一緒になるとき、この白いセリカLBでドライブに行っていたらいいのにな、と思う。カトリックにお盆は関係ない気もするけど、プラモデルの不思議なめぐり合わせというものを感じたひとときのお話。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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