
昨年10月の東京ホビーショーで一目惚れして注文した、エレール の1/24フィギュアセット「1970’s URBAN PEOPLE」が届いたので、レビューしていきます! レースクイーンや、ピットクルーなどのクルマ関係のフィギュアはありますが、意外と日常感のあるフィギュアの少ない1/24スケールに続々と味わい深いフィギュアを投じているエレール 。

このキットは、ヒッピーファッションに身を包んだ男女と、座りポーズの男性フィギュアの3体セットとなっています。まず見ていただきたいのが、このパッケージアート。オレンジのルノー4L(カトレール)を背景に、人生に悩みなどないかのような満面の笑みを浮かべるヒッピーのカップルと……。

失恋ほやほやか!と心配になるほど、ダウナーなシチサン男。この陰と陽のコントラストがたまりませんね!

というわけで開封の儀。エレールの見ているだけで元気になるようなイエローのパッケージは、ピザの箱のようにパカっと開く構造。日本のキットにあまり見ない作りで、海外のキット作っているぞ!って感じがしていいですよね。

そして、入っているのがランナー1枚。1人あたり、6〜12パーツの構成で、ニッパーでヌルっと切れるちょっと柔らかめのプラが使われています。

ここからは、サクッと組んで、登場人物を紹介! まずは、ラジカセを担いで、爽やかな笑顔でサムアップをきめる口髭の男。デニムにタイダイTシャツをインした、ヒッピーファッションの王道スタイルで、胸にはハートのネックレスを装備しています。私は彼のことをラブニキと命名!

当時の若者たちは、反戦のメッセージや自由、自然への回帰を表現するべく、カラフルな渦巻きパターンのタイダイTシャツを好んで身につけていました。このキットは、そんなマストアイテムをデカールで再現。こんなゴキゲンなデカールはなかなかありませんね!


彼が担ぐラジカセも良い出来。各スイッチや、電池ボックスのフタのツメまで精密に再現されています。きっとカセットテープの中身は、ジミ・ヘンドリックスや、グレイトフル・デッドに違いない! ちなみに、このラジカセをデコるための、デカールも付属。ピースマークや「フラワー・パワー」と呼ばれる花のマークといった、反戦モチーフのステッカーが再現されてて、ヒッピーカルチャーの解像度がやたら高いです。

まぶしすぎるスマイルの女性ヒッピーのフィギュアは、鉢巻状に巻いたバンダナに、裾を結んだシャツ、ベルボトムにサンダルといった、当時のヒッピー女子に人気のボヘミアンスタイルのコーデ。フリンジの付いたショルダーバッグもポイントです。

胸元には反戦の象徴、ピースマークのネックレスを引っ提げ、左手はピース!! よって彼女のことを、ピースネキと呼ぶことにしました。ラブニキと2人で、ラブ&ピースを体現しているわけですね!

最後は、このダウナーニキ。ヒッピーファッションをまとった2人とは対照的で、こちらは、シャツにスラックスを合わせたシンプルコーデ。シチサンヘアーに裸足で革靴を履く、ジュンイチスタイルですが、トレンディさを感じさせないのは、きっと漂う哀愁のせい。昔、そこまで関係の深くない先輩に誘われて、タワマンパーティに誘われたことがあるんですが、始終その空気に馴染めず、私もこんな感じだったことを思い出しました。ダウナーニキよ、たぶんあんたはここにいるべきではない!


なんでこんな対照的な2組がセットになっているのかな。人の心とかないんか!と思ったのですが、当時のカルチャーを調べていたら、ひとつのストーリーが浮かんできました。ヒッピーカルチャーが始まった60年代に対して、70年代は、その文化が大衆化し、ファッションだけのヒッピーがあふれ始めていたといいます。このダウナーニキのような普通の格好をした保守的なメインカルチャーの人間は、60年代では、カウンターカルチャーに属するヒッピーたちと交わることがなかったですが、70年代では同じコミュニティで共存していたようです。つまり彼らは、ダチ!? という妄想が膨らみます。

そんなストーリーを妄想させてくれる、このフィギュアセットは、カーモデラーはもちろん、ベトナム戦争関連のキットを組んだ後のミリタリーモデラーにも組んでいただきたい逸品。模型を通じ戦後の反戦ムーブメントが生んだカルチャーに触れることで、世界の歴史をより深く楽しめるはずです。ぜひ、70年代の若者たちのサイケな青春群像劇をあなたの作業デスクで繰り広げていただきたいです!