プラッツ/nunuのブランドで発売された「トヨタセリカ ツインカムターボ TA64 1985 サファリラリー ウィナー」である。バッキリした直線基調のボディスタイルはサイズ以上の押し出し感で「いかにもクルマ!」というアウトラインを強調してくれる。何度でも書くが、nunuのカーモデルは現時点で世界最高レベルに迫る組みやすさだ。こう書いてしまうと身もフタもないのだが、タミヤのカーモデルに設計思想を似せているように感じる。組み立てや塗装で失敗しづらいように配慮されたパーツ分割、信じられないほど貼りやすいデカールはこのキットでも健在だ。
フロントガードはサファリの証!クルマの顔面にアメフト選手のような屈強さがプラスされて非常にいい。ラリーカーだから前方にたくさんのライトが取り付けられるのも素敵だ。ライトケースは白、内部のリフレクターはメッキパーツ、レンズは透明で用意されているから、ほとんど貼るだけで「設定通り」になるのもうれしい。
パーティングライン(パーツ表面に見られる金型同士が合わさる線の名残)はほんの少しだけバリっぽく、毛羽立っているところもあるが、これはスポンジヤスリやデザインナイフでひと撫ですれば解決する問題だ。
ボディと内装は白、それ以外のメカニカルな部分は黒のプラスチックとなっているのもすごくいい。カーモデルというのはチマチマ塗装して慎重に組み上げなければいけないからちょっと難しそうだ……と思っている人にも胸を張っておすすめできる。塗らずに組んでも、それっぽくなる……というのはキャラクターモデルだけの特権ではない。
それに加えて、カチッとした彫刻のサスペンションと、いかにも布でできていますという柔らかそうなパーツの対比もまた良い。何も考えずにカーモデルを貼って、おおクルマの形になってきたぞ……とほくそ笑むのもいいものだ。
説明書には「半ツヤの黒で塗るべし」という指示が何箇所も登場する。確かにシートやダッシュボード、内装の黒い部分は黒くなっていたほうが気分が盛り上がる。もしあなたが筆一本を持っているのなら、半ツヤの黒を一本買ってきてサラサラと塗ればいい。ツヤあり、ツヤ消しを揃えて……とやらんでも、まず黒いところが黒くなっているということが嬉しい。筆塗りならマスキングだっていらない。必要なところにだけ、黒をそっと乗せればOK。
nunuのカーモデルを作るときは、だいたい黒一本でどうにかなる……と思っている。完成後に室内を覗き込んでまじまじとその出来栄えを観察するのではなく、ガバっと全体の印象を楽しむのなら多少よれよれしていても気にならない。ムラも、はみ出しも、あなたがプラモを作った証だ。それより何より、ボディを覆うカラフルなデカールを根気よく貼ることが「ラリーカーらしさ」を演出するための主要なカロリー消費先に違いない。
塗装指示は「実物はこんな色ですよ」という提案にすぎない。オレが色を付けたいのはこのパーツとこのパーツ。全部黒でヨシ、あとはボディーワークを楽しみ、サファリへドライブするぞ!と決意しちゃえば、ほら、案外大丈夫。イージーに、肩の力を抜いたってきっとカッコいい姿を見せてくれるのが、nunuのプラモ。最後に土埃の色を塗りたくってもいい。作りながら寄り道して、思わぬところにたどり着くかもしれないのがラリーカー作りの楽しさなのだ。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。