

たくさんプラモデルを作っているけれど、衝動に負けて、筆が届かなくなると知っていながら組み立ててしまうことが本当に多い。そのたびに「ここはちゃんと塗れないな」と思いながら、無理やり筆を突っ込んでせめて色が載っている状態にしようと試みたり、「まあ、見えないからいいか」と気を取り直したりしている。
タミヤの1/48 イギリス戦車 チャーチルMk.VII クロコダイルは、そうした見えなくなる部分のキャタピラがあらかじめ省略されているキットだ。これは2018年の発売当時も話題になったんだろうなと思うくらいにインパクトがある。

慎重に作っているときはそうでもないが、プラモデルというのは不思議なもので、よくできていればいるほど組み立てが気持ちよくて、そのまま次の工程へと手を進めてしまう。チャーチルのキャタピラがすべて再現されていたとしても、たまらずぐるっと一周巻きつけてから次へ進んでいただろうし、省略されていても一気に作ると「へー」とわずかに関心を示す程度だったと思う。
ただ、今回感じたのは、「ないものは塗れない」という気づきだ。見えない場所に何かが“ある”という前提があるからこそいろいろと考えてしまうわけで、最初からそれがなければ、考える必要はなくなる。「ないから塗れないんだ」と思いすらしない。私が気づいたのは途中でしばらく放置しながら時折チャーチルのことを思い出して、少し考えて……みたいなことをしていたからだ。

組み立ての快感と、塗装を考えたときの効率を天秤にかけて悩むか、それとも作った後に「あーあ」と思うかという組み立てる側の人間の心理状況を見越しているかのように「隠れてしまうから最初から存在しないキャタピラ」がある。
ないものは塗れないのか!というのは、数字のゼロの概念みたいな感じで気付いたときはかなり面白かった。当たり前のことを言っているような気もするが、実際に作ってみると、見えないところを塗るかどうかの葛藤すらも消し去られているようでプラモデルの不思議に対峙することができるだろう