

キット付属のこのドライバーを見たら「わ、タミヤのバイク模型だ!」と思わず声が出てしまいました。今回はプラッツとBEEMAXのダブルネームで発売されたスズキRGV-Γです。1993年のWGP500におけるチャンピオンマシンが30年以上の時を経て、ついにプラモデルになった……ということに、わりと世界中のバイクモデラーが歓喜し、なんならちょっと泣いています。
>ホビコレ プラッツ/BEEMAX 1/12 スズキ RGV-Γ (XR79) 1993 WGP500 チャンピオン
1/12のバイク模型といえばタミヤとハセガワが精力的に新製品を発売していますが、とくにレーサーバイクといえばタミヤのフィールドと言っていいでしょう。しかし振り返ってみればタミヤは「旬のバイク」を模型化する傾向にあり、現代の技術で往年のマシンをプラモデルにする的なムーブはあまり見られません。RGV-ΓといえばフジミはXR74、タミヤはXR89を模型化していますが、XR79はこれまでプラモデル化の機会に恵まれませんでした。

もしあなたがバイクの型番を知らなくても、ケビン・シュワンツというライダーの名前は聞いたことがあるかもしれません。彼の功績やレイニーとの激闘、なぜXR79が特別なマシンなのかという説明は『月刊モデルグラフィックス』の最新号がこれ以上なくしっかりとまとめているのでここでは割愛しますが、「コイツはバイクレース史を語るうえで絶対に欠かせないマシンなのだ!」ということをこの製品を通じて知るのもGOODです。

パーツはむやみやたらと細かく分割せず、主要なパートは極力ひとまとまりにしてダイナミズムのある組み味を意識していることが窺えます。カウルは白、それ以外はシルバーのプラスチック……という構成も相まって、組む前にランナーを眺めた印象がタミヤ製のバイクモデルを彷彿とさせます。
とはいえ21世紀の最新キットですから、バイク模型の達人が古いプラモデルに手をいれるときに気にするポイントはあらかじめ精細な表現ができるようかゆいところに手の届く細部表現も適度に織り交ぜてきます。
象徴的なのはチェーンのパーツでしょう。ひとかたまりのパーツでは表現できないローラーの隙間をよりリアルに表現できるよう左右2枚に分割されています。

この手法はタミヤが2022年に発売したドゥカティ スーパーレッジェーラV4で取り入れられ、多くのモデラーを驚かせましたが、今回のBEEMAX製RGV-Γではローラーをひとつおきに左右のパーツから生やし、接着するとホンモノ同様に等間隔に隙間のあるチェーンができる……という設計。タミヤの最新バイク模型からアイディアを学び、そのメリットとデメリットを見極めて新たな表現に昇華した(しかもモチーフは30年前のバイク!)というところにストーリーがあります。

いかにも最新キットだなぁと思わせるのはハンドルやエキゾーストパイプのエンドがスライド金型によって開口されているところも同様。オーソドックスな佇まいの中に、93年当時のバイク模型では見られなかった「組みやすさとリアリティの両立」をそこかしこに散りばめたパーツ構成がエモいのです。

実際に手を付けてみると、パーツの見た目から受ける印象よりもやや歯ごたえのある組み心地です。パーツの精度はタミヤにやや及ばず、また切断痕の処理をしっかりしないとパーツ同士がしっかりと所定の位置に収まらない部分も多く見受けられます。カッチリと組み上げるには、パーツを仮合わせしながら慎重に取り付けていくことが求められます。

ともあれ、93年型のRGV-Γが発売されたこと、そしてそれが21世紀水準の解像度を持ったバイク模型であることには変わりありません。このマシンの名前を見てピンときた人は必ず手に入れたい一品でしょうし、そうでないあなたも「こんなバイクがあったんだ」ということを知り、さらにBEEMAXという「’80年代〜’90年代の忘れ物を実直に模型化するメーカー」に触れる良い機会と言えます。みなさんも、ぜひこのキットに挑んでください。そんじゃまた。