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タミヤへのリスペクトを感じながら快適に組み上げるF1モデル、BEEMAXのMP4/2B

 考えてみたら、F1マシンのプラモデルはタミヤ製のものしか組んだことがなかった。入手しやすく、組みやすく、モチーフの年代も幅広い。タミヤと同じ1/20スケールで発売されているBEEMAXというメーカーのMP4/2Bはおなじみのマルボロカラーが眩しいけど、みんなが知っている宇宙最強のマクラーレン・ホンダの組み合わせではなく、TAGポルシェと呼ばれるエンジンを積んでドライバーの腕力でなんとか勝ち点をもぎ取っていた1985年のマシンだ。自分にとって馴染みがないモチーフというのは、プラモデルを作るうえで格好のチャンスである。プラモデルを作れば、昨日までの他人と友達になれるのだから。

 パーツのルックは上々。立体感の強い彫刻と、いかにも詳細なリサーチを感じさせるパーツ表面の微妙な起伏を眺めておもむろに組み始める。車体を被せればほとんど見えなくなるから、塗装のことは考えずに淡々と。いきなり自分で穴を開ける指示が出てきたり、そのままではうまくハマらないところがあったりするが、これはあくまで「ちょっとした調整」の範疇に収まる。特別な工具がなくても、ニッパーとナイフと接着剤さえあれば順調に組み上げられると言っていいだろう。

 なによりパーツの設計は確かなので、収まるように収めていけば排気管の行き先があやふやになったりすることもないし、ノリシロが行方不明になっているところもない。コンパクトな1.5リッターV6のエンジンにターボチャージャーが20分ほどで手に入るのは、パーツ数が良い塩梅に少なくまとめられているからだ。「現代的なキットとは精密でなければならないし、そのためにパーツを可能な限り細分化する」という哲学ではこうはいかない。組んでいるときのスピード感は、タミヤ製のF1モデルを組んでいるのに極めて似ている。

 ホイールをアップライトに取り付ける段になってあっと驚く。センターロックナットを模した六角頭のネジを、プラスチックパーツとして用意されたボックスレンチで留める設計になっている。これはまるで、往年のタミヤ製1/12スケールF1モデルを模しているかのようだ。

 写真を撮ったり休憩を挟んだりしながら、シャーシが組み上がるまで3時間フラット。何も考えずに組んで、ピシッと4輪が接地するのには驚かされる。ここまでに使ったパーツはすべて真っ黒だが、表面の質感はCFRPや金属を感じさせるよう部位ごとに変えられている。抑制されたパーツ数で、パーツがあるべきところに収まり、気を抜いて組んでいてもシャキッとしたマシンが出現する。これは当たり前のようでいて、なかなか真似できることではない。

 細密化やトリッキーな技に走ることなく、実直な設計で「ちょっとマイナー」をモデルアップしてくれるBEEMAXのフィロソフィー。もしF1モデルの「お手本」があるとしたらそれはタミヤ製品だと信じているが、彼らその姿をまっすぐに学び、まだ模型化の日の目を見ていないマシンをみんなに届けようとしているのに違いない。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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