
Hondaの新世代ネイキッド、CB1000Fのプラモデルがタミヤから発売されました。モンキー125やダックス125といったアイテムを除けば、ここ10年ほど明らかにスーパースポーツに注力してきたタミヤがここでいかにも懐古主義的なコンセプトを持ったマシンをプラモデル化するという流れには、新型プレリュードにも通じる「その名前に特別な感情を持たない世代の自分にも入り込めるだろうか」という一抹の不安のようなものを感じる自分がいました。しかし、ハコを開けた瞬間にそんな気持ちは消え失せ、むしろ「これを組まずしてなんとする!」と思わされたのです。

ネイキッドバイクのプラモデルは基本的に大きな嘘がつけません。フレームがあってエンジンがあってタイヤがあってハンドルがある……という構造そのものがフォルムを決定し、それが完成後も丸見えだからです。パーツのカタチや分割はおおむね実物とほぼ同じになるし、それらがどう組み合わさるかも実車の組立工程に従わざるを得ない。なのでバイクのプラモデルの構成というのは古いものを組んでも最新キットと大きな違いはありません。しかし、だからこそディテールの再現や組みやすさ、パーツの精度が究極的に磨き上げられ続けているジャンルであるとも言えるはずです。

たとえばプラスチックでチェーンのパーツを実物らしく見せるにはどうしたらいいか。2枚に割って中央に丸い彫刻を並べれば、ローラーのディテールが再現できる。たとえばこれは4年前にタミヤがドゥカティのスーパーレッジェーラV4というプラモデルで取り入れた新しい考え方です。
ブレーキディスクにたくさん開けられた穴を再現しようとすると金型製作や成形が非常に難しいため、プラスチックパーツだと丸い凹みで表現されるのが普通でした。しかしこれもタミヤは実際に穴の開いたパーツにして「ひとつひとつドリルで穴を開ける」という定番のディテールアップを過去のものにしてしまいます。さらにCB1000Fではインナーローターとアウターローターを別パーツとし、組み立てながらフローティング構造を感じると同時に塗り分けの手間も軽減する設計としています。

ブレーキディスクにこれだけ穴が開けられるのなら……と考えたかどうかはわかりませんが、本キットのなかでも最大の見どころのひとつに「SE」タイプで装備されるラジエーターグリルがあります。繊細な三角形の穴が美しく並び、縦横に極細の凹線が刻まれているこのパーツは、肉眼で見てもプラスチックでできているとは信じられないほどの造形です。ディテールの密度、ツヤ、エッジの処理があらゆるところで精密にコントロールされていて、「ごく薄い金属板をプレスして作っている」「鋳造されている」「柔らかい素材のなかに硬いメッシュが仕込まれている」といった実物の構造/製法までプラスチックパーツが伝えてくれるのです。

プラモデルはパーツをひたすら細分化していけば良い製品になるのか。ホンモノのバイクとまったく同じカタチで作られた超細密なパーツを実物と同じように組み上げるのは現実的じゃありませんし、なにより楽しくない。だからこそ、タミヤはいつもパーツ数を抑制し、なるべく少ない手数で実物らしさを味わえる体験を作り上げています。ランナーの枚数に圧倒されることなく、しかしそこからより実車の特徴を捉えたパーツたちがこちらに語りかけてくる。そんな佇まいがこのCB1000Fにもしっかりと息づいています。

飛行機や戦車はもちろん、タミヤ以外のバイク模型を見て「昔に比べて表現力は増したけれど、最近のプラモデルはパーツが多くて……」と感じる人は少なくないはずです。しかし、ここにはタミヤ流のバイク模型に対するプライドがあります。ここ10年定点観測してきたタミヤ製バイクプラモデルのありとあらゆる「表現の引き出し」を結集し、さらにCB1000Fならではの新たな挑戦を盛り込んだ意欲作。漫然と組み始める前に、ぜひともひとつひとつのパーツをじっくりと眺めてください。そこには驚くほど繊細で、しかし組み立てる人のワクワクを決して損なわない優しさを兼ね備えた仕掛けがたくさん潜んでいます。みなさんも、ぜひ。