プラモデルのバイクに「チェーンの革新」がやってきた/タミヤ ドゥカティ スーパーレッジェーラV4 レビュー!

 タミヤのバイク模型新作、ドゥカティ スーパーレッジェーラV4はチェーンのパーツが2枚下ろしになってランナーに収まっています。いままでのバイクのプラモって、チェーンのパーツはひとつでした。なんでふたつも入っているのでしょう。ここに「最新のバイク模型は最新のアイディアが入っていないとね!」というタミヤのこだわりがあるんです。みんなも見て。

 チェーンというのは小さなローラーを8の字型の板で互い違いに挟むことで等間隔に隙間を作り、そこに歯車が噛み合うことで力を伝達します。言われてみりゃそうなんですけど、これを1/12のプラモで再現すると大変です。そもそもワンパーツではこのミゾは絶対に再現できないし、どうしてもこの雰囲気を模型で演出したい人は「2mmくらいの幅のチェーンのパーツに自分でビシッとミゾを彫る」というとんでもない職人芸を見せたりします。すごすぎ。オレには無理だね。

▲こちらは自転車のチェーン。ローラーが等間隔に並んで歯車に噛み合うよう8の字型の板で挟まれています

 下の写真はタミヤのホンダ RC166です。正直言って大傑作です。世界中の人が一回は組んだほうがいいプラモ。実物を知らなくても「このバイク、めっちゃすごい!」ということがビンビン伝わってくる最高のキットなんですが、チェーンを見てください。1パーツで再現されているから、歯車に引っかかるための穴(ミゾでもいいです)がないんですよね。チェーンの左右方向にパカッと離れる金型を使って作られるので、横から見たチェーンのカタチがそのまま押し出された形状。歯車と当たる部分(あるいは外側の面)はまっすぐな崖のようになってしまう宿命。タミヤからはこのプラモ用に「実物と同じ構造のチェーンを金属パーツでちまちま作る用キット」というのも用意され、発売当時は大いに話題になりました。

▲これまでのバイク模型のチェーンはこんな造形。横から見ればじゅうぶんそれらしく見えます。が!

 そこで今回、タミヤはスーパーレッジェーラV4のキットで「チェーンを2枚にすればまんなかのミゾがそれっぽく表現できるぞ」ということに気づき、チャレンジしました。たかがチェーン、されどチェーン。バイクのエンジンとタイヤをつなぐ文字通りの生命線ですから、ここに「本気」が宿ります。モデラーのテクニックじゃない!メーカーが用意したこの回答で誰もがチェーンの本質に近づける!ふたつのパーツを貼りあわせるのだ。

 歯車に巻き付いたチェーンのパーツをうんと拡大してみると、外側のコマと内側のコマとローラーが極薄い空間にビターっと彫刻されていることに気づきます。もう半面のチェーンパーツにも同じように外側のコマ/内側のコマ/ローラーの半分が彫刻されていて、ふたつを張り合わせると「真ん中にちょっとだけ空間のあるチェーンの雰囲気」が表現できることに気が付きます。書くのは簡単ですが、設計するのも金型作るのもそこにちゃんとプラスチックを流し込むのも、めちゃくちゃ大変です。明日真似しようったって、うまくいくもんじゃありません。

▲チェーンを真ん中で真っ二つに割ったカタチに微細な彫刻が入っているのです

 正直言って、こんなことはバイク模型に触れたことがない人からすればほんとうに些末な話です。でも、プラモはユーザーの小さな声を拾って、人知れず、ちょっとずつ、しかし情熱的に変化しています。もちろん、このチェーンだって「実物そのまんま」ではありません。でも、チェーンがチェーンらしくあるために、いまできる工夫をこうして盛り込まれているわけです。

▲二枚貼り合わせると、たしかにチェーンのカタチだっ!

 孤高のレースの単独首位を走りながら、しかしいつだって追い抜かれないようにコーナーを攻め、最速ラップを叩き出す。タミヤのプラモデル作りにおける唯一のライバルは、タミヤ自身なんだなと思わされる新しいアイディアなのでした。このキットはあと10回くらい語れるね。みんなも買って作りましょう。そんじゃまた。

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からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。