

バンダイから発売されている「1/35 サンドランド国王軍戦車隊104号車」。ちょっと前に完成させたんですが、これは本当にめちゃくちゃいいプラモです。「戦車の概念」の模型と言っちゃっていいくらい。「戦車、なんかおもしろそうだけどどういう乗り物なのか全然わかんねえな〜」という人にも、そして「戦車、知れば知るほどよくわからなくなるな〜」と思っている人にも、ぜひオススメしたいキットです。

戦車は、第一次世界大戦で新兵器として実戦投入された兵器です。そもそも作られた目的が「猛烈な攻撃を跳ね返しつつ、敵の塹壕を乗り越えて攻撃を加えて戦線を突破する」というものだったので、必然的にその車体は分厚い金属の板で覆われ、開口部は最小限になるよう設計されました。

その結果、戦車は「外から見ると、中がどうなってるのか全然わからん」という乗り物になりました。狭い車内に乗員が4〜5人詰め込まれ、そのほかに大砲や砲弾や機関銃やその銃弾や動力源やトランスミッションや燃料や通信装備などなどが配置され、さらに最近では各種のハイテク装備も突っ込まれています。もちろん「戦車の中はこうなっている」という透視図を掲載した専門書などはたくさんあるんですが、戦車という乗り物の内と外を立体的に把握することはなかなか難しい。
で、戦車模型を作る人なら一度は考えるのが、「実際の各部装甲厚も再現しつつ、車体の内部の装備品も全部再現した、インテリアもエクステリアも全部入りの戦車模型」です。実際にそういったフルインテリア再現キットは存在していますし、インテリア用のパーツが別売りで売ってたりしますが、どうしても部品点数が増えるので作るのが大変だし、完成すると外からは何も見えなくなってしまう。戦車というのは開口部が少なければ少ないほどいいという、ものすごく変な乗り物なので……。

前置きが長くなりましたが、そういった「戦車は外から中が見えない」「しかし戦車の中には大量の装備品が搭載されており、乗員の居住空間としても機能する」みたいな、戦車という乗り物の変で面白い部分を文字通り立体的に理解させてくれるのが、「1/35 サンドランド国王軍戦車隊104号車」なわけです。
このキットのすごいところは、まずほぼフルインテリアキットであるという点です。車体後方に配置されているのであろうエンジンルームはさすがに内部まで再現されていませんが、キャラクターが搭乗している戦闘室や砲塔の内部はミソがしっかり詰まっています。この車内パーツのモールドがキレッキレ。しかもパーツを一体化した部分と分割した部分の見極めがとても的確で、「ラックに機関銃の弾薬ケースやジェリカンを一個づつ詰めるような作業はしたくないけど、大砲の尾部はほどほどの手間でメカっぽい雰囲気を味わいたい」みたいな、めんどくさがりの心模様にぴったり寄り添ってくれます。しかも全部スナップフィット。「接着剤を使わずに(ほぼ)フルインテリアの戦車模型を作ることができる」という点にクラクラきます。未来だな〜。

そしてもうひとつイケてるのが、デザイン的に開口部がかなり大きいという点です。接着しなければ完成後も前と左右のハッチがバコンと大きく開くので、完成後も中身がよく見えるのです。これはけっこうすごい。架空の車両だからなんですが、しかしオープントップの車両以外で今までこんなに「完成した後も中身がしっかり見える戦車」というのはなかったかもしれません。
完成後にこの戦車の中身を見ていると、なんだか不思議な気持ちになります。戦車兵でもない人間にとって、戦車というのは普段はガワしか見えていない、中のことがほとんどわからない乗り物です。しかし、その装甲の内側には部品があれこれとくっついており、そしてそれらを取り扱う兵士が乗っている……という、当たり前だけど普段はさほど実感していないことを、サンドランドの戦車は改めて気づかせてくれました。乗り物としての戦車の特徴を端的に表現しているこのキットは、まさに「戦車の概念」を誰でも組み立てられるプラモデルにしたものと言っていいと思います。こんなプラモ、前代未聞です。

普通に色を塗らずに組み立てても面白いキットなんですが、戦車という乗り物のヘンテコさを味わうためにおすすめなのが、内側と外側をかっちりと違う色で塗り分ける遊びです。戦車の戦闘室の内部は白っぽい色で塗られていることが多いので、自分は缶スプレーのガルグレーを車内側全体に吹き付けた後で、細かいところをちょっとだけチマチマと塗り分けてみました。これをやるだけで、「戦車には内側と外側がある」感じが爆上がりし、「ああ、戦車ってこういう乗り物なんだなあ……変だなあ……」という気持ちになりました。

戦車に興味を持つようになってけっこう経ちますが、まさか「戦車というのはこういう乗り物なんだよ」と改めてバンダイのプラモデルから教えられるとは思いもしませんでした。今まで何個もAFVモデルを作ってきた人にとっても、けっこう新鮮な体験ができるキットなはず。ぜひともチェックしてほしいです。