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なぜあなたのプラモデルは暗く沈んだ色になるのか/タミヤの三原色で探検する調色の森

 タミヤの調色用カラーがある。これは既存の塗料に混ぜることで思いのままに色調を変えることができるので、とりあえず3本とも手元に置いておこう。混じり気のないブルー、レッド、イエローなので、理論上はこれらを混ぜることでいかなる色でも作り出せるはずだ。

 さて、ドイツ Ⅳ号駆逐戦車/70(V)ラングを塗った。説明書に従ったのは塗り分けのパターンだけで、色調はデタラメである。デタラメと言っても好き勝手に塗ったのではなく、ドイツの三色迷彩がカッコよく塗れている(ように見える)人のプラモデルを観察して、「鮮やかで明るいのに汚れがググッと引き立っているのはどうしてか……」というのを研究し、自分なりに真似をした。

 そして生まれて初めて「鮮やかで明るい戦車模型」を塗る糸口と、もう少しイケそうな手応えを感じた。実在する戦車はこんな色をしていないかもしれないが、模型的な派手さを演出できるのは模型ならではの楽しみだ。

 こちらがタミヤの指定色をそのまま塗ったカラーチップだ。LP-56 ダークグリーン2、LP-57 レッドブラウン2、LP-55 ダークイエロー2(写真ではタミヤアクリルを使ったのでXF-88になっている)の3色。それぞれちゃんと実物の色について研究し、お互いの色調が調和するようにチューニングされている。もちろんこれを塗れば「タミヤの提示した正解」になる。しかしそこにサビや泥汚れやホコリ汚れを乗せていくと、どうしても暗く沈んだ完成品になってしまう。先述した「鮮やかで明るい模型的な派手さ」からはどんどん遠ざかる。

 「プラモデルは実物より小さいので少し明るく塗ったほうが雰囲気が良い」とか、「遠いところにある物体は空気遠近法で霞んで見える」なんて話がある。そこでそれぞれの色に適宜白を混ぜる。色に白や黒を混ぜると明度がコントロールできる。明るいのは「明度が高い」と言い、暗いのは「明度が低い」と言う。そのかわり、色は鮮やかさを失ってしまう。混じり気のない色に近ければ近いほど「彩度が高い」と言い、複数の色が混ざれば混ざるほど「彩度が低い」と言う。写真の3色は明度が上がったけど彩度は下がった状態だ。

 そこで、混じり気のない色……つまり調色用カラーを足す。タミヤの調色用カラーはCMY(青、赤、黄)の3色しかなく、緑は青と黄を混ぜれば作れるのだが、コントロールが難しそうなのでクリアーグリーンで代用した。明度は大きく変わらず、いきなり鮮やかな3色に変化した。ほんの少しの量で劇的に色が変わるので、調色のときは細い棒の先端にほんの1適ずつ色を付け、それを混ぜるようにしてコントロールしよう。

 左が指定色の三色迷彩(瓶からそのまま塗ったもの)、右が明度を上げて彩度を補った「オレ流三色迷彩」である。もはやミリタリー感は微塵も感じられず、雑貨に使われるような3色に見えるけど、自分を信じて塗ってみる。ダークイエロー(だったもの)の上に重ねることで緑や茶色は少しくすむし、そこからさらに上に乗せる汚し塗装で色調が落ち着き、ホコリ色のスプレーを薄くかけることでお互いの色が調和するはずだ……。といいながら、怖い。

 塗ったときの鮮やかさは目もくらむようなもので、汚し始めは「ヤバい。こりゃ目指していたものとは違うかもしれない」と思った。でも、暗く沈んだサビや土の色を要所要所に(しつこいくらいに!)足し、広い面には明るいホコリ色をふんわりとスプレーして、ディテール周りのコントラストは強く、色どうしのケンカは仲裁するという作戦でどんどん汚していく。

 結果的に、目指していた山頂の8割くらいのところまでたどり着けた。黄色はもっとスカスカした明度の高い色でいいし、茶色は赤みが強すぎるから調色用レッドをもっと減らしたほうがいい。でも、鮮やかさと明るさのある戦車模型を塗る理論は理解した。次はきっと、3倍うまく塗れる。戦車だけじゃない。飛行機やキャラクターモデルでも、「指定色で塗ってから汚していくと、どうしても完成形が暗く沈んでしまう……」とお悩みの人は、ぜひこの方法を試してもらいたい。調色用カラーは、色を手懐ける上で基本にして究極の調味料なのである。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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