柵もなくコースの上まで覆いかぶさった観客をかきわけながら突っ走る。カメラに砂をかけながら大ドリフトするヘアピンカーブ。道の段差は底が見えるほどの大ジャンプ。動画サイトでもGroup Bと打ち込めばあまりに過激で凄まじい世界を覗くことができます。グループB、ラリーカーが乱れ咲いた時代。そのなかでもアウディは4WDのパイオニアとして好成績を納めました。
>ホビコレ プラッツ/BEEMAX・NuNu 1/24 シリーズ アウディ スポーツクワトロ S1[E2] 1986 モンテカルロ ラリー
大きなスポイラー、まるで鎧をまとったボディ、ごついリアウイング。以前同じ’86年のアウディを紹介したことを覚えていますか? あれはまだ市販車の面影が残っていますが、こちらはもう「私がグループBだ!」と言わんばかりのカチコチな姿になっています。
リアウイングなんて、本当に空力で車体を抑え込んでやると言わんばかりの枚数です。F1の世界でも’80年代はターボのパワーと大きなウイングが流行っていました。
唸るエンジンのパワーを空力で抑え込むという目的が、このような過激な姿を生み出しました。そもそも4WDという他のマシンにはなかった武器を持っていたアウディですが、ライバルチームもそれを黙って見ているわけがありません。4WDを続々採用し、アウディのアドバンテージを消してしまいます。そんななかで勝つために何でもする、そういう姿勢が空力パーツにも表れているのです。
スバルが最初に持ち込み、アウディが草分けとして育てた4WD。模型でもそのパワートレーンが前後4つのホイールに導かれているのが見て取れます。完成後はたとえ見えなくなったとしても、組んだことでよくわかる。
空力パーツや細部を引き締めたいなら、金属で薄さをしっかり表現したオプションパーツを買いましょう。おや、大人の事情で入っていなかった、HとBのマークが入っていますね……?
おりしも’86年は、グループBの黄昏でした。ただ速さのみを求めたモンスターたちがその力を制御しきれなくなり、度重なる重大事故によってカテゴリー自体を終了することになりました。アウディもまたグループBで栄光を手にしたものの、後半にはトップから遠のくことが増えてしまいました。そのため、序盤のアウディ クワトロこそプラモデルに恵まれましたが、ここまで過激でアイコンとなるような姿でありながら、近年まで立体化されることがなかったモチーフなのです。
近年ラリーへの注目は再び集まり、今年こそワールドラリー選手権は開催されることでしょう。最もラリーカーが過激だったころの姿は、意外にも現代のラリーカーにも通じる部分があります。フロントスポイラーやフェンダー、大きなリアウイング。そして何より4WD。アウディの育てたテクノロジーは、現在も息づいているのだということを噛み締めながら作ってください。白と黒のプラスチックがうまく配置されているので、組み上げてデカールを貼るだけで完成見本にかなり近いものが手に入りますよ!
>ホビコレ プラッツ/BEEMAX・NuNu 1/24 シリーズ アウディ スポーツクワトロ S1[E2] 1986 モンテカルロ ラリー
各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。