いますぐ作っていいんだぜ!/タミヤの最新バイクプラモ「ドゥカティ スーパーレッジェーラ V4」にディテールアップパーツがいらない理由。

 タミヤの最新バイクプラモデル、ドゥカティ スーパーレッジェーラV4のすっごいところに「チェーンがちゃんとチェーンの形になっている!」という話がありました(下のリンクから読んでね)。このキット、じつはまだまだ組む前に語ることがあるんですよ。たとえば上のブレーキディスク。細いフレームで支えられた円盤にいっぱい穴が空いてますよね。

▲こっちは同社の前作、チーム スズキ エクスター GSX-RR ’20です。ブレーキディスクの穴は貫通してません

 いままで実物では貫通しているブレーキディスクの穴を凹みで表現してきたタミヤが、今回は「樹脂でできることは可能な限りやってみようぜ!」とスロットルを全開にしていることがわかります。

 全日本模型ホビーショーの会場でタミヤブースの開発マンに訊いたところ、「複雑な形状なのでプラスチックが金型のなかでキレイに流れる条件を出すのがむずかしいとか、ゲートの数が多くなるというデメリットもありましたが、今回は実物どおり穴が貫通しているディスクにチャレンジしました!」とのこと。なるほど、チェーンで見せたこだわり……つまり、「プラスチックでできることはプラスチックでやる」のが今回のテーマなのかもしれません。

▲この記事ではハイパーアジアが穴をひとつひとつ自分で貫通させている!

 タミヤのバイクプラモと言えば、決まって同社製のディテールアップパーツセットが発売されるものです。実物が薄い金属でできているところは本当に薄い金属で再現するとか、フロントフォークのチューブをキレイなアルマイト加工された挽き物に置きかえるといった方法で「より実車の持つディテールを正確にスケールダウンし、同時に質感も向上させる」というアイテムです。

 先程のスタッフにぶつけた「今回のスーパーレッジェーラV4ではディテールアップパーツセットが発売されないようですね?」という質問に対し、返ってきた答えがまたピシッとしたもので、すごく嬉しくなります。

 たとえばこのスズキGSX-RRで見られたエキゾーストの先端のハニカム(六角形の模様になっている)メッシュ部分。写真はハニカム模様が彫り込まれたプラスチックパーツですが、ディテールアップパーツではここを金属薄板に置きかえることで「中が空洞でメッシュが貼ってある状態」に仕上げられました。

 しかしプラスチックで表現された微細なハニカム模様はエッチングパーツで再現するのが難しく(強度が落ちるし、曲面に合わせるための曲げ加工もシビア!)、単純な模様としての正確さならば樹脂パーツに軍配が上がります。実感を取るか、形状を取るか。金属と樹脂には再現できることにトレードオフの関係があるのです。

 最新作のスーパーレッジェーラV4ではなんとこの部分を透明パーツで再現。凹んだ部分に色が乗らないようハニカム模様を塗装すれば、しっかりと奥行きのあるエキゾーストと微細な六角形が同時に楽しめる……という提案がされています。なるほど、これなら黒いパーツ再現するのとはひと味違う見た目になるでしょう。

 フロントフォークについても「スーパーレッジェーラV4はチューブも短くメタリックカラーの部分が少ないため、金属化することでどれくらい見栄えが向上するかということを考えるとその効果は限定的。さらにトップブリッジ周辺の造形がとても複雑で、プラスチックでは容易に量産できるけれど金属をひとつひとつ加工するのはなかなか難しいカタチをしているのです」という回答が。

 こうした工夫や冷静な判断がひとつひとつ積み重なり、「今回は樹脂でやれるだけやっておきましたから、みなさんそのままストレートに楽しんでください!」という内容になっている。なので、タミヤからは純正のディテールアップパーツは「あえて」発売されないということなのです。これをデメリットに感じさせないだけのロジックと、それでも満足できるだけの彫刻をしっかりと金型に叩き込んだタミヤのプライド。ぜひともパーツを手にして、じっくりと眺めてください。そんじゃまた。

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からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。