
もう最初から最後まで、徹頭徹尾「すごい」という感想で走りきれるとんでもないバイクモデルです。タミヤの完全新金型アイテムとしてはおよそ四半世紀ぶりに登場したネイキッドバイク、そしてHondaが伝統と革新を掲げて「CB」の名を冠した超最新マシンの模型ですから、すごくないわけがないのだけど……それにしてもすごい。
ゴムホースの中に編み込まれたワイヤーが入っているラジエターホース。実物を見ても「硬さと柔らかさが同居した不思議な感覚」を覚えるのですが、それが硬質なプラスチックで完璧に再現されています。このキットの見どころのひとつは、プラスチックという素材にどれだけ多彩な質感を持たせ、演技をさせるか……というタミヤのテクニックがまんべんなく散りばめられているところ。もちろんツヤ感のコントロールも素晴らしい。

プラスチックの演技力がすごいから、塗らずにただ組んだだけなのにエンジンがセクシーなカタマリになってしまう。最近のバイクは多様な素材感の集合体というよりも黒い塊に見えるものが多いので、プラスチックの色を信じて組み上げるだけでも実物に近い印象になります。このへんは「バイクのほうがプラモデルに寄ってきてるよなぁ」と感じるポイント。

2枚おろしのパーツ構成によってローラー部分まで立体感のあるチェーンの造形は同様の手法をとっていたスーパーレッジェーラV4よりもさらに攻めた設計になっており、チェーンのコマのフチの薄さ(最薄部で0.2mmなんだとか!)、ニッパーで切ったときのゲートの痕の残りづらさも含めて圧倒的な進化を感じます。どうしてもこのパーツだけは黒いままだと申し訳ない気がしてガンメタルのアクリルマーカーで色を塗ってしまいました。浮き上がってくるディテールにうっとり。

もちろんパーツがむやみやたらと細かくなっているわけではなく、たとえば左右分割で貼り合わせに神経を使うのが当たり前だったフロントフェンダーはスライド金型を駆使した一体成型。1点ゲート(ひとつの入口からプラスチックを注入する金型設計)とすることにより、プラスチックが冷えて固まるときに現れるビヨビヨした模様(=ウェルドライン)が出ないように配慮されています。表面もツルツルのツヤで、実車の雰囲気をよく再現しておるな。

フロントサスのキラリと光るインナーチューブはメッキパーツの筒をスルッと嵌め込むパーツ構成。ここは従来のバイク模型だと金属の削り出しパーツによってディテールアップするとか塗装でどうにかするとかまるまるメッキされたパーツを塗り分けるとか、とにかく「再現するにはひと手間必要な場所」だったので「なるほどその手があったか!」と。ちょっと細かいことを言うと、アンダーゲートを採用したことで完成後も切断痕が見えないのがまたGOODでございます。

公道仕様のバイクを作るときに避けられないのがエキゾーストのメッキパーツ。正直「エキゾーストが金属むき出しじゃないこと」がレーサーを作る理由である私にとってここは最初ネガティブな要素だったのですが、接着するためにメッキを剥がす場所(超最低限!)を説明書で丁寧に図示し、さらに隙間が開きそうな中央部をビス止めで圧着するという構成に!さらにこのビスはマフラーカバーで隠れる……という至れり尽くせりの内容。

クリアーパーツの表現力もまた鬼であり、ヘッドライトはぎゅっと押し込めばきちんと固定されるスナップフィット仕様。小さいものも説明書で指示された接着剤をうまく使い分ければビシッと仕上がります。ブレーキランプがクリアーレッドのパーツになっているのもタミヤとしては珍しい試みで、バイクモデルのトレンドを牽引しながらも他社のトライをしっかりと観察しながら取り入れていることが窺えます。

チェーン以外まったく色を塗らず、ただひたすらプラスチックパーツを組み上げていくだけで見まごうことなきCB1000Fが完成。デカールのデザインもタンクやリアカウルの形状とバチピタにフィットするし、こうやって見るとどこに塗装を施せばより良い仕上がりになるかも見えてきます。

CB1000Fというバイクが今後どのようなカタチで歴史に名を残すのかはわかりません。しかしここにあるのは最新のタミヤのプラモデルであり、これまで地球に存在したどのバイク模型よりも秀でた精度を持ち、さらに徹底した組み立てへの配慮がパンパンに詰まっています。たとえこのバイクを知らなかったとしても、このプラモデルの示しているのがタミヤの現在地であり、プラモデルの最先端であることは間違いありません。組んで、驚き、そして知りましょう。我々はプラモデルを通して世界を観測しても、いいのです。