

初めて飛行機に乗った時のことをよく覚えている。夏休み、祖父母の家に1人で遊びに行った小学一年生の頃だ。
窓際の席から眺める飛行機の翼は風を受けて細かく振動し、薄いフラップが今にも吹き飛んでいきそうに思えた。そんな翼がなんとなく頼りなさそうに見えて不安になる。乗る前は楽しみにしていた空の上の景色は、ずっと雲が見えるばかりで、たいして楽しいものでもなく、仕方なしにその頼りなさげな震える翼をずっと眺めていた。
第一印象がそんなだったので、僕にとっての飛行機というのは大きな頼りない翼がガタガタ揺れているというものだった。
「そんな飛行機の頼りない翼がなんと折れている!大丈夫なのだろうか」と思ったのがタミヤ 1/48 傑作機シリーズ No.85 アメリカ海軍 ヴォート F4U-1D コルセア モトタグ牽引セットの箱絵だ。折れた翼の断面には細かな機械の部品が差し色のような緑に染められてびっしり詰まっている。

とりあえず近くにあったファレホのグレイグリーンをエアブラシのカップに数滴たらし、翼の断面やコックピットを塗っていく。そこへウェザリングカラーのマルチブラックを使う。蓋についた筆先でなぞると隅やリベットに黒い塗料が流れ込んでいき細かなディティールが浮かび上がってくる。厚くて丈夫そうなフラップには四角い穴が開いているのに気づく。

コルセアのは空母に搭載するために開発されたモノらしく、真ん中で折れ曲がる翼も狭い空母の上で邪魔にならないような仕組みのようだ。フラップはとても丈夫で、コックピットに乗り込む時のステップになるほどらしい。四角く空いた穴はそのためのものだった。コルセアのようにプロペラで飛んでいたころの飛行機がこんなにも高い技術で作られていたことを考えると、今の飛行機も安全なのだろうということは今の私ならわかる。

小学一年生の私は、着陸の衝撃にビビりつつ無事飛行機が到着したことに安堵した。出迎えてくれた祖母がたずねる。
「飛行機怖くなかった?」「いや?全然怖くなかったよ。」
強がりではなく、いざ着陸してみると大したことなかったなと思ったのだ。一度経験してみれば、たいていのことは大したことないものだ。飛行機での旅行もプラモデルも。
