
幼稚園児時代、「トランスフォーマー アニメイテッド」に出てくるスタースクリームに強烈に違和感を持っていた。彼がトランスフォームする戦闘機の翼が、明らかに変な形なのだ。胴体の付け根から斜め前に生える、いわゆる「前進翼」というものである。風に逆らって飛ぶ形であると幼いながらにイメージでき、食玩のF-15(一般的な後退翼機)と見比べては、「こんな翼でちゃんと飛べんの?」と思っていた。
ハセガワのX-29は、そんな変な翼の飛行機が実在したことを雄弁に語ってくれるキットである。X-29は前進翼の研究をするために、アメリカで作られた実験機。真っ白なボディに赤青ストライプと、塗装だけでも只者じゃない感が半端ない。このストライプはキットでもめちゃくちゃデカいデカールで再現されており、開封時に度肝を抜かれた。

パーツ数は結構少なく、ひとつひとつが大ぶりなため結構すぐに機体のシルエットが出来上がった。実際に組んで気づいたけど、胴体がめちゃくちゃ細長い!正直アンバランスかな…とまで感じる痩せぎすである。しかし、カナードと主翼を取り付けることで上から見たときのボリュームが増え、均整の取れた見た目になってくれる。あれ、結構かっこいいぞ……!?
細部に目を凝らしてみると、表面にアンテナやらピトー管(飛行機の速度を測る装置)らしき突起がチョコンと生えている。SFメカみたいな見た目だが、こういったディテールが脳みそを現実に引き戻してくれる。

搭乗用のハシゴもまた、X-29の実在性を示してくれる重要なパーツだと思う。ハシゴがあるということは、当然それを使う人もいる。コンピュータシミュレーションが無い(もしくは未熟だった)時代は、パイロットも飛行機も全て現物を用意してテストを行う必要があった。このハシゴを登り、未来の飛行機のために研究を重ねた人々が実在したのだ。

前進翼は超音速が出せる、不安定な分運動性が高い、という触れ込みで研究が進んでいた。が、レーダー波を反射しやすいため今後来たる大ステルス時代には不向き、という結論が出たらしい。残念ながらこの技術はほとんど使われなくなった……。しかし、僕たちは1000円ぽっちのお小遣いと組み立て時間で、この美しい機体を机に飾れる。変な翼の奇妙な飛行機が実在した証を、この目で確かめることができる。