F-4 ファントムを思いながら「彗星」で味わう、ファインモールド1/48飛行機模型デビューの味わい。


 ふらっと寄った店頭で、ひさびさに出会ったのがファインモールドの1/48彗星でした。この彗星は自分が1/48スケール航空機をはじめて作った機体で、「あのキット名作だったよなぁ」という感慨から思わず手にとってしまいました。10年以上経っていたので中身を相当忘れていたのですが、蓋を開ければあのときのいろいろがすぐに思い起こされました。時を経てもう一度見るキットの味はとても甘美です。

 こちらの彗星、ファインモールドが1/48で発売したはじめての航空機プラモデルになります。製品のナンバーはFB01、すべてはここからはじまりました。


 彗星は零戦に代表されるような「プロペラの後ろで広い口を開けたカウリング」とは異なるスタイルになります。ジェット機のようにノーズの下側に開口部があるだけのシュッとしたアウトライン。これはエンジンの冷却方式のちがいで、日本の航空機はもっぱら空冷式だったのですが、彗星は水冷式のエンジンを搭載しているからです。


 この水冷式は陸軍では三式戦闘機飛燕も採用しています。……じつは有名な話なのですが、この彗星と飛燕、ドイツからライセンスしたDB600(601)という同じエンジンを使用しています。にもかかわらず、陸軍と海軍がそれぞれ別個に契約していたこと、つまりお互いにいろいろ共有していない(仲良くない)ことの典型として知られています。ほかにも彗星にはたくさんのバックストーリーがあります。

 そんな実機解説が、この小文字で真っ黒になった解説書にあります。生産の愛知時計電機の話、彗星のテクノロジーの話、そして九九艦上爆撃機に次ぐ艦上爆撃機として導入されたことや、どんな活動をしていたか。文字も小さいし、縦横空間なくぎっちり!

 見てくださいこのページ。コクピットからエンジンまで、素晴らしいイラストが入っていて、なおかつパーツの名前もわかるんです。とにかくこの機体がどういうものかを知る資料がギッチリと詰まっています。これだけでもこのキットを買う価値、あります。

 さて実際の組み立てといえば、コクピットを作って胴体を貼って……という一連の流れですが、ちょっと大変な部分もあります。のちに空冷エンジンに換装したバリエーションを見ているので、機首が分割されていたり翼と胴体にちょっと隙間があったりと、モデラーとして腕をふるう場面に出くわします。

 ひとつはパーツごとの合わせ。彗星はのちに空冷のエンジンを搭載することになります。そのため機首が分割されていて、油断をすると外側のラインがガタガタになります。私のオススメは胴体やエンジンを左右張り合わせる前に前後でつないでしまうこと。そのほうがアウトラインがキレイになります。接着面を軽くヤスって平らにして、慎重に合体!

 もうひとつは全体的なバリやくたびれです。自分が組んだときにはなかったような大きなバリができています。これはもう長年の生産によってどうしても起きてしまうものです。

 なので、裏側からヤスってバリ面を薄くして落としてあげましょう。バリだけを削ると翼が厚みをもってしまうので、ここはあえて薄くするように削ってあげるとよいのです。いままでよく頑張ってくださいました、これからもどうぞよろしく。そんな慈しみで作業します。

 そういえばこのキット、激シブなフィギュアもついてきます。カバンを持ったパイロットです。航空帽と救命胴衣がまるで戦国時代の鎧兜を着けた武者のような出で立ち。この衣服についても、解説書にヒミツが書いてあります。ぜひキットを買って読んでみてください!

 前身の九九艦爆では機外搭載だった爆弾を胴体内に格納して空力をよくしています。水冷もそうですが、スピードを出すために空力を重視したのが外見に表れています。

 現在組みやすく、塗装にも配慮し、それでいて各部の異なるバリエーションを展開するF-4シリーズを手掛けるファインモールド。まだ若かりし頃、彗星という機体で同じように野心的な挑戦をしていたのがわかります。大きな斜銃を搭載した彗星夜戦、空冷エンジンに換装した彗星三三型、空冷彗星の終着点四三型と、大きく異なるスタイルをいろいろ工夫をこらして作ったこと、これは現在まで通じるファインモールドの根幹のひとつといえるでしょう。


 現在も実機が展示されていて見られることや、水冷独特のスタイルや空冷への外見的変遷、空母からはじまり戦艦のカタパルトから射出できるようになるなど場所を選ばぬ運用、試作機を転用した二式艦上偵察機のミッドウェーでのエピソードなど、調べ始めるとオタク的興味が止まらないのも彗星の魅力です。その楽しみをぜひファインモールドの彗星で経験してみてください。

けんたろう
けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。