「城とか寺とかのプラモあるある」として、緑色の粉が付属しがち。ペロ……これは草!何を言ってるかわからないかもしれないが、要は城とか寺の建っている地面に粉を撒けば草に見えるでしょ、という話。いま童友社の金閣寺をちまちまちまちま作っているのだが、今日はこの草の工程をやらなければ何も進まない。なんかすっげえめんどくさそうだしうまくいきそうにないオーラがムンムン漂っているが、やるっきゃないのだ……。
何回リンク貼ってもビビる。童友社の金閣寺安すぎませんか……。それはそうと、前回までのあらすじはここから読める。読みたい人は読もう。
まず茶色い地面パーツに水面のシールを貼った。なんか半透明な感じなのかな……とかワクワクしてたんですが、ただの水色の紙シール(驚愕)。明鏡止水すぎる。小島とか礎石を避けるためのカットラインはまあまあ正確なのでなんかうれしい!
そして礎石が茶色だと座りが悪いので、そのへんに転がっていたシタデルカラーで塗っていく。筆はぺんてるのネオセーブル0号。すこぶるそのへんに転がっているもので進めているが、楽しいからOK。ちなみにプラスチックのままだといろいろなものの定着が悪そうだったので、仕事に行く前の朝の数十秒を利用してバーっと水性のつや消しトップコートを吹いておいた。こうした作業をめちゃくちゃスキマ時間に散発的にやっておくと後から「過去の俺、エライな〜!」と褒めたくなるのでオススメ。いろんな模型をお手つきにしていこう。
さらにこんもりした土の山らしきところにこれまたシタデルカラーの暗めの緑を塗っておく。……とか偉そうに言っているが、プラモに草を生やすのは今回が初めてだし他人が粉を撒いているところも見たことがないのでいきあたりばったり。なぜ草の下地に緑を塗ろうと思ったのかというと、草が均一に定着しなかったときに隙間をカバーしてくれるかな、と予想したから。
で、説明書を改めて読んだ。そもそも草(というか粉)をどうやってプラスチックに固定するつもりなんだこのプラモ。すると「塗装して乾く前に粉を撒いてください(意訳)」と書いてある。シタデルカラーの乾燥時間を舐めないでいただきたい。もうカピカピのつや消しである。ラッカーでもアクリルでもなんでもいいけど、塗料塗って乾く前に粉撒いて……とかやってると机の上がめちゃくちゃになり、どう考えても腕が2本では足りない気がするがどうだろうか。
そう、我々にはセメダイン社から発売されている神の雫、「ハイグレード模型用」がある。これは水性だし何でもかんでもくっつくし周りを溶かしたり白く濁らせたりしないから最高なので、一家に3本くらい常備しておくべきですね。
いざ、粉を撒く。接着剤をネオセーブルの6号(万が一カチコチになっても泣かないくらいの値段の筆なら何でも良い)で均一に伸ばしてから、ふりかけの袋みたいなのを開けてボフボフ……。
「このラチがあかない!2020」という大会があれば間違いなく準決勝まで行けるほどもどかしいこの感じ。狙ったところに粉は落ちず、慎重になればなるほど粉はまだらにへばりつき、みるみるうちに机の上は緑の粉にまみれていく!冗談みたいだ。笑いが止まらない。オレの慌てふためく姿はさぞかし滑稽だろう。
このままでは接着剤が乾燥し、草は禿山にチョロチョロと定着するみすぼらしい景観を形成し、粉は乾いた机を潤していく……。今日は緑茶ハイで乾杯するしかねー!と思ったが、私はオトナなのでちゃんとプラモの空き箱をトレーにして無駄な粉を回収してリサイクルする作戦を取っていた。すごい。
どうせ接着剤が塗られていないところには粉は定着することが出来ないはず!ならばエイヤと全体にまぶしていく作戦に切り替える。金閣寺の土地に草を放ち、天地を返して無駄な粉を落とす!博多風龍に通い詰めないと思いつかないこの技に三島由紀夫も驚いていることだろう。なんて楽しいんだ。私は誇張抜きで一人でゲラゲラ笑いながら作業を進めた。
空き箱(その2)に回収した残存粉を再度ふりかけ、足りないところには接着剤を増すというISO14001すら取得できそうなサスティナブル草システムが完成。この工程を3度繰り返してからベランダに出てブロワでいらない草を吹き飛ばす。完璧だ……。
この作業、もし自分が子供だったら忍耐力も集中力も段取りもなしに家を真緑にしていたことだろう(もしくは粉が足りなくなって泣いていたはずだ)。もしかしたらベテランモデラーたちはみな、この楽しすぎる作業を子供時代に経験しているのかもしれない……。なんというか、戦車を泥まみれにしているのと同じグルーヴがあるのに、みるみる心落ち着く日本の庭園風景が出来上がっていくという真逆の方角に進んでいくのが面白いのだ。
かくして、これから何かが始まりそうな金閣寺の土台が完成した(いやまだ植木とかがあるんですけど……)。あと最初に塗った緑、マジで意味なかった。侮ってたよ緑の粉……そしてありがとうセメダイン。
それにしてもプレイバリューが高すぎるぞ金閣寺。こんなにやることがあっちこっちにとっ散らかっていて道程が長く、作る人によって明らかに違う結果になりそうなワクワクプラモデルが実売1000円しないというのだから大変だ。みなさんも「草の入っていそうなプラモデル」を探して、ぜひとも草を生やしてもらいたい。そこにはいままで経験したことのないようなマインクラフト的かつアナログでファジーな謎のヴァイブスが待っている。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。