
世はまさに片刃ニッパー戦国時代。プラモを作るときに欠かせないニッパーの中でも、切った痕が白く残らない高度な切れ味と構造を持った「片刃ニッパー」が大人気です。なかでもゴッドハンド社製「アルティメットニッパー」はその代名詞として広く知られています……が、現在でも入手難が続いている状態。それを知ってか知らずか、Amazonには多くのメーカーから「片刃ニッパー」と称するツールが出品されており、レビューを読んでも正直どれがいいのか全然わかりません。

そんな折、我らがnippperに「ウチのニッパーを試してください!」と強気のオファーが舞い込んで来ました。それがこちらのbonds ヌルッと切れる片刃ニッパーでございます。

グリップは美雲・ギンヌメール(マクロスΔ)を思わせる紫とブルーの取り合わせ。普通ならサクッと適当なプラモを切ってみて「はい良く切れますよ〜」と紹介するところですが、nippperは正直ベースのレビューが信条。そうとなればAmazonの売れ筋片刃ニッパー、上から3つをちゃんと比較してみましょう。

スターティンググリッドに並んだのは左から「bonds ヌルっと切れる片刃ニッパー」、片刃ニッパーカテゴリで売上1位を堅持する「aurochs 極薄刃ニッパー片刃」、検索するといちばん上に表示される「UNIPAS 【令和最新版】精密薄刃ニッパー」、そして片刃ニッパー界のキング「ゴッドハンド アルティメットニッパー」の4本。
まず刃の薄さを比較してみると、これは断然bondsのヌルっと切れる片刃ニッパーがいちばんです。太いゲートやランナーをカットするといった力のかかる作業ではやや不安ですが(これは薄刃のニッパーに共通する弱点であり、こじったり先端だけに力のかかる使い方をするのはNGです!)、気をつけて使っていれば問題ありませんでした。

刃の薄さでは続いてaurochsとゴッドハンドがほぼ同等、UNIPASのものはかなり分厚い印象です。

次に切ったときの感触。これはやはりゴッドハンドのアルティメットニッパーに軍配が上がります。プラスチックに刃の入る瞬間を感じさせないほどスムーズに切り進んでいき、最後にパチっという音が出ないのはさすが。可動部の摩擦感もほとんどありません。

ヌルっと感を独断で順位付けするならば、上からゴッドハンド→bondsとなり、やや差が開いてaurochs、大きく差が開いてUNIPASといった印象。これは切断面の比較と合わせて検討する必要がありそうです。
さて、ニッパーで大事なのは切断面の美しさ。切った痕が白化しないことはもちろん、断面に傷やヨレがないこともプラモの完成度に響いてきます。


やはりもっとも白化が少ないのはゴッドハンドのアルティメットニッパーです。しかし、bonds、aurochsも平滑さでは健闘していますね。(白化の度合いは刃の入り方や切るスピードにも左右されるので、さらにわかりやすくするためにランナー(プラモの枠)を切断してみましょう。

意外にも、ゴッドハンドとbondsは白化もプラの摺動痕も抑えられ、かなり近い断面を見せております。aurochsのニッパーは切り始めこそイイ感じなのですが、どうしても切り終わりでクチュっとした抵抗感があってフチが少しめくれ上がる印象があります。UNIPASのものは切り始めから切り終わりまで終始抵抗感が強く、断面の殆どが白化していることが見て取れます。

言わずもがなのアルティメットニッパーに対し、bondsがなぜ肉薄する仕上がりを見せるのか。同社にヒアリングしてみると、そこにはbondsの企画担当氏のアツすぎる思いが込められていました。
そもそもは、プラモが趣味である企画担当氏が「よく切れるニッパーがほしいけど、ほしいときに手に入らないのがしんどい!」と思ったのがコトの発端。中国製の片刃ニッパーを手当たりしだいにテストし、「これは」と思える性能を持ったものを製造する工場とコンタクトを取ってその形状や刃先の加工をブラッシュアップしていったのだと言います。しかも、きれいな切断面が確実に得られる品質を担保するためにbondsでは輸入したニッパーを一本一本目視で検品。さらに国内のスタッフが刃を研磨してから切断テストをし、合格したものだけを出荷しているのだとか(!)。

つまり「よく切れるニッパー見つけたので輸入販売している」のではなく、いつでもよく切れるニッパーを供給できるよう生産体制を整えた上で、検品と最終加工まで行うというコストをかけているわけです。本気(マジ)じゃないですか……。
さらに同社によれば「1本1本人の手で研磨・組み立てを行っているので個体差が出てしまい、検品で見抜けなかった個体が等が発送された場合は、初期不良として商品到着後2週間以内にご連絡を頂ければ無料で交換させて頂きます」というステートメントあり。「刃が欠けている/綺麗に切り離しができない/グリップの開閉が悪いなど、まずはお客様のお話をお伺いしてから判断しております」と、サポート体制もガッチリ整えているとのこと。
工具選びにはコストとパフォーマンスのバランスがつきまとうものですが、bondsのクオリティが担保されたニッパーが安定供給されるということならばnippper的にも安心してオススメできると確信した次第。たかがニッパー、されどニッパー。毎日使うものだからこそ、しっかり手をかけて作られたイイ工具を選ぶことで「イイ趣味の時間」を過ごすことができます。
みなさんも、ぜひ。