天気が良いからマグロ丼でも食うか〜と自転車を漕いで海へ。東京湾、案外「海」なんでイイんだよね。ウマいマグロ丼を食べたあとはプラモを買いたい。おいしい口のままホクホクと戦利品を抱えて家に帰るなんて、いいじゃない。ということでスルッと隅田川を渡って新橋へ。タミヤプラモデルファクトリーはいつだってプラモ欲に応えてくれるワンダーランドじゃい。
タミヤプラモデルファクトリーでは箱に入ったプラモデルも売られているが、直営店ならではの楽しみとして、スタッフが「これおもしろいっしょ」とか「これ便利っしょ」とピックアップしたランナー(ようはプラモデルの一部)やデカールがバラ売りされている。何でもかんでもバラで買えるというのではなく、あくまで「セレクトされたもの」なのがいいんじゃよ。「こんな兵士がいたのか!」とか「こんな飛行機がフネのオマケについてたのか!」みたいな発見がすっごく楽しい。
そこで出会った男がコイツだ。このワクだけがビニール袋に入って418円で売られていたのである。「あぁ、プジョー206に付いてるアイツか。その姿、初めてナマで見たぞ!」……と言われてもなんだかわからない人は下のリンクを踏んでほしい。
2002年、WRC(世界ラリー選手権)ではプジョー陣営がぶっちぎりの強さでドライバーズチャンピオンシップとマニュファクチャラーズチャンピオンシップをダブルで獲得。それをプラモにしたタミヤは優勝アニキをわざわざ立体化し、プジョー206というラリーカーにくっつけたのだ。これはヨシおじさんにも匹敵する最高のフィギュア……いろんなものの横に置いて優勝したい……。
胴体〜足が一体になったパーツをランナーからもぎ取ってオレは思った。お前、なんか腕が多くないですか。
何度も見たタミヤの完成写真は牧歌的なガッツポーズをした全く同じ形状のアニキがふたり並んでいるのだ。しかし、ランナーにはグー手と握手のような半開きの手をかたどった腕が左右2本ずつある。さらには酒のボトルと謎の丸いパーツがチラホラ……。慌てて説明書をインターネットの海から掘り起こすと、彼はガッツポーズ以外の飾り方を可能にしたスーパー優勝アニキだった。
優勝トロフィーは2種類、そしてシャンパンボトルが1本。もはや一人では抱えきれない栄誉がランナーから爆誕。しかもプジョー206 ウィナーバージョンの説明書には片方のトロフィーの組立図しか書かれていない気がするんだよなぁ……。
ということで、優勝アニキはシャンパンを掲げたり、トロフィーを掲げたり、ガッツポーズをとったり、さらには両手にシャンパンボトルとトロフィーを握ったりとマルチな才能を発揮するプラモだったのである。盛り沢山すぎやしないか。
なんにせよ酒である。私は酒が好きだ。彼にはシャンパンボトルを片手に拳を突き上げるポーズで組み上がってもらうことにした。これでいつでも勝利の美酒を味わうことができる。彼さえいればあなたの模型も即優勝。さて、問題はどうやって手に入れるかなんだけど……タミヤプラモデルファクトリーさん、もしよければ彼を常備しておいてくれませんか!?
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。