
この部分がですね……と説明のために取り出したF-14が、あれよあれよという間に細分化されていく。接着剤をつけていないのに、カウルのサイドにしっかりついている主脚。コクピットなどの最小単位までバラして、また組み立てる。段差ひとつない構造、精度、航空機模型の常識が破壊されていく……。


タミヤがホビーショーに隠し玉を持ってきた。設営日のタミヤブースには、厳重なパーテーションがなされていたという。F-14は、航空機メーカーが勝負をしたいときに選ぶモチーフ。『TOPGUN』で主役を張った映画スターであり、これはけんたろうの主観ではあるが、画になる角度がとても多い”美人”なのである。何なら戦闘機なら零戦の次に人気と言っても差し支えないだろう。

F-14D、ということは2006年に退役した晩期の姿ということになる。エンジンはより新しいF110へと換装され、コクピットを第四世代戦闘機のように液晶のグラスコクピット化し、もはやあまり撃つ相手もいない空対空ミサイルフェニックスの変わりにレーザー誘導爆弾を装備、それにともないターゲッティングポッドを装備、さらに翼のミサイル取り付け部のパイロンも高機能なものに換装、と空軍のF-16、F-15に引けを取らないような性能になった姿なのだ。

タミヤは当然のようにそのあたりの差異は心得ている。2016年から1/48のF-14を発売していて、そのときに現代的ジェット戦闘機のプラモのひとつの到達点を築いて居るからだ。全体のシルエットはもちろん、隙間ない精度から生まれる翼の可変時への本体変化部差し替え、接着がキレイに決まるパーツ分割、クリアーパーツへの大きなのりしろなど、実機の再現性だけでなく組み立てへの配慮が行き届いていた。自分は当時「世界で唯一”組める”ジェット戦闘機」と絶賛していたほどだった。

F-35シリーズでは1/48を先行して発売し、1/72では単なる縮小にせず美味しいところを魅せていくという考え方だったが、今作は10年越しの濃縮還元版。翼の開閉は連動し、本体側のシーリングも差し替えで再現。1/72では上面翼の根本パネルライン1枚分を差し替えメンバーに加えてしっかり強度を確保しに行くちょっとした気の利いた変更も入っている。

同梱のミサイルのなかでは中サイズのスパローミサイルはなんと翼まで一体化され、組み立てのなかで大変なところは整理が進む。インテークは実機の境目同様に奥側を分割し、パーツを縦に抜くことで合わせ目がないトンネル状態になっている。そのうえでカウルや本体と内外のパーツがピッタリ合わさるので、私はそれを見ながらこんな精度と設計はタミヤしかできないと感嘆したのである。

さらに恐るべしはマーク類を5種用意。展示された黒いヴァンパイアーズのF-14は兵装試験の部隊ながら、ミサイル装着部はグレーという、特別カラーあるあるな部分も再現。そして、今回特徴的なのはマーキングを選んだ段階でミサイル兵装も選択される形式。部隊と年代が紐づいたうえでそのころの兵装もいっしょにパッケージングされている。フェニックスミサイルは2004年に一足先に退役したのもあって、5パターンのマークを選べばそのまま武装が決定されるようになった。戦闘機の兵装で悩むことはけっこう多いので、ここが先に決まっているのは実は偉大なのだ。

個人的に毎回タミヤのF-14、ひいては航空機で痺れるのは、ディテールが何なのか理解したうえで強弱をつけたり、表面の表現を変えるところだ。ここは動翼だからスジを太くする、パネルラインだから細くする……そういった機能を理解したうえで刻まれたディテールが本物を縮小したかのように機能する。1/72でもそのディテールが炸裂。翼の上面で別パーツのように反射する部分が見えるが、これは実機ではスポイラーで立ち上がる部分で、同じパーツでも翼とは曲率を変えた表現になっている。これがタミヤらしい機微のある、本物らしさを捉えた表現である。

デカールによる可変翼可動部の汚れ表現や、ディテールとデカールの組み合わせで立体感を強調するコクピット、意外とそのままデカールを貼るだけでなんとかなりそうな成形色……。精度だけでなく、作ることに気を回したサポートも充実している。やはり「”完成できる”ジェット戦闘機プラモデル」はここにある。発売日は未定ながらもうすぐ出せる雰囲気もありつつ、3スケール揃い踏みパネルの年号には2026年表記。まだ10月半ば、たった数ヶ月かもしれないが待ち切れない……! 新しいF-14とともに、ジェット戦闘機プラモデルがもっと楽しくなる時代が来ることは間違いない。