

ウチの息子の体重は現在およそ10kg。抱っこ紐やベビーカーを持ち出さずとも一緒に最寄りのコンビニまで行ける程度には歩けるようになったが、店舗内でウロウロされたら困るので買い物中は片腕で抱きかかえ、もう片方の手で商品を掴んでいくことになる。腕に抱えているのは我が子なのでまあ許せるが、これが鉛玉を入れた四角四面なハコだったら途方もない重労働であることは想像に難くない。
タミヤの最新プラモデル、「ドイツ機関銃チーム(大戦中期)」に入っている《兵士1》は両手に弾薬箱を持って仲間のところへ向かおうとしている。ドイツ軍の弾薬箱は赤ん坊よりもだいぶ小さいが、それ自体が1.6kgくらいあるらしい。最新のプラモだけあって、箱のサイドにある開閉用のラッチもスライド金型で十全に彫刻されている。底面には肉抜き穴が空いているが、裏返しで見ることはないだろうから気にしなくてよろしい。

弾薬箱の中にはベルトリンクで繋がれた機関銃弾50発(1.4kgほど)が6セット収納でき、弾薬箱の重量と足せばちょうど10kgになる。起倒式の細い把手で10kgの金属のカタマリを持つのは地獄である。
抱えられた赤ん坊は振り落とされまいとある程度は自らの筋肉で踏ん張ってくれるし、そこそこ大きさもあるのでうまいこと重心を見つければある程度の距離を運搬可能だが、角張った小さな金属箱を両手にそれぞれ持てば腕は伸び切り、握力だけを頼った我慢大会になるだろう……ということを、把手と一体になった手と伸び切った腕のパーツが雄弁に語っている。手の甲に浮かぶスジなど、惚れ惚れするような説得力に満ちている。

重いものを持ってスピーディーに動こうとすれば(さらに背中にやたらめったらと重量物を背負わされていれば)自ずと体幹は前かがみになる。両腕を重量物に引っ張られ、猫背状態で移動する《兵士1》の服は、前面にギュッとシワが集中し、背中の布は突っ張って滑らかになる。実際に軍服を着た人間を3Dスキャンする設計手法は近年のタミヤではスタンダードになっているが、シワの粗密を模型的な見栄えにマッチさせ、プラスチックパーツに分割するのは設計者の腕の見せ所だ。

「重量」は弾薬箱のようにわかりやすいものだけでなく、背中に背負う装備品の類でもしっかりと感じられる。文字通り身体に食い込むような設計になっているので、装備の接着位置がバッチリと決まり、布製品同士のフィット感や硬く重いものがのしかかる感じも特別な加工をせずに手に入るのがすばらしい。

驚いくべきは顔のパーツで、肉眼では「力の入った表情だな……」くらいにしかわからないのだが、マクロレンズで撮影すると口が閉じきらずに歯を食いしばっている様子がわずかに(金型加工の限界とも思える細密さで)彫刻されているではないか。

やおらウチの息子が2人に分裂し、両手に一人ずつをぶら下げて背中に買い物カゴを背負うことになったとしよう。まず無理である。まず無理なことを彼らはやってのけている……というよりも、やらなければ生き残れないがゆえに苦悶の表情を浮かべながら実行していたのだ。

「ドイツ機関銃チーム(大戦中期)」には5人のフィギュアが入っている。この兵士は射撃に関わる残り4人とはちがい、「弾薬を運搬する」という比較的地味な役回りを負わされているが、しかしここにもタミヤの恐るべきこだわりがあり、ゆえに強烈な説得力をもって戦場の過酷さを(そして子育てのしんどさを!)思い起こさせてくれる。さあ、次はどの兵士を組み立てようか。