

タミヤ1/35ミリタリーミニチュアシリーズの最新作、「ドイツ軍用サイドカー KS600」にフィギュアを乗せよう。付属するのはドライバー、下士官、歩兵の3人。どのキャラクターにもそれぞれ見どころがあって、小さくても緻密なサイドカーにいきいきとしたリアリティを与えてくれる。
まずドライバーの見どころはお尻の裏だ。シートに跨った状態でのフィット感を最優先しているから、シートがちゃんとお尻に密着した状態になるよう凹んでいる……どころか、太ももの内側にかけて大きな穴が開いている!シートが穴のなかに潜り込むわけではなく、「バイクに乗せたら見えなくなるところなので、組みやすさや成形のしやすさを考えたら穴が開いててもいいよね」という攻めのジャッジメントである。

側車に乗る下士官は大事そうにMP40(短機関銃)を抱えている。説明書に組み立ての順番は書かれていないが、何も考えずに胴体と腕を接着してから機関銃を潜り込ませるのは不可能。ちゃんと太もも、胴体を組んでから機関銃を乗せ、その上に手がかぶさるように腕のパーツを接着する必要がある。反対に言えば、「なんとなく機関銃に手を添えているように見えるポーズ」ではなく、ぎゅっと手で抑えているからほとんどスキマがないという状況をきちんと模型化している。このへんは3DスキャンとデジタルモデリングによるタミヤMM人形の進化をひしひしと感じるところだ。

そしてサイドカーの横に佇む歩兵だ。前半身のパーツは右腰のあたりが長方形にえぐり取られたようになっていて、なにやら不穏である。ひと昔まえなら、こんな分割だとパーツ同士の接合線にスキマや段差ができてまともに組めなかっただろう。

対になる部位を探すと、弾薬ポーチとポケットが一体になったところに真一文字の細長い板が突き刺さったようなパーツが現れる。最初は「なんか棒でも持っているのかな」と思っていたのだが、貼り付けていくととんでもない構成であることにびっくりさせられる。

板状の出っ張りの正体はライフルを肩にかけるためのスリングだ。胴体に彫刻された右肩のスリングと、腰から下の別パーツに彫刻されたまっすぐに伸びるスリング。両者の間にはちょうど右手のパーツが来るようになっていて、あたかもスリングがひと続きになっているように感じられる、という寸法だ。
ともすれば「スリングとはすなわち紐なのだから、紐を用意しよう」「手で握っているものなのだから、拳に穴を開けて紐を通そう」という現実の構造に即した発想に陥りそうなものだが(あるいはスリングは再現が難しいから無視しよう、というのも昔のプラモデルでは常道だった)、巧みなパーツ分割に握りこぶしが接しているだけで「そこにスリングがあるように見える!」というエキサイトメント。これぞ、”模型”である。

いかにもドイツ歩兵という風情のフェードスタイルの髪型、ちょっと哀愁を感じさせる伸び切らない背筋。そしてだらりと下げた左腕に握られたフリッツヘルメット。後ろ姿も雄弁な彼は、サイドカーとそれに乗るふたりとは切り離された存在だが、だからこそ物語を感じさせる触媒として機能している。

いっさいの調整をせずとも、シートにまたがらせればピタリとハンドルを握ってくれるドライバー。するりと箱型の側車に収まる下士官。そして傍らでやや疲れた表情を見せる歩兵。メカニカルな魅力がたっぷりと詰まったサイドカーに、3人のフィギュアが加わることで音や動きがイメージされる。

タミヤのミリタリーミニチュアはいつだって、白い背景のハコでわれわれを遠く戦場へと誘ってくれる。そこに具体的な景色が描かれていないのは、こうしてプラモデルを組み立てて並べるだけで、そこに情景が出現することをユーザーに知ってもらうためだ。彼らの交わす会話、視線の先にあるもの。実感的な彫刻の兵士たちのお陰で、ただのサイドカーが名もなき英雄の愛機となるのだ。