機関銃の重さが伝わるトボトボ兵士の詰め合わせプラモ/「タミヤ ドイツ機関銃チーム 行軍セット」

▲なんか地味なポーズのフィギュアだな……ひとり以外みんななんか担いでるぞ

 機関銃というのは、ちゃんと使おうと思うと地味に大変な武器です。「たくさん弾を連射する」というのが仕事だから当然銃弾も山のように必要になるし、そもそも銃自体が重い。重いから使う時には何かに据え付ける必要があり、そうなるとそのための三脚なり台座なりが必要になる。弾をたくさん連射するという目的を達成しようと思うと、これら全てを持ち運ばなければならず、結果として第二次世界大戦あたりまではけっこうな人数が必要になりました。

 タミヤのミリタリーミニチュア(以下MM)「ドイツ機関銃チーム 行軍セット」は、そんな機関銃の大変さをヒシヒシと感じさせるプラモデルです。発売されたのは1994年の12月。当時は1989年以来続いたティーガーやパンター、IV号戦車などドイツ軍の有名戦車のリメイクが続いていた時期で、いわゆる90年代のAFVブームのタイミングにあたります。この時期は「箱が正方形なら4人、長方形なら8人」というタミヤMMフィギュアセットの基本フォーマットに変化があった時期でもあり、このキットも「5人セット」という70年代のMMフィギュアキットとは異なる構成になっています。

▲お馴染みのパーツ構成。首が胴体にくっついてるパーツ分割を見ると落ち着く~
▲装備品パーツは、これ一発でドイツ軍の歩兵チームが賄える分量です
▲この時期のMMのモールドにしかない栄養が感じられる

 箱の中身はフィギュアと装備品に分かれたおなじみの構成です。およそ30年前(ウソでしょ……)のプラモなので部品の分割も割と牧歌的。最近の3Dモデリングをバリバリ使ったフィギュアと比べるとトリッキーさはありませんが、こういうプラモを食って育った世代としては「実家の定番料理」的な安心感があります。

▲この人は引率の先生ではなく指揮官。偉いので荷物も少なめ
▲背中に機関銃の弾、そして予備の銃身を背負ってる弾薬手。重そう……
▲なんせ機関銃の弾って中身の火薬以外は大体全部金属なんで、このサイズの箱いっぱいに詰まってるとそれなりに重いのだ
▲機関銃自体が重いのは言わずもがな!

 というわけで、組み上がるとこうなる。このキットの特徴が大戦中盤~後半にかけてのドイツ歩兵の服装を再現している点でして、着ている野戦服も戦争後半によく見られたM43というタイプ。ドイツ軍が絶好調だったころに着られていたM36という野戦服は襟や肩章部分がダークグリーンだったりポケットにプリーツがあったりと色々手間が掛かってるんですが、M43になると製造工程の手間を省くためか服全体をフィールドグレーで統一。布地をケチるためプリーツもなくなり、全体的に簡素な雰囲気になってます。革素材をケチるためか、靴もドイツ軍らしいジャックブーツではなくアンクルブーツに布レギンスだし、戦争前半のドイツ軍と比べるといろんなところが貧乏臭くなってます。

 で、細かいところを見ていくと「機関銃って一挺使うためにはこんなに人が必要なのか」というのがわかるのがこのキットの面白いところ。なんせ5人中2人は「弾を運ぶ人」なわけで、とにかく大量に銃弾がなければ仕事にならないということがわかります。機関銃手は機関銃以外何にも持っていませんが、この機関銃自体が10kg以上ある重量物なのでこの人はこれで限界。重労働だ……。

▲二宮金次郎ではない

▲パッと見ラクそうに見えますが、この人も結構大変

 機関銃の横に張り付いて、スムーズに弾を送り込むのが仕事の装填手。彼が背負っているのが、機関銃を乗せるためのラフェッテ42という三脚です。この三脚はさまざまな地形に対応するための脚部調整機能があり、専用支柱を使えば対空射撃にも使えるという優れもの。上下左右への射角調整機能や反動を抑えるためのスプリングダンパーも備え、光学照準器と組み合わせれば長距離射撃にも対応可能と、いかにもドイツ人的な凝った機能が盛りだくさんな三脚です。おかげでラフェッテ自体が20kgを超える重量になったそうで、「背負った時に背中が痛くならないためのクッション」までついているのも納得。プラモだとなんかヒョロッとした背負子みたいなのを担いでいる人にしか見えませんが、この人もむっちゃ重労働なのです。

▲こういうボンヤリしたポーズのフィギュア、オトナの遊びって感じだよなあ

 しかし改めてこのフィギュアたちを見てみると、派手にドンパチやっているわけでもなければ明確に何か(双眼鏡を覗いたりとか)をやっているわけでもない、単に重いものを担いでブラブラ歩いているだけのポーズのフィギュアが発売できるようになったというのは、なかなかすごいことなのだなと思わされます。子供でもわかりやすい戦闘シーンではなく、「戦車の横をトボトボ前進する人たち」みたいな情景が作れるようになったのは、やっぱり当時のAFVモデルシーンの成熟なのだろうなと思います。なんというか、ポーズも彫刻も全体の雰囲気が大人っぽいんですよね。

 今となっては地味なポーズのフィギュアも当たり前ではありますが、改めて1994年当時のフィギュアを見ると「なるほど、このくらいの時期からAFVモデルは”大人”になったんだなあ」と感じられます。もちろん大戦後半のドイツ兵のフィギュアとして今見ても遜色ない出来なので、細かいこと抜きで普通にフィギュアとしてカッチリ仕上げるのも全然アリですよ!

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しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。