

「戦車の砲塔だけ作る」というのは、プラモデルの雑誌などでは見かけるものの、いざ目の前に広がるパーツたちを眺めていると「え?いいの?」なんて気持ちが沸き上がります。しかしやってみると、不思議な感情が巻き起こりました。贅沢な気持ちだったり、いきなりクライマックスな感じにゾワゾワしたり。
タミヤの38(t)って、搭乗員のアニキがとにかくカッコいいんです。ハッチに足をかけて膝を立てたポーズ、自然と置かれる手。本当に最高。ただ、彼は戦車とセットじゃないと成り立たない姿。かっこよく飾るには戦車を作るしかない。でも、俺は戦車を作りたいのか? 違う、かっこいいアニキが作りたい。だったら、戦車の上に乗っかっている部分、砲塔だけ作ってもいいじゃないか。

砲塔から作ろうとした場合、説明書の「ステップ1」からではなくいきなり「17」から始まります。これはこれでめちゃくちゃな加速を起こしてくれます。もう終わりじゃないかという錯覚と、それまでの工程をすべて捨て去ってしまっている選択の気持ち良さ。中学校から仲の良い友人が「もうね、スラムダンクの序盤は読まなくなった」と大人になってから突然言い出したのを思い出します。そうか……読まないのか……と思ったものですが、その気持ち、今ならわかるかもしれない。
何せこうして作ってみるとすぐに出来上がるし、砲塔を作るだけでもタミヤのプラモデルの精度を味わえます。そこにフィギュアを乗せたときの、実際に人が足をかけるときと同じようにヘリに靴が引っかかる感じやスッと置いた手がハッチのフタの上に自然に合う様子は本当に最高。砲塔から上だけと決めて作ったおかげか、自分の体力も集中力もばっちりの状態で楽しめました。

出来上がったあと、平日に少しずつ塗装していたんですが、砲塔とフィギュアだけだと塗装にしっかり集中できるんですよね。普段ならついつい大雑把に仕上げちゃう部分とかもはっきりと見えるし、新しいことも試すことができる。今回は通常の塗装に加えて、紫と緑のフィルタリキッドを使って全体を仕上げてみました。いつもよりも少し頑張った塗装は「こんな風に作り込むことができるんだな」なんて気づきとなって、次のプラモに活かされることでしょう。