

プラモデルは基本プラスチック。何をいってるんだという話ですが、それを鋼鉄だとか、超々ジュラルミンだとか、ルナチタニウムとか思いながら作ることでプラスチックではないなにかに変身させているわけです。

その表現はプラスチックにパテを塗ったり、接着剤を塗って歯ブラシでしばいたり。あるいは塗り方を工夫することでユーザーが足すことも多いものですが、メーカーも溶接の表現だったりと質感の再現やそれっぽさを足すことに余念がありません。

相手の戦車や装甲車両を撃破する駆逐戦車。米軍がまず開発したM10がやや威力不足を感じたとき、大急ぎで発展させた車輌がこのM36です。こんなカチカチの装甲の車輌なんですが、表現の宝庫なんです。

鉄だ装甲だといいましたが、戦車などAFVの装甲はよく圧延鋼板や鋳造といった厚みある硬い部位を作って、それを溶接したり組み合わせて箱を作り、乗員を守るわけです。面の境目や増加装甲用の円形のポイント部分の根元など、よくみると小さく溶接のスポットが並んでいます。遠くから見ると単なる凸モールドで、近づいて目を凝らすと溶接の跡だとわかる、この緻密な仕上げにまず驚きです。

もうひとつの表現が鋳造です。シャーマンの砲塔などもそうですが、あのころは丸っこく、硬い装甲をもったものはだいたい鋳造で、製造によってはザラッとした表面になります。このパーツは砲塔後部につけるカウンターウェイトとしての役割があって、表面はザラッとしています。工具取付けの台座などがあって、そこはツルッとしているのが好対照。

ここからがM36のすごいところです。ファスナーから解き放たれた布、そのたれ具合といい、柔らかさといい、硬いプラスチックなのにそのディテールが伝わる。これは付属の解説書に実物の写真があるので、見比べるとパーツの意味もディテールのすごさもわかります。

アニキの装備も柔らかさと硬さの奔流です。しれっとベルトに差したメリケンサックとナイフが合体したような装備(トレンチナイフ)、この周辺の処理がとても気持ちが良い部分ですね。硬い鞘がベルトを盛り上げてスロープを作る一方、サック部分や鞘の先端は硬く服へと押し付けているという表現になっています。

ロープはレオパルト2A7Vと同じ、プラスチックの分割式です。うまいことロープの流れを作れるこのシステム、これもまたひとつの表面表現のひとつといえるでしょう。

荷物、布の膨らみや引っ張られ感の表現も深い。このパーツは重力を感じる……! いろいろ入った買い物袋を下げたようなもっちりした曲面になっています。こうしたタミヤの持つ豊かな表現のオンパレードが、ランナーについた状態ですらプラスチックをより硬い鋼鉄に、そして柔らかい布に変化する魔法をかけているのです。M36はまさに表現の見本市。まずはランナーで、その表現の豊かさを楽しんでください。