
箱を開けたら「ああ~、やっぱりね。」と声が出てしまいました。エアフィックスの1:72 フェアリー・バトル軽爆撃機──新製品と同じ真新しいパッケージデザインの箱で棚に並んでいたのですが、中には“味のある”オールドタイマーが入っていたのです。

実はこれ、海外製品ではよくあること。入手困難だった幻のアイテムが復活したり、オリジナル版とは異なるマーキングが楽しめたりと、歓迎される向きもある動きです。新製品かと期待してフタを開けたら年代物……となると、実際かなり驚きますけどね。とはいえ、昨今ではスケールモデルの情報は有志の手によってデータベース化が進んでいて、プラモの来歴情報はネット上でおおよそ網羅されるようになってきましたから、予期せぬ不幸なミスマッチはかなり減ってきました。
貴重なビンテージ品だと躊躇してしまうものも、新パッケージなら気軽にニッパーを入れられますから、そう考えるとまあ悪くありません。このバトル軽爆の初版は約55年前の1968年とのこと。わたしは先日、65年以上前のプラモを作ったばかりですから、その10年ほど後の世代ということになります。プラモの歴史を早回しで追いかけるがごとく、今回もサクッと組み立てていくこととしましょう。

太いランナーを中心にして、細かいパーツたちが生えています。今では当たり前の「四角い外枠に収められたプラモ」の様式はこの時点でもまだ完成されていないようですね。とはいえ全体的に矩形を基調に整理されていて、1950年代のものと比較するとパーツが脱落しにくくなっているようには思えます。

説明書を見ていて気が付きました。これ、組立工程の登場順にパーツ番号が振られているんです。なので、実際のパーツたちの物理的な並びはぐちゃぐちゃ。ちょっとこれは探しにくいですね……。
そういえば、現代のプラモではスプルーごとにアルファベットが振られて「A01、A02…」と示されることが多いと思いますが、このキットでは単なる通し番号になっているので、いくつかのスプルーを行ったり来たりしながら探す必要があって微妙にストレス。近年のエアフィックス製品ならアルファベット分けはもちろん、パーツのサイズごとにスプルーを分けて直感的に探せるよう工夫されていることを考えると、まさに隔世の感です。この時代からの試行錯誤が、現代のプラモに繋がっているのですね。

そんなフォーマット上の驚きはいくつかありつつも、組み立て自体はふだんのプラモと同様。基本形はこの時代で既に確立されていたのですね。主翼の動翼が別パーツになっているなど、工夫を施す余裕も見られます。合わせの精度は高く、特に脚部などは加工の必要なくばっちり組みあがりました。

新パッケージ再登場組のうれしい点はここ。デカールが新しいものになっています。これは近年の同社の新製品と同水準の上質なデカールなので、このキットの特徴である力強い凸リベットにも馴染んでくれました。当時のものでは、おそらくこうはいかなかったのではないでしょうか。

できました! 素朴で温かみのある佇まいは、コレクションケースの中よりも卓上にマッチする一機かもしれません。たしかに古いキットですが、そのパーツには滋味が蓄えられていて面白い体験でした。なにより、プラモ黎明期と現代の新製品が地続きで繋がっていることを教えてくれる、よき先輩に会えたような感覚です。
最近のエアフィックスでは、過去の名作を「ビンテージ・クラシックス」シリーズと銘打って当時のボックスを再現のうえリパッケージしていますから、往年の名作に進んで会いに行くことも可能です。次はどの時代のプラモを組み立ててみましょうかね。