FAST&FUNNYなプラモデル/アトランティスモデルのFIREBALL DRAGSTER

 とにかく誰よりも1/4マイル(402m)を速く、ド派手に駆け抜けたい人たちがいる。それがアメリカ発祥のモータースポーツ「ドラッグレース」。今回取り上げるのは、そんなドラッグレース専用マシン「ドラッグスター」における”60年代の匂い”をプラモデルにしたようなキット「1/25 FIREBALL DRAGSTER」です。過去にモノグラム社から発売されていたキットの金型を、アトランティス社が改修し発売したモノとのこと。さながら古いレコードのリマスターCDと言ったところでしょうか。私にとっては新譜です。さて!

▲パーツはコレが、全て。

 キットの構成は超シンプル。スピードを追い求める為に無駄(ラジエーターなど!)を削ぎ落としたストイックな美しさを持つドラッグスターですが、プラモデルからも同じ匂いを感じます。フレームやエンジン、排気筒やタイヤに至るまで、組み立ての手数が最小・最速になるように多くのパーツが一体になっていて、なかなか巧妙に計算されたパーツ割りなのです。けっしてチープな模型化ではありません。作ってみるとわかります。

▲説明書は英文と写真が主体。
▲モデリングのスピード感は、私史上最速でした。

 パーツに番号を見なくてもカタチで見分けのつくパーツばかり。あらかじめパーツ全てをニッパーで切り取ってしまい、説明書の写真を見ながらなんとなくでグリグリ接着しても、サクサク出来上がってしまいます。説明書を熟読しなくても完成するということは、それだけよく出来た設計の証です。

▲純白のドラッグレーサーが、あっという間に出来ました。

 シンプルな力強さに惚れ惚れするデザインです。貼り合わせたエンジンブロックは所々で左右の形状が絶妙に合わない為、パテで盛ったりヤスリがけなどして成形するとさらに完璧でしょう。今日の私はスピード感を欲していたのでやっておりませんが。

 しかし何だかムズムズします。花粉か?いいえ、このプラモデルには「精密さ」とか「リアルさ」以外の、最も重要なプラモデルのバリューのひとつだと私が信じてやまない「遊び倒す余白」を強烈に感じるのです。その無垢でシンプルな構成には意味があり、その先があるハズだと思ってしまうのです。

▲だから、カスタムします。

 このキット唯一の弱点はドライバーが付属していない点と言えるでしょう。無ければ作ればよいのです。いや、作るのは大変なので、ガンダムアーティファクトを切り刻んで、ドライバーになってもらいます。

▲完成。彼がガンダムだ──。

 当たり前というか改めてというか、ドライバーが乗ると、”乗り物”って感じがして良いですね。付属のファイアパターン・デカールも素敵。エンジンとフレームにはシルバーを塗った方がテンション上がります。型板ガラスの窓から自然光を当ててみると、鈍く光ってとても綺麗ですから。速い、早い、ドラッグレーサーのプラモデル。短いレースでしたが、とても好きになりました。

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ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。