伝説の蒼きプラモが蘇る大地/アトランティス 82年式 Z-28カマロ

 さようなら、モノグラムの名は消滅しました。もうお目にかかることもないでしょう。
 風のうわさにそう告げられた気がしたのは2007年の夏のこと。アメリカの2大看板が肩を並べたレベル-モノグラムというブランドが、買収により単なる「レベル」に統合され、モノグラムの名とロゴはあらゆる媒体から姿を消してしまった。

ホビーコレクティブ アトランティス 1/32 1982 シェビー カマロ Route 32 (未使用開封済み)

ホビーコレクティブ アトランティス 1/32 1/32 1982 シェビー カマロ Route 32 (訳あり商品)

アトランティス 1/32 1982 シェビー カマロ Route 32

 もちろん製品とその金型が失われたわけではなかったけれど、それはあの輝かしいモノグラムの名の下に新しいプラモデルはもう出ないのだ、ということを暗に示していたし、名が失われた以上は金型の未来だってそれこそ知れたものではなかった。寂しさと不安が、さざ波のように世界を覆った。

 モノグラム製品は、体で名を表すことができる稀有なプラモデルだった。彫刻は深く、細部は省略ではなく大胆に一体化され、がっちり肉厚で手堅く組めて、最後は息を呑む精密さに仕上がった。まるで米粒をひとつずつ箸で拾って碗に盛っていけとでも言われているような、神経質な精密さがあふれる現代にあっては、モノグラムの佇まいはいっそう独特だった。みんなが組めて、完成させたらみんなが誉めそやされる、モノグラムとはそんな約束の名前だったのだ。
 悲しいうわさは続いた。「アメリカのレベルがまた身売りしたんだって、今度はドイツ」「ドイツレベルとは違う会社らしいよ。なんだかもうよくわからないな」「ちっとも再販されないね。金型は本当に遺っているのかな」「売り払われちゃった金型もあるらしいよ……」

 しかし、なつかしい顔のひとつは、現代に思わぬかたちで帰ってきた。
 まだモノグラムがレベルとひとつになる前、マテルの大きな傘の下で、ゲームやその他のより刺激的な娯楽を求めて流れていった人々の関心をふたたび取り戻すにはどうしたらいいか、スナップタイトなどの新機軸や、倒産したオーロラ社から引き継いだ幅広いレンジのアイテムの再販、そんな試行錯誤を繰り返していた頃の、小さいけれどとても精密な車のプラモデルだった。
 しかもその新たな装いは、旧オーロラの印象的な商標を換骨奪胎したような「アトランティス」のブランドロゴと、1/32スケールのカープラモであることを示す「ルート32」の真新しいシリーズ名をまとっていた。中身はといえば小さくともディテールみっしりの、正真正銘のモノグラム。シャシの隅に「©MM」の文字がなかったとしても、その体はありし日の名をはっきりと思い出させる精密さを驚くばかりに保っていた。

 かつてのオーロラの遊び心を現代に甦らせようと各地で立ち上がった北米の若いプラモデルメーカー群の中でもとりわけ遊び心に長けたブランドの、これはモノグラムへの粋なはからいだった。かつてモノグラムの名が、歴史の波間に呑まれるかに思われたオーロラを守ったように。
 「わが名はアトランティス。とどろく勇名儚く消え去り、金型の散逸までもが危ぶまれるモノグラムを、かのオーロラになり代わり義によってお助け致す。いざ!」

心ある者たちの手で、名前を失くした物語が引き継がれてゆく。これは今まさにわれわれの目の前で起こっている、新しい復活の物語なのだ。

ホビーコレクティブ アトランティス 1/32 1982 シェビー カマロ Route 32 (未使用開封済み)

ホビーコレクティブ アトランティス 1/32 1/32 1982 シェビー カマロ Route 32 (訳あり商品)

アトランティス 1/32 1982 シェビー カマロ Route 32

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1972年生まれ。元トライスタージャパン/オリオンモデルズ、旧ビーバーコーポレーション勤務を経て、今はアメリカンカープラモの深淵にどっぷり。毎週土曜22時から「バントウスペース」をホスト中。