
アタックチームとはいうものの、アタックチームってまたずいぶんかっこいい商品名だと思いませんか。歩兵なんだからそりゃアタックするのが仕事でしょ……とも思うんですが、しかし軍隊において「チーム」は立派な戦術単位のひとつ。大体10人前後で編成される「分隊」をさらに半分程度に分割した単位である「班」を英語でチームと呼びます。時代や国によって異なるものの1チームは大体4~6人前後なので、まさにこのキットと同じくらいの人数。まさに正しく「アタックチーム」と言い切れる編成です。

で、この「ドイツ歩兵 アタックチームセット」は1995年11月に発売された商品。この年の9月には「1/35 ハノマークD型 シュッツェンパンツァー」が発売されており、それと組み合わせることができる歩兵セットです。

ハノマークは現代の歩兵戦闘車のはしりとも言える装甲ハーフトラックで、後部のキャビンに歩兵を乗せて機甲部隊と一緒に移動するための車両。そこからわ~っと飛び出して戦っているのがこのアタックチームのみなさんということですね。



で、タミヤは1974年、「ドイツ歩兵 突撃セット」という傑作フィギュアセットを発売しています。実はこの突撃セットも、その前年に発売された「ドイツ・ハノマーク兵員輸送車」と組み合わせるために作られた歩兵のキットであり、いわばアタックチームセットは突撃セットの(発売当時での)現代版です。1995年といえば、70年代にMMを作っていた子供たちが出戻りモデラーとして戻ってきて、AFVというジャンル全体が盛り上がっていた時期。当時のモデラーからすれば「これ、『突撃セット』じゃん!」という驚きと懐かしさを感じさせる商品だったのではないでしょうか。


キットの中身はランナー2枚。フィギュア本体と装備品とで別れている構成です。この時期のタミヤのフィギュアは昔ながらの「上半身、両腕、腰から下」みたいなパーツ分割からもう少しテクニカルに部品を割るようになっており、顔や両足もバラバラに。90年代のAFVブーム期の商品ということもあり、モールドもイキイキしていて程よくクドい。今の3Dモデリングフル活用フィギュアもいいですが、このギリギリ「おれがパテでポーズとかいじってもなんとかなりそう」くらいの雰囲気に、実家のような安心感を感じる人も多いのでは……。


成形色こそ違いますが、装備品ランナーは前回紹介した「ドイツ戦車部隊 前線偵察チーム」についていたものと同じ。大戦後半のドイツ軍の装備品をまとめたものです。どの部品も惚れ惚れするようなシャープさ。特に鉄砲関係の部品はキレキレです。



で、組み立てるとこういう感じに。アタックチームがアタックしてる最中ということで、突撃だ~というポーズとなっております。MP44を構えている人の、肩がグッと入った射撃ポーズがかっこいい。しかしなんというか、全員めちゃくちゃ頭の小さいモデル体型ですごいですね。頭身がすでにエリート部隊っぽい。

入っているフィギュアの中でも特に印象的なのが、MG42を特機隊撃ちしてる彼。なんせ10キロ以上ある重たい銃なんで、抱えて走るのも一苦労。そもそもこの銃は二脚を立てて伏せて撃ったりするのが普通なのですが、なんせアタック中なので立射です。「反動を抑えるためグッと腰を入れつつ、重心を後ろに傾けて連射してます!」というのが一発で見て取れるポージングがお見事。派手で見栄えのするフィギュアです。

この手榴弾を投げている彼も、大きく振りかぶったポーズが派手でかっこいい! タミヤの歩兵フィギュアセットには手榴弾を投げてる人が入りがち。そんな伝統をきっちり守りましたよ、という目配せを感じます。なんせこのプラモは新時代の「ドイツ歩兵 突撃セット」なので……。

5人全員並ぶとこんな感じ。敗色が濃くなる中でも局地的に凄まじい抵抗をした……みたいなエピソードが色々と残っている大戦後半のドイツ軍ですが、まさにそんなイメージを具現化したポージングだと思います。派手でかっこよくて強そうという、兵隊のフィギュアに不可欠な要素がぎっしり乗った傑作と言えるでしょう。ハノマークと組み合わせても組み合わせなくても成立するところもナイス。ピリッとした戦闘中らしい緊張感は、一見の価値ありですよ!