プラモになっているのはハートで運ぶホステスケーキの味/AMT フォードC-900 チルトキャブトラクター

 ブリキのロボットを山とこしらえた戦後日本の想像力とよく似たファニー・フェイスが、フォードCシリーズ中型トラックの個性だが、この顔が愚直さ・勤勉さをなんとなく想像させるのは和洋の別を問わないようだ。

 Cシリーズはチルト式のキャブオーバーということもあり、エンジン整備の際などはまるでおじぎをするような姿。愚直さに礼儀正しさをも加え、見る者に忘れられない印象を残す。

ホビコレ AMT 1/25 フォードC-900 チルトキャブトラクター トラックトレーラ ホステスケーキ

 そうした構造も当然盛り込んだamtのフォードCシリーズ、同社は昔からこの愛嬌あるトラックにさまざまな仕事をしょわせることに余念がなかった。あるときはコンテナいっぱいの手紙や小包を運ばせ、またあるときはステーク・ベッド(平荷台)を架装してコカ・コーラの自動販売機を運ばせた。
 ついにはパッカー(ごみ収集車)の仕事までやらせようとして箱絵だけはあつらえたものの製品化につまづき、それから半世紀近く経ってから新金型で当初の箱絵どおりに計画を果たすという離れ業までやってのけた。amtにはこの顔を好きでたまらない男がいるのだ。
 まさに愛され顔。美男美女はみんなが思うほどにはモテないものである。

 今回とりあげるパッケージの主題はホステス・ケーキ。日本でいえばヤマザキのトラックだ。
 
 日本全国どこへ行っても手に入るヤマザキ製パンの商品同様、広大なアメリカにもインターステート・ベーカリーと呼ばれる巨大な製パン会社のネットワークがあり、ホステス・ブランドはその最右翼といったところ。その看板商品であるトゥインキーは、個包装の単なるスナック・ケーキであることを超えて「何年経っても腐らない」といったあらぬ噂が立つほどのアメリカン・ミームにまで成長し、21世紀の今すっかり定着している。

 大恐慌の昔からある、たった5セントの心のなぐさめ。それをアメリカ全土に届けるべく東奔西走、南船北馬、そこ退けそこ退けフォードが走る──。

 日本での正式リリースはもういつぶりだろう。

 正直に告白すると、当時8歳かそこらだった僕はこの大きなフォードCトラックにあこがれて、親にねだって買ってもらってはみたものの、それはamt製とは似ても似つかないエーダイグリップ製のちっちゃな別物だったというオチがつく。そそるばっかりの箱絵の荷台には確かランボルギーニ・カウンタックが描かれていたけれど、箱の中にはランボルギーニのラの字も入っていなくて、半べそをかいた僕はきっとフォードCそっくりの顔だったに違いない。

 正真正銘のamt製を前に今あらためて思う。家1軒が余裕でおっ建つランボルギーニだろうが、たった5セントの袋菓子だろうが、荷役になんの貴賤があるか。

 白い荷台にあるとおり、奴はハートで仕事をするのだ。

ホビコレ AMT 1/25 フォードC-900 チルトキャブトラクター トラックトレーラ ホステスケーキ

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bantowblog

1972年生まれ。元トライスタージャパン/オリオンモデルズ、旧ビーバーコーポレーション勤務を経て、今はアメリカンカープラモの深淵にどっぷり。毎週土曜22時から「バントウスペース」をホスト中。