この夏、いきなり恐竜博士になる/バンダイスピリッツの骨格プラモで知るトリケラトプスの話。

 このプラモの本体は説明書とは別にわざわざ入れてある『”現存古生物”恐竜論 トリケラトプス編』という12ページの冊子です。なんせ裏表紙に「これの中身はめっちゃ大事なのでインターネットに載せたらあかんで」って書いてあるんだもん。そんなプラモの説明書あんまり見たことないっすよね。

 「いやいや、恐竜についての知識なんてオープンソースでしょパブリックドメインでしょ……」と思ったらさにあらず。やっぱり「恐竜がどういう生き物だったのか」という研究の成果って、時代ごとにどんどん更新されています。とくにトリケラトプスとその仲間(角竜という種類)はバリエーションがむっちゃあって、どれが同一の種類なのかもあんまり良くわかってないとか、いろんな学説の中から確からしいものが少しずつ合意されたりひっくり返されたりして、まさに「現在進行形」なんです。

 読み始めたらわかるんですが、すっげえ真面目で、子供向けに簡単にしようとか優しい言葉を使おうみたいな配慮があんまりない。ガチなんです。大の大人が小一時間読み耽るボリューム。イラストも「え、いまトリケラトプスってそういうふうに捉えられてるんですか!?」みたいな感じでワンダーがいっぱいです。読みましょう。

 恐竜骨格のプラモとしては前作にあたる「イマジナリースケルトン トリケラトプス」と同じフォーマットで、接着剤なしでバリバリ組める茶色い骨格パーツが4枚のランナーにくっついています。

 組み上げたらトリケラトプスになって「はい知ってる〜」みたいなカタチになりますけど、そもそも恐竜の骨がばらばらになってる状態を我々は見たことがないので結構新鮮。さらにさきほどの解説書には「ここの骨が異常にデカイのがワンダーなのだ」みたいなことが書いてあって、パーツと照らし合わせると「たしかにそうだな」となります。

 ちょっと笑うのが組み立て工程の中盤に現れる背骨と肋骨の組み合わせパート。それぞれ曲率と長さの異なる肋骨を間違えずに順番に組み付けなければいけないので、肋骨1対につき1コマのペースで図示されているのです。ミニマルテクノだね。

 しかしこれをワーッと一枚の画にして「頑張って間違えないように組もう!」ではなく、「一個ずつ落ち着いてくっつけてくれよな!」とするあたりにバンダイスピリッツのホスピタリティと夏休みの少年研究家たちへの優しさを感じるわけですよ。やっぱバンダイスピリッツはえらい。

 とりあえず頭だけでも……と組み始めたらやはりワクワクの出来栄え。顎めっちゃデカいけど歯茎ちっさいなキミ!とか、くちばしってなんだ……?やっぱオマエは鳥の親戚なのか?とか、角が目ン玉の上にあるのヤバいな……眉毛のすごいやつみたいだな……とか、いやそもそもトリケラトプスのフリルってめちゃくちゃすごい構造だな!とか、ここだけでもいろんな発見があるわけですよ。

 発見……というかまあ学者の人は知ってるんだろうけどさ、それを手で組んで眺めてホエーって言えるのがプラモのスゴイところだし、学者の難しいお話をわかりやすい解説書と立体資料で学べるんだからお得でしょ。

 5枚目のランナーはまるまる地面。トリケラトプスがビシッとハマる窪み(足跡)もあって、このなんともバイオで有機な感じのテクスチャーがプラスチックになっているのは相変わらず最高。このプラモを読んで、組んで、気が向いたら塗ると、居酒屋で一席打つことができます。「オマエ知ってる?トリケラトプスってさあ……」と。

 別にトリケラトプスマウントは取らなくてもいいですけど、こういう「読んで組んで知る」ってのがプラモのベストなフォーマットだし、読み物でプラモの意味は何倍にもなるな、と改めて思った次第。みなさんも買いましょう。

<a href="/author/kalapattar/">からぱた</a>/nippper.com 編集長
からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。