ゲーセンで体感したWRCのド迫力を、プラモデルで蘇らせる/BEEMAX プジョー306 MAXI EVO2

 何クレジットをつぎ込んだか、もう覚えてない。ゲーセンに行って筐体があれば、絶対にランキング1位に自分の名前を刻むことにしていた。パーシャルでどれだけ引っ張るか、どこでサイドブレーキを引けばいいか、どのターンは全開でイケるのか、身体が覚えていた。『セガラリー2』の話だ。

 いまとなっちゃトヨタとヒュンダイとフォードの3車種だけで争われる世界ラリー選手権(WRC)だけど、遡れば遡るほど奥深く、魅力的で凶暴なマシンが戦うとんでもないレースとして多くの人の脳に刻み込まれている。そのなかでも、アラフォー世代にとってWRCというのはつまり『セガラリー2』であり、そこに登場した車種こそが「ラリーカー」なのだと断言しちゃおう。

ホビコレ プラッツ/BEEMAX 1/24 プジョー 306 MAXI EVO2 1998 モンテカルロラリー クラスウィナー

 わりとニッチなレースカーをバンバンプラモデルにしているBEEMAXというメーカーから発売されたプジョー306 MAXI EVO2。ボーッとしていたら見逃すところだった。これぞまさしくど真ん中の『セガラリー2』のプラモデルである(厳密に言えば年式違うしライトポッド付けてるのは雪ステージなんですけど……)。

 4WDでガンガン曲がるインプレッサやランエボと比べて、アンダーステアの出やすい神経質なドライビングフィール。ストラトスやセリカもいいんだけど、(エスコートは挙動がもっさいのであんまり使わなかったな)あえての306マキシでキレイにターンを決める友達に羨望の眼差しを送っていたことを思い出す。

 カーモデルって基本的に構造が似たり寄ったりなので、よっぽど不思議な構造を凝った分割で表現しているとかじゃない限りあんまり食指が伸びないんだけど、このプラモデルはそういう意味でかなりオーソドックス。エンジンレスだしパーツ数は少なめ。ガンガン組めば速攻でカタチになる。

 でも今回どうしても見たくなったのは完成したボディだ。そうか、ラリーカーに見ていた「カッコよさ」ってもしかしたらあのド派手なマーキングだったのかも。

 何度でも言う。BEEMAXのプラモデルはデカールが超最高なんだ。薄くて、発色が良くて、曲面にもびったり馴染んで、ニスの余白が全くない。貼りやすいデカールの王様と言っていい。普通なら塗装で表現する窓の黒いフチも全部デカールで用意されているし、寸法もバッチリ。騙されたと思って(デカールを貼るだけのために!)買ってほしい。驚くぞ。

 シャーシを組んで失速するのは嫌だったから、まずボディを仕上げちゃう。プラスチックはまったく透けのない上質な白。そこに直接デカールを貼っていく。毎日ちょっとずつ、でっかいのから先に。青と赤の鮮烈な模様にたくさんのスポンサーロゴを重ねていくと聴こえてくるじゃないか、スウィングしたスカスカのシンセピアノと「Go Go! Sega Rally」って声が……。

 最初は内装を塗らなくてもいいじゃんって思ってたんだけど、あまりにもデカールがいい。それに引っ張られて必要なところだけ黒で塗り塗り。盛り上がってまいりました。

 ちなみにディテールアップパーツセットを買うとインテリアにちらほらあるCFRPパターンがデカールになっていたり、ディスクブレーキや天井のアンテナが金属になってめちゃくちゃテンションが上がる。こんなに「オレは今、クルマ模型を作っている!」という気持ちになったのは正直初めてだ。

 ひっくり返さなきゃ見えないのに、下もそこそこ塗ってしまう。塗装指示なんか見ないで、それっぽい色をドワーッと入れておけば良いのだ。浅いドリフトで緩いコーナーを流しているあの時を思い出しながら!

 ちなみにこのプラモデルはクリアーパーツがことごとくちょっと大きめなので、嵌め込むときは周囲をぐるっとヤスっておくといい。フチをマッキーで黒く塗っておくことを忘れずに。これだけで信じられないくらいシマりのある見栄えになる。

 デカールが良すぎてクルマの模型が完成してしまった。実際セガラリー2で306をドライブしたのなんて数えるほどなんだけどさ、こうしてかっちょいいプジョーが爆誕すると「最初のクルクルまわる自機選択を全部プラモで揃えたくなるな」と思い始めてしまう。年式がちょっとズレていたっていい。20世紀末のWRCで感じた興奮をプラモで揃えるなら欠かせないコイツが、思っても見なかった心の導火線に火を付けたんだ。

ホビコレ プラッツ/BEEMAX 1/24 プジョー 306 MAXI EVO2 1998 モンテカルロラリー クラスウィナー

<a href="/author/kalapattar/">からぱた</a>/nippper.com 編集長
からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。